長期レビュー
タニタ「カロリズム&インナースキャン50」 その2
~「電車内では立つ」「1つ先の駅から乗る」は本当に効果がある?
タニタ「カロリズム」は、服に装着することで身体活動量を計測できる“活動量計”だ |
カロリズムは、普段の生活におけるちょっとした身体活動――たとえば「会社に行く」だったり「ゲームをする」など――によって、どれだけエネルギーを消費したかを教えてくれる“活動量計”だ。一見すると歩数計のようだが、歩数計は歩いている時のみ計測するのに対し、カロリズムは装着しているだけで、常に体の動きを見張り、その活動量を計測してくれる、という優れものだ。
前回は基本的な使い方を取り上げたが、2回目となる今回は「実践編」。カロリズムを使って日常でも痩せられるダイエットポイントを探してみる。
というのも、ダイエットでよく聞く話として「最寄りの1つ先のバス停まで歩く」「エスカレーターよりも階段で歩く」といった取り組みが挙がるものの、いったいそれに、どれだけ効果があるのかはよくわからない。そこで、カロリズムを装着して、日常のいろいろな場面の活動量を量ることで、通勤や仕事、休日など、日常生活において、どのようにエネルギーが消費されるのかを調査したい。
●1つ先のバス停に行けば、ダイエット効果はあるのか? 【通勤編 その1】
普段はバスを利用しているが、果たしてどれだけエネルギーを消費できているのだろうか?(イメージ写真) |
ちなみに我が家は最寄り駅まで約2.2km、徒歩約24分とかなり離れている。そのため、駅の近くに住んでいる人にも参考になるよう、消費エネルギーを移動時間で割った「1分当たりの消費エネルギー」というデータも算出している。
移動手段 | 消費エネルギー | 移動時間 | 1分当たりの 消費エネルギー |
自宅に最寄りのバス停から乗る | 48kcal | 14分 | 3.43kcal |
最寄りの1つ先のバス停から乗る | 57kcal | 18分 | 3.17kcal |
すべて自転車 | 48kcal | 12分 | 4kcal |
すべて徒歩 | 156kcal | 24分 | 6.5kcal |
このうち、消費エネルギーのトップだったのが、やはり「徒歩」。156kcalと、唯一3ケタの消費エネルギーを記録している。何しろ24分間歩きづめなのだから、当然といえば当然かもしれない。駅にたどり着いた時には、足が疲れてじんじん痺れるような感覚さえあり、普段から運動していない人間には少々キツかったが、意外と達成感があった。
以降、「1つ先のバス停から乗る」、「自転車」、「バス(最寄りの停留所から)」と続く。期待はずれだったのが「1つ先のバス停から乗る」で、1分間当たりのエネルギー消費量は最寄りのバス停から乗った場合よりも少なかった。
最寄りのバス停からバスに乗った場合、消費エネルギーは48kcal。なお、消費エネルギーの計測方法は、調査前後の数値の差から算出している。残念ながらある区間ごとに数値を算出する機能はない | 徒歩では156kcalと、かなりのエネルギー消費に繋がった | 最寄りのバス停から、1つ先のバス停へ歩き、そこからバスに乗った。しかし、あまり離れていなかったせいか、驚くような効果は得られず |
なお、カロリズムの説明書では「車/バス/自転車に乗った時」や「階段の上り下り」の場合、活動量が正しく測定できないことがあるとあったが、「長時間でなければ全体の活動量に支障はありません」とも記されているため、本稿ではデータをそのまま使用する。
●電車では立っても座ってもほぼ同じ 【通勤編 その2】
“座っているより立っている方が運動になる”とはよく聞く話だが……(イメージ写真) |
自宅の最寄り駅から会社のある市ヶ谷駅までの30分間において、立ちっぱなし/座りっぱなし という2パターンでカロリズムを使ってみた。
移動手段 | 消費エネルギー | 移動時間 | 1分当たりの 消費エネルギー |
全区間座る | 43kcal | 30分 | 1.43kcal |
全区間立つ(ラッシュ時) | 51kcal | 30分 | 1.7kcal |
全区間立つ(ラッシュ時以外) | 47kcal | 30分 | 1.57kcal |
1つ先の駅から乗る・1つ前の駅で降りる | 113kcal | 37分 | 3.05kcal |
結論から言えば、「座る」が43kcal、「立つ」が47kcalと、両方ともあまり変わらない。「立つ」の場合、ラッシュ時に51kcalとやや増えたが、微々たるものだ。疲れたときに電車の中で席が空いたら、素直に座っておくのが良いだろう。
30分間、電車に座り続けた場合の消費エネルギーは43kcal | 同区間を立ち続けた場合は47kcal。確かに座った状態と比べれば消費しているが、ほとんど差はない | 立っていても座っていても、消費エネルギーはさほど変わらない。疲れたら座っておくのが良いだろう(イメージ写真) |
ところで、最近では最寄り駅の1つ先の駅から乗車したり、1つ手前の駅で降りて、その分歩く、というエクササイズ方法があるらしい。そこで、会社から帰宅する際に、最寄り駅の市ヶ谷駅の1つ先の四ッ谷駅まで歩き、そこから乗車してみた。すると、113kcalと、通常の電車移動と比べて、倍の活動量が得られた。通勤時間もプラス7分程度と、それほど時間のロスにもなっていない。というわけで、あまり遠くならないのであれば、1つ先/手前の駅で乗車/降車し、その分徒歩でエネルギーを消費するというのは十分に“アリ”だ。まとめれば「電車に乗る前、乗った後で歩き、車内ではしっかりと休む」というのが賢い方法だ。
会社の最寄り駅ではなく、1つ先の駅から乗ってみたところ…… | 113kcalと、通常の倍以上のエネルギーが消費できた |
●エスカレーターは避けて、階段を選択すべし 【通勤編 その3】
駅の階段では、エスカレーターを利用する人が多く、階段が閑散としていることが多いが……(イメージ写真) |
というわけで、駅のホームにある階段とエスカレーターを上り比べたところ、前者が4kcal、後者が3kcalという、1kcalという微妙な差になった。
移動手段 | 消費エネルギー | 活動時間 | メッツ |
階段 | 4kcal | 1分 | 3.5メッツ |
エスカレーター | 3kcal | 1分 | 2.1メッツ |
エレベーター | 2kcal | 1分 | 1.9メッツ |
階段は4kcal | エスカレーターは3kcal | エレベーターでは2kcalしか消費できなかった |
実は活動の強度を示す「メッツ」の値が、大きく異なっている。階段は最も高い3.5メッツ |
ちなみに、最近ではエレベーターを併設している駅が多いが、こちらを利用したところ、消費エネルギーは2kcal、強度は1.9メッツと、エスカレーターよりもさらに低い数値になった。さりげなく運動したい人は、駅だけでなく、オフィスでも階段を利用すると良いだろう。
なお、この数値と写真は、すべて“上り”のものだが、階段・エスカレーター・エレベーターは、上り下りともに同じ消費エネルギーだった。
●オフィスでは効果的な運動法が少ない……階段と昼休みでエクササイズ 【会社編】
勤務中はデスクにべったりなので、なかなかエネルギーを消費する事がむずかしい |
移動手段 | 消費エネルギー | 移動時間 | 1分当たりの 消費エネルギー |
デスクワーク※ | 4kcal | 3分 | 1.33kcal |
貧乏揺すりをしながらデスクワーク | 5kcal | 3分 | 1.67kcal |
階段でワンフロア移動 | 4kcal | 1分 | 4kcal |
エレベーターでワンフロア移動 | 2kcal | 1分 | 2kcal |
コンビニに買い物に行く | 55kcal | 15分 | 3.67kcal |
会社の近くのコンビニに行ったところ、15分で55kcalが消費できた |
また、先ほど駅の項で試したとおり、フロアの移動にエレベーターを使わず、階段を使うというのも良いだろう。我が社の階段・エレベーターを使ったところ、駅と同じく階段が4kcalと高く、エレベーターが2kcalと低かった。高層ビルに勤務している人は難しいだろうが、2~4階のフロアで働いている人は、階段を使ってみてはいかがだろうか。
●洗濯物は積極的に干すべし! 【日常生活編】
意外と消費エネルギーが多かった洗濯物干し |
通勤や会社ではもちろんだが、普段の生活でも何か活動量を増やせないものだろうか。と、カロリズムを装着しながら生活の活動量を計測してみると、「洗濯物干し」が高い数値を記録した。8分で23kcalだから、1分当たりで2.88kcal。電車に乗っているよりも高い数値である。確かに、衣類をハンガーに通し、ベランダに出て物干し竿にぶら下げる……というのは、それでだけで上半身を動かす運動になる。何人もの衣類をいっぺんに洗って干す大家族なら、もっと消費エネルギーが多そうだ。
続いて多かったのが料理。この日はお好み焼きを作ったのだが、キャベツを刻むことが影響したのか、1分当たり2.1kcalと、なかなか高い数値だった。
移動手段 | 消費エネルギー | 移動時間 | 1分当たりの 消費エネルギー |
料理をする※ | 63kcal | 30分 | 2.1kcal |
洗濯物を干す | 23kcal | 8分 | 2.88kcal |
ゲームをする(桃鉄) | 67kcal | 1時間 | 1.12kcal |
ゲームをする(サッカーゲーム) | 89kcal | 1時間 | 1.48kcal |
ショッピングモールで買い物 | 122kcal | 1時間30分 | 1.36kcal |
カラオケ | 219kcal | 2時間 | 1.83kcal |
家事と比較して、数字が上がらなかったのが「ゲーム」「ショッピング」だ。ゲームに関しては、「桃太郎電鉄」のようなボードゲーム形式よりも、スポーツゲームの方が消費エネルギーが多い点は面白いが、どちらもほぼ変わりない。ショッピングは歩きながら商品を見るため、もっと数字が高くなると思ったのだが、足を止めて商品を見ることが多かったため、1分当たりの消費エネルギーはこれもデスクワークと変わらない。逆にカラオケは、座って声を出しているだけにもかかわらず、ショッピングよりも高い数値となった。
洗濯物干しはたった8分で23kcalが消費できた | ショッピングモールに行って買い物をしたところ、1時間30分で122kcal。足を止めることが多かったせいか、数字が伸びなかった | カラオケは2時間で219kcal。声を出すことによるエネルギー消費もあるため、実際はもっと消費しているかもしれない |
●【結論】歩けば歩くほど活動量も増える
以上の結果を見ると、全体的に言えるのが、やはり歩く回数を増やした方がしっかりとエネルギーを消費できるということがいえる。当然といえば当然だが、カロリズムを使うことでそれが明確になった。そのため、「1つ手前/先の駅で降り、徒歩で移動」や「帰りはバスを使わず徒歩」といった取り組みは、ダイエットに確かな効果があるといえよう。
逆に言うと、「電車内では立っていたほうが運動効果がある」というのは、確かに座っているよりもエネルギーの消費量は多いが、その差はわずかなもの。あまりダイエットに対する効果は高くないだろう。同様に、「1つ先のバス停を利用する」も、最寄のバス停とあまり離れていない場合は、大した効果は得られない。
以上、カロリズムを使って活動量を量った結果、日常生活の中で運動してダイエットをするためには以下の点が重要になる。
・会社の行き、帰りに、できるだけ長い距離の徒歩を盛り込む
・エスカレーターやエレベーターではなく、階段を利用する
・料理や洗濯物干しなど、家事をする
・電車内では無理に立つ必要はない
・エスカレーターやエレベーターではなく、階段を利用する
・料理や洗濯物干しなど、家事をする
・電車内では無理に立つ必要はない
カロリズムを使用してからの体重のグラフ。開始直後はなかなか体重が落ちなかったが、徐々に下がってきているのがわかる |
左の体組成計「インナースキャン50 BC-306」のグラフを見てお分かりのように、計測開始の67.2kgから、6月9日には65.9kgと、徐々に体重が減ってきている。もちろん、第1回目でお約束したとおり、日常生活以外で特に運動はしていないし、無理な食事制限もしない。かといって痩せすぎというわけでもなく、標準体重である。
今週からは、帰宅時に最寄り駅の1つ先の駅から乗るようにし、より活動量を増やしてみよう。
次回は、カロリズムの相棒である「インナースキャン50 BC-306」について詳しく触れ、カロリズムで歩き出すことによって、体にどのような変化が現れるかを紹介する。
■【参考】 生活習慣病を予防するため“メッツ”、“エクササイズ”にも注目
カロリズムには、エクササイズ値が目標の「23」を達成したかどうかを示す画面も用意されている |
メッツとは身体活動の“強度”で、「安静時の何倍の活動をしているか」ということを表す数値。安静時は1メッツだが、歩行時なら「3メッツ」というように、身体に負担が掛かる運動になればなるほど、値が高くなる。カロリズムでは、過去1分間の活動量が何メッツであるかが表示される。
一方のエクササイズは、身体活動の“量”を表す数値で、「3メッツ以上の負荷がかかる運動をどれだけの時間したか」を数値で表わすものだ。歩行を1時間した場合は3エクササイズ、2時間した場合は6エクササイズとなる。カロリズムでは、3メッツ以上の運動時間を基に、エクササイズの値を算出している。
このエクササイズ値が、ダイエットを行なう際の重要な値となる。というのも、厚生労働省の「健康づくりのための運動指針2006」というレポートにて、“週23エクササイズを行なえば、生活習慣病の予防につながる”ということが示されている。
カロリズムでは、週ごとにエクササイズ値を合計する「週間累計エクササイズ」や、週23エクササイズが達成できているかをパーセンテージで表す「エクササイズ達成度」も表示できる。つまり、これを参照すれば、目標となる23エクササイズが達成できたかどうかを、カロリズムを持っているだけで参照できるのだ。
この「エクササイズ達成度」を確認し、週23エクササイズが達成できているかどうかを確認することも、健康な生活を送るうえでのポイントとなるのだ。
2009年6月10日 00:00
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「長期レビュー」は1つの製品についてじっくりと使用し、1カ月にわたってお届けする記事です。(編集部)