やじうまミニレビュー
日本庭園を造る話題のボードゲーム「枯山水」で遊んでみた!
by 河上 拓(2015/4/6 07:00)
幻のゲーム「枯山水」をついに入手!
ちまたでなにかと話題のボードゲーム「枯山水」。昨年11月に発売されて以来、ゲームの写真がニュースサイトやまとめサイトで紹介されたことで人気に火が付いた。朝日新聞やテレビのニュース番組で取り上げられるなど、「今、話題のアナログゲーム」として、注目を集めている。
何を隠そう、大のボードゲーム好きの筆者。そんなゲームを放っておくわけがない。とはいっても、このゲーム、現在は入手困難で、定価8,100円の商品がAmazon.co.jpでは15,000~20,000円で取引されている。そんな幻のゲームをどうしてもプレイしてみたい! と、探しに探してついに入手! さっそく遊んでみた。
メーカー名 | New Games Order |
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製品名 | 枯山水 |
購入場所 | アナログゲーム専門店 |
希望小売価格 | 8,100円(税込) |
枯山水とは“水を使わずに自然山水の美を凝縮し表現した日本庭園の一様式”とのこと。禅の精神に通じ、特に禅寺の庭園に作られた枯山水は高度な精神性と芸術性を併せ持っているという。砂紋が水を表現し、石は船や山に見立てて配置されているのだ。このゲームでは、“禅の精神と芸術性を最もよく現したプレイヤーが勝利します”という、これまでのボードゲームとは全く違うコンセプトが新しい!
そもそも、このゲームの作者、山田空太氏は絵柄のすべて異なる手描きのイラストカードが120枚以上入った「ポストマンレース」などの同人ボードゲームを発表するゲームデザイナーで、一部のマニアに熱狂的な支持を得ている。
今回の枯山水でも、実在する有名庭園と同じ形に石を配置することでボーナス点が入る「名庭園カード」が登場するなど、枯山水という文化に対する山田氏の情熱が随所にちりばめられている。
すべて形の違うミニチュアの庭石は1つずつ石膏を手塗りして仕上げるため、生産数は月にたった150個! そりゃ、入手に苦労するわけだ……。
“徳”を積みながら気付いたら庭園造りに夢中!
前書きはこの辺りにして、さっそく遊んでみよう。
プレイヤーは禅僧(!)となり、庭園ボードにタイルを配置して美しい枯山水を作ることを目指す。手番にはタイルを1枚引き、自分の庭に配置するか、欲しい人に“譲渡”しながら庭を造っていくこととなる。
引いたタイルを、すでに自分の庭に配置したタイルに隣接させながら、砂紋やコケの柄をうまくつながるように並べていく。しかしタイルにはさまざまな模様が描かれているため、なかなか自分が欲しいタイルを引くことができない。
そこで重要になるのが、他のプレイヤーにタイルをあげる“譲渡”のアクション。引いたタイルがいらなければ、欲しい人を募って譲ることができるのだ。
プレイヤーが禅僧だけあってこのゲームには“徳ポイント”という概念が登場する。
徳は“譲渡”のアクションや“座禅”のアクションで高めることができる。この徳を下げて消費することで、石を獲得したり、人のタイルを強奪するなどのアクションができる。いわばお金のような存在だ。
他人にタイルを譲ると、自分の徳が高まるため「Win-Win」の関係が生まれたかと思えば、配置したベストなタイルを相手に強奪されてしまうなど、一喜一憂しているうちに庭園造りに夢中になっていた。
徳をすり減らして、悪徳坊主にならないように……
庭石は同じ種類でもそれぞれ形が微妙に違っているため、自分の造る庭園に合うものを、ついつい選びたくなってくる。
序盤は「いいお庭ですな」「素敵な石を選びましたな」などと禅僧らしい、清らかなあいさつを交わす余裕もあったが、今回は遊んだメンバー全員がゲーマーだったこともあり、中盤に差し掛かるころには私利私欲をむき出しにした悪徳坊主たちが徳をすり減らしながら庭タイルを奪い合う展開に!
「チッ、徳が足らねえな! 座禅を組むか」
「ぐああっ! 強奪してえ!」
「ヒヒヒ、いけっ! 千利休!(作庭家カードを出しながら)」
「美しいお庭だこと(嫌み)」
「徳・・・なんぼや?」
などなど悪の限りを尽くす坊主たちの罵詈雑言が飛び交い、わびさびとは無縁の卑しいタイルの奪い合いの末、全員がタイルを埋めてゲームが終了。
得点計算は、対称性や砂紋のつながりをチェックして得点が加算され、さらに石の置きかたによるボーナスが入る。
今回は心のすさんだゲーマー同士のため、このようなゲーム展開となったが、初心者同士で遊べば、協力しながらお互いの庭の美しさを高め合う、まったりプレイももちろん可能。この懐の深さも、このゲームの魅力といえるだろう。
プレイ時間は4人で90分程度。「枯山水ってあの野球部が校庭をならすトンボみたいなのでぐにゃぐにゃ線を引いてるへんな庭でしょ?」というぼんやりした知識しかない筆者が遊んでも、飽きることなく楽しめた。
ゲーム終了後には自分の庭園の写真を撮り、お互いの庭園を眺めてたたえ合った。まったく興味のなかった枯山水や作庭家について、詳しく知りたくなってきたから不思議だ。“譲渡”“強奪”が生むインタラクションや、石配置の縛り、個別の目標など、ボードゲームマニアも納得の「らしさ」があふれている反面、庭や僧の世界に興味があるという人も充分楽しめそう。様々な要素が複雑に絡みあった“大人が楽しめる”ボードゲームだ。