家電製品ミニレビュー
5,000円以下で買えるハイポジション扇入門機
by 伊達 浩二(2014/6/10 07:00)
イス生活に適したハイポジション扇
今回は、山善の「ハイポジション扇 YHX-C30」という扇風機を紹介する。実売価格が5,000円以下の普及価格帯の製品だが、背が高くて、羽根の上端が1mを越える高さまで上げられるのが特徴だ。
こういう背の高い扇風機は、一般に「ハイポジションタイプ」と呼ばれる。一般的なリビング扇は、畳での生活やソファなど低い椅子に座った状態を想定している。それに対してハイポジション扇は、勉強机やリビングテーブルなど椅子に座った状態で使うことを想定している。とくに、机に向かって作業をする時間が長い人に適した製品なのだ。
メーカー | 山善 |
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製品名 | ハイポジション扇 YHX-C30 |
希望小売価格 | オープンプライス |
購入場所 | Amazon.co.jp |
購入価格 | 4,320円 |
ハイポジション扇専用の特異な構造
ハイポジション扇の中には、単にリビング扇の支柱を長くしただけの製品もあるが、YHX-C30はハイポジション扇専用に設計されているため、なかなか面白い構造をしている。
この製品は、最近注目されている高価格の扇風機とは異なり、モーターも従来からあるACモーターを搭載した、いわばエントリーモデルだ。
ベースの部分が大きい。ベースの直径はリビング扇では26cm前後だが、本機では36cmある。重心が高くなる分、土台を大きくすることで本体を支えているのだ。
次に、風量などの操作を行なうボタンの位置が異なる。リビング扇では操作ボタンはベース部分にあるが、本機ではモーターの上にある。ボタンが高い位置にあるため、立ったままの状態で操作できるので便利だ。
また、リモコンの受光部分もベースではなく、支柱の高めの位置にある。これは、リモコンの光が障害物で塞がれにくくするためだ。風量の強さと、タイマーの時間を示すLEDも支柱の部分にあって、離れた位置から見やすくなっている。
ちなみにYHX-C30は、左右の首振りのON/OFFもリモコンで操作できる。本体の操作パネルでできることは、全部リモコンでできるわけだ。
この扇風機を組み立てていて戸惑ったのは、普通は支柱と一体化しているモーター部分が別になっていたことだ。つまり、機能部品はすべてモーター部分にまとめてしまい、ベースと支柱は、モーター部分を支えているだけなのだ。こうすることで、ベースと支柱の構造が単純になり、コストダウンにつながっている。
組み立てをしていると、この製品がコストを優先しているのがよくわかる。ガードは樹脂製でしかも薄っぺらい。ベースユニットは軽く、叩くとベコベコ音がする。約5,000円の扇風機なのだからしょうがないが、ちょっと安っぽい印象だ。
高さが有効、リモコン操作が便利
組み立てが終わってみると、やはり第一印象が普通のリビング扇とは異なる。そのままの状態でも、リビング扇がせいいっぱい高くした状態と同じか、それより背が高いのだ。支柱をいっぱいに伸ばすと、1mを越える高さになる。大人の腰ぐらいまでくるし、たいていのテーブルよりも高い。
電源スイッチを入れてみる。メーカーが言うとおり、スイッチがモーター部分にあると、立ったままでも操作しやすい。
この扇風機の外観は、今風のデザインだが、中身はごく普通の扇風機だ。羽根は5枚羽根で、モーターもACモーターだ。ただし、羽根を覆うガードは「トルネードガード」と称しており、風が拡散せず、遠くまで届くという。
そのガードの効果なのか、風量設定のせいか、風は弱風でもそれなりに強く、存在感がある。DCモーター扇風機の微風のような「どこから吹いてくる風」ではなく、「扇風機にあたっていることを意識させる」印象だ。
また使っていて気がついたのだが、羽根の上下方向への首振り範囲が普通の扇風機よりも狭い。重心が高いので、極端に上や下を向かせると、安定が悪くなるのだろう。
風量やタイマーの切替などの設定を変えていろいろ使ってみた。
良く似合うシチュエーションは、やはり作業机の高めの椅子に座って、ちょっと離れた場所から風を送るような使い方だ。
4段階ある風量は一番強い状態にすると、十分に強く、物足りないということはないだろう。ただし、強では音もかなりうるさい。
操作は、最初は本体の操作パネルを使っていたが、だんだんリモコンで使うようになった。なぜなら、操作パネルに風量を示すLEDがなく、風量を切り替えて確認したいときに、いちいち支柱を覗きこまなければならないからだ。かえって、LEDを視認しやすいリモコンで操作したほうが便利なのだ。首振りがリモコンでON/OFFできるのも、操作がリモコン中心になる理由の1つだ。
この製品を使っていて、慣れるのに時間がかかったのは、支柱の高さの調整方法だ。
この扇風機では、支柱の高さを変えるには、ネジをゆるめて支柱を動かすのだが、これにワナが2つある。1つは、高さを調整するネジと、モーター部分を固定するネジが、ほぼ同じ部品で、高さでしか見分けがつかないことだ。何度か、固定するネジをゆるめてしまった。
もう1つは、高さ調整のネジを緩めると、支柱がいきなりフリーになって、ストンと落ちてしまうことだ。リビング扇に多い、押しボタン式の高さ調整では、支柱はゆるやかに保持されているのだが、本機ではネジが緩むと、完全に自由な状態になってしまう。支柱を高く設定している状態で、片手で支柱を支えるのを忘れて、ネジを緩めると、いきなりモーター部分がドスンと落ちるというわけだ。
ハイポジション扇の入門機種
現在、自分の部屋に置いて、ほぼ3週間ほど使っている。
机に向かうことが多いという状況で使っているので、やはりハイポジション扇は便利だと感じる。
顔に風をあてるだけなら、卓上扇でも良いのだが、部屋全体の空気の循環も含めた上で、上半身に風を当てたいというときにはハイポジション扇の価値がある。
本機は、実売価格が5,000円以下という低価格機なので、全体的に安っぽさは感じるけれど、実用性には問題はない。扇風機を実用製品として割り切れる方にお勧めしたい。
高さがあるテーブルや、作業用の机に座る時間の長い人は、検討してみる価値がある。ローコストのハイポジション扇入門機として存在価値がある製品だ。