日立、幅広い温度制御で調理メニューが増えたIHクッキングヒーター

~120℃から250℃まで14段階。掃除しやすいオーブンも搭載
IHクッキングヒーター「HT-F」シリーズ。写真は最高級モデルの「HT-F20TWFS」

 日立アプライアンスは、温度設定の幅を広げたIHクッキングヒーター「HT-Fシリーズ」全21機種を、12月1日に発売する。希望小売価格は257,250円~418,950円。

 最大3.0kWの大火力で調理できる、ビルトインタイプのIHクッキングヒーター。アルミや銅の鍋でも2.6kWの高火力で調理できる「ダブルオールメタル」のコンロを2口備えている。また、鍋だけを加熱する日立独自の加熱方式「ピュアなIH加熱」も採用しており、トッププレートが鍋底以上に熱くならないため、吹きこぼれもサッと吹き取れるメリットがある。


火力は最大で3.0kW。アルミや銅の鍋でも2.6kW日立のIHクッキングヒーターは、鍋だけを加熱する「ピュアなIH加熱」が特徴。やかんの下に紙を置いても、紙は焦げなかった(正しい使用法ではないので、実際に真似しないでください)
牛乳など液体が吹きこぼれても、ふきんでサッと拭けるやかんで湯を沸かした後の天面の温度は65℃。他社の場合、200℃以上超えることもあるという

より低温の制御が可能に。「煮込みハンバーグ」や「生ざけの野菜蒸し」などレシピが増加

鍋底を設定温度にコントロールする「適温調理」機能において、120℃~140℃の低温帯での制御が可能になった

 新製品では、従来の「適温調理」機能を進化させた点が特徴。適温調理とは、鍋底を設定温度にキープするよう火力を自動調節し、手動では難しい火加減の調理を簡単にするための機能。モードは3種類用意され、初期設定温度が250℃の「ステーキ」、約200℃の「いため物」、約170℃の「卵焼き」から選択できる。

 従来製品では、適温調理での温度調節の範囲が、「ステーキ」では約190℃から約250℃、「いため物」では約170℃から約230℃、「卵焼き」では140℃から200℃までと決められていた。しかしユーザーから、ハンバーグや餃子、蒸し野菜など、120℃、130℃で調理する料理で失敗したという声が聞かれたという。

 そこで新製品では、センサーに検知範囲が広い凹面反射鏡を用いるなど改良を施し、鍋の種類や鍋底温度の検知性能を向上。火力が細かく調節できるようになり、全3モードの設定温度の範囲は、120℃から250まで広がった。さらに設定範囲も、従来の7段階から、10℃刻みの14段階に細かく調節できるようになった。

 これにより、従来ではできなかった120℃から140℃までの低温加熱が可能になり、レシピが増加。付属のレシピブックのメニューに、220℃で調理を開始し途中で120℃に変える「煮込みハンバーグ」や、最初は180℃で途中から130℃に変更する「生鮭の野菜蒸し」といったメニューが20種類追加され、全60種類が調理できるようになった。

同社のユーザー調査によると、ハンバーグや餃子、蒸し野菜など、低温で調理するメニューで失敗が多かったという120℃~140℃の温度帯も制御することで、レシピが従来の40種類から60種類に増えた
日立は鍋の種類と鍋の温度を判定する2種類のセンサーを搭載している今回は鍋の種類を判定する反射センサーに、検知範囲が広い凹面反射鏡を採用したHT-F20Tシリーズの内部パーツ
適温調理の制御方法。食材投入後は3段階に分けて温度を制御する適温調理なら火力が制御できるため、手動調理よりも焦げ付きを抑え、かつ省エネ効果もあるという
発表会では「生鮭の野菜蒸し」が実演調理されたできあがり。試食すると、野菜と鮭に適度に火が通っており、食材の甘みが感じられた。非常においしいホワイトソースのような食材も、焦げ付かず調理できるという

 また、温度検知性能が向上したことにより、「揚げ物」メニューで調理できる鍋が増加。従来は天ぷら鍋しか使用出来なかったが、財団法人製品安全協会が認可する「SG-IH」「SG CH-IH」マーク付きの鍋も使えるようになり、揚げ物の調理がより手軽に楽しめるという。

 さらに、常に適温で調理するように火力を調節するため、省エネ効果も期待できるという。

揚げ物メニューでは、財団法人製品安全協会が認可する「SG-IH」「SG CH-IH」マーク付きの鍋もつかえるようになった動作条件
 

“業界初”ヒーターが跳ね上がって掃除しやすいオーブン

オーブンは庫内の掃除がしやすいよう、下ヒーターが跳ね上がる構造とした

 ビルトインオーブンでは、ユーザーの“オーブン庫内の掃除がしにくい”という声に応え、下ヒーターを跳ね上げて掃除をしやすくする「下ヒーターはね上げ構造[そこふけ~る]」仕様を、業界で初めて採用した。庫内が高温の場合は、正面パネルの「高温注意ランプ」が点灯し、ドアを開けた際にも音声で注意する。なおオーブンは、従来に引き続いて、過熱水蒸気で食品の余分な脂や塩分を落とす「過熱水蒸気ビッグオーブン」仕様となる。

 節電機能としては、最大5.8kWの総消費電力を4.8kW、または4.0kWに変更できる「節電モード」も備える。


実際に掃除をしているところ。奥まで手が届いている従来モデルはヒーターがあるため、手が入りにくかったユーザーからも「庫内が掃除しにくい」という不満が上がってきていたという
オーブンは過熱水蒸気での調理も可能揚げ物を温めたところ。網の下には、余分な油が落ちているそう消費電力の上限を抑える「節電モード」も用意されている

震災で茨城の工場が被災も、迅速な復旧でシェアは大幅アップ

日立アプライアンス 常務取締役 家電事業部 石井吉太郎事業部長

 日立アプライアンスの常務取締役 家電事業部 の石井吉太郎事業部長は、発表会の冒頭にて、IHクッキングヒーターを含むオール電化製品は、従来と変わりなく発売していくことを明らかにした。

 「オール電化の販売が落ち込んでいるとの報道があったが、予定通り発売させていただく。震災の影響による節電で、一時的に落ち込みはあったのは事実だが、私たちは決してオール電化の大きな流れは止まることはないと思っている」

 その上で新製品については、「快適な調理が提供できるという(IHクッキングヒーターの)魅力、お客様のオール電化に対する安心感、省エネ性は消えることはない。その点をいっそう今日強化した商品となる」と自信を見せた。

オール電化市場は、震災後はリーマンショック時よりも需要が落ちているしかし、下期は回復基調にあるという

 日立のIHクッキングヒーターのシェアについて、石井事業部長は「トップメーカーさんには及ばない」としながらも、2009年度は22.7%、2010年度は24.4%と、好調に推移していることを明らかにした。2011年度については、それを4ポイントほど上回る28.2%になるという。シェアが伸びた理由としては、東日本大震災のあと、IHクッキングヒーターに注文が殺到した時期があったことが大きいという。

 「震災による部品不足で、各メーカーとも生産が止まっていたが、当社の多賀工場(茨城県日立市)も被災していた。家電メーカーの中で被災したのは我が工場のみで、一番不利な状況にあったが、工場を上げて必死の復旧を行ない、3月22日に全面復旧。この時、IHクッキングヒーターの生産も復旧した。マイコンやコンデンサーなど電子部品の調達は難しかったが、今ある備品で作るよう設計変更をした結果、4月には過去最大の生産を記録し、シェアが大幅に伸ばせた。これが効いている」

「HT-F」シリーズのラインナップ






(正藤 慶一)

2011年11月2日 16:00