家電製品ミニレビュー

三菱電機「蒸気レスIH 本炭釜 NJ-XWA10J」 前編

~蒸気が出ないと何がいいの?
by 清水 理史

家具店で知った蒸気レスのメリット

三菱電機のジャー炊飯器「蒸気レスIH 本炭釜 NJ-XWA10J」。蒸気レスに加えて本炭釜を採用した最上位機種

 先日、家族で家具店に訪れた際、キッチン用の食器棚が安く出ていた。以前から欲しいと訴えていた妻に「買ったら?」と言ってみたところ、どうも表情がさえない。よくよく聞いてみると「炊飯器が……」との答え。

 食器棚をよく見ると、スライド式の棚がセットされた炊飯器を設置するスペースがあった。「ごはんを盛るときだけ出して、あとはしまっておける、便利じゃないか」と感心していると、どうもその認識が違うらしい。

 炊飯器でご飯を炊くと蒸気が出る。棚に炊飯器をしまったまま炊くと、この蒸気で炊飯器の上にある棚が傷んでしまう。よって、炊くときはスライドさせて外に出す必要があるのだそうだ。なるほど、棚から飛び出した炊飯器が、もくもくと蒸気をあげている様子を想像すると、決して広くない我が家のキッチンでは邪魔になりそうだ。

 妻曰く、「棚を買うなら蒸気レスの炊飯器とセットで……」とのこと。なるほど、こちらが本命か。

 もちろん、蒸気レスの炊飯器が存在することは知っていたのだが、実際、そのメリットが心に響くのは、こういった瞬間なのかと実感させられた。

 そんな蒸気レスの炊飯器が我が家にやってきた。それが、三菱電機の「蒸気レスIH 本炭釜 NJ-XWA10J」だ。今回から2回にわたって、この製品を紹介しよう。



メーカー三菱電機
製品名蒸気レスIH 本炭釜 NJ-XWA10J
希望小売価格オープンプライス
購入場所Amazon.co.jp
購入価格76,400円


 三菱電機では世界初の蒸気レス炊飯器として前モデルの「NJ-XS10J」を2009年2月に発売した。その二代目に当たるNJ-XWA10Jでは、蒸気レス機構に加えて、これまで同社の最上位モデルで採用されていた純度99.9%の炭素材料を使った本炭釜を新たに採用している。同社の技術のすべてが詰め込まれた、トップオブ炊飯器とでも言うべきモデルだ。

どうして蒸気が出ないのか?

 というわけで、実際に製品を見ていこう。NJ-XWA10Jは、フラットで、しかもスクウェアなデザインがとても印象的な炊飯器だ。

 真上から見ると四隅がラウンド状に削られているが、全体的なイメージはほぼ真四角。キューブブロックという表現がまさにピッタリで、光沢のあるルビーレッドのカラーからも、とてもモダンなイメージがある。

正面側面
背面上部

 なるほど。妻でなくとも、こんなデザインの炊飯器が、真新しいキッチン棚に収納されている様子をイメージすれば、それはやはり「グッ」と来るというものだ。

 ちなみに、カラーはピアノブラックもあるようで、さりげないシックな雰囲気が好みというのであれば、そちらを選ぶのも1つの手だ。

 それにしても、どうして蒸気が出ないのか? 届いたばかりのNJ-XWA10Jを箱から取り出して観察していると、形だけでなく、そのしくみも普通の炊飯器とはだいぶ違うことに気がつく。

 まず、目に付くのは手前にあるタンクだ。前面のボタンを押してフタを跳ね上げると、釜の手前に、取り外し可能なタンクがある。両脇を抱えて持ち上げるようにして取り外し、確認してみると、どうやら水を入れて使うらしい。

 タンクを元に戻して、再びチェックしてみると、タンクの左側に直径2cmほどの穴があり、その延長線上にある本体のフタに目をやると、そこには穴にピッタリとはまりそうな丸いアダプタがあり、さらにたどって行くと、釜を密閉するための上蓋へと続いてる。

 ここで、なるほどと納得できた。釜に米と水を入れて加熱すると蒸気が出る。普通は、そのままフタの穴から外部に逃がすわけだが、この蒸気を上蓋からカートリッジを通じて回収して、本体前面のタンクへと誘導。ここで水を使って冷却し、蒸気を水へと変えてしまうというわけだ。

水を入れて使うタンクを前面に装備水タンクの穴と釜の内蓋をつなぐように、上部に通気口となるカートリッジが配置されている。ここを通して、内部の蒸気を水タンクへと送り、冷却して回収する

蒸気レスだと何が良いのか?

炊飯中の様子。蒸気も出なければ吹きこぼれもない

 では、蒸気レスだと何が良いのか? これには2つの側面がある。1つは「蒸気」が環境に与える影響をなくすことができることだ。

 前述した食器棚にも収納できるのもそうだが、蒸気が出ないため、部屋にニオイや湿気を充満させずに済む。夕方、食卓に漂う食欲をそそる香りもなくなってしまうのは、少々残念だが、確かにこれから初夏にかけて、蒸し暑い時期は、ご飯を炊く湿気で部屋の快適さが損なわれてしまうことがある。そういったデメリットを排除できるわけだ。

 もう1つの側面は、ご飯をよりおいしく炊きあげることができることだ。通常の炊飯器の場合、上部のフタに蒸気口があるため、沸騰させた際に、蒸気だけでなく、内部の水分まで吹きこぼれる可能性がある。

 これを防ぐために通常は加熱時間を調整して沸騰しすぎないようにするわけだが、NJ-XWA10Jの場合、蒸気も出なければ、吹きこぼれを心配する必要もない。そこで、大火力で連続的に釜を加熱し続けることができるようになっている。

 また、フタに内蔵されているカートリッジは、蒸気を水タンクに送るためだけでなく、沸騰時に釜からあふれ出してしまう米のうまみ成分をキャッチするという役割も持っている。キャッチしたうまみ成分は、ご飯を蒸らすときにカートリッジから還元されるため、よりうまみ成分の多いご飯に仕上げることができるのだ。

 単に蒸気が出ないだけかと思ったが、おいしさまでも考慮されているというわけだ。なかなか面白いしくみを考えたものだ。

炭99.9%の本炭釜を採用

円筒形の炭の塊から削りだして成型した本炭釜。IHの熱を釜全体で加熱することができる

 このように蒸気レスという他にはない特徴を備えたNJ-XWA10Jだが、もう1つユニークな特徴を備えている。それが、炭99.9%の炭素材料を使って作った内釜だ。

 NJ-XWA10Jの釜は、円筒形に錬成後に焼成した炭から、職人さんが釜の形を削り出すというとても手間がかかった釜だ。

 冒頭でも触れたが、この本炭釜は、これまで同社の炊飯器の別のモデルで採用されていた。つまり、蒸気レスと本炭釜は別々のモデルに採用されていた技術だったのだが、今回の新製品であるNJ-XWA10Jで、この2つの技術が融合したわけだ。

 通常の炊飯器の釜は、ステンレスなどの金属を組み合わせた多層構造となっており、IHによってステンレス層を加熱後、その熱を他の層に伝えることで加熱するしくみになっている。

 これに対して、本炭釜は炭素素材のみの単層構造となっており、IHの加熱を釜全体で実現できるようになっている。また、底面の厚さを工夫することで、熱したときに底面から大きな気泡が発生するようにも工夫されている。これによって、米を押し上げるようにして炊きあげることができ、ふっくらとしたご飯に仕上げることができるとのことだ。

 というわけで、今回は主に「蒸気レスIH 本炭釜 NJ-XWA10J」の特徴を紹介した。明日掲載の後篇では、実際にご飯を炊いた感想を紹介したいと思う。




2010年5月27日 00:00