長期レビュー
東芝「石窯オーブン ER-KD520」
東芝「石窯オーブン ER-KD520」前編
~パンやピザ、ベーグルがおいしく焼けた! 予熱が短い本格オーブンレンジ
(2013/5/20 00:00)
なぜ石窯オーブンを選んだのか
ある朝、突然オーブンレンジが動かなくなってしまった。我が家は旦那が家で仕事をしているので、昼もお弁当を温めるためにレンジ機能をよく使用している。私はパンやケーキなどのスイーツ作りでオーブンも使うので、オーブンレンジの使用頻度はとても高く、オーブンレンジは必需品だ。
「すぐにでも新しいオーブンレンジが欲しい! 」というわけで、家族会議の末、どうせなら上位モデルを買おうということになった。何を買うか色々悩んだが、最後に残ったのがシャープ「ヘルシオ AX-PX3」と東芝の「石窯オーブン ER-KD520」だ。
ヘルシオは以前取材に行った旦那のイチオシで、過熱水蒸気の技術力に感銘を受けたとのこと。「次はコレだ! 」と前々から騒いでいて、気になっていた。メタボ気味なのでヘルシーにできると噂の過熱水蒸気も気になるし、過熱水蒸気を使ったタニタの付属レシピも気になる。シャープ独自のタッチパネル液晶もとてもキレイで、デザインも高級感があっておしゃれだ。
ただ、私が注目しているのは、レンジ機能よりも、どちらかといえばオーブン機能だ。パンやケーキを作る際、オーブンレンジの予熱時間がやたらと長かったり、温度不足でいまひとつ膨らまないとイライラするからだ。
そこで、オーブン機能をアピールしている東芝の「石窯オーブン ER-KD520」を選択した。今回は石窯オーブンの使い心地を全後編の2回に分けてレポートする。1回目の今回は、一般的なオーブンでは難易度の高い、パンやピザ、ケーキ作りにチャレンジしよう。
メーカー | 東芝ホームアプライアンス |
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製品名 | 石窯オーブン ER-KD520 |
購入場所 | Amazon.co.jp |
購入価格 | 80,218円 |
特徴は湾曲した天井、熱風を対流させる構造
「石窯ドーム」の最大の特徴といえば、ドーム状に湾曲した庫内の天井だ。この天井が、上下左右からの熱風を対流させて、食材を包み込むように焼く。また、200℃の予熱時間がたった約5分と短く、食品の表面をすばやく焼き上げることができる。オーブンの温度が350℃まで上げられるというのも、パンを焼く人にとっては魅力的だ。
加熱方法では、庫内のセラミックコーティングによる遠赤外線加熱、底面からの熱風およびサイド熱風による加熱を採用し、焼き具合をアップさせている。
さっそく本体を見てみよう。本体サイズは、オーブンレンジの中では大きめ。外形寸法は500×460×412mm(幅×奥行き×高さ)、重量は23kg。
電子レンジ・オーブンの消費電力は1,430W、総庫内容量は31L。左右背面はピッタリ置けるが、上側は10cm以上空ける必要があるので、購入前には置き場所のサイズも測っておくとよい。実際に設置してみると、奥行は数mmの余裕もなくピッタリだった。
本体カラーはシェルホワイトとグランレッドの2種類で、購入したのはシェルホワイト。シンプルなデザインで、インテリアの邪魔をせず、気に入っている。
前面下部には吸水カセットと水受けがあり、取り外しできるようになっている。これはスチーム料理をするときに使用する。このほか付属品は、角皿2枚、焼網1枚、こんがりプレート1枚が付属する。
前の扉をあけて食品を置くと、自動メニューが点灯する。ホワイトバックライト液晶は、文字が大きく、光るので、細かい文字が見にくくなってしまった私の視力でもすぐにわかる。
メニューを選ぶと、使用する付属品や機能が表示されるのも親切だ。
操作は、タッチメニューとダイヤルの2カ所から行なうが、液晶表示に従って順番に操作するだけなのでわかりやすい。
難易度が高いフランスパンを焼いてみる
パン・ピザのレシピには、難易度が3段階で示されている。はじめに、最も難易度が高いフランスパンに挑戦してみることにした。フランスパンといえば、皮がパリッと固い、シンプルな食事パンだ。これまで別のオーブンで何度か焼いてみたことがあるものの、膨らみがいまいちで、うまくできた試しがなかった。
準備として、「ソレドォル」というフランスパン用の粉を購入し、あとはドライイースト、塩、粉末モルト、水を準備する。卵や乳製品は一切使わない。フランスパンの材料はシンプルだが、作り手の“腕”に左右されるので、素人には難しいとされている。
練りはホームベーカリー、発酵と焼きを石窯オーブンにお任せした。発酵は「30/35/40/45℃」から選ぶことができるので、寒い冬でも安定した温度で発酵させることが可能だ。フランスパンは発酵時間が長く、一次発酵は30℃で80分も時間を要したが、2倍程度にしっかり膨らんでいた。
二次発酵を終えて成形したら、表面にクープ(切り込み)を入れて、自動メニュー「フランスパン」を選択して焼くだけ。焼き時間は28分だ。
焼き上がったフランスパンは、外皮はパリパリしており、フランスパン独特の食感がしっかりしている。香ばしさも素晴らしい。中を切ってみると、フランスパンらしい大きな気泡もところどころにあって、上手に焼くことができた。
以前に何回か作ったときには、外側がパリパリせず、中は食パンのようにキメ細かくなってしまい、フランスパンらしくなかったのだが、これは紛れなくフランスパンだ。
以前失敗したシュークリームは、2段でもムラなく焼けた
次に挑戦したのはシュークリーム。シュークリームの皮作りも、難易度が高いと言われている。繊細なシュークリームは、高温で一気に加熱して膨らます必要がある。かといって、高温すぎても割れなくなるので、本当に難しいのだ。
今回は、付属のレシピにならって、合計24個を2段で作ることにした。ER-KD520は、縁にスリットの入った角皿を採用し、上下左右から熱風を当てるため、庫内に回った熱風を上下に循環させて、食品を前後左右から包み込むように焼ける。生地を2段に分けて焼いてもムラにならないのだ。
焼き始めから30分後。上下段ともきちんと膨らんでいた。上の段のほうが若干焼き色が濃いが、膨らみ方にはほとんど遜色がない。
シュークリーム作りは過去に何度か失敗し、皮が全く膨らまず、ペチャンコの煎餅みたいな皮になってしまい、作るのは苦手だったのだが、石窯オーブンなら簡単に、一気にたくさん作れるので、家族4人、思う存分食べることができる。
ベーグルもしっかり膨らんでツヤツヤ
ニューヨークへ遊びに行ったとき、有名店のものを食べて感激し、以来大好きになってしまったパンといえばベーグルだ。本場のベーグルはかなりもちもちしている。弾力があり、アゴが疲れるほどだ。あのベーグルを再現したい。
今まで何度か作ったが、どうしてもうまくいかない。そこで最強力粉「スーパーキング」を購入し、簡単に作れるというレシピで作ってみることにした。
最後に茹でてから、素早くサッと焼く。焼き上がったベーグルは、表面がツヤツヤ。しっかり膨らんでいて、もちもち感も抜群。本場のベーグルに負けないほどの食感で、クリームチーズとサーモンを挟んでみたところ、よく合っていた。
家族もとても喜んでいた。ベーグルは油分も少なくヘルシーで、子供のアゴも鍛えられそう。
生地の成形から焼き上がりまでの所要時間は約1時間15分。自宅でこんなに簡単に作れるなら、わざわざ買う必要もない。今後も定期的に作っていくつもりだ。余ったもベーグルは冷凍保存できるので、多めに作っておくこともできる。
1時間でできるレンジで発酵「簡単パン」
レシピ集で気になったのが「簡単パン」だ。レンジ機能を使って発酵させるメニューで、ゴムべらでサッとこねるだけで、材料を計量するところから焼き上がるまで、1時間強あればできてしまうという。
レシピでは8個分だったが、16個にして2段で約20分焼いてみた。自動メニューなので、焼き時間などは変更できず、そのまま焼いてみたところ、上の段が少し焦げてしまった。もし2段で焼く場合は、手動で切り替えたほうが良さそうだ。
ソーセージパンと黒胡椒のチーズパンを作ったが、よく膨らんでいる。合計16個も作ったのに、旦那と子供達が「おいしい!」とお喜びでパクパク食べてしまい、あっという間になくなってしまった。簡単パンという通り、かなり簡単なので、少し早起きすれば朝食にも間に合うように作ることができそうだ。「こんなに家族が喜ぶなら、頑張って早起きして作っちゃおうかな」という気分になる。
ただ、発酵時にかなり生地が熱くなり、一部固まってしまった。薄いお皿にいれて発酵させたのが原因のようだ。後日、厚めの皿を使って再チャレンジしたところ、発酵時に固まらなくなった。自動メニューでは、「発酵だけ少し温度を下げたい」など、部分的に調整ができないのは少々不便だ。
パリパリのクリスピーピザも、1度に2枚焼ける
私は市販のピザはあまり好きではない。焼き立てのピザは好きだけれど、シナッとしてしまったピザが苦手なのだ。だから、パン屋で売っているようなピザはもちろん、デリバリーピザを出前することはほぼない。
そこでレシピに載っていた、カリカリのクリスピーピザを作ってみることにした。23cmのクリスピーピザが2枚できるレシピで、焼くのも角皿2枚を使って一度に焼く。
ピーマン、玉ネギ、チーズをたっぷりかけて焼き上げたピザは、生地がカリカリ。2枚とも同じように、ムラなく焼けていた。我が家のように4人家族では、ピザ1枚では全く足りないので、2枚同時に焼けるのは助かる。
スチーム発酵でふわふわのオニオンベーコンブレッド
石窯オーブンには、単に発酵するだけでなく、スチームで乾燥を防ぎながら発酵できる「スチーム発酵」機能が搭載されている。
これを使ってオニオンベーコンブレッドを作ってみることにした。生地を練ってから、耐熱ボウルに入れ、角皿にのせて、「スチーム発酵」で40℃に設定し、約30分発酵を行なった。
ラップをしなくても、乾燥しないので手間が省ける。生地はみるみる膨らんで、あっという間に倍以上の大きさにまで膨らんでしまった。発酵後の生地はしっとりしており、手にくっつくので、空気抜きをする際は、手に薄く粉をふっておいたほうが扱いやすい。
あらかじめレンジで加熱しておいた玉ネギ、ベーコン、アスパラガス、グリーンピースを混ぜ込む。型に入れてからの二次発酵でもスチーム発酵を行なったが、型の中でみるみる膨らんでしまった。
中に具を入れる総菜系パンは、生地がどっしりしがちだが、スチーム発酵で作ったオニオンベーコンブレッドは、生地はキメが細かく、ふわふわな仕上がり。朝食にもぴったりなパンで、栄養価が高く、見た目も豪華。焼き時間は20分ほどで、トータルで2時間ほどで完成する手軽さも嬉しい。
熱風がムラなく届くから「パウンドケーキ」が3本同時に焼ける!
パウンドケーキやマフィンは手軽にできるので、よく作っているお菓子だ。低めの温度で、よほどのことがなければ失敗は少ない。
そこで、パウンドケーキは同時に3本縦に並べて焼いてみることにした。上下左右からの熱風が隅々まで届くなら、3本でもムラなく焼けるだろう……と、ちょっと意地悪な実験をしてみたくなったのだ。
結果、3本とも型からあふれそうなほど膨らんでいた。どれも焼き色にムラもなく、山のように膨らんで、焼き縮みもほぼない。場所によって多少は焼き色や膨らみ方に差が出るかと思っていたが、ほぼ同じだった。焼き時間は40分程度だった。
パウンドケーキはよく手土産にしているが、これなら手土産にしても恥ずかしくない仕上がりだ。
難しいシフォンケーキもしっかり膨らんだ
最後に、難しいシフォンケーキを作ってみることにした。今までに何度か作っているが、上手にできたことはほとんどない難易度の高いメニューだ。ケーキの底に大きな穴が空いてしまうのだ。これを底上げといい、原因は、庫内の温度のムラによってできることが多いようだ。上部だけ温度が上がり、下部に熱がまわらないと、底上げができてしまう。
付属のレシピには、直径20cmのアルミシフォンケーキ型が使われていたが、我が家には用意がなかったので、100円ショップで購入した直径15cmの紙シフォンケーキ型2個で試してみた。シフォン型を2個並べて入れ、自動メニュー「42 シフォンケーキ」を選択し、「強」を選んだ。予熱は5分ほどで終わった。表示された焼き時間は54分と少し長めだ。
準備から完成までにかかった時間は約1時間40分。ふんわりしたシフォンケーキができて、とても嬉しい。同時に2個焼いてしまったのでどうなるかと思ったが、どちらもきれいに焼けている。
生地はふわっふわで、理想的な食感だ。底上げもなく、膨らみ方もレシピの写真とそっくりだ。ここ数年はあまりうまくできていなかったが、また作る意欲が湧いてきた。
家庭で手軽にパンやケーキを焼ける
そんなわけで、石窯オーブンがきてから、毎日のようのケーキやパン、ピザを焼いている。失敗は一度もない。
過去にガスコンベクションオーブンを使っていた頃は、フランスパンやシュークリームもうまくできていたものの、電子オーブンレンジに換えてからは、いまいち膨らまなくなってしまった。それが、ER-KD520なら電子レンジ機能も搭載しながら、パンもしっかり焼き上げてくれる。
気に入ったのは、予熱時間が短いことだ。200℃の予熱時間がたった約5分で済むのだから、驚いた。以前は予熱に何十分もかかるので、材料を計量する前から予熱を開始していた。本製品なら、発酵でオーブン機能を使った後、焼きのために予熱を開始しても十分間に合う。
特に温度管理がデリケートなパン、シュークリーム、シフォンケーキのようなお菓子も、難なく作れるのは嬉しい。上下左右からの熱風がうまく循環しているようで、2段でもきちんと焼ける。我が家は4人家族なので1回で作る量が多いだけでなく、自宅消費分+手土産用に作ることも多いので、非常に助かっている。
明日の後編では、オーブンや電子レンジ、過熱水蒸気などを使った「おかず作り」を検証する。