シャープのプラズマクラスターイオン、25立方mの空間でインフルエンザウイルスを抑制

プラズマクラスターイオンの放出機能は、空気清浄機などシャープの家電製品に多く搭載されている

 シャープは、同社の除菌・脱臭技術「高濃度プラズマクラスター」が、25立方mの空間において、実際の浮遊インフルエンザウイルスの感染力を抑制することを、業界で初めて実証したと発表した。

 高濃度プラズマクラスターは、シャープの空気清浄機や冷蔵庫、ドライヤーなどの家電製品に搭載されているイオン放出技術。プラスイオンとマイナスイオンを同時に空気中に放出し、浮遊する細菌やカビ、ウイルスなどの表面で2つのイオンが結合、酸化力の高いOHラジカルとなることで、表面のたんぱく質を分解し、その働きを抑制する効果があるという。


プラズマクラスターイオンが発生する仕組み。プラスのイオンとマイナスのイオンを同時に空中へ放出するウイルスなどの表面のたんぱく質を分解し、その働きを抑制する効果があるという

 同イオンでは2009年に、1立方mの小空間における、実際の浮遊H1N1型インフルエンザウイルス、および付着H1N1インフルエンザウイルスの感染力を抑制することを実証している。しかし、25立方mの大空間については、試験の安全性の観点から、代替ウイルスが用いられるのが一般的だったという。

 今回の実証実験は、25立方mの空間にて、実際の浮遊H1N1インフルエンザウイルスに対する高濃度プラズマクラスターの効果を検証するというもの。ベトナム ホーチミン市のパスツール研究所と共同で実施した。

 実験内容は、同空間に1立方m当たりのイオン濃度が25,000個のプラズマクラスターイオンを発生させ、そこに浮遊H1N1型インフルエンザウイルスを、粒径が1~10μmのミスト状に噴霧するというもの。実験後、空間の浮遊ウイルスを回収し調査したところ、ウイルスの噴霧が終了してから約66分で、イオンなしの場合と比べ、インフルエンザウイルスの感染力が99%抑制されたという。

 シャープでは、イオン放出式およびフィルター濾過式の空気浄化技術において、25平方mの空間でインフルエンザウイルスの抑制を実証したことについて“業界初”としている。

浮遊インフルエンザウイルスへの効果実証の実験内容(左)と結果(右)

 また、付着インフルエンザウイルスに対する効果についても、25立方mの空間で試験を実施。この結果、付着H1N1インフルエンザウイルスの感染力を約11時間、付着H3N2型インフルエンザウイルスの感染力を約10時間で、イオンなしの場合から99%以上抑制したという。

付着インフルエンザウイルスに対する作用抑制効果

 シャープではこの結果を受けて、“実使用に近い環境下での試験でもプラズマクラスターのウイルス作用抑制効果が確認でき、信頼性の高さがさらに裏付けられた”としている。また、今後も同技術の進化と効果の実証を進めていくという。






(正藤 慶一)

2012年9月20日 14:27