日立のコンシューマ事業はLEDや太陽光発電、海外向け家電を強化


 日立製作所は6月9日、同社のコンシューマ事業に関する事業戦略を明らかにした。

 2012年度の経営目標は、売上高が9,300億円、海外売上高比率が50%、営業利益率が2.3%とした。2009年度の実績は、売上高が9,292億円、海外売上高比率が47%、営業利益率はマイナス0.8%だった。

 2012年度の9,300億円の内訳は、映像・コンポーネントが3,180億円、薄型テレビが620億円、白物家電・環境新分野が2,500億円、空調が3,000億円。

日立製作所コンシューマ業務本部長兼日立コンシューマエレクトロニクス社長の渡邊修徳氏
 日立製作所のコンシューマ業務本部長兼日立コンシューマエレクトロニクス社長の渡邊修徳氏は、経営基本戦略として「映像技術から創生した映像・コンポーネント事業による収益拡大」を掲げたほか、家電事業においては「薄型テレビの安定的黒字化の実現」、「白物家電の海外事業拡大、環境新分野の拡大」を、空調事業においては、「グローバル事業のさらなる拡大」を掲げ、「省エネ技術、環境応用技術を生かした品揃え、ソリューション提供、トータルサービスといった日立の強みを生かす。日立グループとの連携による社会・生活インフラ事業の拡大に取り組む」などととした。


 白物家電事業、空調事業に関しては、同事業を担当する日立アプライアンスの石津尚澄社長が説明した。

日立アプライアンスの石津尚澄社長
 石津社長は、2009年度に日立アプライアンスが黒字化したことを強調しながら、2006年度から2009年度までは構造改革の推進や、オール電化事業の立ち上げ、合併シナジーによるグローバルに向けた空調事業の拡大といった成果を指摘。その一方で、2010年度から2012年度にかけては、「新たな成長に向けた戦略加速の時期」と位置づけ、「LEDおよび太陽光発電による環境新分野に向けた取り組みの加速」、「国内に次ぐ、第2、第3の海外家電マーケットの開拓」、「グローバル空調事業のさらなる拡大」に取り組むとした。

 日立アプライアンスでは、2012年度には売上高5,400億円、海外売上高比率37%、営業利益率2.7%を目指す。2009年度実績は、売上高が4,457億円、海外売上高比率33%、営業利益率は0.9%となっている。

 白物家電事業に関しては、2012年度に2,500億円の売上高を目標に設定、そのうち環境新分野および海外白物家電事業で40%を占める計画となっている。環境新分野市場は、2012年度には8,000億円の市場規模が見込まれており、国内白物家電市場全体の3分の1を占める規模に達する。日立アプライアンスでは、この市場において、500億円規模の売上高を見込んでおり、2010年10月に吸収合併する日立ライティングによるLED照明事業の拡大、昭和シェル石油の100%出資子会社のソーラーフロンティアからの調達による太陽光発電事業の拡大、オール電化事業の拡大などに取り組む。

LEDや太陽光事業など環境新分野で500億円規模の売上を見込む日立アプライアンスの中期計画。2012年には売上高5,400億円、営業利益率は2.7%を目指す


 また、アジアにおける白物家電事業の拡大に乗り出す考えで、2009年度には400億円だった海外家電売上高を、2012年度には500億円にまで引き上げる。

 日立では、タイに冷蔵庫、洗濯機、掃除機、ポンプ、炊飯器といった白物家電の一大生産拠点を持つほか、香港、台湾、タイ、ベトナム、マレーシア、シンガポール、インドネシア、インド、中東といったアジア主要国には販売拠点を持っており、「ASEAN、インドでのブランドイメージは高い」(石津社長)という。省エネ・環境技術をコアとした高付加価値戦略の推進、現地ニーズを取り込んだ地産地消型ビジネス展開、アシア・中東に軸足をおいた海外展開を進める考えを示した。

 なお、国内における白物家電市場への取り組みとしては、冷蔵庫/洗濯機/掃除機/電子レンジ/炊飯器の主要5製品において、2012年度に26%のシェア獲得を目指す。2009年度のシェアは23%。「国内の白物主要5製品の市場規模は緩やかに減少するが、省エネ性能と使い勝手を追求した商品を提案し、シェア拡大を目指す」とした。

 一方、空調事業については、2012年度の売上高規模として3,000億円を目指す。2009年度の実績は2,340億円。このうち、海外売上高は1,000億円から1,500億円へと1.5倍の成長を計画。海外売上高比率を50%に高める。

 環境技術、インドやブラジルで先行している強みを生かすとともに、ヒートポンプ技術をコアとした環境対応製品の拡大を図るほか、地域ごとの戦略を加速する。

環境新分野と海外の白物家電部門の売上を、全体の40%に引き上げるという空調事業については、海外と国内でそれぞれ50%を目指す

 欧州では、データセンター向け空調などの業務用環境対応製品の拡大などに加えて、営業力強化、暖房事業の立ち上げに乗り出すほか、中国では高効率マルチ、インバータエアコン、チラーなどによる省エネ製品の売上高拡大、営業体制の整備・強化を展開。インドでは今年7月から新工場でチラー生産を開始する予定で、すでにインド市場では高級タイプのルームエアコンで22%を獲得した実績を生かす。ブラジルでは2009年10月から、マナウスの新工場でルームエアコンの生産を開始しており、2010年度には4万2,000台、2011年度には8万4,000台の出荷を計画している。

 2012年度における空調事業の海外売上高1,500億円のうち、中国で450億円、欧州で300億円、インドやブラジルなどで200億円を見込んでいる。

 「日立アプライアンスは、社会・生活インフラを担うとともに、日立ブランドの先兵として、積極的に海外展開していく。日立のグローバル事業拡大に貢献していく」などとした。



(大河原 克行)

2010年6月10日 00:00