【特集】LED電球、どれを買う?

三菱オスラム 「PARATHOM(パラトン) 810lm」

~明るい、色も良い、調光もできるLED電球
by 藤原 大蔵

全光束、演色性ともに業界トップクラス、しかも調光にも対応のLED電球

三菱電機オスラム「PARATHOM(パラトン) 調光器対応 810lm 電球色 LDA12L-H/D」

 節電ニーズにより人気を集めているLED電球。もはや省電力は当たり前で、各社とも電球としての「質」をより求める傾向が強くなっている。

 そんな中、三菱電機オスラムのLED電球シリーズ「PARATHOM(パラトン)」に、電球色でありながら、全光束(電球自体の明るさ)が電球色ながら800ルーメン(lm)を超える、明るいLED電球「LDA12L-H/D」が新たに加わった。

 パラトンの全光束は810lmで、これは一般的な60W形白熱電球と全く同じ数値だ。この810lmという数値は、電球色に限った場合、日本電球工業会に加盟している100を超えるメーカー・団体の中でもトップクラスの明るさという。

 ただ明るいだけでなく、色の再現性も高い。照明が物本来の色をどれだけ正しく映すか、を表す指標「平均演色評価数(Ra)」はRa90だが、一般的なLED電球の電球色はだいたい「Ra75~80」が多い。これまで多くのLED電球を見てきた筆者にとって、Ra90という数値は初めてだ。

 さらに、調光器にも対応。これらを合わせて3,980円という価格は、LED電球の中でもお買い得な部類だ。

 今回はこの新しいパラトンの電球色について、どんなLED電球で、一般家庭ではどんなシーンに活用できるかを探っていこう。


メーカー名三菱電機オスラム
シリーズ名 PARATHOM(パラトン) 
品番LDA12L-H/D
全光束810lm
口金E26
光色電球色
色温度2,700K
平均演色評価数Ra90
定格消費電力12W
白熱電球と比較した明るさ
(JELMA基準・ランプ単体)
60W形相当
定格寿命40,000時間
調光器対応
密閉器具対応-
サイズ(高さ×直径)124×62mm
重量192g
購入価格
(yodobashi.com 5/25時点)
3,980円
※60W形白熱電球は三菱電機オスラムの 「LW100V57W2PZ」(2個パック143円で購入)を使用  
100W形白熱電球は日立の15%省電力タイプのソフトシリカ「LW100V85W」(1個パック105円で購入)を使用  
※※電球形蛍光灯は、2008 年の特集で 総合的に性能の高かった  
パナソニックの 「パルックボール プレミアQ(クイック)」(1,390円で購入)を使用

【基本スペック編】

サイズ比較

 サイズは実測で124×62mm(高さ×直径)で、背は電球形蛍光灯よりも高い。口金付近は34mmと白熱電球(32mm)より2mm太い程度なので、多くの器具に取り付けられるだろう。

 重量は実測で192gと、軽量化が進むLED電球の中では重め。ただ、これまでもさらに重いLED電球を試してきたが、器具が傾く事もなかったので、まだまだ家庭用器具に取り付けられる範囲内と言える。

 全体的なデザインでは、放熱のためのヒートシンク部に、8つの孔が開いている点が目を引く。電球らしいくびれはそれなりに再現されている。

高さは124mm(中央)。電球形蛍光灯(右)より10mm、60W形白熱電球(左)より30mm背が高い。重量は192gとLED電球の中では重め直径は62mm(中央)で、白熱電球より7mm太い。光源部は半透明な樹脂製だが、LEDチップはほとんど透けて見えない特徴的な放熱部(ヒートシンク)。ヒートシンクに8つの大きな孔が開いている。電球らしいくびれは再現されている

器具に取り付けたようす

 器具とのバランスは問題ないと言って良いだろう。背が高く、しかも放熱部に特徴があるが、深く覗き込まない限り見えなかった。器具に取り付けてしまえば気にならないだろう。LEDチップも透けて見えない。

【白熱電球:60W形】
電球の端が少し覗いている程度の角度から撮影した
【電球形蛍光灯】
電球の直径は白熱電球と同じだが、高さがあるため、内側のらせん状の蛍光管が透けて見える
【パラトン 810lm】
全体的に大きめで、放熱部も特徴的なLED電球だが、器具に取り付けてしまえばほとんど気にならず、バランスも取れている。大き目の電球を取り付けた印象になる

光の広がりかたと配光性

 光は光源部を中心にほぼ球形に拡散する。横方向やソケット方向へは光が直接届きにくいが、電球の上に向かって遠くまで届いている。

 電気スタンド型の器具に取り付けると、光は器具の上方へ強く放たれる。半球形の樹脂製のカバーが付いているが、スタンド下方へ直接光は届かず、器具のシェードも全体的には明るく輝かない。上下の明るさに大きな差ができ、器具の雰囲気が活かせない。このような照明器具に使うことはお勧めしない。

【白熱電球:60W形】
ソケットぎりぎりまで明るい。電球を中心に床面に近いところから光が広がっている
【電球形蛍光灯】
白熱電球と同じようにソケット付近も光が届く。しかし遠くまでは光が届かない印象だ
【パラトン 810lm】
ほぼ球形に光が拡散しているが、電球の横方向、ソケット付近への光の回り込みは弱め。光自体は遠くまで届いている
【白熱電球:60W形】
シェードは中心からまんべんなく光り、シェードの上下からほぼ同じ明るさの光が漏れる印象がある
【電球形蛍光灯】
白熱電球と遜色なく、シェードのほぼ中心からまんべんなく光る。シェードの上下からもほぼ同じ明るさの光が漏れる
【パラトン 810lm】
シェード半分から上がとても明るく輝くが、下半分はあまり明るくならず、ムラができてしまう。光はあまり回らない印象だ

明るさ(55cm直下の照度)

 明るさは60W形白熱電球を確実に超えた。全光束は白熱電球と同じ810lmではあるが、直下照度は858lxと、800lxの60W形白熱電球を上回ったのだ。これなら同等の白熱電球から取り替えて、「暗くなった」とは全く感じないだろう。

 しかし、ここで気になったことがあった。実は、点灯直後は1,050lxとさらに明るく、また光色もかなり赤っぽさが目立つ光色だった。この明るさと光色は約20分で安定した。上記の858lmとは、点灯開始から20分後の数値だ。

 ついでにいえば、明るさ、光色が安定した際のヒートシンクは、かなり高温になっていた。LEDチップを覆うカバーは暖かくなる程度だが、もしかしたら、本体の温度上昇が、明るさと光色に影響を及ぼしているのかもしれない。

【白熱電球:60W形 800lx】
光源を55mm上方にセットし、直下照度を計測した
【電球形蛍光灯 475lx】
【パラトン 810lm:点灯直後1.050lx】
点灯直後はさらに明るく1,000lxを超えた。しかしかなり赤っぽい光色になってしまう
【パラトン 810lm:858lx(点灯から20分後)】
点灯後20分後の様子。直下照度は60W形白熱電球を超える明るさになった

調光

調光の様子。調光器で100%(全灯)から最小まで、消えずに調光できた

 本製品は調光器での使用にも対応しているので、調光のようすも写真で紹介しよう。

 調光はとてもスムーズだ。調光器の全灯(100%)から最小(1%)まで、調光の途中で消える事なくスムーズに明るさが変化する。白熱電球と同じ感覚で明るさの調節ができるだろう。



 明るさは60W形白熱電球と余裕で肩を並べるほど明るい。同等の白熱電球と取り替えて、明るさを我慢することはまず無いだろう。調光もスムーズなので、これまで調光器対応のLED電球の明るさに不満を抱いていたユーザーは、特に期待が持てそうである。

 点灯直後のクセは気になるが、安定後の明るさ、光色は好印象。ある一定時間以上点灯するような場所なら、実使用シーンでも期待できそうだ。



【実使用編】

 ここからは実際の生活シーンに取り付けて、よりリアルな使用での実力を探って行く。なお写真はすべて、LED電球の明るさと光色が安定してから撮影したものとなる。また、密閉器具に対応していないため、浴室や密閉型のインテリアライトでは使用しなかった。


玄関

 玄関での使用では、60W形白熱電球よりも明るかった。全方向型でないが、実使用では光の拡散性は全く問題ないほどだ。点灯時はかなり赤っぽい光色になるのは避けられないが、安定した時はとても明るくて心地良い、電球らしい暖かみのある雰囲気になる。

 とは言え、さほど広い空間でもなく、さらに調光の必要性が低い玄関に、パラトンはもったいない。また、短時間しか点灯しないなら、安定時の色の良さが発揮できない。個人的にはあまり勧められないが、玄関をより明るく、長時間点灯しておくような使い方なら良いだろう。

【白熱電球:60W形】
床面まで光が届き、十分な明るさがある
【電球形蛍光灯】
比較すると色が不自然に感じる。また、点灯して明るさが安定するまで時間がかかる
【パラトン 810lm】
60W形白熱電球よりも明るく、玄関の隅々まで自然な暖かみのある光色で満たされる。長時間点灯するなら良いだろう(なお、特に記述がない場合は、すべて点灯後20分後に撮影している)

トイレ

 トイレのように、狭く短時間しか使用しない場所に、パラトンは向かない。明るすぎるし、点灯直後の赤っぽい光色は狭い空間には特に暑苦しく感じられるからだ。

 なお、トイレは点滅頻度が高いため、点滅回数が寿命に影響する電球形蛍光灯の写真は割愛する。

【白熱電球:60W形】
明るく気持ちよく過ごせる
【パラトン 810lm:点灯直後】
点灯直後は赤っぽい光色となり、狭い空間には暑苦しい。また明るすぎるのでトイレにはあまり適していない
【パラトン 810lm:20分後】
点灯して20分もすれば明るさ・光色は落ち着くが、そもそもそこまで長時間過ごさないトイレではその良さが活かされない

リビングルーム

 透過タイプの器具との相性はとても良い。光の拡散性が低いため、天井や壁面の明るさは白熱電球よりも落ちるが、自然で暖かみのある光色で、心地良い落ち着いた雰囲気が演出できるだろう。光が直接届くテーブルや棚などは白熱電球よりも明るい上、調光器があれば、明るさのバリエーションも楽しめる。

【白熱電球:60W形×2 透過タイプのシェード】
光が部屋全体に行き渡り、十分な明るさがある
【電球形蛍光灯×2 透過タイプのシェード】
白熱電球のように上部、側面へも光が広がる。しかし、テーブルはLED電球よりも暗い印象で、色被り(余計な色が加わること)によりくすんで見える
【パラトン 810lm×2 透過タイプのシェード】
自然な光色で、明るく、暖かみのある光色がリビングルームに向いている。テーブルの上は白熱電球よりも明るい。調光器が付いているなら、明るさのバリエーションも楽しめるだろう

 非透過タイプの器具との相性も良好だ。光が直接届く場所は白熱電球よりも明るく、光と影のコントラストも自然な印象だった。テーブル面は特に明るくなるので、細かな字を読む際にも便利だろう。

【白熱電球:60W形×2 非透過タイプのシェード】
十分な明るさが得られ、コントラストのある空間になっている
【電球形蛍光灯×2 非透過タイプのシェード】
白熱電球のように上部へも光が広がるが、透過タイプと同様、色がいまひとつ
【パラトン 810lm×2 非透過タイプのシェード】
テーブル面だけでなく、光が直接届くところはは60W形白熱電球よりもさらに明るく感じられる。光と影のコントラストも自然

食事の風景

 色味が重要な食事のシーンにはバッチリだ。LED電球では、色がくすんでしまう「色被り」がよく発生するが、本製品ではそれが全く感じられない。食べ物全てが新鮮でおいしそうに見え、食器の材質の違いによる微妙な白さの違い、深みのあるランチョンマットの色合いもきちんと再現されている。照らされる物全てが透明感のある光に包まれ、暑苦しさ、不自然さが全く感じられない。Ra90という平均演色評価数の高さを実感した。

 細かな事を言えば、食事をする20分前には点灯しておきたい。点灯直後は白熱電球の赤みがより強調された光色となり、ピンク色の色被りが起こる。これだと、演色性の良さが発揮できないからだ。

 点灯時のクセは気になるが、安定時は60W形白熱電球よりも明るく、調光しても光色は変わらない。明るく華やかな食卓から、明かりを落としたムードある食卓まで演出できるだろう。

【白熱電球:60W形】
食事は全体的においしそうに見える。ただし赤みが強いため、モスグリーンのランチョンマットが茶色に見える
【電球形蛍光灯】
色味のバランスが崩れ、食卓全体がくすんだ印象になってしまう。また、ハムの色味が悪いのも気になる
【パラトン 810lm:点灯直後】
点灯直後は、白熱電球の赤っぽい光色がより強調されたかのような、ピンク色の色被りを起こす。肉眼では食べ物がまずそうにみえるわけではなかったが、食事をする20分前には点灯しておくとよいだろう
【パラトン 810lm:点灯20分後】
食べ物は全て新鮮で美味しそうに見える。自然で偏りがほとんど感じられない電球色は微妙な色合いも識別でき、食卓にはとても向いている。


60W形白熱電球との交換で、消費電力は1/5カット。約1年4カ月で元がとれる

 パラトンの消費電力は、実測値で11W。消費電力が56Wの60W形白熱電球と交換すれば、より明るくなって1/5の節電が可能だ。もっと消費電力の低いLED電球もあるが、それらは明るさと演色性はパラトンほど望めないので、1/5でもパラトンを選ぶアドバンテージを感じる。付け加えて、最小に調光した時の消費電力は1W足らずだった。

 初期費用にかかる電球代の元を取る期間は、約1年4カ月という計算になった。1年前後で元が取れるLED電球が多く登場している中、その結果から早いとは言えないが、あかりの質や調光器対応を考えた場合、必ずしも悪い結果ではないだろう。

【白熱電球:60W形】
消費電力は56W。消費電力1Wあたりの発光効率は、14.46lm/Wになる
【電球形蛍光灯】
消費電力は10W。発光効率は75lm/W
【パラトン 810lm】
消費電力は11W。発光効率は73.6lm/W

 しかし、電球形蛍光灯と比較した場合、10年では元を取ることができない。試算では、蛍光灯を4つ目に取り替えた13年4カ月(160カ月)でやっと逆転するが、LEDの定格寿命(毎日8時間で13年8カ月)の目前で、現実的とは言えない。確かにLEDには色や長寿命、点灯回数が寿命を受けないなどのメリットがあるが、さすがに元を取るのに時間が掛り過ぎる。今現在使用している電球型蛍光灯に不満がなければ、急いで取り替える必要はないだろう。

【パラトン 810lm】
従来の光源と比較した“いつになったら元が取れるか”試算
製品名消費
電力
(実測)
1カ月3カ月半年
(6カ月)
10カ月1年1年
4カ月
2年4年8年10年
パラトン 810lm11W4,039円4,157円4,334円4,570円4,688円4,924円5,396円6,812円9,645円11,061円
白熱電球60W形54W370円966円1,932円3,195円3,792円5,055円7,583円15,166円30,332円37,915円
白熱電球100W形83W549円1,438円2,876円4,759円5,648円7,530円11,295円22,591円45,181円56,477円
電球型蛍光灯60W形10W1,445円1,554円1,719円1,938円1,992円2,266円2,704円4,018円8,036円10,740円
※表中の金額は、電球代と電気代をプラスした「維持費」  ※1日の使用時間は8時間と仮定
※白熱電球には、4カ月ごと、電球形蛍光灯は2年9カ月ごと電球代を加算する (切れた電球代の購入費として)
※電気代は1kWh=22円で計算

 



明るさと演色性が両立。長時間点灯する場所にお勧め

 今回紹介したパラトン810lm・電球色は、60W形白熱電球の以上の明るさと、自然な演色性が得られるLED電球だ。お勧めする場所は、リビングルームや食卓の上のペンダントなど、明るさと高い演色性が求められ、しかも長時間点灯する場所にこそ向いている。

 欠点としては、やはり点灯直後20分は光色が赤っぽく、短時間しか点灯しない場所では本来の実力が発揮されない点が挙げられる。だが一旦安定すると、60W形白熱電球にひけをとらない「あかりの質」は相当に高い。それでいて、調光器にも対応しているのは見逃せない点だ。

 価格は3,980円と割高感はあるが、810lm以上の電球色のLED電球はほとんど見当たらない。したがって、調光器の無い器具でなくても、パラトンを選ぶ価値は十分にあると言えるだろう。

 最後に細かい話ではあるが、調光器使用時に電球に耳に近づけると、わずかながら「ジー」という雑音が聞こえた。ただし、30cmも離れれば全く気にならない程度で、AMラジオ、携帯電話、コードレスフォンのいずれにも雑音などの影響はなかった。

 メーカーのリリースでは、パラトンの明るさと色の良さは、ホテルやレストランのような商業施設における使用に適しているとされている。しかし、これらの要素は、一般家庭でも求められるものだ。調光器対応という付加価値を考慮すれば、価格的にもオトク感がある。まずは一度、その良さを実感してみてはいかがだろうか。


【三菱電機オスラム「PARATHOM(パラトン)810lmはこんなLED電球】

・60W形白熱電球を凌ぐ明るさ。60W白熱電球との交換に適している

・色合いは自然。食卓など色味が重要なシーンに便利

・調光はスムーズ

・明るさ、色の安定に20分ほどかかる








2011年5月26日 00:00