やじうまミニレビュー

米五「手作り味噌セット」

~仕込み期間9カ月、おいしい手前味噌ができた

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米五「手作り味噌セット」。樽の中に必要な材料が入っている

 2012年2月某日、家電Watch編集部から大きいダンボールが届いた。開けてみたところ、出てきたのは大きな樽。「何コレ? 」と慌てて中身をチェックしてみると「手作り味噌セット」だった。

メーカー米五
製品名手作り味噌セット
購入場所Amazon.co.jp
購入価格3,969円

 正直言ってこれまで、発酵モノは得意ではなかった。衛生面に気をつけて丁寧に作らなければ失敗する確率が高く、温度や湿度といった環境でも出来上がりに差が出てしまうので難しいのだ。私のような大ざっぱな主婦にはハードルが高いと思っていた。

 だが周りの人に聞いてみると、「自分も作ってるよ」という方が案外多くて驚いた。手作り味噌は、一度作るとハマッてしまうものらしい。市販品とは香りとまろやかさが全く違うそうで、毎年作っているという方までいた。

 そんなこんなで俄然やる気になったので、今回届いた米五の手作り味噌セットでチャレンジしてみることにした。

大豆、米こうじ、塩、内蓋、説明書が入っている
大豆は北海道産の大粒大豆
大豆は粒が大きく揃っており、ツヤもよい
米こうじは真空パック
塩も国産
木の内蓋
取扱説明書はイラスト入りでわかりやすい

味噌を仕込むのに一番適しているのは1月下旬から2月

 製造元である米五のサイトによると、仕込みに一番適しているのは1月下旬から2月にかけての寒い時期で「寒仕込み」というらしい。冬から春、夏と進むにつれて発酵熟成が進み、さらに秋に気温が下がって落ち着いて、おいしい味噌になっていく。この時期に仕込んだ味噌は、11月から12月頃に食べ頃になるそうだ。もちろん、それ以外の時期でも味噌の仕込みはできるそうだが、初心者が作るのなら寒仕込みのほうが失敗が少ないという。

 厳しい冷え込みが続いていた2月上旬に届いたので、2月15日に仕込むことにした。取扱説明書を見ると、前日の夜に大豆を水に浸けて吸水する必要がある。さっそく樽の中身に入っていた材料を取り出してみる。

 手作り味噌セットに含まれているものは、北海道産大粒大豆1.3kg、国産米麹1.5kg、塩700g、仕込み用の樽1個、内蓋、説明書。自分で用意しなければならないのは、ラップ、重石、新聞、紐。重石の重量は1.2~1.8kgと指定されていたので、近所のホームセンターで1.5kgの重石を購入しておいた。重石は1,180円で購入したが、繰り返し使うことができる。

それほど手間はかからないが、大きな容器や鍋が必要

 仕込む前日に大豆を給水させる必要がある。このとき、大豆の4倍量くらいの水に吸水させるが、全部入る容器が我が家にはなかったので、2つに分けて吸水することにした。吸水させる時間は、夏場なら6~10時間、冬場は14~16時間。今回は14時間給水させた。

 大豆を煮るときは、大鍋か圧力鍋を使用する。我が家では4.5Lの圧力鍋を使用して2回に分けて加圧して煮ることにした。ここでは、10分ほど加圧して、冷めるまで放置しておく。大豆は1粒をはかりに乗せて、上から押さえて500g程度でつぶれればちょうどよい。今回、390gでつぶれてしまったので、少しやわらかくなりすぎたようだ。

14時間給水させた大豆。一番大きな鍋を使っても、1つに収まらなかった
塩切り麹を作る。塩630gを入れる
両手ですり合わせてまんべんなく混ぜる
390gでつぶれてしまった! やわらかすぎたかも……

 その間に「塩切り麹」を作る。塩700gを630g、65g、5gに分ける。米麹は真空パックで固まっているが、手でほぐすとパラパラになる。両手ですり合わせるようにしてほぐし、630gの塩がまんべんなく行き渡るように十分に混ぜる。

 煮えた大豆をザルにあげ、煮汁と分け、熱いうちにつぶす。冷えるとつぶしにくくなるので、準備をして素早く行なう。その後、麹菌が活動しやすい35℃前後に冷やす。煮汁はあとで使うのでとっておく。

熱いうちにどんどんつぶしていく
鍋に移し、温度を測ったところ35.1℃。ちょうどいい温度だ
塩切り麩をよく混ぜる

 最後に塩65gと煮汁を混ぜた種水を、塩切り麩と一緒につぶした大豆に混ぜて仕込みは完了だ。

 あとは両手で丸め、桶の底に打ち付けるようにして空気が入らないように詰める。このとき、思い切り打ち付けて空気を抜くように固く詰めることで熟成が行なわれる。上からギュッギュッと押してなるべく固くするのがコツとのことだ。

これで完了だ。あとは樽に詰めるだけ
両手で丸める
両手でビターン!! と打ち付ける
固く詰めることが大事

 最後に塩5gを桶の縁の方に振り、上からピタッとラップで覆い、押し蓋を置いた上に重石を置く。桶の口を新聞紙で覆い、ひもで縛って仕込みが完了だ。直射日光の当たらない涼しい場所に置いて熟成させる。我が家は2階の北側の部屋の片隅に置くことにした。ここまで、大豆の吸水をのぞいて半日程度で完了した。

桶の縁に塩をふる
ラップをかけて内蓋を乗せる
別に購入した重石を乗せる
新聞紙をかぶせ、ヒモで縛って完成

 仕込みの作業はそれほど手間はかからなかったが、一番のハードルは大きめのボウルや鍋を用意することだ。大豆を吸水させるのにも水を4倍足さなければならず、思いのほか大きな容器が必要だった。茹でるときもできる限り大きな鍋を使ったほうが良い。

4カ月後、6月下旬に切り返し

 仕込みをしてから4カ月後の6月下旬、いったん蓋を開けて「切り返し」という作業を行なう。桶の底と上部の醗酵の進み具合を均一にするためだ。

 この時点でカビが生えたり、水が上がっていたらどうしよう……とドキドキしながら開封したところ、とてもキレイな状態だった。麹のツブツブが目立っているが、発酵して色が少し濃くなり、味噌らしい色になっている。しゃもじでよくかき混ぜ、ムラなく発酵するようにする。

 ラップを取り替え、重石をして新聞紙をかぶせてから、さらに5~6カ月待つ。

おそるおそる開けて見た。特に水が上がっていなかった
少し色は濃くなっている。ほのかに味噌の香りが漂う。よく混ぜておく
平らにして元に戻し、さらに5~6カ月待つ

9カ月後、遂に完成! 手前味噌ですが…本当においしいんです!

 仕込みをしてから9カ月の11月中旬、いよいよ食べごろの時期を迎えた。新聞紙を取って中を見てびっくり、6月に切り返しを行なったときはそれほど変わってなかった色が、濃く飴色に変化している。

 混ぜてみると白いツブツブした麹は目立たなくなっていて、驚くほど香りが良い。

 出来上がった味噌は約5.4kg。使う分だけ容器にとり、冷蔵庫に入れて少しずつ使うことにした。寒い日が続いているので残りは北側の部屋に置いたが、あたたかくなったらすべて容器に入れて冷蔵庫にしまったほうがよさそうだ。

色が全然違う! 濃い色になっていた
ちゃんと味噌になっていて感動してしまった。香りがとてもよい。
小分けして冷蔵庫に入れて使用する

 はじめに豚汁を作ってみた。まろやかで素晴らしい香りの豚汁だ。こんなにおいしい味噌汁を食べたのは初めてかもしれない。

 味噌田楽にしてもおいしい。味噌の香りが良いので、ちょっと加えるだけでご馳走になる。

豚汁にしてみた。なんて素晴らしい味噌の香り!
味噌田楽もおすすめ。シンプルな調理にすると味噌の味がよくわかる

 さらに土手鍋にも挑戦してみた。自家製味噌と牡蠣との相性は抜群。まろやかでコクがあり、他の食材の風味もよく引き立てる。子供は牡蠣が嫌いだったが、この土手鍋を機に好きになってしまった。いつも残すスープも、みんな喜んで飲んでしまった。贅沢な味わいでやみつきになりそうだ。

牡蠣の土手鍋は絶品! いつも鍋のスープは残るが、味噌がおいしいせいか家族みんなスープまで楽しんでいた
おいしい味噌とおいしい牡蠣はよく合う

 大豆を茹でたときにやわらかすぎた気がしたので不安だったが、きちんとできていてホッとした。味噌を毎年作っている方は結構いるようだが、確かに一度味噌作りにはまってしまうと毎年作りたくなる。10カ月ほど待たなければならないものの、部屋の片隅に置いておけばいいので、それほど手間ではない。

 一番安心できたのは、原材料を1つ1つ手にとって確認できたことだ。出来合いの味噌は原材料が書いてあるものの、どこの産地のものなのか、ハッキリしないものも多い。国産の材料から作る味噌なので、安心して子供にも食べさせることができる。

 コストを考えても、それほど高くない。いつも我が家で購入する味噌は400gで400円程度なので100gで100円だ。今回のセットは3,969円だったので、100gあたり約74円と我が家の場合は割安になる。次回から樽を除いた中身だけを買えば3,402円となるので100gあたり63円となり、より安くなる。作る手間暇や待つ時間もあるが、これだけおいしい味噌なら納得の価格だ。

 最初はあまり乗り気ではなかった味噌作りだったが、必要な材料が揃っており、計量されているキットは思いのほか手軽にできた。すっかり手作り味噌の魅力にはまってしまい、スーパーで購入する味噌には戻れそうもない。また来年の2月にも仕込もうか……と今から考えているほどだ。

 キットなら失敗が少ないので初心者にも自信を持っておすすめできる。感激するおいしさなので、ぜひ「手前味噌」に挑戦していただきたい。

石井 和美