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【調理の化学】伊勢海老と甘エビは美味しくない?
2015年 10月 14日 09:00
かつて、甘エビは、一番まずいエビにランキングされていた。甘エビは、生で食べると、とろっとしてほのかな甘味があり、その美味しさは、いまや誰でも知るところである。
かつては不味いと捨てられていた「甘エビ」
しかし現在のような陸送システムが普及する前は、エビ類は全て加熱してから食卓に上っていた。加熱により甘エビ特有のとろみはなくなり、甘味も薄いので食卓には上らず肥料にされていたのである。
シロエビやテナガエビの旨味
エビの味は一般に、エビに含まれるアミノ酸の量に比例していると言われている。それも、甘い味のするアミノ酸(甘味系アミノ酸)の量が多いほど、美味しいのである。昔から、美味しいと言われているエビとしてシロエビ、テナガエビなどが知られているが、いずれのエビにもこの甘味系のアミノ酸が多く含まれている。
前回の車海老は、アミノ酸の量からすると美味しい部類に属しているが、伊勢海老は甘いアミノ酸の量がそれほど多くないため、美味しさのランキングからすると、やや劣る。そして甘エビは、それよりもさらに甘味系のアミノ酸が少ないというわけだ。
フランス料理で活きる伊勢海老
一方伊勢海老は、言わずと知れた高級食材である。フランス料理では、ソースで味付けすることで、アミノ酸の不足を補いながらこれを極上の味に変化させ、超高級料理としている。
日本でも例えば、志摩観光ホテルには伊勢海老料理のスーパーシェフがいて、フランスからわざわざ伊勢エビ料理を食べにくるくらいの評判をとっている。
イラスト:たちばなかより