家電製品ミニレビュー

三菱電機「蒸気レスIH 本炭釜 NJ-XWA10J」 後編

~粒がしっかり主張するおいしいご飯
by 清水 理史

タンクに水を入れ忘れてますよ

 前回、我が家のキッチンへとやってきた三菱電機の炊飯器「蒸気レスIH 本炭釜 NJ-XWA10J」。蒸気レス+本炭釜という、NJ-XWA10Jならではの特徴については、前回紹介したので、今回は実際にご飯を炊いていただいてみることによう。

 とは言え、ここ数年、自らご飯を炊いた記憶がないので、手慣れた妻にお願いして、NJ-XWA10Jでご飯を炊いてもらうことにした。

 手順は普通の炊飯器と同じ……と思ったら、そうでもなかった。

 フタを開けて、本炭釜を取り出し、お米をカップで3杯投入。水を入れながらお米を洗い、釜の横に刻まれてる目盛りを頼りに水を満たす。

最初に釜を取り出してお米を投入し、水で洗う。なお、本炭釜では固い物を使っての米とぎは禁止されている。今回は表面がシリコンでおおわれた泡立て器を使っている続いて内部の目盛りを見ながら水の量を調整

 そういえば、この目盛りは三角形になっているのがなかなか面白い。1合、2合、3合ときっちりの分量のときは三角の頂点、1.5合、2.5合、3.5合と中間の分量は三角と三角の間で水を量れるようになっている。

 職人さんが削りだした本炭釜、などと聞くと、普通のお釜として使えるだろうかと心配にもなるが、見た目や重さ(若干軽いかもしれない)は変わらないうえ、目盛りなども普通にあるので心配ないだろう。

 話を元に戻そう。というわけで、お米の準備ができたら、本体にセット。ここで、ついつい普段のクセでフタを閉めて、スイッチを押したところエラーが……

 「タンクの水が不足しています。水を調整してやり直してください」

 前回、紹介した通り、NJ-XWA10Jは発生した蒸気をタンクに貯めた水で冷却することで蒸気レスを実現している。この水を入れるのをすっかり忘れていたのだ。慣れとは恐ろしいものだ。

いよいよ釜をセットしてスイッチオン残念!水タンクの準備を忘れていたのでエラーが……

 というわけで、気を取り直して、もう一度、フタを開けて水タンクを取り出し、カバーを開けて水道から水を注ぎ込む。

 片手にズシリと重みを感じたくらいで、ちょど目盛りまで水が入るので、再びカバーをして本体にセット。

 これで本当の意味での準備が完了。本体上部のスイッチを押して炊飯を開始してみた。

水タンクに水を入れるタンクをセットしてあらためて炊飯開始

蒸気は出ないが泡の音が出る

 炊飯器というのは、一旦スイッチを入れたら放っておくのが普通で、じっと眺めていても特に何も起こらない。

 とは言え、本当に蒸気が出ないのかを確認するために、じっと眺める。が、お米が炊けてくる音が聞こえるくらいで、見た目の変化は一切なし。甘い感じの独特のご飯が炊ける香りもまったくしてこない。

 ただ、しばらくすると、「ポコポコポコ、ポコポコポコ……」と断続的に大きめの音が聞こえてくる。普通の炊飯器では聞き慣れない音なので、何かと不思議に思ったが、おそらく「激沸騰」による泡の音であろうと推測できる。

釜の底面の厚みが変化している。最厚部は7.5mmとなっており、この形状と暑さで大きな泡を出すことができる

 NJ-XWA10Jの釜は、釜全体を発熱できる本炭釜であるうえ、底面の厚さが7.5mmと厚くなっているため、釜の中心部分に熱をたくわえ、大きな泡を次々に沸き立たせることができるようになっている。しかも、吹きこぼれを気にせず、連続的に沸騰させることができるという。製品情報のサイトでは、この連続沸騰を「激沸騰」と表現している。

 おそらく、炊飯中に、この泡の音が「ポコポコポコ、ポコポコポコ……」と聞こえていたのだろう。さすがに「激」というのは大げさじゃないかと思っていたのだが、実際に激烈に沸騰していたというわけだ。

炊飯中は赤いランプが付くが、蒸気もニオイも出ない。ただし、中盤以降は本体をさわると熱さを感じる

 さて、炊飯も後半になると、本体の温度も次第に上昇し、上部、側面、水タンクの前面を手で触れると熱を感じるようになってくる。

 熱い蒸気が外に出ない蒸気レス機構は、特に小さな子供がいる家庭にとっては安心だが、それでもそれなりに熱は持つので、くれぐれも過信は禁物だ。本体上部もフラットなので、ついつい上に何かモノを置きたくなることもあるのだが、そこはやはり炊飯器であることを忘れてはいけない。



粒がしっかり、甘みがたっぷり

 炊飯完了後、フタを開けると、ここではじめて蒸気がフワっと立ち上り、炊きたてのご飯の良い香りが漂ってくる。

炊きあがりの様子(白米、匠芳潤炊き)

 炊きあがりを見てみると、確かにお米が立っている印象。ところどころに小さな穴のような隙間も見え、激沸騰のおかげで全体的にふっくらと炊きあがった印象だ。

 実際に食べてみると、粘り気よりも、粒のしっかり感を重視した固めの炊きあがりで、お米の一粒一粒の感触や味を楽しめる感じになっている。

 口に入れると、確かにいつも食べているご飯より甘い。市販のお米に、普通の研ぎ方で、何も気を配らずに炊いても、おいしいご飯が炊きあがるのはうれしい限りだ。

炊きあがりの様子。全体的に粒が立っており、ふっくらとしている炊きあがったご飯。ツヤがあり、粒の食感が良い。甘みもかなりあっておいしい

 NJ-XWA10Jでは、炊飯モードとして「白米」、「分づき米(7分/5分3分)」、「発芽米」、「無洗米」という米の種類、「ふつう」、「おかゆ」、「炊き込み」、「お急ぎ」、「やわらか」、「かため」備えているだけでなく、特にお米をおいしく炊きたい時用のモードとして「匠芳潤炊き」を搭載している。今回もこの「匠芳潤炊き」というモードでご飯を炊いている。

お米の種類や調理方法なども簡単に選択可能。白米なら「匠芳潤炊き」がおすすめ。炊き込みご飯も簡単に作れる

 「匠芳潤炊き」は、通常よりもじっくりと時間をかけることで、お米のうまみを引き出す炊き方だ。具体的には、炊飯開始時の弱火の段階、60℃前後の温度での仕込み時間を通常より長く設定することで、お米への吸水、および糖化酵素の働きの活性化をうながすことで、お米の甘みとツヤを引き立てることができるようになっている。

 炊飯時間は、通常の炊飯モードより15分ほど長くかかるが(通常は60分くらい)、その分、ご飯の甘みが増すので、せっかくならこのモードがおすすめだ。

 次に、炊き込みご飯を炊いてみた。我が家の炊きこみご飯は、もち米の割合を通常より多く、鶏肉を増量している。本体に搭載されている「炊き込みご飯」モードを選んで、炊き上げた。

 仕上がりはこれまた満足。もち米を入れているので、今度は粒が立つというよりは、しっかりした食感の中でも、もっちり感を味わえる。ダシがしっかりごはんに染みて、おいしく頂くことができた。

もち米マシ、鶏肉マシの我が家の炊き込みご飯もっちり感がたまらない。おこげも適度でおいしい

 また、保温もなかなか上手く、炊いたご飯をそのまま炊飯器に入れたままにしておいても翌日くらいまでは十分おいしく食べられる。さすがに炊きたてにはかなわないが、夕飯時に炊いて、翌日の朝食、さらにはお弁当に入れるなどといったくらいであれば、そのままおいしいご飯を楽しむことができる。

4点セットを毎回洗うのが手間

洗い物が多くなってしまうのが唯一の欠点。おいしいご飯を食べるためにはこの手間も必要

 蒸気が出ないという独自の機構や、おいしく炊ける独自の炊飯モードなど、全体的には好印象だが、価格が実売で10万円程度と高価なこと、さらに蒸気レスのしくみを実現しているパーツも含め、炊飯後のお手入れに若干手間がかかることが、欠点と言えば欠点となる。

 価格に関しては、毎日、おいしいご飯が食べられることを考えれば納得もできるが、お手入れに関しては洗い物が苦手な人にはツライかもしれない。

 通常の炊飯器であれば、釜と内蓋を洗う程度でかまわないが、本製品の場合、これに加えて、前面の水タンク(外カバー、タンクフタ、タンク本体)の洗浄と水の入れ替えが必要になるうえ、釜から水タンクへと蒸気を送るためのパイプ役となるカートリッジも洗う必要がある。

 おいしいご飯を食べるため、とは言っても、洗い物を担当する人にとってはそれなりに負担になる。家族などへのプレゼントに選ぶときなどは、この負担が苦にならないかも考慮した方が良さそうだ。


 全体的に見れば「蒸気レスIH 本炭釜 NJ-XWA10J」は、蒸気レスという実用性の高さに加えて、本炭釜の採用や匠芳潤炊きなどの炊飯方式の工夫によって、ご飯のおいしさを引き出すことにも長けた、優れた炊飯器と言えるだろう。




2010年5月28日 00:00