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【和菓子歳時記3】ヒンヤリつるっとしたのど越しを楽しむ「水ようかん」

いよいよ夏本番、冷たいスイーツの美味しい季節になりました。今回は、夏の人気和菓子で、家庭でも手作りしやすい「水ようかん」を美味しくいただくコツと、作り方のアレンジ方法をご紹介します。ヒンヤリ冷たいスイーツですが、福井県では意外にも冬の定番和菓子として、食べられているそうです。

 

「練りようかん」と「水ようかん」の違いは寒天と水の量

「ようかん」の材料は、あんと砂糖と寒天。加熱して溶かした寒天へ砂糖とあんを混ぜ、練りあげた物を冷やして固めます。寒天を多めにして、時間をかけて練りあげて水分量を少なくすると、固さのある「練りようかん)に。寒天を少なめに、水分量を多くして柔らかく仕上げると「水ようかん」になります。「水ようかん」は水分量が多いことから和菓子業界では「水菓子」とも呼ばれ、和食のデザートに用いられることもあります。

 

水ようかんは、冬のお菓子だった?

水ようかんは、今ではヒンヤリつるりとしたのど越しを楽しむ夏の人気和菓子ですが、福井県では冬の和菓子として知られていているそうです。福井県では、大正・昭和の丁稚(でっち)が、年末の帰省土産として、奉公先から水ようかんを持たされたことから、冬のお菓子とされている説があり、別名「丁稚ようかん」とも呼ばれています。関東地方の一部地域でおせち料理の1品だったという説もあり、冷蔵保存の技術が発達していない時代には、水分を多く含む水ようかんは、実は冬のお菓子だったのかもしれませんね。

 

水ようかんの特徴を知って、美味しくいただくコツ

寒天で作る水ようかんは、アガー、ゼラチン、葛(クズ)と比べると固さはあるのですが保水力が弱く、時間が経過すると水が染み出る離水(りすい)という現象が起こります。水は外周から染み出るので、食べる直前に切るか、切ってから切り口にラップなどを密着させて保存しましょう。離水を完全に防ぐことは難しいので、なるべく早目に食べ切るのが美味しくいただくコツにです。

 

材料を変えると、食感の違う水ようかんを楽しめます

水ようかんは、寒天のもつ歯切れのよいつるりとした食感が特徴ですが、寒天を葛やアガーなどに置き換えると、柔らかくなめらかな食感になります。柔らかくしようと寒天の量を少なくしても、固まる力が弱くなるため離水が起きやすなるうえ、なめらかにもなりませんからご注意を。また、ゼラチンを使用すると水ようかん風ゼリーが、出来上がります。

 

まとめ

水ようかんはシンプルな和菓子ですがお店ごとに風味、食感がいろいろなので、食べ比べをしても楽しいですよ。ご家庭で手作りもでき、寒天をアガーやゼラチンに変えて食感を変化させたり、フルーツを加えたりと、簡単に楽しくアレンジできる和菓子です。冷たく冷やすのはもちろん、凍らせて食べても大変美味しく召し上がれます。暑い日のおやつに、ヒンヤリ冷たい水ようかんを楽しんでみて下さい。

 

 

石原マサミ(和菓子職人)

創業昭和13年の和菓子屋・横浜磯子風月堂のムスメで、和菓子職人です。季節のお菓子や、和菓子にまつわる、歳時記などのご紹介を致します。楽しく、美味しい和菓子の魅力をお伝えできたら、嬉しいです。石原モナカの名前で、和菓子教室も開催中。ブログはこちら