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メイクは“塗る”から“貼る”時代へ。パナが開発する「メイクアップシート」とは

 パナソニックは、現在開発中である、シミやそばかすを隠す極薄シート「メイクアップシート」の、メディア向け技術説明会を開催した。

一人ひとりの肌の状態を検知する「スノービューティーミラー」
シミを隠す「メイクアップシート」を印刷するプリンター

 メイクアップシートは、ファンデーションと同等の化粧顔料をインクに使った極薄シート。顔に貼ることで、シミやそばかすを隠し、肌悩みを簡単に解消するという。

 シートは一人ひとりの肌にあったものを作るため、まず非接触肌センサーを搭載した鏡「スノービューティーミラー」でシミを検出。それぞれのシミのサイズや色に合った化粧顔料を用いて、プリンターで印刷される。

 完成したシートは肌色のフィルムになっており、顔に貼っていても肌と見分けが付かないくらい自然な仕上がりになるという。剥がすときは水で濡らすだけなため、洗顔も簡単にできる。

 ターゲットとしては、手軽に化粧をしたい女性だけでなく、生まれつき顔に痣がある人の使用なども想定する。

「スノービューティーミラーには」非接触肌センサーを搭載
検出されたシミ
シミ以外にも毛穴や透明感など、肌の状態を教えてくれる
普段から実際に気になっていたシミがミラー上でも検知されたという。ミラーに印刷ボタンを備える
連携したプリンターでメイクアップシートを印刷
完成したシート。肌色のフィルムとなっており、シミが気になる部分に貼る

メイクを自分でするのではなくパッと貼れるシートを

パナソニック 全社CTO室 技術戦略部 事業創出推進2課 課長 川口 さち子氏

 同技術は、2016年10月に開催された「CEATEC 2016」のパナソニックブースで発表。同社ブースの中でも、注目度が高かったという。

 メイクアップシートの開発背景について、パナソニック 全社CTO室 技術戦略部 事業創出推進2課 課長 川口 さち子氏は、以下のように語った。

 「メイクアップシートの前に、まず行き着いたのがスノービューティーミラーでした。体内外を見える化し、改善する“魔法の鏡を作ろう”というところからスタートしました。しかし、見える化しアドバイスをするだけでは、改善につながりません。どういったケアが受けるかを調査して、さまざまな提案をしたところ、評価が高かったのがメイクアップシートです」

 開発を進めるにあたり、同社はPan Asia Partnersと共同で、アジア6都市(東京・上海・バンコク・デリー・ムンバイ・ジャカルタ)で調査を行なった。その際に、さまざまな肌ケアの提案の中で出てきたアイディアが、メイクを自分でするのではなくパッと貼ったり、肌の悩みを瞬時に隠してくれたりするものだったという。

アジア6都市で調査した結果、パッと貼れるシートの評価が高かったという

 実際に、川口氏もメイクアップシートを顔に貼っていたが、言われてもわからないほど自然な仕上がりだった。右頬に貼っていた肌色のシートは、近づいてやっとわかるほどの馴染み方だった。

 シートの印刷には、有機ELで培った印刷技術を応用。ファンデーションと同等の化粧顔料は粒が大きいため、細いインクジェットのノズルを通りにくい。そこで、インク材料の配合設計や高精細印刷技術など、有機ELの技術を採用することで、キレイに印刷できるようにしたという。

右頬(向かって左側)にメイクアップシートを貼っている。言われてもわからないほど自然だった
頬に貼る際は、より正確な位置に貼るためにこうしたマスクも開発中だという
粒の大きい化粧顔料だが、有機ELで培った技術を応用してプリンターで印刷できるようにした
水で剥がせるため、洗顔も簡単にできる。汗などでは落ちないという

2020年を目標にサービス提供。家庭用ではなくメイクカウンターなどを想定

 現在は開発段階だが、2020年のサービス提供を目指している。センサー搭載の鏡や、シートを印刷できるプリンターを家庭に置くことは現実的ではないとし、百貨店などのメイクカウンターなどでのサービスを想定する。

 肌カウンセリングをするように、シミや肌の状態を分析して一人ひとりに合ったシートを作成。印刷されたシートは乾かす工程などがあり、完成するまでに約1日は掛かる。そのため、コンタクトレンズが定期配送されるように、まとめて1カ月分のシートを後日配送するような仕組みが考えられるという。

 価格は未定だが、ファンデーションやコンシーラーと同等のコストを目標にする。化粧品メーカーや、美容サロンなどと連携するビジネスモデルも想定している。

シートは印刷後、乾かすのに1日は掛かる

 説明会では、頬サイズのシートを用いてデモが行なわれた。しかし、気になるのは実際の使い方だ。頬サイズのシートの場合、貼るだけといっても他の部分はカバーできない。使い方をスタッフに聞くと、現在完成しているシートは、シミを隠すためのものでコンシーラーのような位置づけであるという。

 日焼け止めや化粧下地を塗ったあとに、シミが気になる部分にシートを貼り付ける。そのあとに、ファンデーションやパウダーなどで仕上げるというのが、現実的な使い方だ。

 今後は、貼るだけでファンデーションなどのベースメイクが完成するような、顔全体のシートも完成させていきたいとのこと。ほかにも、アイシャドウやアイラインを重ねたアイメイク用シートなどの部分使いなど、ラインナップの幅を広げていくという。

現在は頬サイズのシート
今後は顔全体やアイメイク用など、幅を広げていきたいという
ミラー上で試着ができるようなシステムも紹介していた
体内外を見える化することで、ジムなどで使用するイメージ映像も

 女性にとってマナーとされることも多いメイクだが、朝の準備をする時間、夜に化粧を落とす手間などを考えると、なかなか億劫なものである。特別な日はメイクを変えたいなど、気分によってアレンジできるのもメイクの醍醐味だが、日常的なメイクは1カ月分などをシートでストックしておけたら、とても便利だと感じた。

 また、百貨店などのメイクカウンターでのサービス提供というのも興味深い。メイクカウンターは敷居が高い、入りづらいという声をよく聞くが、コンタクトレンズを処方してもらうように、毎日使うメイクシートを購入しに行くと考えれば足を運びやすくなるだろう。サービスが実現する日が楽しみだ。