やじうまミニレビュー

カール事務器「アリシス LP-35」

~穴あけに失敗しない2つ穴パンチの決定版

やじうまミニレビューは、生活雑貨やちょっとした便利なグッズなど幅広いジャンルの製品を紹介するコーナーです

2つ穴ファイリングの成否はパンチで決まる

2つ穴ファイルの例。このように経費の伝票を保存するのに使っている

 仕事の関係で、ある書類や伝票を5年間ないし7年間保存する必要が出てきた。保存しておかなければならないデータの大半は、領収書やレシートだ。

 いろいろ考えた末に、小さな伝票類はA4用紙に貼り付けて書類のサイズを統一し、2つ穴パンチで穴を開けてファイリングすることにした。ファイリングの方法としては一番基本的な方法だ。

 2つ穴のファイリングシステムは、頻繁にめくったり力をかけたりするのには向いていないが、書類の紙質や厚みを選ばないという特徴がある。ただし、使用するパンチの良し悪しで、作業効率が大きく左右される。

カール事務器「アリシス LP-35」

 それで良い2つ穴パンチを探してみたところ、現時点で定番と言える存在があった。それが、今回紹介するカール事務機の「アリシス LP-35」だ。2009年末に発売され、グッドデザイン賞を始めとする多くの栄誉を受けている。

 アリシスシリーズには、LP-16/LP-20/LP-35の3機種がある。型番の数字はそのまま穿孔できるコピー用紙の枚数だ。今回は、枚数の多い用紙を試すためにLP-35にした。LP-35は、ホワイト/レッド/ブルーの3色用意されている。今回はオフィスで使うのでホワイトにしたが、レッドとブルーも抑えめな色合いで魅力的だ。

メーカーカール事務器
製品名アリシス LP-35
希望小売価格1,575円
購入場所Amazon.co.jp
購入価格1,179円

厚い用紙もスパッと抜ける軽いハンドル

 アリシスの最大の特徴は、ハンドルが軽いことだ。カールでは「アシストリンクシステム」と呼んでいるが、ハンドルの支持機構にリンクが入っており、テコが2重に働くようになっている。

本体側面。レバーはかなり上まで上がる
レバーの根本部分。単純なちょうつうがいではなく、手前にリンクが入っているのが見える
違う角度から見たリンク機構
レバーを押し下げた状態
通常の2つ穴パンチの構造。リンクがなく、シンプルなテコの構造になっている

 実際に試して見ると、特に紙の枚数が多いときに、普通の2つ穴パンチとは力のかかり具合いが違う。

 数枚の用紙をパンチしているときは、アリシスでも普通のパンチでも、あまり差を感じない。しかし、紙の枚数が10枚を越えたあたりから、普通のパンチは力が必要になって体重を乗せるようにしてようやく押し切る感じになる。アリシスでは、重さの変化が少なく、紙の枚数に関わりなく、スカッと抜ける感じだ。

 穴を開けるコピー用紙を20枚、30枚と増やして試してみたが、力のかかり方はあまり変わらない。わざとレバーをゆっくりと動かしてみると、最初に紙に刃が当たるところで抵抗があるが、そこから先もレバーが重くならず、最後にスパンと抜ける。

穿孔時のリンクの動き
横から見たハンドルの動き

 普通の2つ穴パンチだと、紙に当たったところから、紙の厚みの分だけグーッと重くなるが、そういう感じがない、だいたい一定の重さだ。

 軽いと言ってもスカスカという状態ではなく、リンクを介しているためか、常に多少の重さはある。刃物というよりは、何か機械を操作しているような不思議な感触だ。レバーを上に戻すバネの力が強いので、そう感じるのかもしれない。

 枚数が多い用紙に穴を開けるときに、刃の切れ味が悪いパンチだと、用紙の最初の部分と最後の部分で、穴の位置がずれてしまうことがある。しかし、アリシスでは、紙がずれることがない。紙の厚みに関わらず、きれいな丸い穴が開く。刃の切れ味が良い上に、アシストリンクシステムによって刃への力のかかりかたが一定なのだろう。

 ちなみに、手元のコピー用紙を35枚重ねたときの厚みは、約3.2mmになる。かなりの厚みだが、アリシスでは、きれいに丸い穴が開く。穴を開けるときは、安定させるために両手を添えてしまうが、体重をかける必要はなく、腕の力だけでレバーを押し下げることができる。

 また、2つ穴ファイルは薄いパンフレット類を綴じる用途にも使われている。アリシスは、基本的にはコピー用紙向けなのだが、アート紙などの厚い紙が使われているパンフレット類でもコピー用紙同様に軽い力で穴が開く。コピー用紙35枚用なので、穴が開けられるパンフレットは厚さが3mm程度までの物に限られるという制限はあるが、その範囲ではお勧めできる。

用紙を折らずに位置が決められる

 アリシスは、アシストリンクシステム以外にも、使いやすい工夫が多い。特に便利だったのは、用紙の大きさを測るためのゲージだ。

 以前使っていた2つ穴パンチでは、紙に穴を開ける前に、一番上の紙を抜き取って、端を2つ折りにして折り目をつけていた。この折り目をパンチの目印に合わせることで、穴を開ける位置を紙の中央から合わせていたのだ。

 しかし、アリシスでは、紙の中央位置を知るための機構が用意されている。本体から引き出せるゲージが用意されており、紙の大きさに合わせてゲージを引き出す長さを調整すれば、紙を2つ折りにする手間がいらない。

 ゲージを引き出す量は、用紙のサイズと方向を文字とアイコンで表したスケールが用意されているので、それを目安にして簡単に決められる。また、ゲージは引き出した状態でも、垂れることなく、平らになっているので、紙がずれにくい。

ゲージを引き出した状態
本体正面にスケールが用意されている
ゲージの白線を、スケールの用紙サイズに合わせると、ゲージの長さが設定できる
用紙の端をゲージに合わせると、紙の中央とパンチの中央が合う
紙当ての部分が支えになっているので、ゲージが垂れず水平になっている
コピー用紙を35枚束ねると、約3.17mmになる
穿孔された紙の穴。いわゆる裏紙でヤレているのだが、まっすぐに打ち抜かれている
ゲージを使ってA4の用紙の位置を決め、厚い紙を打ち抜く

 ゲージの端には紙当てが用意されている。横のボタンを押すと、紙当てが数ミリ飛びだして、紙を固定してくれる。紙当てをたたむときは、軽く上から押すと戻る。

ゲージの先端には、紙当てが用意されている
右の状態で、ボタンを押すと紙当てが上がる

ゴミ捨てにも細かい配慮

 もう1つ、以前の2つ穴パンチから改良されていたのが、打ちぬいた紙ゴミの捨て方だ。

 以前のパンチでは、底面全部にはまるビニールのフタが用意されていて、その全面がパカっと開けるようになっていた。ちょうど、冷凍庫で使う食品用の密閉容器のような構造だ。ゴミ箱の中で開かないと紙ゴミが散ってしまうことがときどきあった。

 アリシスでは、底面の一部だけが開くようになっている。パカっと開いたときもフタが残っているので、紙ゴミが散らばらない。ゴミ箱の上でフタを開けば、紙ゴミはゴミ箱の中に落ちる。また、フタは半透明で、紙ゴミの溜まり具合も見える。

紙ゴミを捨てるときは、底の後ろの部分が開く
打ちぬいた紙ゴミ。強い力がかかり凹形に凹んでいる。切断面がきれいだ

 フタになっていない部分には、ゴムのストッパーが貼られているので、底面全部がフタだった以前の製品に比べて、パンチ本体がずれにくくなっている。

 また、最近の2つ穴パンチでは普通ではあるが、レバーを押し下げた状態で固定するストッパーも、もちろん備えられている。地味な機能だが、これがあると、机の引き出しなどにパンチをしまいやすいので、あるとないとでは大違いだ。

 LP-35の本体サイズは、134×125×117mm(幅×奥行き×高さ)と大きいが、ハンドルロックすると高さが54mmになるので、だいぶ小さくなる。

レバーを立てた状態
レバーを下げて、ストッパーをかけた状態

使用頻度の高い人には絶対オススメ

 なお、今回は厚い用紙を軽く打ち抜けるというアリシスの特徴を試すために、一番強力でコピー用紙35枚を打ち抜く「LP-35」を購入した。しかし、LP-35は本体サイズが大きく、レバーのバネも強めなので、一般的な用途には「LP-16」や「LP-20」を検討されることをお勧めする。価格もLP-16は682円、LP-20も1,050円とさらに手頃で、普通の2つ穴パンチと大差がない。

 ハサミやカッターもそうだが、こういう日常的な文房具は、つい手に入れやすく値段が安い製品を選んでしまいがちだ。何かの機会に、定番と言われる製品を使ってみると、こんなに楽だったのかとびっくりすることが多い。

 私の場合、このアリシスもそういう体験だった。2つ穴パンチを使う機会は、月に数度なのだが、ともかく使っていて気持ちが良い。用もないのに、やたらとパンフレットなどに穴を開けたくなる。

 2つ穴パンチを、1日に数度以上使うことがある人や、頻度は低くても枚数の多い用紙を綴じる必要がある人には、ぜひ試して見てほしい。ダメな2つ穴パンチを使っているときの、イライラがなくなるだけでも、絶対に買い換える価値がある。強くおすすめしたい。

伊達 浩二