藤原千秋の使ってわかった! 便利家事アイテム

食器洗いにスポンジ、は当たり前じゃなくなる? 使い捨てクロスを使って思うこと

家事アイテムオタクなライター藤原千秋が、暮らしの不具合等々への現実的対処法とともに、忌憚ないアイテム使用感をご紹介していく連載記事です
ストリックスデザイン「スクラブクロス」

「流行りの~~」の類に往々にしていえることだが、流行りの渦中は見えなかったものも少し時間を置いてから明らかになることが多い。今回紹介するストリックスデザインの「スクラブクロス」という商品とその類似品の台頭とプチバズりも、もう一年くらい前のことになる。100均ものを含めて各商品使い比べる中で、なるほどな〜と思うことが浮上してきたので一度書き留めておきたい。

私たちは存外、目に見えないものが怖いようである。思い返すに今どきのVRから遡る30年近く前、筆者はとある山間の遊園地で、真っ暗な部屋で目隠しをし、ヘッドホンを頭にセットするだけのアトラクションを体験した。音だけオバケ屋敷的なアレだ。

とりあえずそこでは何も見えない。視覚からの情報は一切ない。しかし耳からの音、音の情報だけで、怖すぎて耐えられなくなり筆者は途中でヘッドホンをかなぐり捨ててしまった。

ヘッドホンを外した部屋の中は静かで、一緒に入室した友人たちの息遣いや小さい悲鳴だけがときどき聞こえるのみ。そのうちリタイア者がボチボチ増えてきたので、「トホホ」と言いながら無駄話をしたものだが、恐怖というものには「見える」要素は必須じゃないのだなということを筆者はこのとき学んだのだった。

さて食器洗いに使うふつうの台所スポンジには天文学的な数の細菌が生息しているのだそうだ。一説によればなんと大便なみの密度だという。「まさかァ」といいつつどこか「そうかもねェ」と思う。これだけエサと水分に恵まれ、ほどほどに温かい(我が家のキッチンは年間通して気温20℃を切らない)環境で細菌が繁殖しないほうが不思議な気もする。

一方、「スクラブクロス」、この凹凸のあるポリプロピレンのシートは耐水性があり柔らかく、濡らして薄く洗剤をまとわせて揉めばよく泡立ち、およそ通常の食器、鍋釜フライパン類洗いの用は足す。

一日使って、ちょっとしたコンロ掃除なども済ませ、排水口のぬめりを拭いぐたぐたになったら即捨てる。

そう、これであの天文学的数の細菌とやらに脅かされずに済む。「食器洗いにはスポンジを」という直近40年ほどの当たり前がじわじわと塗り替えられていく。

良し悪しではない。進化といい切ることもできない。もしかすると一種の退化かもしれない。「見えないけれどいるもの」への過剰反応なのかもしれない。

しかし筆者は、「おばあちゃんの子育て時代には、まだスポンジってものを使っていたんだよお……」と昔語りをする自分の未来をどこかで確信している。

30枚入りのボックスタイプ
藤原 千秋

主に住宅、家事、育児など住まい周りの記事を専門に執筆するライターとして21年目。リアルな暮らしに根ざした、地に足のついたスタンスで活動。現在は商品開発アドバイザリー等にも携わる。大手住宅メーカー営業職出身、大1、中3、小5の三女の母。『この一冊ですべてがわかる! 家事のきほん新事典』(朝日新聞出版)、『ズボラ主婦・フニワラさんの家事力アップでゆるゆるハッピー‼』(オレンジページ)など著監修書、マスコミ出演多数。