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【これからは予防の時代19】マンモグラフィ検診のメリット・デメリット

前回は、ガン検診に求められる指標とその優先順位についてお話しました。今回は、乳ガン検診の方法のなかで最近もっとも良いとされているマンモグラフィ検査について、メリットとデメリットをお話します。マンモグラフィ検診も決して万能ではありません。年齢などを考慮すると、ほか検査方法のほうがよい場合もあるのです。

日本でのマンモグラフィ検診の現状

いわゆる「健康診断」では、乳ガンのマンモグラフィ検診は40歳以上から開始され、2年に1度の間隔で実施することが推奨されています。この40歳というのは以前記事で紹介したように、乳ガンの罹患率が上昇してくる年代です。さらに40歳以上では、放射線被ばくによる不利益よりも、乳ガン死を防ぐメリットの方がはるかに大きいと考えられているのです。

 

マンモグラフィ検診によって、乳がん死亡率は減少

出典:NPO法人乳がん画像診断ネットワーク

近年マンモグラフィ検診が実施されるようになって、40歳以上については、実際に乳ガンの死亡率が減少することが、おおむね認められています。マンモグラフィ単独の感度は、40歳代59%、50歳代72%、60歳代81%となっていて、40歳から69歳の全体では74%になっています。そして2年に1度しか検診しない理由は、毎年実施しても効果の上乗せが大きく期待できないことが挙げられます。

 

デメリットが大きい、若年層へのマンモグラフィ検診

また例えば、若年で乳ガンの症状のない集団へマンモグラフィ検診を行なったとすると、そもそも乳ガンの罹患率が低いわけですから、死亡率の減少効果がありません。すると確実に存在する、擬陽性や費用の問題が大きくなってしまいますから、マンモグラフィ検診は行うべきではありません。

 

比較的予後が良い乳ガンでは、過剰診断と過剰治療に注意

出典:全国がん罹患モニタリング集計、2003-2005年生存率報告(独立行政法人国立がん研究センターがん対策情報センター, 2013)、独立行政法人国立がん研究センターがん研究開発費「地域がん登録精度向上と活用に関する研究」平成22年度報告書

 

乳ガンは比較的予後が良いため、マンモグラフィ検診で問題になるのは、過剰診断と過剰治療です。

 

ちなみにアメリカでは、余命が10年以内の人には、過剰治療を防ぐためにマンモグラフィ検診は推奨されていません。ここで言う「過剰治療」は、治療しなくても余命に関係がない乳ガンを発見して、治療することです。

高島裕一郎(医学博士)

予防医学を専門としている医師です。医療の高度化でさまざまな病気の原因がわかるようになりました。これは同時に、いろいろな病気を予防することができるようになってきたことを意味します。生活習慣病やガンなど、生活のなかで予防のできる病気と、その予防方法について、お伝えしていこうと思います。日本医師会認定産業医、日本人間ドック学会認定医。