老師オグチの家電カンフー

第7回:13年前の「初代ルンバ」を再生。ロボット掃除機は文字通りの自動車である

カンフーには広く「訓練を積み重ねる」といった意味があります。「老師オグチの家電カンフー」は、ライターの小口覺が家電をネタに、角度を変えてさらに突き詰めて考えてみるコーナーです

 執筆陣はもちろん、読者にも専門知識を持った人が多い「家電 Watch」ですが、この連載においては知識を語るのではなく、評論家的なキャラクターを狙っていきたい。

 イメージしているのは、テレビで好き勝手にコメントする老評論家です。しかし、言いたいことを言っている評論家はパイプを加えていることが多いですね。竹村健一先生しかり、徳大寺有恒先生しかり。余裕の象徴なんでしょうか、パイプは。早くパイプと高級外車が似合う老師になりたいです。

 クルマといえば、ロボット掃除機は自動車に似ています。なんてったって、タイヤが付いていて走る(笑)。バンパーやセンサー、カメラを搭載し、ある意味クルマの自動運転の技術を先取りしていると言えるかもしれない。いや、評論家なら言い切るべきだろう。ロボット掃除機は文字通りの自動車だと。

タカラから2003年に発売された「初代ルンバ」(正式な製品名は「@HOME ROBO ルンバ」)。どことなくフォルクスワーゲンの「ビートル」に似た雰囲気?

 さて、最初に買ったロボット掃除機は2003年に発売された「初代ルンバ」です。当時はタカラ(現タカラトミー)から販売されていました。何年か前の断捨離で処分してしまい、とっくに手元にないのですが、久しぶりに走らせてみたいと思ったのです。クルマやバイク好きが古い車に乗りたがるように。

 発売当時、ルンバの働きに感動して妻の実家にプレゼントしたのですが、これを送り返してもらうことにしました。もちろんとっくにバッテリーが充電できなくなっており、10年ぐらい納戸に放置されていたようです。

裏面。基本的なレイアウトは今と変わらない。ダストボックスは小さめ
これが問題のバッテリー。14.4Vのニッケル水素電池
バッテリーのカバーは、▲の形状をした特殊なネジで止められている。最初は小さなマイナスドライバーで開けていたが、ひとつだけ固くて回らなかったので、専用ドライバーを購入した
ケースに入っていた電池には、03年製造とある。容量は書かれていないが2,000mAhから3,000mAhの間だろうか

 完全にへたっていたバッテリーは、単三形のニッケル水素電池12本に置き換えることにしました。気分はクルマのレストアです(※もちろん、こうした改造は自己責任の下におこなってください)。かかった費用は次の通り。

Amazonベーシック単三形ニッケル水素電池×12本分:2,970円(8本1,980円)
電池ボックス×3個:441円(1個147円)
バッテリースナップ×3個:336円(1個112円)
三角ネジ用ドライバー:565円
計4,312円

 作業工程は写真を見ていただくとして、無事バッテリーの再生に成功。ボタンを押すと、「ピロ~ロロ~ン♪」と今と同じメロディーを発して動き出しました。古いモノが再び動くのを見ると感動しますね。

古いバッテリーを、容量2,400mAhのAmazonベーシック単3ニッケル水素電池×12本に置き換える
電池ボックスを使用し12本の電池を直列につなぐ。小学生の理科レベルの作業だ
フタが完全には閉まらなかったが、とりあえず封印。隙間はマスキングテープで塞ぐ
本体にセットし側面の電源ボタンを押すと、ランプが点灯した!
初代ルンバを走らせるには、部屋の広さに応じてS/M/Lを選んで押す。メロディーは今と同じだ

 ですが、吸引力や掃除能力は現行のルンバに比べると明らかに弱い。昔の車に乗ってエンジンの非力さを感じるのに近いです。まぁ、クラシックカーですから、所有すること自体や、ながめて楽しむことがメインです。

 クルマのように税金もかかりませんし、クラシック家電は趣味としてもアリじゃないでしょうか。同じように古いルンバを持っている人がいたなら、走行会でもやりますか。

新旧ルンバを並べてみた。クルマ雑誌でよく見られる構図である

小口 覺