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藤本健のソーラーリポート
再生エネ法成立でソーラー市場が一気に拡大

〜2020年までに発電コストは商用電力以下に

 「藤本健のソーラーリポート」は、再生可能エネルギーとして注目されている太陽光発電・ソーラーエネルギーの業界動向を、“ソーラーマニア”のライター・藤本健氏が追っていく連載記事です(編集部)


会見に出席した、JPEAの代表理事、シャープ代表取締役社長の片山幹雄氏

 8月26日、参議院本会議で「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法(以下、再生エネ法)案」が可決、成立したことを受け、同日、一般社団法人太陽光発電協会(以下JPEA)が、初の記者会見を実施した。記者会見では、JPEAの代表理事であり、シャープの代表取締役社長である片山幹雄氏が、再生エネ法の意義や、太陽光発電の発電コスト、新たな点検制度など、今後の業界としての取り組みについて語った。


企業向けの法律の成立をJPEAが歓迎する理由は「日本の特殊なマーケット事情」

会場に展示された加盟各社のソーラーパネル

 JPEAは1987年に設立された、太陽光発電における業界団体。2009年に一般社団法人となり、2011年7月現在で120の企業や団体が所属している。その内訳は、セル・モジュールメーカーはもちろんのこと、素材メーカー、施工会社まで幅広い。所属企業・団体の数は、この1年で急拡大しているという。

 また国内企業に限らず中国をはじめとする海外の企業も参加し、事務局を含めすべて民間で運営している。住宅用太陽光発電の補助金の執行も、JPEA内の組織である「太陽光発電普及拡大センター(J-PEC)」で行なっている。

 基本的には住宅用の太陽光発電の普及促進に力を入れているJPEAだが、再生エネ法の成立を歓迎している。

 今回成立した再生エネ法は“全量買取法”などともいわれるとおり、太陽光、風力などの自然エネルギーで発電した電力を、電力会社が全量買取するための法律。ただし、すでに余剰電力を買い取る制度ができあがっている住宅用太陽光発電は除外されており、一般家庭の太陽電池ユーザーにとって変化はない。

 それでもJPEAが力を入れる背景には、日本の特殊なマーケット事情を解消するという狙いがあるようだ。

 これまで日本政府は、住宅用太陽光発電の普及に力を入れてきたという経緯もあり、2020年には2005年時の20倍となる2,800万kWの普及という目標を掲げてきた。しかし、当初は世界一の太陽光発電の導入量を誇っていた日本も、2004年にドイツに抜かれ、現在は5倍近く、導入量に差をつけられてしまっている。さらに2008年にはスペインにも抜かれ、今年にはイタリアにも抜かれそうにっているのが現状だ。

日本政府が掲げる、太陽光発電の導入目標。2020年には2005年時の20倍となる2,800万kWの普及を目指している しかし、類型導入量では、ドイツ・スペインに抜かれ、イタリアにも抜かれようとしている

産業用太陽光発電に力を入れなかった日本も、「再生エネ法」でついに本格化

世界の太陽光発電の用途別構成比。日本は産業用の割合が非常に少ない

 JPEAでは、日本がこのようになってしまったのは、日本が住宅用のみに重きを置き、産業用に力を入れてこなかったためと見ている。

 実際に、昨年度の住宅用と産業用の比率を、日本、ドイツ、米国で比較すると、その違いは歴然。産業用の比率が、ドイツが70%、アメリカが65%に対し、日本はわずか19%。日本は世界の中で特異な市場となっているともいえるわけだ。

 特にヨーロッパではFIT(フィードインタリフ)という全量買取制度(再生可能エネルギーで発電した電力を、電力会社がすべて買い取る制度)を導入した結果、事業として太陽光発電を行なう企業が多数登場。メガソーラー発電所が数多く誕生し、この制度によってドイツは太陽光発電導入量で世界トップへと上り詰めていったのである。

 今回成立した再生エネ法で、日本国内でもようやく、企業が太陽光で発電した電力の全量買取制度がスタートする。まさに産業用での太陽光発電を後押しする法律なのだ。

 買取単価については今後第三者機関が決定していくことになるが、一度設定された価格は20年間固定となる。片山代表理事は「再生エネ法により、これまで特異だった日本のマーケットが是正され、その市場規模は早いうちに5〜10倍になるだろう」と話す。またこれに伴い、雇用も増え「政府の見立ては、2010年に5万人いるという労働者数を、2020年には45万人にするようだが、かなり前倒しになる」(片山氏)という見方も出てきているのだ。

“太陽光発電の発電コスト「1kWh当たり49円」が誤解を生んでいる”

太陽光発電のコスト低減に向けた取り組み

 ここで片山氏は「世間で太陽光発電が誤解されていることに対して説明をしたい」として、ディスプレイにNEDOの「PV2030+」という、太陽光発電に関するコストに関する資料を表示した。

 左の写真は、国、企業の総力で太陽光発電の発電コストを下げていくという取り組みを示すものだが、注目すべき点は、この図では2010〜2020年の間に太陽光発電による1kWhあたりの発電コストを、家庭用電力料金並の23円/kWhにする「グリッドパリティ」(太陽光発電など再生可能エネルギーの発電コストが、既存の商用電力と同じ、またはそれより安くなること)を実現させるとしていることだ。

 片山代表理事は、太陽光発電の1kWh当たりの発電コストについて、「最近の報道などで『太陽光発電の発電コストは49円/kWhで非常に高い』とされているが、もっと安くなっている」と、49円という数字が誤解を生んでいることを指摘した。

 片山代表理事は、国家戦略本部の「エネルギー・環境会議」で使われた資料を示し、発電1kWhあたりのコストが37〜46円とするこちらの資料の方が、より実態に近いとした。

 そもそも49円/kWhという数字は、経済産業省・資源エネルギー庁の「日本のエネルギー2010」の「各電源の発電単価試算」から来ている。その49円をどのように計算したかというと、「発電コスト=導入金額÷20年間の積算発電量」という計算式になる。つまり、太陽光発電の耐久年数を20年としているので、これが30年持つ、40年持つと考えれば、大きく変わってくることになる。

国家戦略本部の「エネルギー・環境会議」で使われた資料では、発電1kWhあたりのコストは37〜46円という 49円/kWhという数字は、経済産業省・資源エネルギー庁の「日本のエネルギー2010」の「各電源の発電単価試算」が基準となっている

 さらに、その導入金額は、2005年の平均導入金額である1kWあたり66.1万円と設定している。その後シリコン不足で2006〜2008年には導入金額が上昇したこともあったが、2010年、2011年とかなり下がっているため、実態とは異なっている。おそらく今年は、1kWあたり50万円を切る数値になってくるのではないだろうか。

 しかも、先ほどの49円の試算は、導入金額を20年間、年利4%の全額ローン支払いで計算をしている。水力や原子力などほかの発電での計算がどうなっているかまでは調べ切れなかったが、もし一括払いであるとして計算すれば、発電コストは半額近くなり、すでにグリッドパリティが実現できているということになる。片山理事も「(太陽光発電の)グリッドパリティは数年で達成できる見通しだ」と話している。

 もちろん、住宅用と産業用では太陽光発電のシステム価格も違ってくるが、これまでやや割高ではあった産業用も、価格は右肩下がりで下がってきている。両者を比べると、産業用が高めであるのは、基礎工事などが発生するためだが、価格の下落は今後も続く見通しであり、経済産業省の見通しでは2015年には2010年の半分程度までになる、としている。

太陽光発電システムの価格推移。住宅向け、産業向けともに価格は下落している 住宅向け、産業向けによる価格の違い 経済産業省の見通しでは、2015年には2010年の半分程度までになるとしている

長く使えば総コストは下がる……半年以内に新たな点検制度を実施

 太陽光発電システムの課題として片山代表理事は、システム全体の信頼性をどうするかがポイントとした。

 「いくら導入コストが安くても、10年持つものと20年、30年持つものでは、実質的な発電コストは大きく変わってくる。これが太陽光発電が一般の家電と大きく違う」(片山代表理事)

 現在の太陽光発電には、太陽電池モジュール(パネル)の性能を認証する「JET(一般財団法人・電気安全環境研究所)認証」というものがある。しかし、システム価格の内訳から見ても分かるとおり、太陽光発電システムは太陽電池モジュールがすべてというわけではない。実際、どのように組み合わせるか、どのような工事を行なうかによって、発電量も異なれば、寿命も変わってくる。

 そこでJPEAでは、独立行政法人・産業技術総合研究所(AIST)などと連携をしながら、これから半年以内を目処に、太陽光発電システムの点検制度作りを行なうという。片山代表理事も「クルマの車検は人の命に関わる点検制度であるが、太陽光発電も電源という重要なインフラを担うものなので、システムとしての点検制度は重要になる」として、一般家庭用、産業用それぞれに制度を作っていくことを検討している。




2011年8月29日 00:00