家電製品ミニレビュー

東芝「スマーボ VC-RB100」

~よくしつけられた、大人しいロボット掃除機
by 伊達 浩二

東芝にとって、9年ぶりのロボット掃除機投入

東芝「スマーボ VC-RB100」

 ロボット掃除機が登場してから約10年ぐらい経つ。その代表格がiRobot社の「ルンバ」であることは間違いないが、実は東芝もかなり早い時期に製品を発売している。それは、当時提携していたElectroluxの製品「トリロバイト」で、2002年の10月に発売されている。ちょうど、9年前のことだ。



メーカー東芝ホームアプライアンス
製品名スマーボ VC-RB100
希望小売価格オープンプライス
購入価格ヨドバシ.com
購入場所85,600円


2002年に発売された「トリロバイト」

 トリロバイトは、自動的に充電台に戻って充電するという、当時としては画期的な機能をもっていた。しかし、店頭での実売価格が29万円と高額なため、置いてある店舗も少なく、いつの間にか店頭でみかけなくなってしまった。

 そんな東芝にとって「スマーボ」は、久しぶりのロボット掃除機だ。実売価格は9万円前後で、トリロバイトに比べれば、ずっと安く、現行のルンバよりちょっと高いぐらいの設定だ。ロボット掃除機は、ルンバを除くと、1~3万円程度の中国製低価格機が主流だけに、スマーボは正面からルンバに挑む、久しぶりの存在といえる。

 今回は、3LDKの自宅マンションで、10日間に渡って、スマーボを試した。

ちょっと大きめの本体

スマーボの箱を開けた状態5.4kgもある大猫の鉄蔵が小さく見えるほど箱は大きい

 スマーボの外箱はかなり大きいものだった。自動車でないと持ち帰りは難しく、配送を頼みたい大きさと重さだ。

 パッケージの内容は、本体と充電台が中心で大きなスペースを取っている。それ以外では、ロボット掃除機の立ち入り禁止区域を設定するバーチャルガードが2個と、リモコンが同梱されているのが目に付く。必要なものは最初から全部入っている感じだ。

スマーボ本体裏面30cm定規との大きさ比較
充電台と30cm定規の比較スマーボは直線的に掃除していくので、充電台は部屋の隅に置いた方が良いパッケージに「Made in Korea」と書かれていた

 スマーボ本体も割と大きめで、どっしりしている。スマーボは、直径が35cmの円形をしており、厚みは約9cm、重さは約3.7kgある。両手で持ち上げる大きさと重さだ。製品やパッケージには「made in Korea」と書かれている。韓国Samsungでほぼ同じ筐体の製品があるので、血縁関係があるのだろう。

 とりあえず8畳ほどのリビングルームで試して見る。充電台の電源コードを、部屋の隅にあるコンセントにつなぎ、スマーボを置くと充電が始まった。手元に届いた状態で、内蔵の充電池はほとんど空だったが、2時間ほどで満充電となった。充電時間はメーカー公称値では120分とされているが、かなり正確だ。

静粛で大人しい製品

 満充電になったのを確認し、リモコンで「電源」をオンにする。続いて「スタート」ボタンを押すと掃除を開始した。

 電源スイッチを押してから、「スタート」を押して反応するまでの時間は数秒かかる。また、スマーボ本体の液晶表示は、離れた場所からは見えにくく、スマーボがいまどういう状態なのかを確認するには、スマーボに近づいて確認した方が良い。


スマーボのスタート時掃除が終わると自分で充電台に戻る

 スマーボの掃除の仕方は独特だ。まず、部屋の隅から壁に沿った形で動いていき、次にちょっと横にずれて戻ってくる。つまり、隅から順番に掃除していく感じだ。他のロボット掃除機では、ランダムな角度で走っていき、いつの間にか部屋全体をカバーしているという方法が多いので、スマーボは“律儀な人”という印象を受ける。

 動作音は低く、これまで我が家に来たどのロボット掃除機よりも静かだ。音の感受性については個人差があるが、掃除中の部屋にいても、私は気にならなかった。テレビの音声を少し大きくする必要はあるが、ロボット掃除機の騒音を避けて外出するような必要はまったくない。

 もう1つ、気がついたのは、家具や壁面に対して“当たりが柔らかい”ことだ。スマーボの普段の移動速度は遅くないのだが、家具を感知しての減速が早く、ガツンと当たることがほとんどない。また、壁面だとよく分かるのだが、ギリギリまで距離を詰めて掃除するのではなく、少し余裕を持ってマージンのある状態で掃除している。

 以上のような特性は、部屋を変えてみても共通して感じられた。家具については、とくに慎重で、太い木製の足があるダイニングテーブルの下には入ろうともしなかった。ちょうどそこに、赤外線で立ち入りを禁止するバーチャルガードがあるような動作だ。

 ただし、家具ならなんでも避けるわけではなく、足が細いスチール製ベッドの下には入っていくし、スチール製のイスにはガツンと当たるので、何が何でも避けるわけではないが、迷った時には慎重に行動するようにしつけられている印象だ。つまり、自動モードで使うスマーボは、慎重で大人しい製品だと言える。

 とはいえ、床に物が転がって片付いていないような状態では、実力は発揮できないし、猫用の自動給餌器などにはガンガン当たり、ころがっているケーブルは引きずって歩く。まぁ、これはロボット掃除機が共通に苦手とすることだ。掃除の前には床に物がないように片付けるのが、ロボット掃除機を使う作法だと思う。

 自動モードで部屋を掃除したスマーボは、きちんと自分の充電器に戻って、充電モードに入る。最近では珍しくない機能ではあるが、ロボット掃除機には欠かせない機能だ。

リモコンを活用するスタイル

 ここまで述べたように、自動モードのスマーボは、慎重でやり過ぎることのない性格だが、もうちょっと攻めて掃除をして欲しい場合もある。たとえば、壁面をぎりぎりまで掃除して欲しいとか、部屋の真ん中あたりに移動できない家具があるので、もっと縦横無尽に走って欲しいというような場合だ。

付属のリモコン操作部分のアップ。「かべぎわ」はよく利用した

 そういう場合、スマーボではリモコンでモードの指示をすることになる。掃除のモードで言うと、「自動」以外に「スポット」「念入り」「手動」が用意されている。「スポット」はスマーボの位置から約1.5mの範囲をうずまき状に回る。「念入り」は、「自動」が横方向だけだったのに対し、それと90度直交する角度でも走り回る。「手動」は、文字通りリモコンで方向を操作する。我が家で有効だったのは「念入り」で、これを使うと、壁か1mほどの位置に固定されている猫タワー(猫が上り下りして遊ぶ器具)の反対側にまわって掃除してくれる。

 また、動作モードでは、「ターボ」「かべぎわ」「タイマー/デイリー」が用意されている。ターボはブラシの回転数がアップする。フローリングでは有効だが、音も大きくなる。「かべぎわ」は、かなりぎりぎりまで掃除してくれる。「タイマー/デイリー」は、時間設定をして自動で掃除をしてくれる機能だ。我が家では「かべぎわ」を活用した。

掃除の方法とゴミ捨て

 つい、スマーボ本体の動き方ばかり話してしまったが、スマーボがどうやって掃除しているのかを見てみよう。

 一般の掃除機では、ゴミを吸引するが、スマーボはブラシで掻き集めている。本体の斜め前にあるブラシで、ゴミを中心に集め、それを大きな回転ブラシで集めている。我が家の床はフローリングと畳だが、物理的にブラシが当たるので、表面がきれいになった。特にフローリングにある細い溝の部分が磨かれてくる感じだ。

本体の一部が透明なダストボックスになっているダストボックスはこのように外れる
カパッと開けてゴミを捨てる掃除機を使ってゴミを吸い出す「簡単ゴミすて」機能。ダストボックスに触る回数が減らせる

 集めたゴミは、カートリッジ型のダストボックスに溜まるので、それを外して捨てる。ちょっと面白いのは、このダストボックスに穴が用意されており、そこに別の掃除機の吸引口を当てると、大きなゴミは吸い出せてしまうことだ。ダストボックスは、複雑な形をしているので、何回かに1回はきちんと外して掃除する必要があるが、その間隔を伸ばすことはできる。ほとんどの家庭では、ロボット掃除機だけではなく、一般的な掃除機も併用しているだろうから、有効なアイデアと言えるだろう。

 また、スマーボの底部には、フローリング用に小さな布製のモップが付けられる。スマーボがそこそこ重量があるので、それなりに拭いているのがわかる。このモップは専用サイズだが、たとえばフローリングワイパー用のペーパーが付けられるようになると便利だろう。

フローリング用のモップこんな形で取り付けできる1日の掃除が終わった状態。それなりに拭き取りしているのがわかる

家具が少なく広い部屋に

 しばらく生活をともにしてみたが、最初の印象はあまり変わらなかった。よくしつけられた、大人しい製品という印象だ。

 ただ、ともかく縦横無尽に走り回り、壁や家具にある程度当たる他社のロボット掃除機を見慣れていると、ちょっと大人しすぎる気がするときもある。たとえば、白い壁で囲まれ、幅が狭くて直角に曲がっている廊下では、遠慮しすぎて、ある場所から先には進まなくなってしまうことがあった。そうかと思うと、高さが20cmもない下駄箱の下の隙間には果敢に飛びこんで行く。その差は、スマーボがこの世界をどのように認識しているかから出ていると思うのだが、こうだという傾向はつかみきれなかった。

引っ込み思案なやつと思っていると、高さのない下駄箱の下には入っていくバーチャルガードを廊下に置いた例。この先には進まない

 ただ、上記のような例はごくまれで、リビングルームの床のものを片付け、バーチャルガードで仕切った上で掃除をさせるという日常的な使い方では不満はない。むしろ、動作音の静かさやゴミ捨ての簡単さなどの美点が印象に残る。

 たぶん、現在のスマーボは、掃除をする部屋の広さや家具の数によって、評価が左右される製品なのだと思う。床がフローリングか畳で、広くて家具が少ない部屋ならば評価が高くなるだろう。掃除できる範囲の形が長方形であれば、なお良い。

 個人的な好みをいえば、もうちょっと家具や壁に当たってもよいので、攻めて掃除するモードがほしい。「攻撃的」「中庸」「安全重視」の3モードぐらい用意されると良いと思う。また、自動でも「壁際重視」というモードがあって、壁だと判断すると自動的に「かべぎわ」になってくれれば、リモコンの出番がずっと少なくなると思う。

 また、スマーボは起動時とか終了時に、音声で知らせる機能があり、わりとよくしゃべる機械だ。しかし、エラーコードは数字表記で取扱説明書と見比べるようになっている。このあたりも、しゃべるとかカタカナで表示するようにしてほしい。

取扱説明書エラーコード表のアップ

 いずれにしてもハードウェア的には良い資質を持っている製品だけに、動き方のアルゴリズム(論理)を始めとするソフトウェアを磨いて、長く育てていってほしいと思う。






2011年10月20日 00:00