やじうまミニレビュー
サンコー「USB自転車ダイナモ充電器」
ある日編集部員S氏と打ち合わせしていたときのこと。「最近、ズーッと修羅場が続いてて、ほとんど外に出てないんすよ。外出るって言ったら、タバコ買うのに50m先のコンビニに行くぐらい」なーんて話をしていたら、編集S氏がド○えもんの4次元ポケットを漁るように、机の下からこんなものを取り出し、こう言った。
「チャリンコ充電器ぃ~♪」
「USB自転車ダイナモ充電器」のパッケージ内容。ダイナモ、台座、ダイナモからUSBに変換するユニットがセットになっている。携帯電話と充電用のケーブルは添付されていない | 取り付けたところのイメージ |
正式名称は「USB自転車ダイナモ充電器」。話を聞いてみると、自転車に専用のダイナモ(ヘッドライト用の発電機)を取り付け、自転車を漕ぐことで発電した電気を、USBに給電するというもの。これでスマートフォンなどのモバイル機器が充電ができるというモノらしい。編集S氏曰く「これのレビューをすれば運動不足の解消にもなるし、原稿も書けるから一石二鳥でしょ」と。
ということで、自分の健康のためにも「USB自転車ダイナモ充電器」を体を張ってレビューしたい。レッツ! サイクリング!
メーカー | サンコーレアモノショップ |
製品名 | USB自転車ダイナモ充電器 |
購入場所 | Amazon.co.jp |
購入価格 | 1,960円 |
■自転車の取り付けには工具が必要
まずは自転車に取り付けてみたいが、実は筆者は自転車なんか持っていない。恥ずかしい話だが、筆者はたとえ500m先のスーパーに買い物に行くにも、車に乗っていく大タワケモノ。かたや奥さんは、子供シートが付いたMTBに乗って10kmぐらいある隣町の大型スーパーの特売品を買いに行っちゃう人だ。
しかし奥さんのMTBにこの充電器を付けてしまうと、毎日特売日をハシゴするので筆者が実験できなくなってしまう。そこで今回は、婆ちゃんが使っているギアなしのママチャリを借りることにした。これがあとで、筆者を後悔させることになるとは、この時は思ってもみなかった……。
それでは、取り付けてみよう。詳しくは下の写真を見ていただきたいが、工具が必要な点には注意だ。
ダイナモ(発電機)は交流を出力するので、どの向きに取り付けてもOK。ダイナモと取り付け金具はパッケージに同梱されている。用意するのは10mmのスパナ2本だ | ダイナモの回転部とタイヤが上手く当たるように微調整しながら、ボルトを増し締め(締まっている上からさらに締めて、ネジの緩みを防ぐ作業)して固定する。 | ダイナモの取り付け完了。ガタツキや接触がないか、タイヤを回すとダイナモが回転するかもチェックする |
ダイナモを取り付けたら、スマートフォンを自転車に固定する台座と、ダイナモで発電した電気を5VのUSBに変換するためのユニットを取り付ける。
台座は、ドライバーなしで取り付け可能。ハンドルの太さは最大直径26mmまで。もし細くで隙間ができてしまう場合は、添付のゴムを挟み込めばしっかり固定できる | ユニットから出ている電線を引き回して、ダイナモにもって行く。ハンドルを左右に切れるだけ余裕を持たせるのがポイント | 一方の電線をダイナモのコネクタに接続。交流なので黒い電線でも赤い電線でもかまわない |
もう一方の電線を取付金具に接続……と思ったら、上手くネジが締まらなかった | ということで、フォークと取付金具の間に挟みこんで固定することに |
これで完成! ……と言いたいところだが、電線がプラプラしていると車輪に巻き込まれる恐れがあるので、配線を固定するジップタイを使った方が良さそうだ。なお、ジップタイは添付されていないので、100円ショップなどで購入するといい。
フロントフォークに電線を固定 | ハンドル側も何カ所かジップタイで固定する |
これで自転車充電器の取り付けは完了だ。試しに、USBから電源を取れるかを、スマホとは別の機器でテストしてみたが、台座ユニットにもちゃんと通電を知らせるランプが付いていた。
ダイナモも元気良く回っているのを確認! よっしゃー! 充電に出かけるぞい!
試しに機器を接続して通電を確認。赤いLEDが光っているのが分かる | 後で分かったが、台座にも通電状況を知らせる小さなLEDが付いていた。カックシ。だってマニュアルにそんなこと書いてないんだもん! | 試運転してダイナモの調子と、充電できるか否かをチェック |
■2kmの買い物でどれだけ充電できるか?
ファーストアタックは、郵便局と近所のスーパーでの買い物だ。走行距離はおよそ2km。スマホのバッテリーは2%まで減らしておいて、2kmでどこまで充電できるかを調べてみよう。
と、その前にスマホをどうやって自転車に着脱するかの説明をしよう。ホルダー横のリリースボタンを押すと、グリップが左右に自動的に開くので、そこにスマホをセット。左右のグリップを締めれば、自動的にロックが掛かり、取り外しは再びリリースボタンを押すだけ。着脱は簡単だ。
取り付け可能なスマホのサイズは45~110mmなので、一般的な携帯電話から大型のスマートフォンまでOK。あとは台座に付いているUSBコネクタとスマホのUSBコネクタを、スマホ本体に付属のケーブルで繋げば準備完了だ。なお、台座とスマホを繋げるケーブルは付属しないので、自前で用意する必要がある。
着脱は台座横のボタンを押すと、自動的サイドのグリップが開くようになっている | 携帯電話のように小さいものでもしっかりグリップする | USBケーブルはダイナモからUSBに変換するユニットに差し込む |
それではサイクリングをスタート。軽快に自転車をこいでいると、スマホの充電ランプが点滅し、充電しているのが確認できる。台座もしっかりとスマホをグリップして、車道から歩道に乗り上げた振動でもビクともしない。ん~! 実に快調! 快調! 歩く程度までスピードを落としても充電できているようだ。
気になるペダルの重さは、平地ではまったく気にならないほど。しかしちょっとした坂道になると、とたんにペダルが重くなる。つーか、目で見た限りは平坦な道なのに、極ゆるい坂道でも急にペダルが重くなることがあった。筆者の運動不足によるところが大きいが、急坂ではかなり辛いかもしれない。ギアつきの自転車での使用を強く推奨しておこう。
信号で止まるたびに「充電しろ」のメッセージが表示される |
気になる点としては、スマホ側の問題かもしれないが、もう1つある。信号に引っかかり自転車を止めると、スマホの画面に「バッテリー残量が5%以下です。充電してください」と表示されるところだ。そこでOKボタンを押して画面を消し、信号が青になって再び走り始めると、今度は「充電を開始します」のメッセージ。こうして街中を走っていると「充電しろ」と「充電してるよ」メッセージが赤信号のたびに繰り返し表示される。これは面倒臭い。
さて、奥さんに頼まれた買い物を終えて、ウチに帰ってバッテリー残量を調べてみると、「あれ? 電池残量が減ってるじゃん!」。なんと2kmも走ったのに、充電されるどころかかえってバッテリーを1%消費してしまったのだ。
原因のひとつとしては、信号で止まるたびにCPUが働き出し、画面のバックライトが光り充電最速メッセージを表示するため、余計にバッテリーを消費してしまうことが考えられる。止まるとメッセージが表示され、再び走り出すとまたメッセージが表示され……を繰り返すので、待機しているよりバッテリーを食ってしまうようだ。おっ、俺の苦労がメッセージを表示する電力に吹っ飛んじまった!
■信号のない鶴見川のサイクリングコースで再挑戦
大失敗に終わったファーストアタックをふまえ、改めてマニュアルを読んでみると、速度と充電する電流の表が掲載されていた。
速度の目安 | 充電電流 |
8.5km/h | 100mA |
9.5km/h | 150mA |
10.5km/h | 200mA |
13.5km/h | 250mA |
15km/h | 300mA |
20km/h超 | 500mA |
スマホの充電は、付属のACアダプタだと約800mAの電流が流れてで2時間半ほどかかる。500mAで低速充電するとおよそ4時間。ってことは、バッテリー残量ゼロからフルチャージするとなると、80kmも走らなきゃならんのかっ! ウチは横浜なので満充電の80kmを走るとなると、東京都を縦断し千葉県をかすめて茨城県のつくば市に突入だ! うぉーいっ! 東名高速道路だと東京インターから箱根の峠を越えて御殿場まで。どんだけだよ!
しかも常に20km/hで走ってないとメッセージが表示されてかえってバッテリーを食ってしまう。くそぅ、計算するんじゃなかった(笑)。
ということで、信号のある街乗りではまともに充電できないことが判明したので、セカンドアタックは鶴見川の土手にあるサイクリングコースを走ることにした。ポイントは、とにかく充電終了・開始のメッセージを出さないために、途中にある信号を遠くから捕らえ、青になるタイミングを合わせて速度調整をすることだ。
またバッテリー残量が少ないと頻繁にメッセージが表示されるので、残量警告が表示されない45%からどのぐらまで充電できるかに実験内容を変更!
バッテリー残量0%からの充電はあきらめ、45%からスタート! ここまでの流れを見ていただいた人ならお分かりいただけるだろうが、ズルじゃないぞ! | 鶴見川の土手にあるサイクリングロード。どうだ! 見渡す限り信号なし!これなら充電できるぞ! | 意気揚々と作業着で土手をサイクリング。ん~、工場内を巡回してるオッサンのようだ |
セカンドアタックでは、、バックライトが点灯していると電池を食うので、電源をOFFにしている。充電ランプが光っているのは確認できる。そして走り続けること5km! 結果がこれだ!
なんと! 34%に減ってる! | かなりメゲた…… |
ぬぉー! 34%まで減っとる! 減っとるじゃないかぁー!
ママチャリでは速度が出せず、充電できるほど電流が流れていなかったようだ。時速20kmの壁は厚い…。これには筆者も超凹んだため、帰りは重いダイナモを切って、発電せずに家路に着いた。
■街乗りには厳しいがロングツーリングなら
今回の実験で分かったのは「商用電源は超素晴らしい!」ということ(笑)。なにせコンセントに2時間半挿しているだけでスマホをゼロからフル充電にできるぐらいなのだ!
ママチャリでは速度が出ないので、スマートフォンの充電は難しい。MTBなどギア付きの自転車ならもっと充電できるだろう |
残念ながらこのUSB自転車ダイナモ充電器は、信号の多い大都市圏や低速走行では、かえってバッテリーを食ってしまうことが身をもって分かった。
また実験に使ったのは電池容量が多く、電池の消費も多いスマートフォンだったが、一般的な携帯電話ならバッテリー容量のスマホの半分程度なので実用に耐えるかもしれない。ただしママチャリで充電できるかは期待薄。ギアつきのスポーツタイプの自転車に取り付け、充電する場合は携帯の電源を切っておく必要があるだろう。さらに充電中に何個ものLEDで光る携帯だと、スマートフォン並に充電は厳しいかも知れない。
これらを踏まえた上で、この充電器をオススメできるのは、次のようなヒトになると思われる。
・信号が少ない地域に住んでいるヒト
・MTBなどギア付きの自転車に乗ってるヒト
・スマートフォンじゃくて携帯電話を使っているヒト
・自転車で何十kmも走っても楽勝なサイクリング愛好者
・健康のためならたとえ数%でも充電できればいいヒト
・自転車で日本縦断を考えているヒト
この充電器を実用的に使える人はかなり数少ないと思われるが、ロングツーリングを嗜むサイクリング愛好者なら、本製品の良さが引き出せるかもしれない。
2011年 11月 11日 00:00
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