やじうまミニレビュー
レイメイ藤井「ペンカット」
■ハサミを持ち歩く
レイメイ藤井「ペンカット」 |
外出先で、ちょっと刃物が欲しいというときが、たまにある。たとえば、出がけにポストから持って出た郵便物を開封するとき。書店で買った雑誌に付録がついていてテープで固定されていたとき。急な雨で濡らした靴下の替えを買ったら、ビニールタグで左右が結ばれていたときなどだ。
こういうときには、カッターナイフを使うことが多い。カッターナイフは細く、ペンケースの中にそのまま入るからだ。
しかし、カッターナイフは、いざとなれば刃を長く出すことができるだけに、刃物としての怖さがある。とくに、周囲に人がいるときに、いきなりバッグをごそごそやって、ペンケースからカッターナイフを取り出すのは勇気がいる。電車の中で隣り合わせた赤の他人が、いきなりカッターナイフを取りだしたら、やはり気持ちが悪い。
本当は、こういうときはハサミを使いたい。ハサミも刃物ではあるのもの、突き刺したり斬りつける機能がないので、周囲に恐怖感を与えずにすむ。
というわけで、ペンケースに入るハサミを探して、今回はレイメイ藤井の「ペンカット」にたどりついた。
ペンカットの本体は5色のカラーバリエーションがあるが、今回はブルーを選んだ。
メーカー | レイメイ藤井 |
製品名 | ペンカット |
希望小売価格 | 630円 |
購入場所 | Amazon.co.jp |
購入価格 | 630円 |
■カッターナイフ並みのスリムな本体に、ハサミそのものの使いやすさ
ペンカットの良いところは、いくつかあるが、なんといっても本体のスリムだ。ほとんど3色ボールペン並みの細さで、ペンケースに入れても邪魔にならない。
折りたたんだ状態では、3色ボールペンかカッターナイフのように見える | 手前がキャップで、奥がグリップ側になる | 本体は細身なので、小さめのペンケースにも入る。3色ボールペンと同じぐらいの太さだ |
ボールペンやカッターナイフとの比較。長さは同じぐらい | カッターは薄いが、ペンカットは厚みがある | 使用する状態でのカッターとの比較 |
さっそく、ペンカットを使ってみよう。ペンカットは、普段は刃の先頭にキャップがはまっており、金属製の刃が見えないようになっている。
キャップをはずし、本体の表と裏にあるスライダーを動かすと、指をひっかけるための輪が出てくる。これをメーカーでは、ハンドルループと呼んでいるが、これがあることがペンカットの大きな特徴だ。
キャップを外すと初めて刃が見える | 刃を開いた状態 | 本体のスライダーを動かすと、ハンドルループが出てくる |
携帯型のハサミでは、この指をかける輪がないことが多い。つまり、刃を1回開いた状態から閉じることはできるのだが、もう1回開いて閉じることが難しい。ハサミは刃を閉じる時に、物を切るので、1回だけ切ることはできるのだが、2回以上続けて物を切ることができないのだ。
携帯型の簡易セットなどに入っているハサミでは、指をかける輪がない代わりに、バネ仕掛けで刃が開くようになっているものもある。これだと、2回以上連続で切ることはできるのだが、常にバネに逆らいながら刃を閉じることになるので、細かい操作ができない。
つまり、これまでの携帯型ハサミは、1回だけ何かをチョキンと切ることはできても、ある程度大きさのある紙をザクザクと複数回に分けて切ることが難しかったのだ。それに対して、ペンカットは、指をかける輪にこだわったことで、普通のハサミと同じように使えるようにしている。
マルチツールに備わっているハサミの例。バネの力で常に刃が開いた状態になっている | 下が普通サイズのハサミ。大きさは異なるがハサミとしての要素は共通している |
ペンカットの刃渡りは46mmしかないので、1度に普通のハサミの2分の1から3分の1しか切れない。それでも、ハサミを閉じて開くという動作が自然にできるので、キリトリ線がある用紙を、線に沿って2つに切ると場合でも、チョキチョキとスムーズに切れる。
刃渡りの短さが影響するので、A4の横方向をまっすぐに切るのはちょっと難しいが、ハサミが揺れて切り口がジグザグになってしまうようなことはない。本体の厚みがちゃんとあるので、指掛けの輪に通す指以外も添えることができるからだ。
一言で言えば、ペンカットは、かなりハサミらしい使い方ができる製品だ。日常の中の、ハサミが必要とされるような場面で、ペンカットで用が足せないということは、ほぼないだろう。
■左利きのユーザーや、廃棄時の処理にも配慮
ペンカットは、ハサミとして良くできているだけではなく、非常にまじめに考えられた製品だという印象を受ける。ペンカットを使いこんでいると、いろいろなところに過剰なほどの配慮が感じられる。ペンカットのメーカーであるレイメイ藤井が、学校関係の製品を多く作っている会社だということが影響しているのだろう。ペンカットは、単なる文房具ではなく、“学校で児童生徒が使う文房具”という視点で作られていると感じるのだ。
たとえば、折りたたみ時には刃先が見えないようにするキャップがそうだ。通常の文房具であれば、ある程度、刃先が丸くなっていればキャップまでは必要と思わないだろう。このペンカットを使用するのが、年齢の低い児童生徒であるということから、一層の安全性を考えてのことだと感じる。
また、指をかける輪が存在することによって普通のハサミとして使える点もそうだろう。指をかける輪は、ハサミとしての使いやすさを向上させているが、それだけでなく、学校で教えるハサミの使い方という知識を大事にし、同じ方法で使えることを目指したのだと思う。ハサミとしての基本に忠実な製品だという印象を受ける。たとえば、折り紙を2つに切るとか、千代紙に切れ目を入れて短冊を作る、というような、学校教育の中でハサミが必要な用途にも十分に使える。
さらに、ペンカットは、当初は右利き用にセットされているが、ちょっと部品をつけかえるだけで、左利き用に変えられる。平等性と少数者への配慮が必要となる学校教育を背景として考えれば、当然といえる機能だろう。
このために、ペンカットの刃は、普通のハサミのように内側だけに刃がついた片刃ではなく、外側にも刃がついた両刃となっている。刃の立て方はきつくないので、外側に触っても指を傷つけることはほとんどない。それでも両刃になっているということが、キャップが用意されている理由の1つではあるだろう。
出荷時は右利き用だが、簡単な操作で左利き用にも設定できる | 左右の両利きにするため、普通のハサミと違って刃が両刃となっている | 刃とグリップの樹脂はネジ止めされており、廃棄するときは分別できる |
また、ペンカットは素材別に、分解しやすい構造になっている。これは、左利き用に組み替えることを可能にしているだけではなく、廃棄する際にリサイクルしやすいように素材別に分類できるようにという配慮でもある。こう見てくると、刃渡りの短ささえ、学校での安全性を考えた末の配慮なのではないと思えてきてしまうほどだ。
というわけで、細かい点を見ていけばいくほど、ペンカットがただのアイデア文具ではなく、非常にまじめに考え抜かれた「文房具」であることがよくわかる。
誤解しないでほしいのは、だからと言ってペンカットを使うときに、保護が優先されていて使いにくい部分があるとか、何か知識が必要とか、まじめに対さなければならないということではない。ユーザーは、サッとペンカットを取り出して、チョキンチョキンと用を足せば良い。
ただ、そうやってペンカットを使っている人に対して、危険が及ばないように、正しい使い方が身に付きやすいようにと見守っている、温かい視線を感じる製品だということだ。
ペンカットは、ペンケースに入れて、筆記用具と一緒に持ち運べるハサミといだけではなく、ハサミ単体としても良くできている。また、左利きへの対応や、廃棄時の分別など、細かい配慮が感じられる製品だ。大人が便利に使うだけではなく、正しいハサミの使い方を教えるために子供たちに持たせる製品としても推薦する。
2011年 11月 4日 00:00
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