パナソニック、リサイクル素材を使った生活家電シリーズ
「資源循環商品」

~ブラウン管が冷蔵庫の断熱材に。再生樹脂の利用範囲も拡大
「資源循環商品」シリーズの4製品

 パナソニックは、家電製品の断熱材や樹脂にリサイクル素材を使用した生活家電「資源循環商品」シリーズを、2012年2月20日に各限定3,000台で発売すると発表した。

 ラインナップは、冷蔵庫「NR-F506T-X」、ドラム式洗濯乾燥機「NA-VX7100L-X」、IH式炊飯器「SR-SX101-X」、サイクロン式掃除機「MC-SS310GX-X」の4機種。冷蔵庫では、断熱材に再生グラスウールを、ほかの3機種については、再生樹脂を使用している。価格はすべてオープンプライス。

 なお機能、実勢価格については、同社の高級モデル「NR-F506T」「NA-VX7100L」「SR-SX101」「MC-SS310GX」と同じ。店頭予想価格は、冷蔵庫が24万円前後、洗濯機30万円前後、炊飯器9万円前後、掃除機8万円前後。

冷蔵庫「NR-F506T-X」ドラム式洗濯乾燥機「NA-VX7100L-X」
IH式炊飯器「SR-SX101-X」サイクロン式掃除機「MC-SS310GX-X」

ブラウン管で冷蔵庫の断熱材を作る。再生樹脂は高機能化と外観の品質を向上

 同社が目指す、“エレクトロニクスNo.1の「環境革新企業」”の実現に向けた取り組みの一つとなる家電シリーズで、廃家電から出た再生資源を原料の一部に使用している点が特徴。第一弾となる今回は、冷蔵庫、ドラム式洗濯乾燥機、IH式炊飯器、サイクロン式掃除機の上位モデルについて、4機種を投入する。

 冷蔵庫では、庫内の冷気を閉じ込める「真空断熱材」に再生資源を利用している。素材の元となるのは、地上アナログ放送の終了で大量に回収されたブラウン管で使用されていた強化ガラス。ガラスを溶かし、約4μmの微細な繊維のグラスウールに再生する。この再生グラスウールを真空断熱材に加工し、冷蔵庫の断熱材として使用しており、全断熱材のうち、約90%で再生グラスウールを利用しているという。

今回導入される冷蔵庫では、ブラウン管のガラスをリサイクルし、真空断熱材に利用している

 ドラム式洗濯乾燥機、IH式炊飯器、サイクロン式掃除機では、本体に数十%の再生樹脂を利用している。

 今回採用された再生樹脂では、従来と比べ(1)耐熱化と難燃化、(2)外観の向上、(3)強度・寿命の回復という3点を強化した点が特徴。同社によると、これまでの再生樹脂は、新規材料で作られた樹脂と比べると、耐熱性・難燃性・剛性などで、性能が劣っていたという。そのため、熱を受ける部分や頑丈さが必要とされる「高機能材」としては使えず、それ以外の「一般材」としてしか使えなかった。さらに、一般材として使う場合にも、外観に用いた場合、異物が黒点や黒い線として表れるため、外から見えない部分のみで使うなど、用途が限られていた。

 新しい再生樹脂では、耐熱化することで炊飯器の構造部分に、難燃化によって掃除機のモーターケースに取り付けられるようになった。さらに、再生材の洗浄度を高めることで、ドラム式洗濯乾燥機の台枠のような外観部品でも使えるようになった。このほか、成形技術も向上することで、掃除機の加飾部品の下地材にも採用された。

 また、強度と寿命の回復については、酸化防止剤やゴム材などを添加することにより、新規材料と同レベルの強度、寿命回復を実現したという。

 この再生材を使用することにより、新しい資源の使用を抑制し、製品1台当たりの樹脂のCO2排出量も、約6%~約14%抑えられるという。再生樹脂の利用率は、洗濯乾燥機が約26%、IH式炊飯器が約20%、サイクロン式掃除機が約17%。

従来の再生樹脂は、耐熱性や難燃性で新規素材と比べて劣っていたため、あまり配合されていなかった新製品に配合された再生樹脂は、高機能化、外観品位、成形技術などが向上した
強度と寿命回復についても、性能が向上した再生樹脂を使用することで、CO2の排出量が削減できるという

 資源循環商品シリーズでは、製品カラーを「自然のやさしい彩り」をイメージしたという「アースベージュ」で統一。操作パネルの色調も合わせたという。

 なお、従来の製品における再生素材の配合率は、ドラム式洗濯乾燥機は約5%、IH式炊飯器、サイクロン式掃除機は配合されていない。冷蔵庫の断熱材については、配合率は不明。

 

“リサイクル素材に対する消費者の評価は高い”

パナソニック 役員 環境本部 宮井真千子本部長

 パナソニック 役員 環境本部の宮井真千子本部長は、今回の資源循環商品シリーズの開発に当たって、消費者にリサイクル素材に対する調査を行なったところ、ユーザーの環境に対する意識が高いことがわかったという。

 「商品のイメージが下がったり、購買行動を妨げてしまうことを懸念をしていたが、『あまり抵抗感はない』『品質を確保してくれれば使いたい』という声が多かった。非常に消費者の環境に対する意識は高い」

 なお、資源循環商品で使用される再生グラスウールについては、滋賀県草津市のグラスウール生産実証工場で加工される。再生樹脂については、兵庫県加東市のパナソニック エコテクノロジーセンター(PETEC)に持ち込まれる。PETECでは、粉砕された樹脂を、PP(ポリプロピレン)、PS(ポリスチレン)、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)に高精度で峻別する材料再生技術を導入している。

 

ユーザーに関する調査では、再生素材に対して「抵抗感がない」など、悪いイメージが少なかった兵庫県加東市のPETECでは、粉砕された樹脂を高精度で峻別する材料再生技術を導入している

 






(正藤 慶一)

2011年12月14日 18:02