家電製品ミニレビュー

シャープ「冷蔵庫 SJ-PW35X」

~“どっちもドア”の冷蔵庫で、料理がさらに楽しく!

シャープ製冷蔵庫「SJ-PW35X」

 今年の5月26日、我が家に新しい冷凍冷蔵庫がやってきた。シャープ製の「SJ-PW35X」である。350Lの3ドアで、最新のハイスペックモデルとはいかないものの、左右どちらからでも扉を開けられる「どっちもドア」を採用し、シャープ独自のイオン技術「高濃度プラズマクラスター 7000」も搭載している。そのうえ、省エネ基準達成率は134%となかなかの製品だ。

 以前使っていたのは、10年前に購入した140Lしかない2ドアの冷蔵庫だったのだが、今回はこの「SJ-PW35X」の使用感をお伝えしたい。

メーカーシャープ
製品名SJ-PW35X パールホワイト
購入場所ヨドバシカメラ新宿西口本店
購入価格76,800円(購入当時)

140Lの冷蔵庫じゃ、まるで仕事にならない!

 使用感を紹介する前に、なぜSJ-PW35Xを購入したのか、長くなるが説明させていただきたい。

 一番のポイントは容量だ。近年、料理も仕事でするようになり、140Lの冷蔵庫では容量が足りなくなった。野菜室は常に一杯で、しかもすぐダメになる。冷蔵室は、要冷蔵の調味料などを入れたくても入らない。ましてや皿や鍋ごと保存など夢のまた夢という状態だった。

 冷蔵室の狭さも悩みだったが、冷凍室にも困っていた。除霜のたびに、冷凍中の食品が溶けるのである。これではさすがに仕事以前の問題と考え、買い換えを決意したのである。

10年がんばってくれたが、さすがに厳しくなってしまった、買い換え前の冷蔵庫
除霜のたびに、氷もゆるゆるに溶けた冷凍室
常にギューギュー詰めだった冷蔵室

 冷蔵庫選びは、10年に1度の大イベントである。カタログをかき集め、“やっぱり500Lくらいはあるといいかしら? 今なら省エネ性は絶対重要。この先引っ越しすることも考えたら、フレンチドアが便利かな? 野菜料理をたくさん作りたいから、野菜室は真ん中よね! 高湿度野菜室で、長期間保存したいわ。もちろんこれからは自動製氷で、製氷室は独立しているほうがいいかな。せっかく買い換えるんだから、肉が切りやすくなるとか、調理に便利なチルド機能も憧れる! ”こんな具合で、夢心地で機種選びに没頭した。

 500Lクラスで、省エネ性能もトップクラスな機種をいくつか絞り込み、実際に店頭に見に行った。店員さんと話をしていたところ、思わぬ問題が浮上した。搬入の際、通路の幅にある程度のスペースが必要なこと、それが屋内階段ともなると、500Lクラスは非常にシビアだというのだ。拙宅は戸建ての2階で屋内階段のため、一応階段の幅は図ってあったが、筆者が狙っている機種は明らかに幅が足りない。問題は通路の幅だけではなかった。玄関の入り口のサイズも重要で、ここでつかえてしまい、引き返す事例もあるのだという。

 「事前のお見積もりをお勧めします」というアドバイスに従って、業者の方に来ていただいたところ、なんと家の入り口が狭く特殊なため「幅はどちらかが最大60cmまで、奥行きは67cm、高さは170cmまで」という結果になってしまった。500Lクラスなど、そもそも我が家には入らなかったのである。

 販売中のモデルで、指定されたサイズに見合うものはかなり限られていた。その分選択が楽になるかと思いきや、むしろ悩みは深まった。トップクラスの機種なら、いわば最新機能を全部搭載しているので選びやすいのだが、ある程度レベルを落とすと、どこかで性能の妥協を迫られる。そこで選んだものをこれからまた10年使うとなるわけで、どこを重視するかが、よりシビアになるというわけだ。

悩み抜いた末に選んだシャープの「どっちもドア」

 特に今回は「野菜室は真ん中がいい」「野菜を新鮮に長期保存できる冷蔵庫がいい」という理想があった。しかし、それを優先すると省エネ性能が落ちる、冷蔵室の容量が落ちるなど、他で気になる部分がでてきて苦悩した。最終的に2台に絞ったのだが、店頭ではその2台の前で悩むハメになってしまった。

 2台の間を行ったり来たりしながら、バタンバタンと扉や引き出しを開け閉めし続けること約2時間。いい加減悩み疲れたところで「そもそも、自分はなんのために買い換えるんだっけ? 」という原点に立ち戻ってみた。すると、「野菜を長期間保存できることも大事だが、基本1人なので、野菜を溜め込んでも仕方ない」と気づいた。適量保存して、新鮮なうちにさっさと使う方がベターなのだ。むしろ、大量に作った食品のためには、冷蔵室や冷凍室の収納力や使いやすさの向上のほうが、仕事に大きく貢献するに違いないのである。加えて「この先10年使うとして、間違いなく引っ越しは生じるはずなので、ドアはどちらからでも開けられたほうが便利だろう」とも。そうして最後に選んだのが、高さ169cm、幅60cm、奥行き65cmの「SJ-PW35X」だったというわけである。

 待ちに待った搬入当日。古い冷蔵庫の中を取りだし、保冷用のバッグに入れるなどして準備をしておいた。業者の方々がやってきて、先に慣れた手つきで古い冷蔵庫を運び出していった。

 続いて、新しい冷蔵庫を玄関前で開梱。養生用の布で十分保護したのち、台所へと運び込んでいただいた。さすがはプロである。狭い通路も器用に回転させながら、無事搬入。

音は静か。申し分のない収納量と「どっちもドア」、消臭力に大満足

両側から開けられるので、設置場所に悩まずに済む

 こうして、晴れて大型冷蔵庫ライフがスタートしたわけだが、悩んだ甲斐もあり、大変満足している。

 冷蔵庫の構成は、上から冷蔵室、冷凍室、野菜室の順になっている。たまに製氷用の水が給水される音や、氷が落ちる音はするが、ほかに気になるような音はなく、極めて静かで、眠りを妨げるようなことは一切ない。なお、設置後、電源を入れてから実際に使用できるようになるまで、おおむね2時間程度だった。

 カスタマイズとしては、冷蔵室、冷凍室の温度設定のほかに、「プラズマクラスターボタン」と「節電ボタン」「製氷停止ボタン」を備えており、いずれも冷蔵室内の操作パネルで操作できる。「プラズマクラスターボタン」をオンにすると、プラズマクラスターイオンを放出し、庫内の浮遊カビ菌や付着菌を除菌するという。冷気は冷凍室にも循環するため、効果が及ぶらしい。「節電モード」とは、冷蔵庫の開閉状況に合わせて、2段階の節電モードを自動的に切り替えられる機能で、ドアの開閉が少ないときは節電効果を高めたモードにすることで、通常運転に比べて約5~7%の節電が可能になるという。

 まず、もっとも気になった冷蔵室の「どっちもドア」だが、大変便利で助かっている。右利きの場合、左側から開けることがほとんどだという説明もあったが、やはり近い方から開けるほうが楽だ。今では設置場所の都合上、ほぼ100%右側から開けている。手をかけて引いた瞬間、一瞬ガタンと下がるような衝撃があり、これが気になるという方いらっしゃるようだが、これはすぐに慣れてしまった。それよりも、どちらからでも開けられるという安心感のほうが勝る。

向かって右から開けてみる
向かって左からも開けてみる

 冷蔵室は185Lで、約3~5℃に保たれる。うちチルドケースが14L分あり、ケース内は約0~2℃で保存できる。最下層のチルドケースの上に4段分の棚があるが、広く明るく、申し分のない収納力である。筆者は身長160cmだが、一番上の棚の奥までしっかり手が届く。ポケットも豊富で、これまで保存に苦労していた調味料類を難なく収納できた。

 卵用の仕切りは2列になっており、合計16個保存できる。パックごと保存してもいいという。生卵と加熱済みの卵を、列を分けて保存できるのも助かっている。チューブ用のスタンドもあるため、使いたいときはすぐ見つけられるようになった。

冷蔵室内部の様子。庫内の照明は青っぽい
扉には卵が16個収納できる。両サイドにはチューブ用のスタンドもついている
実際の収納例

 冷蔵室中央の1段目のトレーは折りたたみ式になっており、棚の奥行きを半分にすることで、下段に大きなものを収納できるほか、トレーそのものを奥にたたみ込んで取り払うこともできる。棚の高さを1段調整したところ、鍋や浅漬け用の容器もそのまま冷蔵できた。

折りたたみトレーの棚は、奥行きを半分サイズにしたり、簡単に畳める。大きな鍋やスイカの丸ごと冷蔵に便利そうだ
憧れの鍋ごと冷蔵を実践
漬け物容器もラクラク置ける
こちらも憧れのラップなしの皿ごと冷蔵

 「高濃度プラズマクラスター 7000」の実力も気になるところだろう。冷蔵室の奥にある操作パネルの「プラズマクラスターボタン」を押し、ランプが点灯すると有効になる。見た目には作動しているのかすら分からないのだが、これまで脱臭剤の必要性を感じたことがない。冷蔵庫を開けると、常にクリーンで、無臭なのだ。試しに臭いの強い魚料理を、ラップをせずに入れてみたのだが、まったくといっていいほど臭わなかった。目には見えないが、確実に消臭してくれているものと考えている。

冷蔵室内にある操作パネル。プラズマクラスター発生スイッチを押すときは、妙な感動
ハラスの一部を冷蔵してみたが、魚臭さはまったく感じられなかった

夏は出番の多い冷凍室。3ドアでもしっかり自動製氷

 中段に配置されているのが、冷凍室(97L)だ。冷凍ケース(大)と、その上のスライド式の冷凍ケース(小)の2層になっており、約-18~-20度に保たれる。

本体の中央の引き出しが冷凍室
冷凍ケース(大)と、冷凍ケース(小)

 引き出し式なので、余った食材をポンポン放り込むように保存できるところが気に入っている。冷凍室が大きくても、そんなに使わないのではないかと思っていたが、とんでもない。ジューサーの絞りかすをビニール袋に入れて放り込んでおいたり、ご飯も、白米、雑穀米、炊き込みご飯など、数種類炊き分けたものを冷凍保存し、気分に応じて食べ分けるという贅沢を味わっている。冷凍食品のセール時にまとめ買いできるというのも、これまで味わえなかった経験だ。

現在の冷凍ケース(大)の様子。気軽に放り込みすぎて雑然としてきてしまったが、しっかり凍っているので安心
現在の冷凍ケース(小)の様子。氷はたっぷりで、シャベルでザクッとすくえる
食べかけのアイスを戻してみたが、溶けた様子はまったくない

 買い換え前の冷凍庫では、除霜のたびに庫内の温度が上がり、入れっぱなしの棒アイスも溶けてゆがむほどだったが、この冷蔵庫ではそのようなことはまったく起こらず、肉もアイスも、極めていいコンディションで冷凍できている。いや、そのようなことはすでに当たり前中の当たり前かもしれないが、拙宅では歴史的快挙ともいえる出来事なのだ。

給水タンクはチルドケースの隣にある。タンク内に水を入れたら、中まで押しこむだけ。今のところ洗浄するほど汚れてはいない

 今の季節、欠かせないのが氷だ。独立してはいないが、しっかり自動製氷機能もあり、冷蔵室の中のタンクから給水され、約2時間で冷凍ケース(小)の貯氷コーナーに氷が落下する仕組みだ。氷は1度に8つずつだが、気がつくと貯氷コーナーが一杯になるほど溜まっており、使い放題で重宝している。自然製氷では、約96~112個ストックされ、氷をならして製氷させると、約168個は製氷を続けられるようだ。シャベル付きというのもありがたい。

 この氷がおいしいのも特筆すべき点だろう。かつての冷凍庫では、浄水器を通した水でも、庫内に脱臭剤を入れなくては、まずくて仕方なかった。それが、「SJ-PW35X」の場合、特別な脱臭剤はまったく使わなくても、氷の臭いはゼロ。庫内の臭いもない。給水タンク内の浄水フィルターと、プラズマクラスターのおかげだろうか。何にでも安心して使えるのは幸せだ。なお、給水タンクは分解水洗いが可能で、週に1度が推奨されている。タンク内のフィルターは、3~4年を目安に交換するという(別売)製氷皿の清掃は、給水タンクの水を使って行う仕組みが用意されている。

 気になる点があるとすれば、氷だけ取り出したいときでも、先に冷凍ケース(大)が開いてしまうことだろうか。冷凍ケース(大)をあけてから、冷凍ケース(小)を引き出さなくてはならないため、少々温度上昇が気になっている。

高湿度非対応だが、十分進化した野菜室

下段が野菜室。引き出すと小物ケースと一緒に引き出される

 一番下に配置されているのが野菜室(68L)である。こちらも冷凍室同様、メインの野菜ケースと、スライド式の小物ケースの2層式で、約6~8℃に保たれる。野菜ケースには 2Lのペットボトルを立てて収納できる深さがあり、実際にペットボトルの冷蔵に加え、大きめの野菜や、根菜類の保存が可能だ。

 今回の冷蔵庫選びで、当初最もこだわっていたのが、この野菜室の位置と機能だった。腰をかがめずとも取り出せる位置と、葉物野菜を長期間保存できる保湿力が欲しかったのだ。

 1か月半使ってみて、特に不自由は感じておらず、このままでもやっていけそうだと感じている。自分は野菜室の開閉のほうが圧倒的に多くなるはずだ、と思い込んでいたが、冷凍室と野菜室の利用頻度を見ると、意外と冷凍室の開閉が多いのだ。氷を取り出すといった時期的な背景もあるだろうが、冷凍室が充実したせいか、冷凍保存した食材を使うことも多くなったようなのだ。

 野菜を取り出す際は、そのつど腰をかがめることになる。冷凍食材に比べると、あれとこれと……と考える時間が必要な分、かがんでいる時間は長くなる。腰痛持ちの方は上のほうが安全だが、使いかけの野菜など、すぐに使うものは冷蔵室に移しておけば、かがむ頻度も減らせる。

 最後まで引っかかっていた保湿力だが、使い始めた当初は乾燥が気になっていたが、中身が増えてくると、野菜同士の水分が影響しているのか、乾燥スピードが和らいでいるような気もしている。あとは、先人の知恵に学んでラッピング方法を工夫する、乾燥させる前に使い切ることを目標にする、などの運用でカバーする方向で考えている。

細々したものは小物ケースに入れているが、長年の適当な習慣が抜けず、保存方法はいいとは言えない
大量に保存できても、結局使い切れずにミイラ化させる恐れも。上手な野菜の保存方法はこれから学んでゆきたい……

 何はともあれ、買い換え前のモデルに比べれば、収納量、保湿力ともに、雲泥の差である。キャベツも、白菜も、束の葉物野菜も、丸ごと保存できるのである。我が家の野菜室は大きく進化したことだけは間違いない。

 同じくシャープ製の上位機種で、高湿度野菜室対応モデルを買っていた知人は、「野菜の鮮度が全く違う。保存期間が1週間は延びた気がする」とコメントしていたので、やはり高湿度野菜室は相当いいようだ。ちなみにその機種は、高さがわずか2cmオーバーしていたため、筆者には購入できなかったモデルで、まことに悔しい限り。

 とはいえ、すでに多くの冷蔵庫が高湿度野菜室対応になってきていることを考えると、次に買い換えることがあれば、そのときは間違いなく理想の野菜室が手に入るだろう。

冷蔵庫を買い換えたら、さらに料理が楽しくなった!

保存場所のマイルールなども決めなくてはと思っている

 それにしても、本格的な冷蔵庫選びがここまで大変とは、我ながら予想外だった。もし見積もりせずに購入していたら、きっと大変なことになっていたに違いない。もしこれから大型化を検討されている方がいらしたら、必ずサイズの見積もりをとることをおすすめしたい。

 また、必要なコストは冷蔵庫本体だけではない、というのも覚えておきたいポイントだ。配送は無料でも、既存の冷蔵庫を処分しなくてはならないし、搬入には人手がいる。いずれもコストがかかるのだ。拙宅の場合、古い冷蔵庫が140Lと小型だったため、リサイクル料は525円、内階段の荷上げにかかる費用が3,150円、さらに、構造上1人増員しないと安全に運び込めないということで、1名増員分が3,150円追加されることになった。これに冷蔵庫本体の価格が加わり、合計で83,625円という結果に。場合によってはベランダからクレーンで吊り上げ、ということもあるので、大型冷蔵庫に買い換えを予定されている方は、予算に多少余裕を持たせておきたいところだ。

 そんなわけで、冷蔵庫が新しくなって1か月半。以前なら、食べきれない、保存しきれない量の調理が憂鬱だったのだが、今ではまったく苦にならず、料理が本当に楽しくなった。冷蔵室は詰め込み過ぎが解消され、性能も大幅にアップしたせいか、ドリンク類含め、よく冷えていると感じる。諦めていた作り置きも自由にできるようになり、漬け物、ソース、ペースト、蒸し野菜とタッパがフル稼働中だ。実家から何が届いても慌てない。すぐに加工して保存できる余裕も生まれた。要冷蔵の調味料へのアクセスも楽になり、当然片づけもしやすくなった。

 こんなことならもっと早く買い換えるんだった、とつくづく感じている次第だ。今後は、野菜の保存方法を研究しつつ、さらにクッキングライフを楽しみたいと思う。

すずまり