タニタ、“メタボ社員ゼロ”へ向けた健康プロジェクト

~計測を怠ると1万歩のペナルティ

 タニタは、メタボリックシンドロームの社員をゼロに減らすことを目標にした健康プロジェクトを、本格的に開始したことを発表した。プロジェクトは、タニタの福利厚生の一環として実施され、タニタ全社の社員300人が対象となる。

 同社は、2009年1月から社員の健康管理に力を入れた健康プロジェクトを実施してきた。プロジェクトでは、社員の体組成を計測し、メタボと判定された社員は個別に指導。また、2カ月間でどれだけ歩いたかを競う社内ウォーキングイベント「歩数イベント」を開催した。だが、個別指導後にリバウンドしたメタボ社員がいたことや、定期的に歩数を計測する社員の割合が、歩数イベントの期間外だと約23%しかいなかったことから、健康プロジェクトの強化に至った。

 具体的には、体組成の計測を週1回に義務化し、これまで年1回だった歩数イベントを3回に増やした。さらに、計測に用いる機器を一新。非接触ICカード技術「FeliCa(フェリカ)」を搭載した歩数計「FB-730」と、FeliCaの読み込みと書き込み機能を備えた業務用の体組成計「MC-980A」を採用し、計測したデータはウェブの健康管理サービス「からだカルテ」に反映する。

業務用の体組成計「MC-980A」歩数計「FB-730」や体組成計「MC-980A」とからだカルテを組み合わせた運用イメージ

 一般的な会社のメタボ指導は、40~74歳を対象として、胴囲と血液検査によって判定されるが、同社の健康プロジェクトでは、新入社員や20代、30代の社員も対象に含まれる点が特徴。判定には、社員のプライバシーにある程度配慮して、体脂肪率と内臓脂肪レベルのデータを基とした独自の基準を設けた。

 メタボ判定を受けた社員は、管理栄養士や健康運動指導士から個別指導を受ける。一方メタボと判定されなかった場合でも、健康を継続的に維持できるよう、毎週1回、体組成を計測することが義務化される。もしこれを守らなかった場合は、1万歩プラスして歩くという“ペナルティ”が課される。

 なお、同社で現在メタボ指導の対象となっている社員の人数は約30名で、全社員の約1割を占める。そのうち30歳前後の社員も数人含まれるという。

メタボの個別指導に用いる体重計や血圧計、歩数計、尿糖計など睡眠計スリープスキャン SL-501。メタボと判定された社員は、睡眠時間などからメンタル面もサポートを受けるメタボ社員への特別指導プログラムには、集団健康セミナーや個別指導が用意される。なお、地方勤務者にはテレビ電話で指導するという
個別指導内で用いるデジタル血圧計 BP-300携帯型デジタル尿糖計 UG-201N3Dセンサー搭載歩数計 FB-723
毎日の歩数を転送すると、世界の名所をバーチャルウォーキングでき、モチベーションの維持に繋がるという

 歩数イベントは、本年度は春、秋、冬の3回開催。歩行という有酸素運動によって、基礎代謝量と筋肉量を上げ、体重と体脂肪率を落とすことが狙いという。

 歩数イベントの期間中、日々の歩数や体組成は、歩数計「FB-730」と体組成計「MC-980A」を通してからだカルテに反映され、グラフ化される。

 会場では、実際に社員が測定する様子が公開された。歩数計「FB-730」はID代わりともなっており、体組成計「MC-980A」にFB-730をかざすと、自動的にデータベースから個人の身長や体重、年齢を読み込む。そして、MC-980Aに乗り、体重や体組成を計測する。およそ30秒ほどで計測が終了すると、ピーッという音がして、無線LAN経由でデータがからだカルテに送信される。記録はウェブを通じて共有され、社内のランキングも確認できる。また、からだカルテはパソコンと携帯の両方からアクセスが可能となっているという。

歩数計「FB-730」はID代わりになっているFB-730をかざすと、データベースから個人の身長や体重、年齢を読み込んで測定を始める計測にかかる時間はおよそ30秒ほど
測定データは自動的にカラダカルテに送信される体重、体脂肪率、歩数が確認できる。なかには、歩数イベントの期間中に2カ月で約180万歩、1日平均約3万歩歩くツワモノもいるとか

 タニタ ヘルスケアネットサービス推進室 南修二氏は計測の義務化について、「計測を怠ると1万歩のペナルティが課されるのは若干ネガティブだが、まずは計測を習慣付けることが大事。このルールで、今のところ成果も出ている」と話した。

 また、タニタ 代表取締役社長 谷田千里氏は「社長職に就いて3年間、生産性の向上に努めてさまざまな社内改革を行なってきた。今回の健康プロジェクトや食堂改装もその一環。“健康総合企業”として、社員の健康は重要なファクターだ」と述べ、社内メタボゼロへの健康プロジェクトの推進を宣言した。

 同社ではさらに、社内プロジェクトで得られたメタボ指導や歩数イベントのノウハウを蓄積し、法人向けの健康管理ソリューションのパッケージとして、提案していくとしている。

タニタ ヘルスケアネットサービス推進室 南修二氏タニタ 代表取締役社長 谷田千里氏

レシピ本が累計210万部のベストセラーとなった社員食堂がリニューアル

谷田社長自ら配膳をして、食堂のリニューアルをアピール

 メタボ社員ゼロを目指すうえで重要なのが、食事だ。同社の社員食堂で提供しているメニューをまとめたレシピ本「体脂肪計タニタの社員食堂」(大和書房刊)が、2010年1月の発売以来、続編も含めて210万部のベストセラーとなっている。

 今回は、同社の食堂がリニューアルオープンしたことにあわせて、集まったメディア向けに「夏バテ予防ヘルシー定食」がふるまわれた。

 ごはんは胚芽米で、自分で食べられる分量だけセルフサービスでよそう。この時、炊飯器の横には計量計が用意され、自分が盛り付けたごはんの重量を測れる。

 タニタの食堂レシピは、1食分がおよそ500kcal前後をめどに作られており、そのうちごはんの分量は100g、160kcal程度が基準。だが、記者が普段どおりの分量で茶碗にごはんをよそい、計量計に乗せたところ、ごはんの重量は231gと大幅に基準をオーバーしてしまった。

ご飯は自分で食べられる分量だけ盛り付けるシステムだいつもどおり盛り付けたら、ごはんの重量は231gと大幅にオーバーしてしまった「夏バテ予防ヘルシー定食」

 ごはんは歯ごたえのある胚芽米。味噌汁は薄味だが昆布のだしが効いている。メインの肉は、豆板醤がピリリと辛い、韓国風の味付けだ。ピーマンとカリフラワーのサラダやきゅうりは、いずれも薄味だがさわやかな味わいだった。

ごはんは歯ごたえのある胚芽米だじゃがいもの沈んでいる味噌汁は意外と食べ応えがあったメインの韓国風豚肉。豆板醤の味付けで、ピリリと辛い。肉は噛みごたえがあって、コリコリしている
ピーマンとカリフラワーをあえたサラダ。ツナが入っていて、栄養バランスの良さも感じられた。普段サラダを食べる際はドレッシングを残してしまうのだが、このさっぱりとした味付けが気に入って、皿に残った汁まで飲み干してしまった中華きゅうり。しょうがのさっぱりさわやかな味付けが効いている。食感はシャキシャキとしていて、瑞々しい

 シメのデザートは、タニタ食堂が森永乳業とコラボレーションしたバニラプリンだ。低脂肪でカロリーを100kcalに抑えているという。なお、この昼食メニューは日替わりで、一律570円で提供されているという。

デザートは、タニタ食堂が森永乳業とコラボレーションした低脂肪のバニラプリンパッケージを開けると、タニタの栄養士、西澤氏のコメントが掲載されていたバニラプリン。細かなバニラビーンズが入っていて、底にはさっぱりした味わいのオレンジソースが入っている

 ひとおおり食べてみると、どの皿も汁気をたっぷり含んでおり、噛み応えがあるため、見た目よりもボリュームがあるように感じられた。1皿1皿、食感や味付けに変化があり、食後の満足感、満腹感は十分。はじめにごはんをよそった時には、ごはんが100gでは少ないのではないかと不安だったが、これほど副菜にボリュームがあるなら、納得できる。炭水化物の摂り過ぎを防ぐ、バランスの良い献立になっていた。

タニタ総務部 荻野奈々子氏

 タニタ総務部の荻野奈々子氏は、夏バテ予防ヘルシー定食のメニューについて「メインの豚肉はビタミンB1が豊富で、夏バテ予防に効く。きゅうりなどの夏野菜は、カラダを涼しく冷やしてくれる。全体的には、油と塩分を控えめにしているが、豆板醤などの辛味で味を強くした。ちなみに、味噌汁の中にはダシがらの昆布を細かく刻んで入れた。ゴミを減らして、食物繊維もとれる」と工夫を説明した。







(小林 樹)

2011年7月25日 00:00