やじうまミニレビュー

Livescribe「スマートペン」

~ボイスレコーダの良さと、手書きメモの検索性を備えた新世代ステーショナリー

やじうまミニレビューは、生活雑貨やちょっとした便利なグッズなど幅広いジャンルの製品を紹介するコーナーです
Livescribeのスマートペン(2GBモデル)。国内での販売は、正規代理店のソースネクストが行なっている

 われわれ取材記者などでは必須アイテムとなっているICボイスレコーダ。ビジネスシーンでも使っている人は多いが、おそらくほとんどの人が、会話の内容を録音しつつ、同時に紙にメモを取っていることだろう。

 なぜならICレコーダは「あの時なんて言ってたっけ?」と聞き直すと、その場所を探すのにエラく苦労するからだ。だいたいの目星はつくものの、1時間の会話から10秒のコメントを探すのは至難の業で早送りと巻き戻しを何度も何度も繰り返すハメのなる。一方手書きのメモは、会話の内容をすべて記録するのは不可能だが、検索性がボイスレコーダより格段にいい。

 今回紹介するスマートペンは、会話をすべて記録できるボイスレコーダの良さと、手書きメモの検索性を兼ね備えた新世代ステーショナリーだ。

メーカー名Livescribe
製品名スマートペン
販売価格18,800円

 このノートとペンを使うと、メモはペンタブレットやマウスで文字を書いたようにデジタル画像として保存でき、同時にその場ではどんな会話がされていたかをボイスレコーダで音声として記録できる。革新的なのは、デジタル手書きメモと音声データがリンクしていて、メモを手外したときに何を話していたか? 逆に話をしたときにどんなメモを取ったのかが瞬時に分かるという点だ。

 つまりあとからメモを参照したとき、デジタル画像として記録されているメモの一部を選ぶと、メモを取っていたときの会話を瞬時に再生できるのだ。

取材や折衝ごとが多い人は泣いて喜ぶ筆記用具になる

 スマートペンは実に説明しづらい製品。筆者も実際に使ってみるまで、何が便利なのか理解できずにいた(笑)。そこでまずは、どのように使うものなのかを紹介しよう。

1)メモする前にペンの電源を入れる
バッテリー内蔵式で、MicroUSBケーブルをペンに接続し2.5時間でフル充電したら、およそ11時間利用できる。WiFi(無線LAN)に接続した状態だと4時間の利用となる。電源を入れると小さなディスプレイが表示され、バッテリー残量やユーザー名が表示される。またディスプレイには、選んだメニューや計算機の答えなども表示される。

電源ボタンを押すと、WiFiの接続状況やバッテリー残量がディスプレイに表示される
この小さなディスプレイには、ペンからの指示や何か処理をしたときの結果などが表示される
ペンのお尻には、充電用のMicroUSBコネクタとヘッドフォンジャックがある

2)専用ノートを開き「録音開始」をペンで指す
専用のノートには、メモを取るページに加えて、スマートペンをコントロールする色々なボタンが印刷されている。そこから「録音開始」ボタンをペン先でタッチすると、録音が始まる。計算機などを使う場合は、専用のキーを使う。

ノートの各ページには、下段にメニュー呼び出しやカーソルキー、録音開始・停止・一時停止ボタンなどが印刷されている
スマートフォンは指でボタンを押すが、スマートペンの場合はペンでボタンを示すと押したことになる。なおボタンを認識すると、ペンからクリック音が出たりや音声ガイダンスが流れる
録画を開始、停止したり、メニューを選択する様子

3)普通に会話しならがメモを取るだけ
ボイスレコーダを録音状態にしてメモを取るのと同じ要領で、取材したり打ち合わせするだけでいい。ポイントは重要なキーワードが出てきたら、それをノートに列挙するだけ。ノートに書いたキーワードが、ボイスレコーダの頭出し機能のインデックス(トラックマーク)になる。

4)会話や取材が終わったらペンの電源を切る
録音停止ボタンを押してもかまわないし、直接電源を切ってしまっても大丈夫。取材時の後片付けと撤退もスムーズなので助かる。

ボールペンとしての書き味もよく、なれると太さも気にならなくなる。またディナータイムのレストランや講演会のような照明が暗い場所もで、内蔵カメラはボタンを認識でき、メモをデジタル化できる
専用のキャップもついてくるので、カメラのレンズやペン先を傷めることもない
無線LANにアクセスできる場所でスマートペンの電源を入れると、録音したデータやメモをインターネット上に自動でアップロードする。以前にメモしたページに追加でメモした場合などの同期もOK

5)ウチに帰ってペンの電源を入れデータを転送
あらかじめ登録してある無線LANのアクセスポイントに接続できる場所に帰ったら、ボイスレコーダとペンで書いた内容をEvernoteにアップロードする。電源を入れるだけで自動的に無線LANに接続、Evernoteへのアップロード(同期)も自動で行なわれる

6)Web上でメモの内容(画像)と会話の音声を再生できる
アップロードできると、メモの内容は画像として閲覧でき、ボイスレコーダの音声は音声ファイルとして再生できる。またメモの内容をクリックすると、その時点で録音された音声に頭だしができる。音声はクリアで、かなり広範囲の音を拾えるようになっている。またメモを書いているペンの音はほとんど拾わないようになっている点には驚かされた。

クラウドサービスのEvernoteで管理できる。Evernoteは写真や音声、動画やテキストなどを統合的に管理できるデジタルスクラップブック
ページをクリックすると拡大され、音声とメモ書きの様子がアニメーションで表示される

 これでもなお「どこが便利なの? 」という人もいるだろう。筆者も説明書を読んだだけでは、「フツーのICレコーダと大差ないじゃん!」と思っていた。そんな人は次のムービーを見ると、どこが便利なのか一発で分かるはず。

デジタルデータは自動的にEVERNOTEにアップロードされる。アップロードされたメモをクリックすると、その時の会話が再生される
各ページに印刷されているこれらのボタンを使うと、再生位置を頭だししたり、再生速度を変えたり、音量を変えたりできる

 メモの文字部分をクリックすると、そこで会話していた内容を即聞けるので、頭だしが超便利なのだ。ボイスレコーダだと「おおっ!行き過ぎた!」「ん~、まだまだ先」を何度も繰り返す必要があるが、スマートペンだとクリック1発で頭出しできる。

 もちろん普通のボイスレコーダとしても使うことができ、ノートの下にあるボタンを押すと早送りや頭だしができるようになっている。

ペン先のカメラが動きをデジタイズ!専用ノートは印刷も可能

 おそらく技術系の読者は「製品のレビューはもういい!それより筆跡を記録する技術を教えろ!」とディスプレイの向こうで声を上げているころだろう(笑)。

 まず最も基本となる筆跡の記録は、スウェーデンのANOTOという企業のデジタル筆記ソリューションが使われている。この企業は、デジタルペン&専用用紙の技術をライセンス供与していて、国内だと日立や大日本印刷などが同様のデジタルペン技術を使って、工事現場や医療現場、事務処理に金融関連の業務専用アプリケーションを開発しているほどだ。

 つまり詳しい技術はANOTOのビジネスパートナーにならないと、技術開示してくれないが、動きや使ってみた感じなどから、筆者が分かる範囲でしくみなどを紹介していこう。

 まずペンの軌跡は、ペン先端のカメラで専用ノートに描かれたごく細かいドットを読み込んで、動きを検知しているようだ。

ペン先には筆記用のペンと、マイクロカメラが収められている。ペンが紙に触れると、内蔵された赤色LEDが光るので暗がりでも操作が可能。ペン先が紙に触れているかどうかは、クリックボタンの役目も果たしている
目には見えないがノートには無数のドットが印刷されている

 ページ内の文字は、ページ内の絶対位置で記録されている。そのため、まずページ中央に図を描いて、上下左右に文字のメモを書いたり、以前のメモに追記ししても、紙に書いたメモとデジタル化したメモのレイアウトはまったく同じままとなる。見えないドットには、ページの絶対位置情報も盛り込まれているようだ。

 さらに特に何の操作をしなくても、次のページにメモを書くだけで、スマートペンは次のページに移動したことを認識する。一般的なノートでは当たり前のことなのだが、どうやってページが変わったのかを認識しているのかを考えると、スマートペンが凄い筆記用具に見えてたまらなくなる(笑)。

文字だけでなくイラストもきっちりデジタル化してくれる
デジタル化したところ

 デジタル化されたメモには「専用ノートの何ページに書き込んだメモか」という情報まで残る。しかもANOTOによれば、ペンにも識別番号があり、紙1枚1枚にも識別番号があるので、本物かどうかを見分けるセキュリティ対策にもなるとしている。

 なおノートに印刷されているボタン類は、カメラでボタンの形状を認識しているように見える。驚かされるのは、WiFiのアクセスポイントなどを指定するときに使うキーボードだ。パスワードをノートに印刷されたキーで打ち込むのだが、反応がよく正確に入力できる。

 これだけ精度よくデジタル化できるので、絵を描くペンタブレットとしても使えるのでは?と考えるだろう。結論から言うと、現時点ではペンの動きをマウスに連動できないので、ペンタブレットとしては使えない。しかし技術的には作れるはずなので、将来どこかの会社から発売されることも十分にありうる。将来性も非常に楽しみだ。

 なお察しのいい読者は、ノートとセットのスマートペンなので「追加のノートが高額なのでは?」と思うかもしれない。しかしA5サイズ160ページで4冊2,000円なのでそれほど高いものではない。もし高いと感じた場合は、PDFをダウンロードして自分で印刷することも可能だ。ただしこのとき、プリンタの解像度が600dpi以上必要になるので注意。

アプリケーションのインストールで電卓などにも変身!

 スマートペンはアプリケーションをインストールすることで、機能拡張できるのも特徴だ。スマートフォンのアプリのようにペンにアプリをダウンロードすると、その機能を呼び出せる。

 アプリはまだ数えるほどしかなく、日本語のアプリは数少ないが、たとえばこんな面白機能も使える。

ノートにピアノの鍵盤を書くように指示があるので、指示通りに作図。あとはノートに書いたキーボードを押すと、スマートペンから音が鳴る
本格的とまではいかないが、関数電卓になっている。録音中であっても計算機が使えるので便利な上にびっくり!
計算結果はスマートペンのディスプレイに表示される

 また通常はEvernoteへのアップロードとなるが、書いたメモを自分自身にメールしたり、Googleドライブ、Facebookなどにアップロードしてデータをシェアすることも可能だ。

セットアップはちょっと面倒

 キーボードやマウスがないスマートペンなので、セットアップはかなり特殊で戸惑う人が多いだろう。しかしマニュアルをしっかり読んで、1つ1つセットアップすればいい。

 ここでは軽くセットアップの流れを説明しておこう。

スマートペンの登録をまず行なう
次にデジタルメモを記録するEvernoteのアカウントを作る。既存のアカウントを使うことも可能
Evernoteとスマートペンがリンクできるよう設定
スマートペンに表示されているアクティベーションコードを入力
専用ノートのWiFiセットアップを使って、アクセスポイントとパスワードなどを設定。パスワードはキーボードをペンで触れると入力できるから不思議

取材の多い人、折衝ごとの多い人にはぜひオススメ

 少し長くなったがスマートペンの機能がお分かりいただけただろうか?このスマートペンは「人から話を聞くことから仕事がはじまる」という人にもってこいのデジタル文房具。

 営業などの折衝ごとの多い人、現場で客先からヒアリングして図面としてメモを残したい人、インタビューなどでメモを残したい人などなどにオススメだ。

 ここで紹介したのは19,000円程度で買える2Gバイトモデルで、200時間/ノート2万ページ分が内蔵メモリに記憶できる。上位モデルの8Gバイト版はおよそ28,000円で、800時間/ノート8万ページ分が記録可能となっている。

 筆記用具として考えると少し高めだが、デジタルがジェットとして考えると相当の価格といえるだろう。いや人によっては、この便利さ他の文房具やガジェットにはない便利さなので、すぐに元を取れてしまうほど便利に使えるだろう。

藤山 哲人