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【エコプロダクツ2014】インドの地下水を安全な飲料水にする光触媒技術など

 環境に優しい持続可能な社会の実現を考える、日本最大級の環境展示会「エコプロダクツ 2014」が、12月11日~13日の3日間、東京ビックサイトで開催される。今年で15回目となる同展示会のテーマは「見つけよう! 未来をかえるエコの知恵」。747社の企業・団体が最新のエコ関連製品を展示する。

 入場は無料(登録制)で、会場には社会見学などで訪れる学生も多く、小中学生でも楽しめる展示が並ぶ。家電Watchでは、家電メーカーの取り組みを紹介する。

パナソニック、インドの地下水を安全な飲料水にする光触媒技術

 パナソニックのブースでは、同社がインドで取り組んでいる光触媒水浄化技術を展示していた。インドは、水道のインフラが整っていない地域が多く、人口の約7割が水道以外の水を飲用に使っている。飲用に使われているのは、地下水がほとんどだが、近年、有害物質による地下水の汚染が社会問題化しているという。

インドの地下水は汚染問題が深刻だという
インドは世界的に見ても水道インフラが遅れていて、地下水に頼っている
インド第四の都市、コルタカの地下水を調査したところ、ヒ素やクロムがかなりの量検出された
スマートウォータ研究所 光化学デバイス研究課 課長 博士(理学) 猪野 大輔氏

 「地下水の汚染問題は工業排水などが原因のものが多く、昔はもっとキレイだったという。ヒ素や六価クロムなどを含む水を飲み続けると、ガンになる危険性が高まり、ある家族では母親以外の全員がガンで亡くなったという例もある。現状、インドを含む途上国の浄水には、RO膜ろ過技術が使われているが、同技術は、10tの水を浄化すると、5tの浄化水と、5tの汚染水が出てしまう。汚染水は、貯蔵する必要があるが、その場所やコストが問題視されている」(パナソニック スマートウォータ研究所 光化学デバイス研究課 課長 博士(理学) 猪野 大輔氏)

 RO膜ろ過技術に変わる浄化技術として注目されているのが、光触媒技術だという。光触媒技術は、浄化の際に汚染水が出ない、薬剤を使わないなどの利点があるが、現状は光触媒を固定して使うのが一般的で、処理に時間がかかるという欠点がある。

RO膜ろ過技術では、浄化の際、浄化水と同じ量の汚染水が出る
光触媒技術は、光触媒に紫外線を当てることで、有害物質を無毒化する活性酸素を生成し、水を浄化する
現状のシステムは、光触媒を固定しているため、浄化に時間がかかる

 「光触媒はろ過ではなく、化学処理。光触媒に紫外線を当てることで、有害物質を無毒化する活性酸素を生成し、水を浄化する。ただし、時間がかかるという欠点があった。我々はこの問題を解決する手段として光触媒を水中に流動させる技術を開発した。水中で触媒反応させることで、処理にかかる時間は従来の1/100まで短縮できた」

 パナソニックが開発した光触媒浄化技術では、光触媒粒子を水中に分散させて用いることで、反応速度を上昇させたもので、大量の水を短時間で処理できるという。製品の開発はインドで行なっている。

 「インドの地下水は、日本の水とは全く違うので、現地で開発することが重要。2018年を実用化のメドとして更に開発を進める。インドでこの技術が成功すれば、グローバル展開も可能だと考える」

 現段階では、光触媒に当てる光を蛍光灯としているが、今後太陽光や太陽光発電システムをうまく組み合わせたシステムを検討していくという。

パナソニックの光触媒浄化技術システムの仕組み
従来はこのようなメッシュ状の布などに光触媒を固定させていた
新技術では、水流に光触媒を分散させている
会場には模型も用意されていた
右が光触媒が分散した光反応槽。左が光触媒を回収する沈殿分離槽
汚染された水(右)がきれいになる(左)

 そのほか、パナソニックのブースでは、センサーで検知して消費電力などを制御する「エコナビ」を搭載した家電製品、高効率の太陽光発電パネル「HIT」、同社の様々なソリューションを組み合わせることで、CO2を大幅に削減できるとしたコンビニエンスストアの展示などを行なっていた。

エコナビ技術を搭載した炊飯器
エアコンや冷蔵庫にもエコナビを搭載している
高効率の「HIT」も展示されていた
コンビニエンスストアをブースに再現
商品陳列も行なっていた
パナソニックの技術を集結することで約30%の省エネが可能

三菱電機、川の流れを利用した水力発電装置「BESTAQUA」

 三菱電機のブースでは、川の流れを利用した水力発電装置「BESTAQUA」を展示していた。川の流れで水車を回し、電気を作る装置。水の落差や水量が少なくても24時間、365日発電可能で、単純な構造のためゴミの影響を受けにくい点が特徴。

水力発電装置「BESTAQUA」
中には水車が設けられている
シンプルな構造で水の落差や水量が少なくても設置可能

 最小水量30L/秒、最小落差40cmから発電可能なため、水路や小さな河川でも設置できる。単純な構造でありながら、出力を安定させる装置と接続することで、安定した電力を供給することが可能だという。

 同装置は、現在全国9カ所で実際に使っており、発電された電力は災害用に蓄電したり、電気自動車の充電などに用いられているという。

東芝、消しゴムサイズで心拍、脈拍、指の温度などを管理する「Silmee」

 東芝のブースでは、心拍、脈拍、皮膚の温度などを管理する「Silmee」が展示されていた。低電力消費部品採用により、1日の連続使用が可能な点が特徴。本体の大きさは長さ64mm、重さ14.6g。スマートフォンやタブレットなどの連携機能も搭載しており、リアルタイムで連続的なデータを得ることができる。

 Silmeeは、医療や研究分野用に開発されたもので、市販する予定は現在のところない。

心拍、脈拍、皮膚の温度などを管理する「Silmee」
装着イメージ。軽量で小さい
24時間の連続使用が可能

 そのほか、東芝ブースでは半導体製造に使われるクリーンルームで作った野菜なども展示。無農薬栽培が可能で、水を徹底的にコントロールすることで、おいしさも長持ちするという。

クリーンルームで作った野菜
無農薬栽培が可能で、水を徹底的にコントロールすることで、おいしさも長持ちするという

阿部 夏子