家電製品ミニレビュー

バルミューダデザイン「Green Fan」

~二重のファンで風が気持ちいい扇風機
by 阿部 夏子

クーラーの代わりに扇風機を選ぶ

バルミューダデザイン「Green Fan」

 また、冷房の季節がやってきた。本来なら1年で1番好きな季節であるはずの夏も、電車や社内、デパートのあの冷房のことを考えると少々気が重い。外気との寒暖差で、そのたびに汗が冷えて、手足が氷のようになってしまう。せめて自宅では、エアコンに頼らない空調をしたいなと思って購入したのが、今回紹介するバルミューダデザインの扇風機「Green Fan」だ。


メーカーバルミューダデザイン
製品名Green Fan
希望小売価格33,800円
購入場所直販サイト


 実は我が家は、昨年の夏もエアコンなしで過ごしている。いくつかの扇風機を購入して、暑さをしのいでいたが、気になったのが風が直接体に当たることだった。何しろ暑いので、設定を強にして使うことが多かったのだが、就寝中に風が吹いている方向を向くと、息苦しさを覚えるほどで「気持ちいい風」とはとても思えなかった。エアコンの代わりなのだから、とにかく強力なパワーのものをと、選んだ扇風機は、首振りのファンがこっちを向くたびに、そこらのチラシやら書類が舞い上がってしまうほどで、ストレスを感じていた。

 そこで、今年は風の強さよりも質を重視してGreen Fanを選んだ。「風の質」という言葉を使ったが、Green Fanは「自然界の風」を目指して開発した扇風機だという。バルミューダデザインのサイトによると、従来の扇風機は、羽の一枚一枚で切り取られた空気の塊が回転しながら人に当たっており、そのため、扇風機の風が固く、人工的だと感じられていたのだという。

 Green Fanでは、この問題を解決するために、羽根の部分を二重構造にし、風速の異なる2種類の風を送りだしている。外側のファンが内側のファンの約2倍の風量を送り出すことで、外側の風が内側に引き込まれ風がぶつかりあうことで、空気の塊がなくなり、優しい風を送ることができるとしている。

 実際、Green Fanの羽根を見てみると、確かにこれまでの扇風機の羽根とはずいぶん違う形をしている。内側には5つの羽根、外側には9枚の羽根がそれぞれ配置されており、その間には仕切りが設けられている。羽根の周りのカバーも独特で、従来の扇風機のようにカーブがなく、平らで直線的な造りだ。

Green Fanの羽根部分。外側と内側で、羽根の枚数が異なっている羽根を横から見たところカバーを付けた状態。カバーを付けると中が見えにくくなるので、普通の扇風機と見た目はそれほど変わらない

 というわけで実際に使ってみよう。購入当時の製品は、段ボールにそれぞれの部品が分かれていて、まずはそれを組み立てる必要がある。製品の重要なポイントなる羽根の部分の梱包は特に念入りで、段ボールで二重の保護がしてある。

 組み立て自体は難しくない。説明書を見ながら、撮影しながらでもできあがるまでにかかった時間は10分ほど。普通なら5分ほどで出来上がるだろう。

本体部品。最初はすべてがばらばらになっている。中央の羽根から時計周りに、モーター部分、支柱、羽根をカバーに取り付けるネジ2種類、電源コード、台座付属の説明書複雑な形状の羽根は最初、段ボールで厳重に梱包されている
カバーの取り外しは付属の部品で行なう羽根と前後のカバーを取り外した状態付属のネジでカバーに羽根を固定していく
羽根とモーター部分を固定した状態台座と支柱を組み立てる完成した状態。ここまでかかる時間は約5分ほどだ

 できあがった本体は、直線的なラインが印象的だ。もともとこの製品を選んだのは「風の質」にこだわったというそのコンセプトだったが、デザインも魅力。購入理由の一つとして十分成立するほどだ。それほど奇抜なデザインではないのに、前面カバーの黒が本体の白に映えて、存在感がある。

本体正面本体側面本体背面

 操作ボタンは、一風変わった場所に設置されている。一般的な扇風機の操作ボタンは、台座部分に設置されていることが多いが、Green Fanでは羽根の後ろのモーター部分の上。通常操作ボタンが設置されている場所には、運転状況を表示するLEDライト付きインジゲーターが備えられている。

 操作ボタンは文字ではなくて、アイコン表示。扇風機は基本的に、複雑な操作を伴う製品ではないが、文字の表示が一切ないので、使い始めは説明書で操作を確認する必要がある。

 風の風量は弱から強まで4段階。風が最も強くなる4は、「サーキュレーターモード」として、Green Fanが目指すあたりの良い風とは別に、強風モードとして用意されている。

台座部分。LEDライトで運転状態を表示するインジゲーターとなっている操作ボタンは羽根の後ろのモーター部分の上に設けられている操作ボタンはアイコンで表示されている

風が顔に当たっても息苦しくない

 電源を入れて、まず思ったのが音が静かだなということ。テレビを見ながらでも電話をしていても、運転音が邪魔だなと思うことは一切なかった。これまで風が強力な扇風機を使っていたこともあるが、付けているのを忘れるほど静かな運転音で、エアコンと比べてもそれほど差を感じなかった。

風向きは手動で調節可能。正面を向いた状態最も下に向けた状態最も上に向けた状態

 従来の扇風機では羽根が風を切る「バッバッバッ」という音が気になったが、Green Fanではその音が一切ない。運転を強くしてもそれは同じだ。これなら、就寝中でも気兼ねなく使えるだろう。本体には1/2/3/4時間のタイマー運転機能も搭載されているので、タイマーをセットしてそのまま就寝するということも可能だ。

 当初からこだわっていた風の質についてだが、こちらも大満足。塊ではなく、面で風を感じることができる。これは、感じ方の問題なので説明するのが少々難しいが、たとえていうなら室内で起こしている風というよりも、窓を開けた時に入ってくる風のようなのだ。たとえば、首振り運転をしていても、風がなめらかなので、「あっ、こっちを向いているな」というのに気付きにくい。室内の風全体が動くような感覚で心地が良い。

 もっとわかりやすくいうと、風の切れ目がない感じだ。サーキュレーターや扇風機で起こした風は、強力な風の途切れ目があるが、Green Fanではそれが少ない。顔の前を横切っても切れ目が少ないので息苦しさがない。

電源を入れて、徐々に風量を強くしていっているところ。運転音が静かなのがわかる

 バルミューダデザインでは、Green Fanを冷房機の代わりとしてあえて強気な価格設定をしたとしている。涼しい、快適な風を提供するため、従来の扇風機とは一線を画した新しい製品だという。だが、今回使用した時期が4月下旬から5月上旬だったため、涼しさの効果に関しては実感できなかった。

 ただ、気温25℃前後でエアコンをつけるまでではないけど、ちょっと汗ばむ陽気では十分快適な風を提供してくれた。室内の風が動くことで、ジトーっとしたいやな暑さからは解放される。

 全体的な印象としては、扇風機やサーキュレーターに比べると存在感がない。運転音も静かで、風も穏やか。付けているというのを忘れてしまうというのは、それだけ室内が快適に保たれているということでもある。

 気になったのは、収納方法だ。まず、購入時の段ボール、梱包材は一切捨てていはいけない。複雑な形状の羽根をそのまま保存するために必要だからだ。収納するときは購入時の段ボールをそのまま使う。季節物の家電製品では別に珍しいことではないが、段ボールの大きさや、管理しなければいけない部品の数には少々驚いた。

 もう1つは、高さが調節できない点。ポールの長さが固定されているので、ちょっと短くとか、ちょっと長くしたいといったような調節はできない。ここら辺は、扇風機の基本機能としてあってほしかった。

購入したときの段ボールを開くと、まず梱包方法が表示された図が目にはいる羽根を分解して収納するので、固定の時に使用するネジなどをなくさないように収納する必要がある段ボールの大きさは結構なものだ

 あとは、3万円を超す本体価格。3万円を超す扇風機というと、最近では羽根のない独自の機構が話題になったダイソンの「エアマルチプライアー」がある。詳しくは以前掲載したレビューを確認していただきたいが、従来の扇風機の風の質を改善するという意味ではGreen Fanとコンセプトが似ている。

 この価格が安いとは言わないが、エアコンの代わりに扇風機を使うという私のような人なら夏の主力の空調家電として購入するのは全然アリだ。エアコンに比べて電気代が少ないのは確かだが、それよりも自分のライフスタイルとして扇風機を選択したいという人向けの製品。エアコンが苦手だという人が多いのは事実だし、今後はこのようなタイプの製品が増えてくるかもしれない。





2010年5月18日 00:00