家電製品ミニレビュー

ELPA「LEDデスクスタンド AS-LED01」

~チラつきが少ない実用的デスクライト
by 伊達 浩二
ELPA「LEDデスクスタンド AS-LED01」

 LED照明器具、とくにLED電球は普及の波に乗った感がある。低価格化がきっかけとなり、省エネということが注目され、昨年は一気に性能も向上した。

 電球以外で、LEDの進出が目立つのがデスクライトの分野だ。読書や勉強などに使う補助照明器具であるデスクライトは、作業効率や目の健康に直結するだけに難しい分野なのだが、そこに入ってこれるだけの力をLEDがつけたということなのだろう。

 もともとLEDには、省電力で熱くなりにくく、光に紫外線を含まないというデスクライトに向いた利点がある。ランプの寿命による明るさの減衰がないのも魅力だ。

 そこで、比較的低価格のLEDデスクライトを購入して、その実力を試してみた。LEDデスクライトが実用品として使える水準なのか確認してみようというわけだ。

 今回選んだのは、ELPA(朝日電器)の「LEDデスクスタンド AS-LED01」という製品だ。昨年(2010年)の3月に発売された。価格は当初は1万円前後だったが、今では9千円をちょっと切るぐらいで購入できる。


メーカーELPA(朝日電器)
製品名LEDデスクスタンド AS-LED01
希望小売価格オープンプライス
購入場所Amazon.co.jp
購入価格8,877円

据え置きとクランプの使い分けができる

 購入した箱は少し大きめだが、重くない。ちょっとかさばるが、手持ちで持ち帰れる軽さだ。

 パッケージ内容は、本体とベースユニット、クランプ、取扱説明書だけだ。組み立ても簡単で、本体にベースユニットかクランプを、ネジ1本で固定するだけだ。あとは、電源コードをコンセントにつなぐだけで準備は完了する。電源コードは約1.5mあり、机に置いても、壁のコンセントまで届く長さだ。電源スイッチは、オンとオフの切り替えだけで、照度の調節などはない。

外箱の幅は約60cm。手提げをつければ持ち帰れる大きさと軽さだ使い方はベースとクランプが選択できる箱を開けたところ。上の段ボールにはベースが挟み込まれている
本体は組み立て済みパッケージの内容。これと取扱説明書だけというシンプルさ

 本体のアームは短めで、クランプで机の縁に取り付けると、私が使っている机の中央までは届かない。今回はクランプでなく、ベースユニットを使うことにした。

 ベースユニットは重さではなく、面積で本体を支えるタイプで、思ったよりも大きい。デスクに置くと、手に近い位置までベースユニットの先端がくるので、ちょっと邪魔に感じる。本を何冊も広げるような使い方をする人は気になるかもしれない。

 全体の素材は肉薄の樹脂製で、ちょっと安っぽい。9千円弱という価格の割には、本体にはお金がかかっていない印象だ。蛍光灯を使ったデスクライトならば4~5千円ぐらいの製品と同じぐらいの出来だと感じる。たぶんLEDが高いので、そちらにコストを取られているのだろう。

ベースへの固定はネジ1本。位置決めはされているのでぐらつくようなことはないクランプへの固定もネジ1本ベースの固定ネジは、コインで回せるタイプだ
ベースは軽い代わりに長さがある操作は本体にある電源スイッチのON/OFFだけ

84個のLEDを搭載

LEDは樹脂製のカバーで覆われている

 心臓部であるLEDは、比較的小出力のものを84個組み合わせている。LED全体に乳白色の樹脂製カバーがかけてあるが、LEDが完全にかくれるほどではなく、LEDのつぶつぶがわかるぐらいの透明度だ。なお、目を守るために、LEDを直視することは禁止されている。

 設置してみると、LEDを直視しないようにという配慮が感じられる。LEDを囲むセードは深く、覗き込まないとLEDが見えない。また、LEDが見えないように、セードの回転方向が制限されている。

 右利きの人がデスクライトを使う場合、手の影ができないようにデスクライトは左側に置くことが多い。このデスクライトをそのように置くと、セードが向こう側には回転するのだが、こちら側には回転しない。つまり、うっかりカバーを顔の方に回転させて、LEDを見てしまうことがないように考えられているのだ。多少、操作の自由度が落ちても目の保護を優先しているというわけだ。

取扱説明書に記載されているセードの可動範囲。水平方向の範囲が左右で異なる本体を左側に置いた状態では、カバーはこの角度まで曲がる反対からみたところ

 照明範囲を見てみよう。LEDは光の直進性が強いことから、照明範囲が狭くなりがちなのだが、LEDにかけられたカバーがうまく散光しているようで、ノートを取ったり、書籍を読むのに十分な範囲が照らされている。また、発光面積が広く、くっきりとした影が出にくいのも利点だ。

 ただし、セードが深く、しかも光を通さないタイプなので、照らされるのは机の上だけで、周囲はほとんど照らされない。このあたりは使い方や好みによって変わると思うが、覚えておいた方がいいだろう。目のためには、部屋の照明などと組み合わせて補助的に使うのが良いと思う。

高さは十分に確保できるアームの位置を下限まで降ろした状態LEDの数が多く、カバーもされているので発光面が広い
A5の雑誌を開いた状態。読書には十分な照明範囲だクランプは金具を手で回すタイプ一般的な大きさの机に置いたときの照明範囲。これ1灯だとちょっと狭く感じる。また、アームが短いので机の端に置けず、ベースが手の近くに来てしまう
液晶のほぼ真下にホチキスを置いてみた。面に近い状態で発光しているので強い影が出にくい中心からずれた位置に置いても影がきつくない

 光色は昼白色だが、蛍光灯よりはやや黄色がかった感じだ。デジタルカメラのホワイトバランスをデーライト(太陽光)に合わせ、白い紙を撮影してみた。蛍光灯の場合、紙がほとんど真っ白に写るが、このLEDではやや緑がかっているのがわかる。実際に本を読んでみると、蛍光灯はすっきりとした白い明かりで、LEDは、まぶしさのない落ち着いた照明と感じた。

デジカメをデーライト設定にして白い紙を撮影してみた。やや緑がかった光なのがわかる比較対象用にデーライト設定で撮影した白色蛍光灯
高さ30cmに固定した状態で、950lxの明るさがある

 次に照明の明るさを測ってみよう。机上から約30cmの位置に光源がくるようにアームの高さを調整し、照度計で測ってみた。LEDの方は950lxで、比較した蛍光灯は680lxだった。JIS規格などでは、読書や勉強には500lxから1,000lxぐらいが推奨されているので、両方とも十分な明るさがある。数字的にはLEDの方が明るいはずだが、色の関係か、数字ほど明るさの差は感じない。

ちらつきが少ない

 以前、部屋の照明が白熱電球から蛍光灯へ変わっても、デスクライトは白熱電球の方が主流だった時期があった。その理由の1つは、照明のちらつきだ。このちらつきをフリッカーという。

 当時の蛍光灯はインバーターを備えておらず、交流電源の周波数(50/60Hz)と同じ周期で点滅していた。一般的には、照明の点滅が35Hz以上、つまり1秒間に35回以上であれば認識できないということになっている。実際にフリッカーを計測する検査機器で測ると、個人差はあっても35Hz前後が中心となるという。さらに、目に故障などがあると25Hzまで下がってしまうそうだ。

 したがって50/60Hzならばフリッカーは感知できないはずなのだが、白い紙に黒い文字を長時間眺める読書のような、目にとって負担の大きい作業では、フリッカーが目の疲れを招くと言われている。自分では自覚していなくても、目という器官自体が疲れてしまうのだろう。

 したがって、デスクライトではフリッカーが感じられない白熱電球が主流となっていた。しかし、蛍光灯もインバーター式が普及し、点滅回数が20~50kHz(1秒間に2~5万回)になると、上記のようなことはあまり言われなくなり、デスクライトも蛍光灯が中心となった。

 ところが、こんどはLED照明器具で、同じようなことが言われている。LEDの素子自体は直流なのだが、AC100Vから直流へ変換する際に、同じ電圧が切れ目無く連続した直流ではなく、断続した直流に変換してしまう機器がある。そうするとLEDも点滅してしまうため、目の疲れなどを招く可能性がある。つまりLEDの特性というよりは、その周囲の電源回路の問題と言えるだろう。

 実際に、札幌市役所では蛍光灯をLED照明に置き換えた際に、約7%の人が業務に支障が出たとアンケートに回答し、LED機器が交換されたという報道があった。長時間、書類を見るような作業が多い官公庁では、自覚症状が出るほどの影響があるようだ。

 以上のように、デスクライトにおいてフリッカーは重要な要素なのだ。肉眼では35Hz以上ではフリッカーの有無はわかりにくい。

 今回は簡易な手段として、携帯電話のカメラ機能を利用してみた。簡単に言うと、携帯電話のカメラ機能は、一般のデジタルカメラと違って構造が簡単なので、点滅周波数が低い照明器具を撮ると縞模様が写るのだ。つまり、1秒当たりの点滅回数が少ない蛍光灯やLEDを撮ると縞が写り、点滅回数が多かったり点滅しない照明器具を撮ると縞が写らないのだ。

 まずiPhoneで家中の照明器具を撮ってみた。縞模様は液晶画面でも見えるので、その場でも確認できる。ほとんどの照明器具は普通に写っているが、インバーター式でない蛍光灯と、海外製の低価格なLED電球は縞模様が見えた。とりあえず、照明器具のフリッカーの判断には使えるようだ。

 そして、今回のLEDデスクライトでは、縞模様は見えなかった。この方法で判断できる程度のフリッカーはないというわけだ。また、一定の水準以上の電源回路を使っているという証拠でもある。

ある海外製LED電球ではLEDのフリッカーが大きいため、iPhone 3GSで撮影すると縞模様が出てしまうiPhone 3GSで撮影した本製品のLED部分。フリッカーが少ないので縞模様が見えない

実用品になったLEDデスクライト

 2週間ほど使ってみたが、このLEDデスクライトは十分に実用になる製品だと感じた。

 とくに、フリッカーの問題やLEDの直視対策など、デスクライトとしてちゃんとした製品にしようという設計者の意志を感じる。また、LEDらしく、ずっと点けていてもカバーが熱くならず、ほんのりと暖かくなるぐらいですむのも好ましい。

 そして、何よりも最先端の器具を使っているという気分が楽しい。もうちょっと本格的なアームのついた製品を試してみたいと思わせる魅力がある。

 ただ、すべての人に勧められる製品なのかというと、それは難しい。やはり、蛍光灯を使ったデスクライトに比べると、割高な印象はある。本格的に使おうとすると、アームが短めなことやベースユニットが大きいことなども気になる点だ。

 価格面などから言えば、まだ蛍光灯を使った製品に分があるが、とりあえず両方の長所と短所を勘案して迷ってみる水準には達していると思う。好奇心で購入してもまったく使い物にならず後悔するような製品では決してなく、実用に耐える水準に達している。

 LED照明器具は、まだ発展の余地がある製品で、今年も魅力的な製品が登場するだろう。買った後で良いものがでて後悔したくないという人や、中身には興味がなく安くて実用性のある照明器具がほしいという人には勧められないが、とりあえずLEDってのを試して見たいとか、先端的な器具を持っていたいという人には勧められる製品だ。





2011年2月1日 00:00