家電製品ミニレビュー
ダイキン「クリアフォース MCZ65K-W」
●除湿機を買うか、梅雨明けを待つかで悩んでいる人にクリアフォース
ダイキン工業「クリアフォース MCZ65K-W」。電材や住設商品を扱う店舗では、同機能の「ACZ65K」という製品が発売されている |
こんな時に頼りになるのが「除湿機」。湿度を取り去り、乾いた風を送ることで、衣類を簡単に乾かすというものだ。雨降りが続くこの季節の強い味方になる。
しかし、いざ除湿機を買うとなると、「もうすぐ梅雨が明けるのに、わざわざ購入するのもねぇ……」などど、二の足を踏む人も多いだろう。あって便利なのは当たり前だけど、それがこのタイミングなのかどうかというジレンマは、誰しも持っているだろう。“買いたいと思ったときが買い時”とはよく言うけれど、かといって買って後悔したくないというのが本音だ。
それならば、“雨が降っていなくても普通に使える除湿機”を買えば、別に季節云々といった言い訳をせず、気持ちよく買えるのではないか。そんな家電製品が、ダイキン工業の「クリアフォース」である。
メーカー | ダイキン工業 |
製品名 | クリアフォース |
品番 | MCZ65K |
希望小売価格 | オープンプライス |
販売店舗 | Amazon.co.jp |
実売価格 | 53,800円 |
このクリアフォース、除湿機なのだが除湿機ではない。正確に言えば、除湿機能と加湿機能がついた空気清浄機だ。つまり、雨降りの時には衣類乾燥機として、冬には乾いた空気を潤す加湿器として、そして特に何もない時には空気清浄機として使えるという、1年中使える除湿機兼加湿器兼空気清浄機なのだ。メーカーでは「除加湿清浄機」と称している。
こうした“全部入り”の空気清浄機は、ダイキンのほか日立が出しているのみで、あまり製品数が少ない。しかも、かなり高額な製品なので(実売価格は最安でも5万円台!)と、なかなか一般ユーザーがヒョイッと購入できるものではない。しかし、今回使ってみて、「こりゃ、普通の除湿機買うよりも良いよ!」ということが感じられた。今回はこのクリアフォースについて紹介することにしよう。
●付いたあだ名は“メガぴちょんくん”。除菌機能「光速ストリーマ」も搭載
家に着いたクリアフォースを取り出した最初の感想は「大きい!」。
395×290×638mm(幅×奥行き×高さ)。今季レビューで紹介した除湿機と比べると、三菱「MJ-100EX」が360×210×534mm(同)、パナソニック「F-YHFX120」が370×225×570mm(同)だから、一般的な除湿機と比べると、やっぱり大きさを感じてしまう。ダイキンの加湿空気清浄機「うるおい光クリエール MCK75K」と比べても、395×283×610mm(同)とちょっと大きい。狭い我が家に置いたようすを、知人は「こりゃ“メガぴちょんくん”だな」と揶揄したが……。
ただし、よくよく考えれば、このサイズも納得。というのも、クリアフォースは「除湿/加湿/空気清浄」の3つの機能がある一方で、除湿機は当然「除湿」機能のみ。その点を考慮すれば、3つの機能付きでこのサイズなら、むしろコンパクトともいえるかもしれない。また、底部にキャスターが付いているので、大きいわりに動かしやすい点も見逃せない。
本体を横から見たところ。395×290×638mm(幅×奥行き×高さ)なので、ちょっとサイズは大きめ | 底部にキャスターが付いており、動かしやすい |
スペックは、空気清浄が25畳、加湿が18畳、除湿が16畳まで(いずれも最大時)。16畳というと約26平方mだから、一軒家の広いリビングも十分にまかなえるくらいだ。
使い方は、付属のフィルターを取り付けた後で、電源ボタンを押すだけ。空清フィルターは2年ごとに交換するが、全5枚が付属するため、10年間の購入が不要となる。フィルターは空清フィルターのほか、大きなホコリを取る「プレフィルター」や、脱臭触媒なども搭載されている。普通の除湿機なら、ここまでの機能は付いていない。
前面パネルを取り外したところ。緑色のフィルターが、大きなホコリを取り除くプレフィルター | その内部にあるのが、小さなホコリを帯電させ、空清フィルターでキャッチしやすくするためのプラズマイオン化部 | 空清フィルターは購入時に取り付ける(写真はしばらく使った後なので汚れている) |
さらに内部には、脱臭触媒ユニットがある。ニオイをキャッチし、後述する「ストリーマ」で分解する | その中には、除湿ユニットが透けて見える |
クリアフォースで忘れてはいけないのが、同社独自の除菌・脱臭技術「光速ストリーマ」ユニットを搭載している点。この機能を簡単に説明すると、「光速ストリーマ」というプラズマ放電により発生した活性種によって、空気清浄機内に吸い込んだ空気内に含まれるウイルスや菌を分解、除去するというもの。カビ菌や花粉といったものはもちろん、昨年猛威をふるった新型インフルエンザウイルスを除去する効果もあるという。
他社でも、こうした除菌技術を備えた空調機器が多く出ているが、空気中にイオンを放ち効果を発揮するものが多い。一方のダイキンは、本体に吸い込んだ空気に対し効果を発するというものになる。このあたりの話は、過去記事のリンクを参照していただきたいが、今回のクリアフォースは、この光速ストリーマの放電量が、従来から1.5倍にパワーアップした点が、従来モデルからの大きなアップデートとなる。
本体正面には、湿度計を搭載。その下には、除菌ユニット「光速ストリーマ」のロゴが入っている | ストリーマユニットは取り外し可。水洗いも可能だが、中の針に触れるのはNG |
脱臭ユニット「ニオイとる~ぷ」も搭載。写真のように本体のポケットに入れ、脱臭能力を再生できる |
●デシカント式だから除湿すると室温はかなり上がる。それって夏なのに大丈夫?
説明が長くなった。まずは使ってみよう。本体パネル部には、「運転 入/切」と「おすすめ」の2つのボタンがあるが、まずは自動運転をしてみたい。「運転 入/切」ボタンを押し、そこから「おすすめ」ボタンを押すことで、室内の空気の状態を1分間センサリングした後、除湿/加湿/空気清浄運転が自動で選択される。
本体上部の操作パネル。自動で運転する際には、「運転 入/切」ボタンを押した後、「おすすめ」を押す | 手動で操作する場合にはフタを開ける。湿度の高さや風量など、かなり細かい設定が可能だ |
さすがにこの季節、エアコンなしの状態では、100%の確率で「除湿」が選択される。「空気清浄」となるのは、エアコンを使用して湿度がグンと下がった時だけだ。もちろん、「加湿」になることは一度もなかった。
「おすすめ」の除湿運転を行なったところ。確かに湿度は下がったが、温度が3℃も上がってしまい、かなり暑くなった |
除湿機にはもう1つ、ヒーターを使わない「コンプレッサー」式というものがあって、こちらはデシカント式よりも温度上昇が少ない(コンプレッサー式も使用中は気温は上がる)。温度上昇を避けたい場合は、コンプレッサー式の方が無難な選択肢になる。逆にいえば、寒い冬の場合は、デシカント式の方が向くことになる。
ということを考えると、このクリアフォース、夏には向かないんじゃないか、と疑いの目を向けたくなってしまう。しかし、しばらく使ってみたところ、そんなことは全然ないことがわかった。
●どっこい使える3つの理由。しっかり乾く/マイルド除湿/空気がキレイ
温度が高くなるが、そのぶん洗濯物は乾きやすくなる。写真のように部屋干しし、「おやすみランドリー」モードを8時間使用したが、見事に洗濯物が乾いた |
もう1つは、湿度を「高め」に設定すれば、エアコンをつけなくても、ちょっとしたカラッと感を味わえるところだ。おすすめモードでの除湿運転では、自動的に湿度を「低め」にする設定になってしまい、湿度をガンガンに下げる運転を行なう。当然、吹き出る風は温かい。この湿度設定を、操作パネルを開けて「高め」にすると、ヒーターの熱がほとんど感じられない、マイルドな除湿運転にできる。広すぎる部屋だと効果は薄いだろうが、室温が30℃未満であれば、エアコンなしでも湿度を抑えた快適な空調ができた。
最後は、やっぱり基本的に空気清浄機だけあって、部屋の空気がすぐにキレイになる点は素晴らしい。特にホコリ・ニオイのセンサーの反応は早く、納豆を食べたり、近くで服を脱いだりすると、すぐに風量を「ゴオー」とパワーアップしてくれる。魚を焼いて部屋にニオイが充満してしまった日もあったが、そんな日もやっぱり「ゴオー」とひと吹きして、一気に部屋のニオイを取ってしまう。ニオイとホコリを検知したばかりの強運転はうるさく感じるが、ものの数分で弱運転に変わるため、そこまで気にするほどのことはない。もちろん、カビ臭いニオイなど無関係。イヤなニオイが立ちやすい季節だが、室内は常にさわやかな空気で満たされていた。
湿度を「高め」に設定すると、室温の上昇を抑えたまま、湿度を下げることができる(ちなみに、何で明け方に測定しているかというと、ワールドカップを見ていたから……) | センサーの力で、ホコリやニオイを検知し、自動で協力に運転してくれる。写真はホコリセンサー。緑→橙→赤の順に、運転が強力になる | 検知したての強運転の場合は、ゴオーという強い音がするが、数分後には静かな弱運転になる |
●季節に関係なく使える稼働率の高さは魅力。せっかく買ったなら使わなきゃ
使ってみて特に推したいのが、3点目の「除湿機でありながら、空気清浄機である点」だ。現在売られている除湿機は、本体内に空清用・脱臭用のフィルターを備えているものはなく、空気清浄機としての機能はない。あってもイオンを放出する除菌機能のみだ。しかしクリアフォースは、根本的に空気清浄機なので、除湿機として使用するだけで、衣類を乾燥するついでに、家の空気までもキレイにしてしまう。普通の除湿機にはない“プラスワン”の機能を備えているのだ。
おまけに、この夏のシーズンが終わっても、空気清浄機として普通に使える。秋の長雨の際にはまた除湿機として、冬になれば加湿器としても使えることができる。ストリーマ機能も付いているので、風邪や花粉の防御としても効果が期待できる。つまり、これを買っておけば、“除湿機買わなきゃ”、“加湿器ないや”、“空気清浄機を用意しなきゃ”といった悩みなど無用なのだ。
当然、多機能なぶん価格は高いが、高級ゾーンの空気清浄機、加湿器、除湿機をそれぞれ買い揃えるとなると、本製品の実売価格である5万円を越えてしまうだろう。何より、そんなに多くの機器を使っていては、設置スペースが大変だ。
クリアフォースが普通の除湿機と比べて持つメリットは、除湿機でありながら、加湿器でもあり、空気清浄機でもあるという多様性にある。せっかくそれなりのお金を使う以上は、使うシーンの多い製品を購入してみるのは、実に当然のことではないだろうか。
●ホコリは結構溜まるので注意。ニオイとる~ぷは複数購入がお勧め
さて、本稿の最後に、使ったうえで気になった点を指摘しよう。
まずは手入れの話だが、意外とプレフィルターにホコリが溜まるのにびっくりした。除湿をしている際も空気をキレイにしてくれている証拠なのだろうが、手入れはこまめにしておきたい。掃除自体は掃除機でフィルターを表面から吸い込むだけなので、大した手間にはならないだろう。
除湿した際の水タンクは4Lと大容量なので、頻繁に交換する手間はいらない。ただ、かなり大きいので、子供がお手伝いで交換するにはキツいかもしれない。
プレフィルターには結構ホコリが溜まる。掃除機でササッと片付けてしまおう | 水タンクは4Lの大容量。取っ手があるので持ちやすいが、満杯まで入っていると結構重い |
加湿時の手入れに関しては、今回は使用していないので何とも判断できないが、加湿フィルターは水洗いに対応しており、また必要な分だけ水を汲み上げる“水車給水方式”を採用するなど、清潔を保つための機能が備わっている。加湿に関連した機能については、冬に改めて判断したい。
あと、冒頭の方で述べたニオイとる~ぷだが、冷蔵庫に入れたところ、納豆など食品のニオイがしっかりと消えたのにはビックリだった。脱臭効果がなくなっても、ストリーマで再生できるのだから、市販の脱臭剤を買うよりもオトクだ。ニオイとる~ぷユニットはオプションで単体販売もされているので、複数買ってトイレや下駄箱に使うというのが賢い用法だろう。
加湿フィルターは取り出して洗える | タンクにある水車で水を汲み上げる | ニオイとる~ぷを冷蔵庫に入れたところ。複数購入して下駄箱やトイレなどで使いたい |
●“除湿機が家の奥で眠っている”という人には特にお勧め
というわけで、クリアフォースを一通り見てきたが、除湿をしながら空気清浄ができるという点では、明らかに一般的な除湿機よりも秀でている。実は、我が家でも除湿機を持っているのだが、今選べるのであれば、確実にクリアフォースを購入するだろう。除湿機は雨が降って洗濯物が乾かせない時にしか使わないが、クリアフォースは普段は空気清浄機として、雨降りの際には除湿機として使えるので、稼働率が断然に高いのだ。しかも、冬には加湿器としても機能してくれるときている。
この除湿+加湿+空気清浄機という新しいジャンルは、家電業界では現在のところマイノリティではある。しかし、一度使えばその良さは確実にわかってもらえるはず。特に、除湿機を持っているけど実際はあまり使っていない、という人には、クリアフォースの多用性がよく分かってもらえるのではないだろうか。
梅雨が開ける開けないというタイミングで、除湿機を買うにはちょっと時期が遅いかもしれないが、クリアフォースならそんなことはない。なぜなら、オールシーズン使えるからである。“除湿機、どうしようかな”という人は、ぜひ検討リストに入れて欲しい一品である。
2010年7月13日 00:00