やじうまミニレビュー
大作商事「単1のつもり」
大作商事「単1のつもり」 |
■震災直後に乾電池アダプタが大人気
3月11日の東日本大震災のあとで、それまで埋もれていた過去の記事が、急に読まれるようになった。それは、2006年11月に掲載された「やじうまミニレビュー 単三電池を単一/単二として使うアダプタ」という記事だ。
おそらく、震災直後に懐中電灯などの防災用品を備えようとしたときに、単一乾電池が足りず、単三乾電池のサイズを調整するアダプタを探す人が増えたのだろう。すでに5年も前の記事なので、震災直前の週では152回しか読まれていなかった記事が、震災直後の週には1万回を越える閲覧があった。
これだけ需要があるのだから、震災後は、有名無名を問わず、たくさんの乾電池アダプタが市場にあふれた。一時はAmazonのマーケットプレイスには20種類を越えるアダプタが並んでいたほどだ。
今回はその中の1つ、大作商事の「単1のつもり」を紹介しよう。
メーカー | 大作商事 |
製品名 | 「単1のつもり」 |
購入場所 | 大作商事ダイレクトショップ |
購入価格 | 546円(4個セット) |
■単三電池が2本入るのが特徴
「単1のつもり」は、単三電池を2本束ねて、単一電池として使える乾電池アダプタだ。ほかの多くのアダプタが、単三電池1本のサイズだけ調整して、そのまま単一電池として使うタイプであるのに対し、「単1のつもり」では、2本の単三電池を並列に接続するため、電池の持ちが良いのが特徴だ。
とりあえず、4個セットを2個、つまり8個の「単1のつもり」を買って、エネループタイプのアダプタなどのほかの乾電池アダプタと比較しながら、いろいろな器具で使ってみた。
パッケージ | 左からソニー製のアダプタ、単一乾電池、「単1のつもり」 | エネループも問題なく入る |
「単1のつもり」」は、緑色の薄い樹脂でできている。マイナス極の側が開くようになっており、そこに単三電池を入れて、フタを閉めると準備完了だ。エネループ用やソニー製のアダプタは、単三電池にはめるような形だが、「単1のつもり」は包み込むような形をしている。
数種類の単三乾電池を試してみたが、問題なく使用できる。また、エネループでも問題なかった。なお、写真を見てもらうとわかるが、単一乾電池と「単1のつもり」は、微妙に大きさが異なる。
マイナス極側は大きな極板になっている | マイナス極側の比較。左からソニーのアダプタ、「単1のつもり」、単一乾電池。ソニーのアダプタは、エネループ用と同じタイプで、電極の面積が単三のままで狭い |
フタは、写真のようなスナップで止めるようになっているのだが、これがとても固い。はめるときはそうでもないが、外すときは力が必要だ。
マイナス極側にあるフタを開けたところ | フタの構造。電極が浮いている | フタとそれを止めるためのスナップの構造 |
スナップを開いたところ | マイナスドライバーで開けているところ | プラス極側の電極 |
いったんセットしてしまえば、特に使い方は難しくない。そのまま単一電池の代わりとして製品に使用できる。たとえば、単一電池を2本使う乾電池式の小型扇風機や、単一電池を2本使う懐中電灯、着火用に単一電池を1本使うガスレンジなどで試してみたが、問題なく使えた。
単一を2本使う懐中電灯でも使えた | 乾電池式の「PORTABLE FAN aRESSA」 | 乾電池式の卓上タイプの小型扇風機に入れた状態。台座部分が軽くなるので安定が悪くなる |
「単1のつもり」に、単三乾電池を2本入れた時の重量は64g。パナソニック製の単一乾電池が135gもあるのに比べると、半分程度の重さということになる。持ち運ぶ機器などに使えば、この軽さが利点になることもあるだろう。ただし、卓上タイプの小型扇風機では、単一乾電池の重さを想定して作られているので、「単1のつもり」を入れると、台座部分が軽くなって、倒れやすくなってしまった。
パナソニック製の単一乾電池は135gもある | エネループタイプのアダプタは39g |
「単1のつもり」のみの重量は30g | 単三乾電池1本を入れると47g | 単三乾電池2本入れると64g。それでも単一乾電池の約半分の重量だ |
電池の持ちの面では、単三アルカリ乾電池を2本入れた「単1のつもり」は、単三アルカリ乾電池を1本入れた乾電池アダプタよりも長持ちした。時間で言うと、「単1のつもり」は丸1日程度持続したのに対して、1本の乾電池アダプタでは10時間程度使っていると風量が落ちてくる。あくまで体感時間で、きちんと計測したわけではないが、この扇風機のように単純で負荷の軽い機械では、アダプタに電池を2本入れると、理屈通りに2倍持つと思って良いようだ。
とはいえ、この扇風機では、まともなメーカーの単一アルカリ乾電池を使うと、48時間付けていても風量が落ちない。その重さからもわかるように、単一電池というのは恐るべき容量をもっており、2本束ねたからと言って単三電池の容量が及ぶところではない。
■マイナス極が大きい
「単1のつもり」のもう1つの特徴は、マイナス極側の端子がきちんと大きいことだ。古い懐中電灯などによくあるのだが、マイナス極側がバネ状になっていることがある。
もちろん単一電池を使っている分には、まったく問題ないのだが、単三とアダプタの組み合わせで使うと、マイナス極側は単三のサイズのままなので、うまく支えてくれないことがあるのだ。しかし、「単1のつもり」では、マイナス極側も大きな端子となっているので、バネタイプの機器でも問題なく使用できる。
ここで、8個の単一電池を使用する、大作商事の「マイファンポータブル 10インチ」という扇風機で試してみた。この扇風機の電池室は狭い上に、複雑な形をしている。しかし、「単1のつもり」は、ちゃんと8個入った。最後は押し込むように入れる必要があるのだが、マイナス極側にも力が入れられるので、特に支障なくセットできた。
大作商事の「マイファンポータブル 10インチ」 | 大作商事の「マイファンポータブル 10インチ」は8本の単一乾電池を使用する |
「単1のつもり」8本でも使用できた | マイナス極側の極板が大きいので、こういう圧力のかかりやすい機器でも使用できる |
■固いレバーが難点
というわけで、「単1のつもり」は、手持ちの機器ではすべて問題なく使用でき、単一と単三の容量の違いも2本セットすることで、ある程度解決できた。
では、「単1のつもり」を常用しているかというと、そうではない。先ほども書いたように、スナップの堅さには問題がある。たとえば、乾電池型の扇風機などでは、数日に1回は、電池を交換するか、充電するために取り出す必要があるのだが、スナップを外すたびに、爪を痛めそうになるのだ。最近は素手で外すことは諦め、マイナスドライバーを使って開けるようになった。簡単に取り外しができるエネループタイプのアダプタに慣れていると、これは面倒に感じる。
結局、エネループタイプが使えるときはそちらを、マイナス極側が大きくないと困る機器や、電池の容量が必要な場合は「単1のつもり」を使うと言うこところに落ち着いた。
スナップの堅さが工作精度の問題なのか、単三電池2本分の重量を支えるために仕方がないのかはわからないが、もうちょっと緩くなるだけで、使いごこちはグッと改善されるだろう。
ともあれ、マイナス極の大きななどの問題で、エネループタイプのアダプタが使えないときや、少しでも電池の容量を増やしたいときに有効な製品であることは間違いない。手持ちの機器と用途に合わせて、うまく使い分けることをお勧めしたい。
2011年 9月 2日 00:00
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