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孫正義氏、自然エネルギー財団設立イベントで基調講演

〜巨大送電網で、日本とアジアに平和をと述べる
自然エネルギー財団のロゴ

 ソフトバンク代表取締役社長の孫正義氏は、9月12日に開催された「自然エネルギー財団」の設立イベントで基調講演を行なった。この財団は、東日本大震災後に、孫氏が太陽光発電などの自然エネルギーの普及を目指して設立したもの。

 「エネルギーのパラダイムシフトへ」という表題の、この講演は、「自然エネルギー財団 設立者会長」という肩書きで行なわれた。

講演は自然エネルギー財団 設立者会長」という肩書きで行なわれた 孫正義氏

 孫氏は、東日本大震災という不幸な経験は、原発依存からの脱却が必要であるということを知らしめたとし、2030年には自然エネルギー中心の時代が来る、また、自然エネルギーの発展のためにも、発電と送電の分離は必須であるとした。自然エネルギーを生かすためには、スーパーグリッド(直流高圧送電網)が必須であるとして、日本海を中心に、発電エリアを結ぶ「ジャパンスーパーグリッド構想」を語った。さらに、ユーラシア大陸や朝鮮半島と接続する「東アジアスーパーグリッド構想」、インドシナからインド亜大陸まで覆う「アジアスーパーグリッド構想」の構想まで語られた。

 孫氏は、「過去100年以上、人類はエネルギーを求めて戦争を繰り返してきた」とし、スーパーグリッドでアジアがつながることが、子供と母親、日本とアジアの安全を生むとし、「Energy for Peace in Asia」という文字を掲示した。

 なお、孫氏は講演の中で「私のことを政商という人もいるが、私は金儲けのためにやっているわけではない。日本では議論ばかりしていてチャレンジが行なわれないので、ちゃんとできるという形を見せるためにやっているにすぎない。流れができしだい、通信という本業に専念したい」と語った。そして、「最後に、福島および被災地の1日も早い復興をお祈りいたします」という言葉で講演を締めくくった。

 講演内容の詳細はプレゼンテーションの写真とキャプションの形で紹介する。

1973年のオイルショックにより、石油に依存しないという目標ができた 21世紀にかけて、石油への依存率は低下し、パラダイムシフトは成功した
一方でエネルギーの自給率は下がり続けている。これが次の課題となる 発電量が増加するとGDP(国民総生産)が増える
総括原価方式と地域独占は、インフラ整備という面では貢献した しかし、2つの制度は弊害の方が多くなっており、見直しが必要だ
エネルギー政策のもう1つのテーマは二酸化炭素の減少であり、これは原発を増やすことで実現される計画だった しかし、東日本大震災と、それに伴う原発事故で、この方向へは進めなくなった。第2のパラダイムシフトが必要である
エネルギー政策は、長期の展望が必要な分野であり、ここでは2030年をメドとして考えたている 野田総理は、原発の新設がほぼ不可能であることと、寿命の来た原発は廃炉にすると明言した。この方針は、ほとんどの政治家が考えていることだろう
実際に廃炉になった原子炉が、製造から何年経った時点で廃炉になったかをみると、「22年」が平均となる 日本では原子炉の寿命について30〜40年という議論があるが、仮に40年としてみたところで、2030年時点で40年以内の原子炉は16基しかない
別の方向から見てみよう。実際に起きた地震の震源地と世界の原発所在地を同じ地図に記してみると図のようになる。つまり、海外では原発は地震の少ない地域に立地しているが、日本は全体が地震の巣である 2030年時点で40年を経過していない16基の原発のうち、12基は地震のリスクがある場所に立地している
以上のことから、全部の原発を廃炉にすることは難しいとしても「原発のミニマム化」は2030年にむけて必須となる 次にエネルギーコストを見てみよう。原油価格は上昇しており、今後はさらに上昇のカーブがきつくなるだろう
さきほど述べた二酸化炭素の削減もあり、「火力発電の依存度低下」も2030年にむけて必須となる 日本の自然エネルギーが停滞してしまったのは、それを支える法律の枠組みがなかったからだ。ようやく全量買い取り制度が実現したが、すでに世界の多くの国で導入されている
「自然エネルギーの本格普及」も2030年にむけて必須となる この3つが、2030年に向けたテーマとなる。これにより2030年は「自然エネルギー中心の時代」になる
改めて、自然エネルギーの時代を招くための提言を行ないたい。まず「自然エネルギーの普及拡大」が必要だ ポイントは「買取価格/買取期間」、「送電網への接続義務」、「用地の規制緩和」の3つだ
現在、太陽光発電は高価だと言われているが、今後は化石燃料が上がるため、実はもっとも廉価なエネルギーになる 上記プレゼンテーションの出典
2030年には、自然エネルギーが過半数、だいたい6割ぐらいは占めなければならない 自然エネルギーは国内で生産されるため、エネルギー自給率も向上する
「電力取引市場の活性化」も必須だ 電力全体の2/3は自由化された
しかし、新規参入者は全体の2.8%しかない 電力取引所の取引量で見ると0.4%しかない
末端のユーザーから見ても、地域独占で競争がないため、電力会社を乗り換えることもできない では、どうして自由化が進まないか。まず、託送量が高い
どうしてかというと、既存の電力会社は発電と送電を両方持っているため、新規に参入した発電会社は競争相手となる。良い条件が出るわけがない 対策としては、発電/送電の分離と、託送量の適正化が必要だ
なお、発電と送電を分離している国は、これだけある たとえば、スウェーデンのような市場にしなければならない
3つめの提言は「送電インフラの強化」だ 風力発電を例にとると、風量の変化により、発電量が大きく変動する
太陽光では、天候の差に加え、夜間は発電できない これらを理由に、北海道電力では新規の風力発電が接続できない状態になっている
また、全国では周波数が50Hzと60Hzに分かれているため、一方で電力が足りなくても、もう一方から送れる量に制限があり、持っている能力を生かしきることができない 日本全国でみれば、太陽光、風力、地熱とも、これだけのポテンシャルがある。しかし、現状ではこれを生かすことができない
では、解決策は何か、それは(周波数に関係のない)直流による高圧送電だ。これを「スーパーグリッド」と言う たとえば、日本海側で大きな発電所のある地域を海底ケーブルで接続する。周波数の違いを乗り越えて、送電が可能になる
さらに、国外に広げる。「東アジアスーパーグリッド構想」だ もっと広く、アジア全体に広げてしまうこともできる。「アジアスーパーグリッド構想」だ
ここまで行くと、安い電力をどんどん持ってくることができる 自然エネルギーの出力の波を、スーパーグリッドがスムージングできる
これは絵空事ではない。たとえば中国では「超高圧送電網計画」が進んでいる また、ヨーロッパでは砂漠で発電した電気を送る「デザーテッック構想」がある
ヨーロッパでは、国を越えて電気を売り買いすることが当たり前になっている 「こういう話をすると、実現性を危ぶむ人がいるが、私の本業である通信の世界では、海底ケーブルはたくさん使われている。海の魚にとってみれば、海底ケーブルの中身が情報であろうが、電気であろうが差はない(笑)」
「ジャパンスーパーグリッド」は、国家のエネルギー戦略の柱になる構想だ これらを踏まえて、もう一度「エネルギーのパラダイムシフト」を起こさなければならない
2002年に制定された「エネルギー政策基本法」の精神は、いまでも健在だ しかし、東日本大震災を受けて、いまこそ新しいエネルギー基本計画を策定しなければならない
振り返ってみれば、20世紀は戦争の時代であり、それはエネルギーを求める闘争だった 「Energy for Peace in Asia」。いつでもどこでも安全で潤沢なエネルギーが得られることで平和も得られる
孫氏は、「スーパーグリッドでアジアがつながることが、子供と母親、日本とアジアの安全を生むと確信している」と語った 講演後、スクリーンには「Paradime Shift in Energy」の文字が掲示された





(伊達 浩二)

2011年9月12日 16:20