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東芝、軽くて曲がる次世代太陽電池の実用化へ。高効率で発電コスト低減

大面積のフィルム型ペロブスカイト太陽電池モジュール

東芝は9月10日、新たな成膜法の開発により、世界最高のエネルギー変換効率15.1%を実現した「フィルム型ペロブスカイト太陽電池」を開発したと発表した。カーボンニュートラル社会の実現を目指し、高効率かつ低コストなフィルム型ペロブスカイト太陽電池の実用化に向けて大きく前進したとしている。

同社は2018年6月に、ペロブスカイト太陽電池として世界最大サイズ(703cm2)のモジュールを開発していたが、このサイズを維持しながら成膜プロセスの高速化と変換効率の向上に成功。エネルギー変換効率15.1%は、現在普及している多結晶シリコン型の太陽電池のエネルギー変換効率に相当するという。

フィルム型ペロブスカイト太陽電池は、軽量薄型で曲げることができるため、従来は設置ができなかった強度の弱い屋根やオフィスビルの窓など多様な場所に設置することが可能。例えばエネルギー変換効率15.1%のフィルム型ペロブスカイト太陽電池を、東京都23区内の建物の屋上および壁面の一部に設置した場合、原子力発電所2基分(東京都23区の家庭内年間消費電力量の2/3相当)の発電が見込めるという。

今回新たに開発した成膜法は、従来2段階(2ステッププロセス)で行なっていたペロブスカイト層の成膜を、1段階(1ステッププロセス)で行なうもの。2ステッププロセスは成膜プロセスの高速化とペロブスカイト層組成の均一化に課題があったが、インク、成膜プロセスおよび装置の開発を行なうことで、大面積に均一塗布することが可能な1ステッププロセスの成膜技術を確立し、成膜プロセスの短縮を実現したという。

また本技術は塗布速度も高速化が可能で、5cm角のセルでは、量産時に必要と想定されるスペックを満たす6m/分の塗布速度を達成しており、大面積の成膜プロセスでのさらなる高速化が見込めるという。本技術により、従来困難であった生産プロセスの高速化とエネルギー変換効率の向上が両立できるため、発電コスト低減への貢献も期待できるとしている。

1ステップメニスカス塗布法を新たに開発。大面積に均一塗布でき、成膜プロセスの短縮を実現した