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扇風機の概念を変えた「GreenFan Japan」の製造過程をすべて見た!
(2015/4/24 19:15)
自然界の風を再現する扇風機として好評の、バルミューダ「GreenFan」。これまで海外で生産してきたが、今年からは国内の工場に変更し、名前も改めた。そんなバルミューダ「GreenFan Japan」の製造現場を、今回、隅から隅まで見てきた。モノ作り日本の、精確さとスピードを感じさせる工場内。その詳細をレポートする。
バルミューダから委託され「GreenFan Japan」を作っているのが、山形県の米沢市の2つの工場。主に金型の設計/制作から部品加工までを担っているのが、コアタックの工場。そして主に組み立て製造(アッセンブリー)を担当しているのが、同じ米沢市内にあるサクサテクノの工場だ。いずれもサクサという同じグループの企業であり、互いが密に連携することで、ジャストインタイムで製品を完成させられるという。
最初に行ったのが、最上川のほど近くにある、金型と部品の製造を行なうコアタックの工場。製品の完成度を左右する金型は、大きく「設計」と「機械加工」という、2つの工程で作られていく。その機械加工の中の、放電加工という工程を間近に見せてもらった。これは、電極で金属を溶かし、金型の形にしていくもの。
こうして形作られた金型のパーツを、磨いたり調整したりする。1つの金型を作るのには150〜300くらいの部品が必要になるという。それらを組み上げて、やっと1つの部品を作るための金型が完成するのだ。
ちなみに「GreenFan Japan」は、プラスチック部品だけで70前後のパーツがある。それら一つ一つに金型が必要となるのだから、気が遠くなるような話だ。
同社の代表取締役社長、遠藤氏によれば「2014年のモデルでは、中国で作られた型を修正しながら使っていたこともあって、最初は3割くらいの部品が使えるものではありませんでした。でも今は日本で作った金型を使い、(中国で作った金型を)そのまま使うものもメンテナンスしているので、現在は98%が使える部品になっている」。歩留まりが劇的に改善されているのだ。さらに「バルミューダは、とても高い完成度を求めてきます。そのお陰で、当社の技術力も高まっている」と続けた。
「2014年に、GreenFanの金型を中国から持ってきました。それをコアタックでゼロから作るくらいに直してもらったんです。迅速な対応によって、期間がない中でも扇風機の需要期を間に合わせてくれ、機会損失にもならずにすみました」と、バルミューダの広報、阿部洋氏が言う。
さらに、バルミューダが求める生産台数を作るのに、中国の工場では4年かかったという。一方でコアタックスとサクサテクノの両工場では、同じ台数を作れるようになるまでに1.5カ月、さらに新製品「GreenFan Japan」では、3日めで要求台数に達する製造ラインを構築できたという。
徹底した効率化が図られた組み立て工程
次に向かったのが、基板の製造とアッセンブリーを担うサクサテクノの工場。同じ米沢市内にあり、車で移動すれば10分程度の距離の場所にある。
「GreenFan Japan」の組み立ては、2つのラインで行なっている。1つのラインに15名ほどが組み立て作業に取り組む。2つのラインの間は、係の人が必要な部品を配っていく。
手作業で進められていく組み立てラインを見ると、作業員の手際の良さや無駄のない動き、そしてスピードに驚かされる。1つのラインで1日での製品数は約400台超。2ラインで1000台弱が次々に作られていく。
また、正確かつ多くの製品を組み立てられるように、さまざまな工夫がされているのも印象的だった。例えば、間違えやすく気が付きにくいネジの装着などは、部品を配る際に1台に必要なネジの本数に揃えて置かれていく。モーターから異音が出ていないか聴診器でチェックする係の後ろの通路には「静かに」という看板が立てられている(このエリアは立ち入り禁止にすることも検討中だとか)。
阿部氏が、まだ工場の選定中だった時の話をしてくれた。バルミューダの社長がサクサテクノを見学に訪れた際、組み立てていく作業員のキビキビとした動きを見て「ここにお願いしたい」と即決したという。
最後に阿部氏が言うには、「良い製品を消費者に届けたい、商品を届けることでユーザーのライフスタイルを変えたい。こうした思いを共有できる所に、製造の委託をお願いしたいと思っていました。今お願いしているコアタックスとサクサテクノとは、そうした思いを共有できています。だからこそ自信を持ってGreenFan Japanを、お勧めできるのです」
これまでの中国生産から国内にシフトしたGreenFan。今回その金型製作やメンテナンス、部品製造、そして組み立てという現場を巡り、日本のモノ作りに対するこだわりの強さを見た気がした。