藤山哲人のモバイルバッテリー診断
MEGUROLAB.「Move Power 20000mAh」
~実は容量が半分の玄人向け格安機種
by 藤山 哲人(2014/5/23 07:00)
今回紹介するのは、楽天の大容量モバイルバッテリーで一番売れている超大容量モバイルバッテリー「Move Power 20000mAh」。価格は驚きの2,980円! カラーバリエーションも5色用意されていて、見た目にも安っぽくないデザインだ。
充電するためのUSBコネクタは2つあり、1A出力にスマートフォンを、2A出力にタブレット(スマートフォンもOK)をつないでの2台同時充電も可能となっている。
付属の充電ケーブルは、コネクタを取り替えるとさまざまな機器に対応でき、スマートフォン用のMicro USBやiPhoneのDockやLightning、ガラケー用にPSPや3DSなどのゲーム機を充電できる。
また、スマートフォンがフル充電になったり、何も接続していないのにカバンの中で電源が入ってしまった場合でも、本体の電源が自動的に切れるオートパワーOFF機能を備えているので安心だ。
メーカー名 | MEGUROLAB. |
---|---|
品名・型番 | Move Power 20000mAh |
バッテリー容量 | 20,000mAh |
繰り返し利用回数 | 非公表 |
サイズ (幅×奥行き×高さ) | 75×12×22mm |
重量 | 280g |
カラー・モデル | マゼンタ、ブルー、シルバー、ブラック、パープルの5色 |
実売価格 | 2,980円程度 |
バッテリー残量計は20,000mAhとしては4段階なので、スマートフォン用に使うには大雑把すぎだが、後述するように10,000mAhとしてみると、ほぼ1灯が充電回数となるので分かりやすい。
ただ、残量のLEDが明るく直射日光の屋外でも見えるのはいいが、寝ているときにスマートフォンや本体を充電すると、部屋の隅で煌々と残量LEDが光り部屋を青く照らすのが気になる。
また、懐中電灯機能も備えており、電源ボタンを長押しすると直視できないほどに眩しく光る。
実容量率33%と過去最低、正味10,000mAhのバッテリー
大容量のモバイルバッテリーは、実際にスマートフォンを充電してその回数をカウントすると誤差が積もるばかりか、非常に時間がかかってしまう。
そこで、独自の測定器を用いて、スマートフォンを充電するときに必要とする1Aの電流を流し、電圧と電流の変化、そしてスマートフォンに充電できる実容量を測定した。
項目 | 詳細 |
USBコネクタ数 | 2 |
USB最大電流 | 3A |
充電ケーブル (コネクタ) | Micro USB/Mini USB Dock/Lightning他(コネクタ差し替え方式) |
残量インジケータ | 1色4灯式 |
自動電源OFF | 本体電源ON時も有効 40mAでOFFを確認 |
同時充電 | スマートフォン2台:○ スマートフォン+タブレット(2A):○ |
実用量は、パッケージの「○○mAh」というバッテリー容量のうち、実際にスマートフォンを充電できる容量を示す。
実用量率は、表示容量に対する割合で、モバイルバッテリー内部とスマートフォン内部の充電時のロスをさし引いた値となっている。つまり実用量や実容量率の値が大きいほど高性能なバッテリーだ。
電圧は、4.9Vでピタリと安定している。電流は、やや低めの850mAを少し上回る程度。出力に関しては合格点という感じだろう。しかし、20,000mAhと大容量なのに出力時間が短いのが気がかりだ。
これらの実験結果を元に、モバイルバッテリー内部とスマートフォンの充電時のロスを差し引いた実容量を計算したところ、およそ33%で6,504mAhとなった。
一般的なモバイルバッテリーでは、標準的なもので60%前後、少ないものでも50%台なので、本製品はかなり少ない。あまりにも少なかったので、何度か実験を繰り返してみたが同じ結果となった。
本体には容量20,000mAhとあるが、実際には10,000mAhのモバイルバッテリーと見ていいだろう。価格帯も格安の10,000mAhのモバイルバッテリーと同じなので「損をした気にさせられるが、実際に損はしていない」製品と言ってもいい。
表示されている容量の半分しかないため、明らかな容量偽装なのかを確認するために中を開けて確認したところ、18650という規格のリチウムイオン電池が5本内蔵されていた(分解は発熱や発火、爆発などの危険をともなうので、ご家庭では行わないようにしてください)。
・分解/改造を行なった場合、メーカーの保証は受けられなくなります。 |
つまり、1本あたりの容量が4,000mAhであれば5本で20,000mAhという計算になるが、電池には容量がまったく記載されていなかった。18650規格で4,000mAhという電池は実際にあるものの、広く一般的に使われているものは2,900mAhだ。
中国のメーカーが確信犯的に偽装したかどうかは定かではないが、ひとつ確実に言えるのは「2014年5月現在、高価であまり普及していない4,000mAhの電池を5本も内蔵したら3,000円では買えない」ということだ。ちなみに、有名電池メーカー製で、2,900mAhの電池の相場は、1本1,500円~2,000円なのだ。
計算を元に出した実用量から、各種スマートフォンやタブレットをおよそ何回充電できるかは、次のとおりになる。Android系の場合()内が内蔵バッテリー容量を示している。
項目 | 詳細 |
バッテリー表示容量 | 20,000mAh |
連続利用時の実用量 | 6,504mAh(33%) |
連続実用量1,000mAhあたりの価格 | 458円 |
充電回数(理論値) | Android(1,300mAh):5.0回 |
Android(1,500mAh):4.3回 | |
Android(1,800mAh):3.6回 | |
Android(2,000mAh):3.3回 | |
Android(2,200mAh):3.0回 | |
Android(2,500mAh):2.6回 | |
Android(3,000mAh):2.2回 | |
iPhone4s/5/5s/5c(1,500mAh):4.3回 | |
小容量タブレット(6,000mAh):1.1回 | |
大容量タブレット(12,000mAh):0.5回 | |
iPad mini(6,471mAh):1.0回 | |
iPad(11,560mAh):0.6回 |
上の表は、表示容量の20,000mAhではなく、スマートフォンを実際に充電できる実容量で計算した充電回数となっている。実際には、10,000mAhと表示されている製品と同等だが、2,000mAhの内蔵バッテリーを持つスマートフォンを3回以上充電できるだけの容量はある。
容量が半分なので充電時間も半分の9時間
充電時間は、カタログスペックでは14~18時間とあったが、2A出力できるUSB-ACアダプタで実際に充電したところ、9時間16分で充電できた。およそ半分の時間でフル充電できる計算だが、10,000mAhのモバイルバッテリーとしてみると、ごく標準的な充電時間だ。
夜遅く帰宅して、次の日の早朝から出かける人向きではないが、普通のサラリーマンや学生なら自宅にいる間にフル充電できるので、それほど使いづらさは感じないだろう。
項目 | 詳細 |
本体充電用コネクタ | Micro USB |
付属充電器(仕様) | USB-ACアダプタ(2A出力) |
充電時間(カタログ値) | 14~18時間 |
充電時間(実測) | 9時間16分 |
繰り返し利用回数 | 非公開 |
容量半分と知って買う玄人向け、初心者は買っちゃダメ
20,000mAhのモバイルバッテリーとして買ってはいけないが、10,000mAhとしてなら価格も安く、性能もソコソコで、スマートフォンとタブレットの2台同時充電ができる便利なバッテリーだ。ただ悪く言うと容量を偽装している製品なので、保護回路などもいい加減になっている可能性がある。
したがって、あまり技術や電池の知識、また危険性をよく知らない場合は、絶対購入してはならないモバイルバッテリーとも言える。知識も豊富でデメリットを踏まえた上で、便利さと安さも捨てられないというセミプロ以上は「自己責任でどうぞ」という結論になるだろう。
メーカー/品名 | MEGUROLAB./Move Power 20000mAh |
ロスの少なさ | ★☆☆☆☆(1) |
持ち歩きやすさ | ★★★★★(5) |
単位容量の安さ | ★★★★★(5) |
充電の早さ | ★☆☆☆☆(1) |
使い勝手のよさ | ★★☆☆☆(2) |