LED電球、どれを買う?

パナソニック「EVERLEDS 全方向タイプ 390lm」

~配光角度は300度! 白熱電球のように光が広がるLED電球
by 藤原 大蔵

LED電球の弱点「光の拡散性」を改善

EVERLEDS(エバーレッズ) 全方向タイプ 390lm LDA7L-G

 消費電力が低く、十分に実用的な明るさが実現してきているLED電球。もはや、節電効果は当然のものとして、あかりとしての「質」の高さがより求められている。

 あかりの「質」のひとつとして求められるのは、光の拡散性だ。多くのLED電球の配光角度は120度前後で、直下が明るい。しかし、白熱電球のように光が四方八方、300度以上広がるものは今までほとんどなかった。

 そのLED電球の弱点を意欲的に改善したのが、今回紹介するパナソニック「EVERLEDS(エバーレッズ) 全方向タイプ 390lm LDA7L-G」だ。

 このLED電球の内部には、パナソニックの光学設計技術による“ダブルリフレクター構造”という2段構えの反射板が配されており、白熱電球のように電球の横方向、口金方向へも光が飛躍的に広がるように工夫されている。同時に放熱の構造もテコ入れされており、放熱部も小型化された。40,000時間の長寿命、密閉器具対応は従来のエバーレッズと変わらないのも特徴だ。

 明るさは390lmで、日本電球工業会の基準で「白熱電球の30W形相当」という位置づけになる。スペック上では暗めに感じられるが、実使用感から言うと、40W形白熱電球と置き換えて明るさ、雰囲気がほとんど変わらないので、LED電球へ取り替えたというデメリットが感じられない。

 今回はこの“白熱電球並みに拡散性が良くなったLED電球”について、いつものように試していこう。


メーカー名パナソニック
製品名エバーレッズ 全方向タイプ
品番LDA7L-G
全光束390lm
定格消費電力7.2W
口金E26
光色電球色
色温度2,800K
白熱電球と比較した明るさ
(JELMA基準・ランプ単体)
30W形相当
定格寿命40,000時間
調光器対応-
密閉器具対応
サイズ(高さ×60mm)110×60mm
重量88g
購入価格
(yodobashi.com)
2,980円

※60W形白熱電球は三菱電機オスラムの 「LW100V57W2PZ」(2個パック143円で購入)を使用 
100W形白熱電球は日立の15%省電力タイプのソフトシリカ「LW100V85W」(1個パック105円で購入)を使用 
※※電球形蛍光灯は、2008 年の特集で 総合的に性能の高かった 
パナソニックの 「パルックボール プレミアQ(クイック)」(1,390円で購入)を使用



【基本スペック編】

サイズ比較

 サイズはどちらも実測で110x60mm(高さx直径) と、白熱電球よりもやや大きめといったところ。放熱部は、従来のエバーレッズ同様にフィンの無い仕上げだが、口金方向へ向かって徐々に細くなっており、かなり小型化されている。その一方で、LEDチップを覆う樹脂製のカバーは丸く大きくなった。全体的なフォルムは、より電球らしい印象になっている。ほとんどどの器具に問題なく取り付けられるだろう。

 重量は実測で88gと、100gを軽く切っている。電球内部に拡散性をアップさせるリフレクターがあっても、近年軽量化が進むLED電球の中でも上位の軽さだ。これなら、器具への負担はとても少ないだろう。

高さは110mm(中央)。60/40W形白熱電球(左)よりも16mm背が高いが、光源部は大きく、フィンレスの放熱部はさらに小型化された。口金付近も細く電球らしさがある。重量は88g直径は60mm(中央)で、白熱電球や電球形蛍光灯よりも5mm大きい。光源部は半透明な樹脂製で、LEDチップは全く透けて見えない

器具に取り付けたようす

 器具とのバランスはとても良い。器具から覗いているまん丸いカバーが電球らしく、少し大きめの白熱電球を取り付けた印象そのものだ。放熱部がE26口金のLED電球の中でも特に小さいので、器具をかなり覗き込まない限り見えない。白熱電球よりも背が高く、径が大きくなったところで、全く違和感なく取り替えられるだろう。

【白熱電球:60W形】
電球の端が少し覗いている程度の角度から撮影した
【電球形蛍光灯】
電球の直径は白熱電球と同じだが、高さがあるため、内側のらせん状の蛍光管が透けて見える
【エバーレッズ 全方向タイプ】
光源部分が大きいため、小型化された放熱部はかなり覗き込まないと見えない。パッと見は大き目の電球が取り付けてある印象。違和感はまったくない

光の広がりかたと配光性

 光は光源部を中心に、横方向へも床方向へも白熱電球のように全方向へ拡散する。これだけを見ると、白熱電球との差が全くわからないほどだ。「全配光タイプ」と自信を持って謳える理由が、ここでハッキリと確認できた。

【白熱電球:60・40W形】
ソケットぎりぎりまで明るい。電球を中心に床面に近いところから光が広がっている
【電球形蛍光灯】
白熱電球と同じようにソケット付近も光が届く。しかし遠くまでは光が届かない印象だ
【エバーレッズ 全方向タイプ】
白熱電球と同じように、電球を中心に光が横へも床面へも力強く届いている

 電気スタンド型の器具に取り付けてみたが、この場合も拡散性の良さがしっかり表れた。下方向へは直接光が届き、白熱電球と変わらない。上方向への光は、比べれば弱めだが、横方向へは光が特に強く放たれる印象。光が一部に偏らず、器具から全方向に、たっぷりの光りが放たれる。器具の雰囲気が十分に活かせるので、このようなスタイルの使い方は特にお勧めできる。

【白熱電球:60・40W形】
シェードは中心からまんべんなく光り、シェードの上下からほぼ同じ明るさの光が漏れている印象
【電球形蛍光灯】
白熱電球と遜色なく、シェードのほぼ中心からまんべんなく光る。シェードの上下からもほぼ同じ明るさの光が漏れる
【エバーレッズ 全方向タイプ】
下方にも横方向にも、白熱電球のようにたっぷりと光が届いている。白熱電球と変わらない雰囲気が演出できる

明るさ(55cm直下の照度)

 直下照度は410lxで、40W形白熱電球よりも明るさは落ちる。全光束390lmで、30W形白熱電球相当の明るさという点から、この結果は妥当と言えるだろう。しかし、全方向に光が届くよう設計されたLED電球なので、直下照度だけでは判断しきれない。実際のシーンでどのように見えるかは、以下で詳しく見ていこう。

【白熱電球:60W形 800lx】
光源を55mm上方にセットし、直下照度を計測した
【白熱電球:40W形 467lx】
【電球形蛍光灯 475lx】【エバーレッズ全方向タイプ:410lx】
直下照度は40W形白熱電球よりも少し暗くなる印象

 光の拡散性は、白熱電球と比較しても全く遜色ない。LED電球はとかく光の拡散性の弱さが指摘されているが、全方向タイプのエバーレッズは、それには全く当てはまらない。直下照度は40W形白熱電球よりも多少は落ちるが、そのぶん、光の拡散性の良さに期待ができそうだ。


【実使用編】

 ここからは実際の生活シーンに取り付けて、よりリアルな使用での実力を探って行く。なお、エバーレッズ・全方向タイプは密閉器具に対応しているので、浴室や密閉型のインテリアライトにも使用した。

玄関

 現在、玄関に40W形白熱電球を取り付けているなら、エバーレッズ全方向タイプに取り替えても、白熱電球にまったく申し分ない明るさ、雰囲気が得られる。さすがに60W形白熱電球と比較すると暗くなってしまうが、訪問者の顔がしっかり確認できる明るさがある。暖かみのある光色は玄関に相応しく、影も穏やかで柔らかい。密閉型や電球全体をシェード覆う器具でも、問題なく取り付けられる。

【白熱電球:60W形】
床面まで光が届き、十分な明るさがある
【白熱電球:40W形】
玄関としては、もうすこし明るさが欲しいか
【電球形蛍光灯】
比較すると色が不自然に感じる。また、点灯して明るさが安定するまで時間がかかる
【エバーレッズ 全方向タイプ】
並べて比較しなければ、40W形白熱電球と遜色ない雰囲気。壁面は明るく照らされ、影も柔らかい

浴室

 白熱電球と変わらず、光が偏らずに浴室全体に行き渡る。40W形白熱電球よりも若干暗くはなるが、光色が自然で落ち着きがあり、比較しなければほとんど気にならないレベルだった。密閉器具に取り付けられる実用的な明るさのあるLED電球は、これまで非常に少なかったが、これなら器具の雰囲気も十分に活かせるので、白熱電球のようなリラックスできる雰囲気が楽しめるだろう。

【白熱電球:60W形】
浴室全体が十分に明るい
【白熱電球:40W形】
明るさはやや落ちるものの、浴室全体に光が行き渡る
【電球形蛍光灯】
満足のいく明るさは得られるが、明るさが安定するまでに時間がかかるのは難点
【エバーレッズ 全方向タイプ】
40W形白熱電球とほとんど変わらない印象。少し物足りない明るさではあるが実用には十分だ

※浴室で使用する場合は、器具が防滴構造であることが条件となります

トイレ

 トイレのような狭い空間は全く申し分ない。壁面や照らされる対象物が光源に近くても、影の輪郭は柔らかく、清潔感がある優しい空間が演出できる。こんなところにも拡散性の良さが現われるようだ。

 なお、トイレは点滅頻度が高いため、点滅回数が寿命に影響する電球形蛍光灯の写真は割愛する。

【白熱電球:60W形】
明るく気持ちよく過ごせる
【白熱電球:40W形】
60Wと比べれば暗いが、狭い空間なのでまだまだ十分に明るく感じる
【エバーレッズ 全方向タイプ】
トイレのような狭い空間ならば、肉眼では十分に明るく感じられた

リビングルーム

 透過タイプの器具は相性の点では悪くはないが、60W形白熱電球との比較ではさすがに暗くなってしまう。電球形蛍光灯とは明るさがほとんど変わらないので、電球形蛍光灯から取り替えるなら、明るさに不満はないだろう。暖かみのある光色がより自然な印象だ。壁面や天井方向など、部屋全体に光が届くので、穏やかな雰囲気が演出できる。

【白熱電球:60W形×2 透過タイプのシェード】
光が部屋全体に行き渡り、十分な明るさがある
【電球形蛍光灯×2 透過タイプのシェード】
白熱電球のように上部、側面へも光が広がる。しかし、テーブルはLED電球よりも暗い印象で、色被り(余計な色が加わること)によりくすんで見える
【エバーレッズ全方向タイプ×2 透過タイプのシェード】
電球型蛍光灯とさほど変わらない明るさ感が得られた。光色も良く、壁面や天井面にも光が届いている

 非透過タイプの器具は、明るさ感が大幅にアップする。シェードの内側からの反射光、天井からの反射光が望めるため、蛍光灯よりもぐっと明るくなった。光のコントラスは白熱電球と印象があまり変わらないので、多少暗くなる事は踏まえたうえでなら、60W形白熱電球からの取替えも現実的と言えるレベルだろう。

【白熱電球:60W形×2 非透過タイプのシェード】
十分な明るさが得られ、コントラストのある空間になっている
【電球形蛍光灯×2 非透過タイプのシェード】
白熱電球のように上部へも光が広がるが、透過タイプと同様、色がいまひとつ
【エバーレッズ全方向タイプ×2 非透過タイプのシェード】
明るさは蛍光灯よりも明るい印象になった。暗くはなるものの、60W形白熱電球からの取替えも十分にアリだろう
【エバーレッズ全方向タイプ×2 インテリアライト2台】
あかりを低い位置に置けば、空間が広々と見え、リビングルームらしい落ち着いた雰囲気が演出できる。テーブル面は十分に明るく、器具からの光が部屋全体に柔らかく広がる。よくある光が広がらないLED電球では、このような雰囲気は作り出せない(透過タイプのシェードと同じ設定で撮影している)

 ここで特別に、局所照明に使用するスタンドライトとインテリアライトを併用し、リビングルーム全体を照らす方法も紹介したい。

 というのも、光の拡散性が飛躍的に白熱電球に近づいたLED電球なら、これまでのLED電球では不得意としていた、広がりのある照明方法も問題なくできる。複数の照明を低い位置に置くとくつろぎ感がアップし、空間が広々と見え、リビングルームらしい落ち着いた雰囲気が演出しやすい。全方向タイプのLED電球だからこそ、このような利用方法にも向いている。


リビングルーム(インテリア照明)

 密閉型のインテリア照明にはお勧めできる。器具には光のムラがほとんど浮き上がらず、白熱電球と変わらない印象が得られるからだ。

 ただ、40W形白熱電球と変わらないぐらい明るいため、部屋の一部だけを照らすアクセント照明としては明るすぎる。部分照明というよりも、部屋全体をやさしく照らすような使い方の方が適しているだろう。

【白熱電球:20W形】
明るさを抑えた白熱電球を使用した写真。このぐらいなら、目の触れる高さにおいて直視してもあまり眩しさを感じない
【白熱電球:40W形】
正直、明るすぎる。直視すると不快な眩しさを感じてしまう
【エバーレッズ 全方向タイプ】
直視するにはまだ明るすぎるが、器具に光のムラができず均等に輝いている。距離を置いて、部屋全体をやさしく照らすような使い方なら向いている

食事の風景

 食事のシーンにも十分に活用できそうだ。白熱電球よりも色温度が低い(2,800K)ため、色味が全体的にオレンジ色に偏る。しかし、電球形蛍光灯よりも食べ物はおいしそうに見える。食器の材質による白さの違いや、ランチョンマットの微妙な色合いもちゃんと識別できる。食卓の上に取り付ける照明器具の印象も、白熱電球と変わらないため、暖かな雰囲気の食卓が演出できるだろう。

【白熱電球:60W形】
食事は全体的においしそうに見える。ただし赤みが強い光色のため、モスグリーンのランチョンマットが茶色に見える
【電球形蛍光灯】
色のバランスが崩れ、食卓全体がくすんだ印象になってしまう。特にハムの色味が気になる
【エバーレッズ全方向タイプ】
全体的にオレンジ色っぽい色が強調されるが、肉眼では食べ物はおいしそうに見えており、微妙な色も識別できた。食卓に近い位置にあるペンダントなどに取り付けても、問題なく使えるだろう


消費電力は6W。40W形白熱電球との交換なら1年5カ月で元がとれる

 エバーレッズ・全方向タイプの消費電力は6Wだった(実測値)。40W形白熱電球との交換ならば、わずかながら明るさは落ちるが、1/7近くも節電ができる。60W形白熱電球と交換なら、1/9以上と、さらに大きな節電効果が期待できる。

 電球代と電気代を含めた“いつまでに元が取れるか”という試算では、40W形白熱電球からなら1年5カ月以内に元が取れ、60W形白熱電球ならば、約11カ月で元が取れることになる。実売価格が2,980円と、低価格化が進むLED電球の中では値が張るため、元が取れるまでにはやや時間がかかる印象だが、1年そこそこなら妥当な範囲だろう。

 電球形蛍光灯と比較した場合、元が取れるまでに4年6カ月。ちょうど2個目の電球形蛍光灯に替える時点で逆転する。現在電球形蛍光灯で満足しているのであれば、焦って変える必要はないだろう。しかし、蛍光灯よりも演色性が高く、取り付ける器具によっては明るくなる。しかも、点灯した瞬間から明るく、点滅による劣化が無いのは、蛍光灯では得られないメリットがある。

【白熱電球:60W形】
消費電力は56W。消費電力1Wあたりの発光効率は、14.46lm/Wになる
【白熱電球:40W形】
消費電力37W。発光効率は、13.1lm/W
【電球形蛍光灯】
消費電力10W。発光効率は75lm/W
【エバーレッズ 全方向タイプ】
消費電力は6W。発光効率は65lm/W

【エバーレッズ 全方向タイプ】
従来の光源と比較した“いつになったら元が取れるか”試算
光源消費
電力
1カ月3カ月半年
(6カ月)
11カ月1年1年
5カ月
2年4年4年
6カ月
エバーレッズ
全方向タイプ
6W3,012円3,077円3,174円3,335円3,367円3,528円3,754円4,528円4,721円
白熱電球
60W形
54W370円966円1,932円3,493円3,792円5,425円7,583円15,166円17,098円
白熱電球
40W形
37W269円665円1,329円2,389円2,587円3,719円5,174円10,348円11,677円
電球型
蛍光灯
10W1,445円1,554円1,719円1,992円2,047円2,321円2,704円4,018円5,737円
※表中の金額は、電球代と電気代をプラスした「維持費」  ※1日の使用時間は8時間と仮定
※白熱電球には、4カ月ごと、電球形蛍光灯は2年9カ月ごと電球代を加算する (切れた電球代の購入費として)
※電気代は1kWh=22円で計算


“まさに電球”、節電とインテリア性が両立できる

 エバーレッズ・全方向タイプを一言で表せば、パッケージに謳われているとおり「まさに電球」だった。横方向、口金方向へもきっちりと光が届くので、白熱電球から取り替えても、器具が持つ雰囲気やデザイン性はまったく損なわれない。特に、目に入りやすい装飾性の高い照明器具や、人の近くや低い位置に置くことの多いスタンドやインテリアライトとの相性はバッチリだ。

 60W形白熱電球に取って替わるほどの明るさはないが、ゆっくりとくつろいで過ごす空間を、柔らかな優しい光で包み込んでくれる。大げさかもしれないが、白熱電球特有の「安らぎ」や「ぬくもり」が感じられる、全く新しいタイプのLED電球と言えるだろう。やや高価ではあるが、それでも選ぶ価値は十分にあるだろう。

 インテリアの雰囲気を大切にしながら、低消費電力、40,000時間の長寿命というLED電球ならではの良さは従来どおり。密閉器具にも対応しており、消費電力1Wあたりの発光効率は65lm/Wと、白熱電球とは比べものにならないほど効率が良い。ちなみにラジオに近づけてみても、受信障害を受けることはなかった。

 これまでのLED電球は、拡散性が低く、デザイン性の高い照明器具や、雰囲気を大切にしたい空間にはあまり向いていなかった。しかし、エバーレッズ・全方向タイプならば、高い節電効果とインテリア性が両立できる。白熱電球のような光の拡がりを求める場合には、是非お勧めしたい。


パナソニック「エバーレッズ 全方向タイプ」はこんなLED電球

・全方向(300度)に光が広がる、白熱電球のような高い拡散性

・40W形白熱電球とほとんどかわらない明るさと使用感

・密閉器具にも対応。器具のデザイン性や雰囲気を大切にしたい空間にお勧め

 ・40W形白熱電球と交換した場合、1年5カ月で元が取れる(1日8時間使用)








2011年6月27日 00:00