家電製品ミニレビュー

象印「EE- RA50」

~シンプルで扱いやすいスチーム式加湿器
by すずまり
「沸騰するバケツ」といったイメージの象印マホービンのスチーム式加湿器「EE-RA50」

 暑い季節から流行した新型インフルエンザ。冬になったらどうなるのか実に心配である。風邪もそうだが、感染予防にはうがい、手洗いはもちろんのこと、空気を乾燥させないことが大事。特に喉や鼻などの粘膜を乾燥させないことが重要だと言われる。

 そこで毎年乾燥が気になる時期になると室内にタオルや洗濯ものを干したり、風呂場のドアを開けて湯気や水分を積極的に室内に流すなどしていた。しかしどうしても限界があるのも事実。そこで今年はまじめに加湿器の導入を考えた。

加湿器は加湿方式によって4種類存在する

 実は過去に某通販番組で購入した加湿器を所有していた。しかしタンク内の清掃がしにくかったことや、タンクと本体との接触部分が非常に汚れやすく、不潔な印象を持ったので処分してしまった。音も熱もなく静かで、ひんやりしたミスト状の水分を放出するのでよかれと思ったのだが、よくよく調べてみると衛生面で少々危険を伴っていたようだ。

 実は加湿器には4つのタイプがある。水を沸騰させてその蒸気(湯気)を排出する「スチーム式」、水を含んだフィルターに風をあてて水分を気化させる「気化式」、超音波振動によって水を霧状にして排出する「超音波式」、「気化式」と「スチーム式」など2種類以上の方法を組み合わせ、切り替えて利用できる「ハイブリッド式」だ。

 詳しくは「現代家電の基礎用語 第23回:加湿器とは」を参照していただければ、そのメリット・デメリットはわかっていただけるはずなのでぜひご覧いただきたい。これによれば、以前筆者が所有していたのは「超音波式」に分類されるようだ。タンク内が清掃しにくかったことや、汚れが溜まりやすかったことから、水道水のミネラル分を含め、不衛生なものまで直接室内にまき散らされていた可能性が高かったわけだ。

 このことからしても、加湿器選びにもある程度の基礎知識が必要であることが分かる。となればどれを選ぶべきか迷うところだが、加湿方式や価格、パワー、サイズ、扱いやすさ、メンテナンスコストなどから、今回は象印マホービンの「EE- RA50」を選んだ。やはり衛生面が気にかかるのだ。


メーカー象印マホービン
製品名EE-RA50
希望小売価格21,000円
購入場所Amazon.co.jp
購入価格11,138円

構造も操作もシンプルな「EE-RA50」

 「EE- RA50」はスチーム式の加湿器で、サイズは240×260×315mm(幅×奥行き×高さ)、重さ2.3kg、最大容量3.0L。水タンクと本体が一体型というシンプル構造が特徴だ。ロックを解除しながらフタをあけると、中はフッ素加工された大きな容器になっており、指定ラインまで水を入れてフタを閉め、スイッチを入れると中の水が沸騰、約65℃の湯気がでてくる仕組みだ。

 本体には「Ag+抗菌加工ハンドル」がついているので水を入れたままどこにでも簡単に持ち運べる。電源コードはマグネット式なので、間違ってケーブルに何かを引っかけても、ケーブルがすぐに抜けるため本体が倒れるのを防げるのだ。

製品パッケージ持ち手は「Ag+抗菌加工」されている
上から見たところ。蒸気カバーの下に蒸気吹き出し口がある(主に右側から出る)。なお蒸気カバーははずれる横から見た様子背後から見た様子
フタを開けると、フッ素加工された容器が現れるこの中に水を入れるだけ。掃除にはクエン酸を用いるフタの様子
蒸気吹出し口の様子中の水を捨てる際はフタをはずす取扱説明書
正面の操作パネル

 外観同様、操作もとてもシンプルだ。電源プラグをコンセントに差し込んだら、「入/選択」ボタンを押す。すると、湿度状況を表す「湿度モニターランプ」のうち「高湿」「適湿」「低湿」のうちどれか1つが点灯する。これは「EE-RA50」内蔵のセンサーが現在の室内の状況を人間が感じる「体感湿度」として判断しているもので、「低湿は」体感湿度37.5%未満、「適湿」は37.5~67.5%未満、「高湿」は67.5%以上という設定になっている。(体感湿度は象印による造語)

 「湿度モニターランプ」が点灯すると同時に自動的に、前回使用したモードで加湿が開始される。「入/選択」ボタンを押すごとに自動運転の「のどバリア」の「おまかせ」と「ひかえめ」「連続」運転の「強」と「弱」という4つのメニューのランプが順番に点灯するので、好きなメニューをONにすればよい。それだけである。

 どのモードを選ぶかだが、気になるのは「のどバリア」。これは加湿器が体感湿度をマイコンで求め、湿度をコントロールすることでのどの粘膜の乾燥を抑えてくれるのだという。つまり風邪の予防にありがたい機能というわけだ。

 「のどバリア」の「おまかせ」は体感湿度60%の設定で、素早く湿度を上げる効果があるという。特に乾燥が気になる冬にいいらしい。「ひかえめ」は体感湿度約50%で、穏やかな加湿が欲しい秋口や就寝時向き。「強」は約6時間の連続運転が可能で、加湿量480mL/h、木造和室なら8畳まで、プレハブ洋室は13畳までが目安だ。「弱」は約24時間の連続運転が可能で、加湿量125mL/h、木造和室2畳まで、プレハブ洋室3.5畳までとなっている。長時間加湿したいときは「弱」がおすすめだ。

 タイマーも用意されており、「タイマー」ボタンを押すごとに、2時間経過したら停止する「おやすみ 2」と、6時間後に自動的に加湿を開始する「おはよう 6」のいずれかが選択できる。2つのタイマーは併用できるので、2時間後に停止させて6時間後に再稼働なんてことも可能だ。なお、おはようタイマーは設定時間の30分前から始動する(つまり5時間30分後から動作する)。加湿開始に30分の余裕をみていると思われる。

 加湿開始までにかかる時間だが、満水、水温20℃、室温20℃の場合約25分となっている。急いでいるときはぬるま湯を入れるか、給水量を少なめにするといいのだが、熱湯はいれてはいけない。この点は覚えておこう。停止したいときは「切」ボタンを押せば即座に止まる。

 なお、アロマオイル、アルカリイオン水、汚れた水、化学薬品などは使えないので覚えておこう。

沸騰音をさせながら湯気が排出される

 スイッチを入れて30分ほどすると蒸気吹き出し口が熱を帯び、湯気が立ち上り始めた。中でお湯が沸いているせいか、本体側面も温かくなる。沸騰と停止を繰り返すことで、一定の体感湿度を保っているようだ。

サイズとしてはトートバッグと同程度。デザイン的にも邪魔にならない容器の線まで水を入れる。口が広いので扱い易いエアコンを使いすぎると、湿度計が思わぬ数値を示していることがある
湿度が気になったらスイッチオンしばらく加湿すると、湿度が戻ってくるのがわかる長時間加湿していると体感湿度が高くなることも

 超音波式の静かさに慣れていたため、初めて稼働させた時はその音に驚いた。電気ポットのお湯が常時沸いているような状態のため、グツグツシューシューという沸騰音や蒸気の排出音に違和感を感じてしまったのだ。一番困ったのは就寝時である。同じ部屋でグツグツ鳴っているとどうしても気になってしまう。しかし不思議なもので、しばらくしてその効果が分かってくると慣れてしまった。余計なものが排出されていないという安心感と、朝起きたときに乾燥して皮膚がかゆくなったり、喉が痛んだりしなくなったからだろう。


加湿しているときの様子。蒸気がモクモクと発生する

 使用したのが秋口ということもあり、まだまだ極度に乾燥するという気候ではないものの、エアコンを稼働させているとどうしても湿度の低下は避けられない。拙宅の場合湿度計が40%付近で止まっていることが多い。これが「EE-RA50」の「のどバリア」を稼働させることで、素早く50%以上までアップするのだからありがたい。もちろん湯気が排出される分気温は多少上昇するのは避けられないが、28~30℃付近で落ち着いているようだ。

寝る前にちょっと加湿しておこう、というときにタイマーは便利だ水がなくなると給水ランプが点灯し、加湿が停止するするのでわかりやすい

 外部に不純物が排出されない分、内容器にミネラル分や金属イオンなどの成分が溜まって変色することがあるが、1~2カ月毎にクエン酸で洗浄するとよい。洗浄時も専用のボタンが用意されているので安心だ。

電気代が気になるなら、湿度計を見ながらこまめに調整を

 沸騰させている時間が長くなると、心配なのは電気代である。「のどバリア」の「おまかせ」で稼働させて計測したところ、1時間あたり少なくとも4.6円程度のコストが発生するようだった(エコワットで計測)。1日数十円ずつ電気代がかかることになると考えるとつけっぱなしは厳しい。

 そこで導入したいのが湿度計である。しかも危険ゾーンが視覚的にわかりやすいタイプがおすすめだ。ときどき湿度をチェックし、風邪を引きやすい湿度になりそうだったらスイッチを入れ、湿度が50%に達したところでスイッチを切る。これを繰り返すことで無駄な加湿を避け、電気代を節約できるだろう。寝る前と朝はタイマーを活用すれば消し忘れも防げるし、起床時の乾燥ともおさらばだ。

秋冬の乾燥予防に便利な一台

 ほかの加湿方式に比べ電気代は確かに気になるが、スチーム式のメリットはやはりその即効性と衛生面での安心感にある。EE-RA50の場合、取り扱いが楽というのも大きなメリットになるだろう。蒸気が発生するという構造上の理由から小さなお子さんのいるご家庭には向かないが、それ以外なら導入して損のない製品である。お肌の乾燥を防ぐためにも加湿は大事。美容と健康管理に活用してみてはいかがだろうか。





2009年10月5日 00:00