家電製品ミニレビュー
三洋「エアブロックサイクロン SC-XW55M」
■最新の掃除機は工夫の宝庫
三洋「エアブロックサイクロン SC-XW55M」。排気とヘッドの2点に工夫が盛り込まれた掃除機となっている |
家電製品の中でも、もっともギミックに凝った製品というと何を思い浮かべるだろうか?
エアコンの進化も目を見張るものがあるし、シェーバーも男心をくすぐる工夫が多くなされているが、現状、おそらく工夫の宝庫とも言えるのは掃除機だろう。
そもそも紙パック、サイクロンと2つの方式があるのも興味深いが、空気清浄機能の追加、静音性の追求、フィルター自動清掃、ヘッドの工夫、ロボットタイプの登場などなど、各メーカーとも次々と独自の進化を目指した製品を投入してきており、とにかく機能が豊富だ。
現状の掃除機の市場は、圧倒的なパワーとブランド力を武器にした海外メーカーの製品に対して、付加価値で勝負する国内メーカーという構図になっており、メーカーとしては新たな工夫の創出に苦労しているようだが、家電好きの一人の消費者としては「今度はどんな工夫がなされているのか」と新製品の登場が楽しみな分野でもある。
そんな群雄割拠の掃除機の世界に、新たな工夫を武器に登場したのが、今回取り上げる三洋電機の「エアブロックサイクロン(SC-XW55M)」。排気とヘッド、この2点に大きな工夫がなされている注目の製品だ。
メーカー | 三洋電機 |
製品名 | エアブロックサイクロン SC-XW55M |
希望小売価格 | オープンプライス |
購入場所 | Amazon.co.jp |
購入価格 | 39,776円 |
■ハウスダストの舞い上がりを押さえるエアブロック
SC-XW55Mの大きな特徴の1つは、紙パック・サイクロン両用掃除機であるということだ。標準のダストカップを利用した場合はサイクロン式で動作するのだが、このダストカップを紙パックに変更することで、紙パック式として利用することもできるようになっている。
正面 | 側面 |
サイクロン式だがシンプルな外観 | サイズも手頃で持ち運びも楽 |
大掃除のときなど、最初から大量のゴミを吸い込むことがあらかじめわかっている場合は、紙パックを使った方が後のゴミ捨てやお手入れが楽だ。普段はサイクロン、いざというときは紙パックと、使い分けができる。
外観は実にシンプルで、ダストケースが本体に内蔵されていて見えないデザインは、どちらかとういと紙パック式でよく見られるものだ。本体はソフトな素材でカバーされているため、移動もスムーズで音も静かだ。取っ手類もしっかりしており、持ち運びも苦にならない。
排気口の下にエアブロック用のフリップがある。動作させるとここが開き、空気の壁を上向きに作る |
色々な機能が搭載されているSC-XW55Mだが、まずは排気口から見ていきたいと思う。ホースのグリップを握り、スイッチをオンにすると、「フィーン」という音とともに稼働を開始するのだが、本体の背面をよく見ると、排気口の直下、「CLEAN AIR BLOCK」と記載されたフリップが自動的に開き、そこから風が吹き上げる様子が確認できる。
これにより、排気口の下のフリップで上向きの流れの風を作り、これによって排気が床に当たって、細かなゴミやハウスダストが巻き上げられるのを防止できる。
高級スポーツカーなどの中には、一定の速度になるとリアのスポイラー(翼)が自動的に浮き上がる仕組みを備えているものがあるが、イメージとしては、これに近い。はじめからフタが開いたままでも良さそうな気もするが、個人的には自動的に開くようにした点こそ評価したい。
実際の効果も絶大だ。本体の後ろにティッシュを置いた状態で動作させても、そのままティッシュが舞い上がらない。これなら、小さな子供がいる家庭などでも、排気を気にせずに安心して使えそうだ。
フリップが動作する様子。下に置いたティッシュがまったく動かないのに注目 |
■隅々まで掃除できる「技ありヘッド。
次に注目したいのが、「技ありヘッド」と名付けられたヘッド部分の構造だ。
底面を見ると、その構造がよくわかるが、内部の回転式のブラシが左右均等ではなく、片側にずらしたように配置されている(隅どり機能)。
本製品の最大の特長とも言える工夫満載のヘッド | 回転式のブラシが片側にずれた状態で配置されている。これにより、壁際などもしっかりと掃除できる |
これは、壁際など、通常のヘッドでは、残ってしまいがちな部分もしっかりとブラシで掃除できるようにしている工夫だ。ヘッドの側面を樹脂とステンレスの一体成形によって薄くしたおかげで、片側のギリギリまでブラシを配置できるようになっている。
この効果は絶大だ。部屋を眺めると、やはり壁際にゴミやホコリが溜まっていることがよくあるが、ここにヘッドを滑らせることで、すっかりキレイにできる。本製品を使って掃除をするようになったおかげで、今までの掃除機では意外に吸い残しがあるのだということに気づかされたほどだ。
しかも、このヘッド、面白いことに正面にある壁に押し当てると、前面のカバーが自動的にガバッと開き、内部の回転ブラシが壁の隅までしっかりと当たるようになっている(壁ぎわガバどり)。
ヘッドの先端部分のカバーが跳ね上がる構造になっており、壁に当てるとブラシが壁に密着するようになっている |
壁に当たるとカバーが上がり、ブラシが密着する |
さらに、このヘッド部分はグリップをひねるだけで、縦方向にクルッと向きを変えることもできるようになっているため、狭い隙間も、先端の回転ブラシを当てて、しっかりと掃除をすることができるようになっている。
隙間の掃除は、通常、隙間ノズルなどを使うが、ノズルが当たった部分以外は、床にうっすらと細かなホコリが残ってしまうことがある。しかし、このヘッドなら、回転ブラシでしっかりと掃除できるため、まさに隅々までしっかりと掃除ができる印象だ。
クルッと回転させると縦方向のブラシとして使える | 細い隙間などでもラクラク掃除ができる |
このほか、別売り品や対応している市販のウェットシートをヘッドに巻き付けて、ウェット拭きもできるなど、非常に多様な掃除の仕方ができるヘッドになっている。
もちろん、ホースの途中のノズルを使って細かなところを掃除することができるうえ、今回のモデルには標準で「ふとんローラー」が付属しているため、布団を掃除することも可能となっている。
回転式の馬毛ブラシ | ふとん掃除用のふとんローラー | 細口のノズル |
ウェットシートを巻き付けて掃除をすることもできる |
掃除機というと、吸引力の部分にどうしても注目してしまいがちだが、実際に掃除をしてみると、ヘッドの完成度がいかに重要かということがよくわかる。ブラシの回転もスムーズで、ヘッドを軽く動かせるので疲れにくい。
残念なのは、ブラシに可動部分が多く、壁際に当たると可動部分が「ガチャガチャ」と音を立てるため、若干、音が気になるところ。ただし、隅々までキレイに掃除ができるという点においては、他の掃除機に比べて大きなアドバンテージを持った製品と言えそうだ。
■お手入れはこまめに
お手入れに関しては、若干、手間がかかる印象だ。
ゴミを捨てるときは、まずカバーを開けて、ダストカップを取り出す。取り出したダストカップのプリーツフィルター側に「チリ落とし用レバー」があるので、これをつまんで左右に何度か往復させる。すると、振動でフィルターのゴミが落とされる。
ここまでの準備ができたら、ダストカップのボタンを開けて内部のゴミを捨てる。本製品では、フィルター部分にプレフィルターとしてティッシュを装着することで、目詰まりを防止できるのだが、このティッシュも、このときに一緒に捨てる。後は、ダストカップの脇に備え付けられているブラシで、細かなゴミを払うといったところだ。
もちろん、毎日する必要はないのだが、サイクロン式の場合、この手間を惜しむととたんに吸引力に影響が出てくるため、なるべくこまめに掃除をした方がよさそうだ。
最近の掃除機は、電源コードの巻き取りの際などに、自動的にプリーツフィルターを叩いてゴミを落とすなどの工夫がなされている場合があるが、本製品ではそういった工夫はなされていない。その分、毎日、静かに使うことができるのはメリットだが、もう少し、お手入れの手間が少なくなるとありがたい。
場合によっては、冒頭で紹介したように、紙パック式として使うのも1つの手だろう。吸引力は若干落ちるようだが、ゴミが溜まったら紙パックを捨てるだけと、お手入れは格段に楽になる。
内部の様子。標準ではダストカップを利用したサイクロン式として使える | ダストカップの背面にレバーがあり、左右に動かしてチリを落とす | カバーを開いてゴミを捨てる。最後にブラシで掃除して完了 |
このように、用途や好みによって方式を選ぶことができるのも、本製品ならではの特長と言えそうだ。
以上、三洋のエアブロックサイクロンを実際に使ってみたが、この掃除機は非常に実用性の高い製品だ。特に、壁際までしっかりと掃除できるヘッドは秀逸で、これに慣れてしまうと、他の掃除機で隅が掃除できないことにイライラさせられるほど。フローリングのウェット拭きなども便利なため、きれい好きの人にぜひオススメしたい掃除機だ。
2010年9月9日 00:00