家電製品ミニレビュー

パナソニック「ホームスマートフォン VS-HSP200S」

~家族全員が使える、自宅専用のタブレット付き固定電話

パナソニック「ホームスマートフォン VS-HSP200S」

 一見すると、電話の子機とフォトフレームのように見えるこの製品は、パナソニックから発売されている「ホームスマートフォン VS-HSP200S」という製品。スマートフォンとはいっても、屋外では使えない。自宅にきている固定電話用の電話回線を使う“スマートフォン”なのだ。

 通話は子機のほか、付属のタブレット風のモニター子機(以下、タブレット)でもハンズフリー通話OK。また別売のカメラつき玄関チャイムや窓センサーを接続すると、インターホンやホームセキュリティシステムとしても使える。

 タブレットには、一般のスマートフォンと同じAndroid(バージョン2.3)を搭載しているので、WiFiで無線LANに接続すると、タブレットでWebやメールもできる。それどころか、スマートフォンのアプリが色々使えるので、ゲームやカレンダー、インターネット電話にもなるのだ。

メーカーパナソニック
製品名ホームスマートフォン VS-HSP200S
価格オープンプライス
購入場所ヨドバシ.com
購入価格29,800円

設定はスマートフォンユーザーなら軽々できる

 取り付けはちょっと面倒なので、順を追って紹介しよう。一般的な固定電話・FAXでは、大きな液晶パネルが付いた機器が親機になり、これに電話線をつなぐ。ホームスマートフォンでは、タブレットも電話機も子機で、子機の充電台が親機となる。ひぇ~! ややこしい!

ホームスマートフォンのシステム構成図
子機の充電台が親機となり、これに電話線を差し込む。親機と子機間の通話はできないが、横にあるボタンを押すと、2台の子機の呼び出し音が鳴る
充電台から外した子機。普通の電話機として使える
タブレットも子機となる。ワイヤレスのハンズフリー通話ができる

 電話線とACアダプタを接続して、タブレットの電源を入れると、セットアップ画面になる。これは電話機というより、スマートフォンやパソコンに近い。電話型の子機は配線するだけで使えるが、タブレットは設定をしなければ使えない。スマートフォンの設定を自分でできる人にとっては簡単にできるレベルだろうが、しかし、そうでない人にとっては敷居が高いかもしれない。

 ホームスマートフォンを最大限に活用するには、次のようなものが必要だ。

(1)無線LANのルーター

 無線LANを使ってインターネットのコンテンツも楽しめるため、無線LANのルーター(親機)との接続は欠かせない。この設定には、一番簡単なAOSS(バッファロー製のルーターのみ)とWPS(最近の製品には標準搭載)が使える。

バッファローのルーターはAOSSを使うと簡単に接続でき、しかも暗号化してデータを傍受にしくくする
WPSもAOSSとほぼ同様の機能を持つ。表示された番号を入力するひと手間が掛かる

(2)無線LAN対応のプリンター/スキャナ(必要に応じて)

 着信したFAXを印刷する場合は無線LAN対応のプリンター、原稿を送信する場合は無線LANに対応したスキャナが必要。パソコンとUSB接続して無線LANを経由して使えるプリンターは利用できないので注意

(3)Gmail(Googleのメールサービス)のアカウント

 セットアップ中に新規登録もできるが、あらかじめ取得しておいたほうがラク。

(4)無線LANのセットアップスキル、スマートフォンの設定や操作スキル

無線LAN(WiFi)対応のプリンタがあればFAXの印刷が可能に、スキャナがあれば紙の原稿の送信が可能になる。手軽な複合機がオススメだ
設定画面はAndroid系のスマートフォンそのもの

タブレットでも通話可能。電話帳はGoogleのサービスと同期OK

 電話機はコードレスで、操作や機能、サイズ、どれをとっても一般的な電話の子機とほぼ同じ。ディスプレイが大きく見やすい点が好印象だ。

電話機型の子機はいたって普通。漢字の表示もOK
ディスプレイは大きく見やすい

 タブレット型の操作はスマートフォンと同じで、電話をかけるときは、ホーム画面を表示させて電話画面にしてからダイヤルなどをする。電話がかかってきた場合は、あらかじめ電話画面が表示されるので「外線」ボタンを押すと通話ができる。

画面を立てたり、寝かせて置くこともできる

 タブレットでも通話は可能だが、タブレットを耳と口に当てて話すのではなく、ハンズフリー通話(オンフック通話、スピーカー通話)となる。

 そのため、話している内容は家族にダダ漏れ。しかも居間で家族揃ってテレビを見ているときに通話しようとすると、テレビの音を小さくしたり、しゃべっている声を絞ったりしなければならない。これでは、通話している本人は便利だけど、周りの家族が不便というもどかしい事態になる。普段の通話に使うことはあまりないかもしれない。

タブレットはハンズフリー通話専用機となる。ヘッドホン・マイクコネクタもなく、Bluetoothも搭載していないため、ヘッドセットを使った通話も不可
ホーム画面右上の「電話」ボタンで、電話機の画面に切り替わる
電話機の画面。電話帳やリダイヤル、留守番電話の再生に子機間通話など、電話機能はすべてここに集約されている
電話番号を入力して、外線ボタンでダイヤルが始まる

 電話帳の機能は、Googleの電話帳機能と連携できるので、編集や入力はパソコンで行なって、タブレットでGoogleの電話帳と本体の電話帳を同期させるという使い方もできる。さらに、タブレットと電話型の子機の電話帳も、双方向に転送できるようになっている。

 留守番電話機能は標準的なもの。タブレットにはSDカードが差し込めるが、留守番電話録音には使えないので、録音は最大12分(50件)まで録音となる(通話内容の録音は可能)。

 普通の留守電と比べ便利に使えるのは、留守中にかかってきた電話をメールでお知らせしてくれる機能だ。着信時刻やナンバーディスプレイなどのサービスで発信相手がわかる場合は、誰からの電話かもあわせて知らせてくれる。

電話帳からは、電話以外にもメールやインターネット電話なども呼び出せる
留守番電話が入っていると、本体のお知らせランプが赤く点滅する
メールで留守中に電話があったことを知らせてくれる機能もある。ナンバーディスプレイに加入していれば、相手の電話番号もメールしてくれる

届いたFAXは画面で内容を確認してからプリンターで印刷

 このホームスマートフォン、FAXとしても使用できる。ただし、無線LANに対応したプリンターが必須。送信時に画像を取り込むスキャナーも、場合によっては必要となる。

 ホームスマートフォンのタブレットには、エプソンとキヤノン製のプリンタ/スキャナが、スマートフォンから利用できるアプリが入っている。対応機種であれば簡単にセットアップできるだろう。残念ながら筆者宅には、無線LANに対応したプリンタがなかったので印刷できなかった。

 ただプリンタがなくてもFAXの受信は可能。届いたFAXは親機のメモリーに蓄積され、それをタブレットの画面で見られるようになっている。もし大切なFAXであれば、親機のメモリーからタブレットに挿すSDカードにコピーして、パソコンで保存、印刷もできる。

エプソンとキヤノンの無線LAN対応プリンタ用に、あらかじめアプリが登録されている。画面はエプソンの印刷用アプリ
受信したFAXは、プリンタがなくてもタブレットの画面で確認できる
拡大表示もできるので、細かい文字でもはっきり読める
大切なFAXはSDカードにコピーできる。パソコンで閲覧・印刷してもいいし、無線LAN対応のプリンタがあれば直接印刷もできる

 FAXを送信するには、いくつか手段がある。1つは無線LANに対応したスキャナで原稿を読み取って送信する方法で、普通のFAXとほぼ同様の使い方ができる。複数枚の原稿を送る場合は、ADF(自動給紙機能)がついた高級タイプのスキャナが必要になる。

 2つ目は、原稿をあらかじめスキャナで読み込んで、SDカードに画像として保存し、それをホームスマートフォンで送信する方法だ。ひと手間かかるが、無線LANに対応していないスキャナでも利用できる点はメリットだ。

 最後は、タブレットに内蔵されている手書きFAX機能を使い、画面に書いた絵や文字をFAXするというものだ。いくつか雛形も用意されているので、簡単な文面や図なら便利に使えるだろう。しかし雛形を使わず、真っ白な紙の上に手書きすると、紙の大きさの感覚が掴めず面倒だ。

 実際に使ってみたところ、FAXの受信で不便はあまり感じられなかったが、送信機能に限ると、文面を書いた紙を送るだけというFAX専用機の方が楽かもしれない。

雛形を使った手書きFAX
大切なFAXはSDカードにコピーできる。パソコンで閲覧・印刷してもいいし、無線LAN対応のプリンタがあれば直接印刷もできる
白紙から書くと紙のサイズの感覚が掴みづらく、画面いっぱいに書いても、紙の上では10×5cm程度でしかない

居間に置けばみんなが使う

 実際に1カ月ほど筆者宅で使ってみた。居間の机(こたつ)がホームスマートフォンの常設場所になっていたが、各自がそれぞれのスマートフォンを持っているにもかかわらず、大画面のホームスマートフォンのタブレットを使ってWebを見ていたのが印象的だった。

 ちなみにタブレットの操作性を左右するタッチパネルは、銀行のATMなどでも採用されている感圧式となっている。操作性に特に問題はないが、一般的なスマートフォンは、ほとんどが静電式となっているため、比べると少し強く画面を押す必要があるかもしれない。背面にはスタイラス(タッチパネル用のペン)もあり、小さなボタンなどはペンを使えば確実に操作できる。

 難点は、画面の4辺が盛り上がっているため、端っこギリギリは押しにくかったり、スワイプ(画面に触れたまま滑らせる動作)しにくかったりという点。特に、タスクを引っ張り出す、上部の辺がなかなか掴みづらい。

 また、横長画面がデフォルトのため、一部アプリの表示が見づらかったり、縦長になるよう90度傾けて持ったりしなければならない。ただ、アプリによっては横長画面の方が使いやすいものもあったりするので、一長一短といったところか。

 バッテリーの持ちはあまり良くない。フル充電にして、一切手を触れず置いておいたはずなのに、およそ12時間で電池が空になってしまう(内蔵バッテリー容量は2,450mAh)。常にACアダプタを接続しておくとバッテリーの寿命を短くしてしまうが、こればかりは差し込んだままの方がよさそうだ。

縦長画面にしかタイプしていないアプリでは、タブレットを90度回転させて持つ
月間のスケジュールアプリは、縦長より横長画面の方が圧倒的に使いやすかった
タッチパネルは銀行ATMや駅の券売機と同じ感圧式。画面の四隅は画面より3mmほど出っ張っている。4辺近くは操作しづらい
本体背面に差し込んであるタッチペンを使うと、小さなボタンや手書きなどがしやすくなる
必要に応じて背面からペンを取り出せる
電池は持ちが悪い。0時前にACアダプタを外して、何も操作せずに置いておいたところ、その日の昼の12時前には電池切れ。常にアダプターに差し込んだ方が良さそうだ

地震速報にクックパッド、ホームスマートフォンに入れて便利なアプリはコレだ

 ホームスマートフォンに色々なアプリをインストールして使ってみたが、中でも便利に使えたものとして、個人的に以下の7点をお勧めしたい。

・なまず速報(地震速報)
・TSS(文字を音声で読み上げる機能)
・Calender Pad(カレンダー)
・SkypeやLineなどインターネット電話
・クックパッド
・乗り換え案内
・天気予報

 特にお勧めは、なまず速報とTSSだ。携帯電話の各キャリアが発信する緊急地震速報は、大きな揺れが予測されないとお知らせされない。しかしなまず速報は、自宅から半径何km以内で発生したか、マグニチュードや震源地の震度などの条件を細かく設定できるので、震度2~4という地震でも警告してくれるのが便利だ。さらにTSSをインストールすると震源地や地震の規模、震度を読み上げてくれるので、画面を見なくても地震に備えられる点がいい。

オススメは「なまず速報」と「TSS」の合わせ技。地震が発生すると緊急地震速報が届かない小さな規模でも、画面と文章の読み上げでお知らせしてくれる
「Calender Pad」は、ホーム画面に予定を表示したり、アプリを起動して予定を書き込んだりできる。Googleカレンダーと同期できるので、各々が自分のスマートフォンなどで予定を書き込んで、ホームスマートフォンでまとめて表示するなどが可能

 またCalender Padは、複数のGoogleカレンダーと同期できるので、家族全員の予定表をまとめて表示できる。紙のカレンダーには絶対マネできない機能なので、一度使うと便利さに驚くことだろう。

 さらにSkypeやLINEといったインターネット電話として使えば、遠方にいる家族や友人とビデオ電話で顔を見ながら話をしても、通話料は0円という使い方もできる。

 そのほか、晩のおかずのアイディアが浮かばなかったとき用のレシピサイトや、出かける前にサッと時間と運賃を調べられる乗り換え案内、ホーム画面に表示できるカレンダーや天気予報なども便利に使えた。

インターネット電話のskypeで無料のビデオ電話もできる。遠方にいる家族と話すときに重宝する
アプリのダウンロードは「Google Play」から行なう

 なお今回試すことはできなかったが、パナソニックのセキュリティ製品と組み合わせることもできる。例えば、別売りのカメラつき玄関チャイム(無線式)の子機として、来訪者の映像をタブレットで確認したり、別売の窓開閉センサーを登録して、留守中に窓が開くと警報が鳴るなどができる。しかも外出先のスマートフォンに、来訪者の画像付きメールや、窓が開いたことを知らせるメールを送信することも可能だ。

パナソニックのセキュリティ製品との連動も可能。玄関チャイムの子機としても使えるし、窓センサーを取り付けるとホームセキュリティシステムになる

家族みんなで使えるタブレット

 ホームスマートフォンの良いところは、固定電話やFAX、メールやWebでの調べ物、玄関チャイムなど、自宅に関するあらゆるコミュニケーションを集中管理できる点だ。今回は1カ月ほど使ってみたが、リビングの机に置いてあると、いつも誰かが使っているという印象だった。高校生のお姉ちゃんはネットで調べ物をしているかと思えば、小学生の娘はゲームで遊び、お母さんはキッチンのカウンターに持っていきレシピのチェック。中学生のお姉ちゃんは、電話で明日の部活の予定を友達に聞いたりとさまざまだ。

 家族で使うタブレットの購入を検討している人は、ぜひホームスマートフォンを検討してはいかがだろうか。

藤山 哲人