家電製品ミニレビュー

「シンプルな冷蔵庫が欲しい!」の声に応えるシャープの左右両開き冷蔵庫

シャープ「SJ-WA35B」

 2007年に購入したシャープの冷蔵庫「SJ-17M-C」。あれから8年以上が経ち、引っ越し、家族が増え、生活習慣も変わった。170Lサイズでは手狭になったので、冷蔵庫を買い替えることにした。

 購入したのは、同じシャープの350Lサイズ「SJ-WA35B-S」。自動製氷がないなど機能的にはシンプルだが、冷蔵室はシャープの独自機能となる左右両開きの「どっちもドア」を採用している。

メーカー名シャープ
製品名SJ-WA35B
購入場所ヨドバシ.com
購入価格64,580円

 なぜ筆者が本製品を選んだかということを、先に書かせていただく。

 買い替えの理由は先述のとおり冷蔵庫のサイズ不足。我が家の食生活が野菜中心になったのと、筆者の実家が家庭菜園を始めて、時折大量の野菜が送られてくるようになったため、収納不足に陥っていた。上のサイズなら200L台のものもあるが、2ドアだと以前のものとあまり違いが感じられないこと、野菜室は欲しいことなどから、3ドアになる300L台で考えることにした。本製品は350Lなので、およそ以前の倍のサイズになる。

 製品選びにおいて外せなかったのが、ドアを開ける向き。筆者宅は冷蔵庫の配置的に、左開き(右側に手をかけて開く)にした方が使い勝手がいい。しかし売られている機種のほとんどは右開き。本製品なら「どっちもドア」なので左開きできるし、この先引っ越したりしてもドアの開閉方向で悩むこともないため安心感がある。

 もう1つ重視したのが、機能的にシンプルであること。300Lを超えるサイズの冷蔵庫には、ほぼ必ず自動製氷機能が付いている。しかし我が家では1年を通して氷を使うことがほぼないので、必要なら製氷皿に入れて作ればいい。使いもしないものに余計なスペースを取る必要はないし、掃除できない配管部分があるのも嫌だ。本製品はこのサイズには珍しく、製氷機能が付いていない。

左右どちらにも開く「どっちもドア」を採用した「SJ-WA35B」。左開きの機種を探す手間もないため入手性にも優れる

 気になるのはインバーター非搭載であること。インバーター搭載機種に比べて、消費電力と動作音が大きくなる。ただしインバーターを搭載すると価格も高くなるため、非搭載の本機種は、このサイズでは最安の価格帯で売られているというメリットもある。自動製氷機能なしでインバーター搭載の「どっちもドア」機種は存在しないため、ここは妥協することにした。

 まとめると、300L台で自動製氷機能なしのシンプルさ、使用環境・商品在庫の両面でドアの開閉方向に困らないという利便性から、本製品を選択した。右開きでいいならもう少し選択肢はあったが、筆者のニーズを満たしてくれるのは本製品しかなかった……というのが選んだ理由だ。

やや大きめの冷凍室が重宝する

 それでは製品説明に移ろう。サイズは600×660×1,690mm(幅×奥行き×高さ)。身長174cmの筆者なら最上段まで普通に使えるが、160cmくらいの家族には奥の方は手が届かず使いづらそう。カラーはシルバーのみだが、比較的落ち着いた色合いで自己主張は強くない。

 350Lの3ドアタイプで、上から冷蔵室185L(うちチルドルーム16L)、冷凍室97L(食品収納スペース60L)、野菜室68L(同46L)。近いサイズの他社製冷蔵庫と比較すると、冷凍室がやや大きめな印象。我が家では野菜類も下処理して冷凍保存することが多いので、大きめの冷凍室は重宝している。

冷蔵室は5段。製氷用の貯水タンクもなく、とてもシンプル
チルドルームの上にある仕切りは、畳んで奥に仕舞える
トレイはプラスチック製。取り外して丸ごと洗える
ドアのサイドポケットも広々として使いやすい

 中身は冷蔵室が5段(チルドルーム含む)、冷凍室と野菜室が各2段の仕切りがある。冷蔵室のドアポケットは3段で、最下段はスペースが2列になり幅広に取られている。一見して無駄なものは何もなく、すっきりしている。製氷皿は冷凍室の上部に設置するスペースがあるので、氷を作る際に冷凍室内で平らな場所を空けたりする必要はない。

 最新機種の冷蔵庫を買って感じたのは、あらゆる部分が“まっすぐ”なこと。筆者がこれまで使った冷蔵庫では、冷凍室の脇は斜めで凹凸があるという印象だったが、本製品ではほぼ垂直で平らなものになっている。実際の収納力もサイズの違い以上に感じるし、見た目にも広々としていて使い勝手がいい。

冷凍室は端まですっきりしている。ケースは丸ごと取り外し可能
冷凍室には引き出しが1つ。市販の食パン程度なら立てて置ける深さがある
冷凍室の天井に製氷皿を置くためのスペースがある
野菜室もシンプル。こちらもケースを取り外せる
野菜室のトレイは透明。右手前は空いていて背の高いものも入る

どちらからでも開ける「どっちもドア」はやっぱり便利

 そして本製品の特徴である「どっちもドア」の使用感だが、慣れると便利といった印象。普通の冷蔵庫と違い、取っ手がある場所を引っ張らないと開かないが、すぐに慣れて不便は感じないし、閉める時は普通にドアを押してやればいい。ドアが閉まる際には、少しドアが持ちあがるような感覚がある。最後まできっちりドアを押して閉めないと、半ドア状態になりやすい(大抵の冷蔵庫でも同様だが)。これについては、1分間開いたままになっていると警告音で知らせてくれるので不安はない。

 「どっちもドア」は冷蔵庫の左右のどちらにも空間がある家庭なら、あってよかったと思える便利さだ。筆者宅では、冷蔵庫に向かって右側にキッチン、左側にリビングがあるので、どちらからでも開くのは極めて便利。これは筆者宅にマッチしたということであって、配置的にどちらか一方からしか開けないなら関係ない。

 ちなみに「どっちもドア」は観音開きの冷蔵庫と似た印象を受けるが、“中央から左右に開く”観音開きと、“左右どちらからでも開く”「どっちもドア」では、使用感が全く違う。観音開きはどちらかと言えば、狭いスペースでも大型の冷蔵庫を開けやすいところにメリットがあるものなので、「どっちもドア」とは性質が異なる。

左右どちらからでも開くが、取っ手を引かないと開かない
ドアの上下には「どっちもドア」のための金具が見えるが、使用上は気にする必要はなく、どちらにも滑らかに開く
消費電力が気になる人のために、節電モードも搭載している

 唯一気になるインバーター非搭載という点については、年間消費電力量が410kWh(JIS C 9801:2006)とされている。同社製で384Lのインバーター搭載機種「SJ-PW38A」は250kWh/年とされているので、およそ1.6倍の違いがある。ただし本体価格の差を考えると、10年使っても電気代で相殺できそうにはない。

 CO2排出量などエコの観点で見れば話は別だが、経済的には「SJ-WA35B」に軍配が上がる。また本製品には節電モードの切り替えボタンがあり、庫内全体の温度を約1度上昇させる代わりに、消費電力を約5~12%削減できるとしている。

 インバーター非搭載の場合、騒音の面でも不利になると思ったが、特に気にならなかった。また、筆者はインバーター搭載機種を使ったことがないので今回は比較しないが、以前使っていた小型冷蔵庫の「SJ-17M」と比べると、騒音はどちらも23dbと変わらない。冷却動作中は確かに動いている音はするが、冷蔵庫のそばにいれば聞こえるという程度で、振動もほとんどない。「SJ-17M」よりも静かに感じられるほどだ。リビングや寝室など別の部屋にいれば、動作音は全く気にならない。

 冷蔵庫はサイズの次に省電力性、そしてメーカー各社の独自機能で選ばれる傾向がある。それを否定する気はないが、不要な機能がないというシンプルさも、立派に独自のアピールポイントになり得る。日常的に使うものは利便性を最優先に考えた方が、生活の幸福度が増すはずだ。

奥のキッチンからは左開き、手前のリビングからは右開き。とても便利に使える
サイズがほぼ倍になったことで、庫内は今のところかなり余裕がある(買い出し直前のため物は少な目)

【お詫びと訂正】記事初出時、インバーター搭載機種「SJ-PW38A」の年間消費電力量を410kWh/年としていましたが、正しくは250kWh/年です。お詫びして訂正いたします。

石田 賀津男

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