家電製品ミニレビュー
イデアインターナショナル「エスプレッソマシン BIANESSO」
エスプレッソマシン BIANESSO |
しかし、1台でエスプレッソはもちろん、ドリップコーヒー、さらにはカプチーノ用のフォームドミルク(泡立て牛乳)までも作る事ができる“ハイブリッドタイプ”のコーヒーメーカーを見つけてしまい、思わず購入してしまった。イデアインターナショナルの「エスプレッソマシン・ビアネッソ(以下、ビアネッソ)」だ。
メーカー | イデアインターナショナル |
製品名 | エスプレッソマシン BIANESSO |
品番 | THA01-W 6130001 |
希望小売価格 | オープンプライス |
購入店 | Amazon.co.jp |
購入価格 | 11,667 円 |
一般的なエスプレッソマシンは家庭用でも数万円~十数万円はする。毎日は使わないのにそこまで高額ともなると、おいそれと手は出しづらい。それに比べビアネッソは、エスプレッソだけでなくドリップコーヒーまで楽しめるというのに、実売価格は1万円とちょっとかなりお手頃な価格だ。そんな値段で本当に大丈夫なのかと少々心配してしまったが、実際に購入し使用してみると、十分に楽しめる素敵な製品であった。
今回は家庭で気軽に楽しめるエスプレッソマシンとして、この「ビアネッソ」を紹介しよう。
●意外とコンパクトな本体。エスプレッソは一度に4杯分作れる
棚の奥行きが255mmしかない我が家のコーヒー専用棚にすっきりと収まったビアネッソ |
サイズは普通のコーヒーメーカーと比べると大きめだが、コーヒーメーカーとエスプレッソマシンの2台分が入って355×215×355mm(幅×奥行き×高さ)ということを考慮すれば、逆にコンパクトと言えるかもしれない。重さは3.84kgと軽量なので、特別頑丈な棚を用意する必要もない。
パーツや各部品などは、以下に画像にて紹介する。
水タンクの蓋を開け、本体上面からみたところ。左にコーヒーメーカー、右にエスプレッソの給水部分がある。画像の右下にあるつまみは、エスプレッソの濃さを調節と蒸気ノズルの切り替えに使用する | 右側面には、フォームドミルク用の蒸気調節つまみがあり、これで泡立ての調整をする | 左側面には、ドリップコーヒー用の水位の確認ができる窓がある |
本体のスイッチは、ドリップコーヒー用(上)、エスプレッソ用のスイッチ(下)の2つ | マシンの底。コードは太く、長さは1.4mある。コード収納スペースも用意されている |
ガラスポットは、エスプレッソ用(上)、ドリップコーヒー用(下)の2種類が同梱される | 同梱されているパーツ。左から、エスプレッソ2カップ用アダプタ、コーヒー豆計量スプーン、エスプレッソ用ホルダー | ドリップコーヒー用ガラスポットには1200ccまで目盛りが振られている。一度にたっぷりの量のドリップコーヒーが作れる |
ビアネッソでは、エスプレッソなら一度に4杯分(200ml)作ることができる。一般的に出回っている家庭用エスプレッソマシンで一度に作れる量は普通2杯程度で、それ以上作ろうと思ったら、器具の豆を取り替えるなどして、新たに作り直さなければならない。来客時にも気軽にエスプレッソやカプチーノを振舞える量だ。
一方のドリップコーヒーでは、一度に1,200mlと、こちらも多めに作れる。国内の主流となるコーヒーメーカーでは、コーヒーカップ4~5杯 (750ml) 程度のものが多い。大き目のマグカップで振舞うこともできるだろう
●「タンピング」など面倒な作業もなし。簡単にエスプレッソが作れる
製品の概要を一通り説明したところで、さっそくエスプレッソを作ってみよう。
カップ2杯分の豆の量(下)と、2杯分のエスプレッソとフォームドミルクを作るための水(上)。入れすぎると噴き出す恐れがあるため、分量はきちんと計っておきたい |
次に、豆が入ったホルダーを本体にセット。ハンドルを持って装着するよりも、ホルダー部分を持ったほうが、本体に差し込みやすい。ホルダーを差し込んだら反時計回しにホルダーを回し、ロック状態にする。
そして、エスプレッソ用のガラスポットを使い、水を水タンクで計って入れる。水の量は2杯なら100cc、4杯なら200ccとなる。カップは1杯だけでなく、2杯同時も可能。また、ガラスポットにも抽出できる。
ここで注意したいのが、水と豆の量。エスプレッソメーカーなので当然圧力を使ってコーヒーを抽出するため、お湯や豆を大量に入れると噴き出す恐れがある。ちなみに最大量である240ccの水は、ガラスポットの上部にある金属の帯の少し下あたりになる。ホルダーにも目盛りが付いているため、詰まりや豆があふれることのないようきちんと計ろう。
後は、本体の正面下部のスイッチ「ESPRESSO/CAPPUCCINO」と表記されているボタンを押せば、抽出がスタートだ。
電源を入れて2分ほど経つと、いよいよエスプレッソの抽出がスタート。コーヒーカップにエスプレッソが注がれていく。
水をタンクに注ぎ入れ、キャップを垂直に置き、しっかりと締まるまで時計回しに回す | 2杯のエスプレッソを同時にカップに注ぐ場合には、ホルダーをマシンに装着する |
カップに直接抽出しているところ | ガラスポットにも抽出できる |
では、できあがったエスプレッソをいただこう。ひとくち口に含むと、エスプレッソらしい苦さと旨みがギュッと凝縮された、濃厚なコーヒーが口の中にサーッと広がる。濃いのに、後味はとてもスッキリしており、ついついカップにもうひと口を運んでしまう。飲み終えた後は、思わずふーッとため息がもれてしまう程おいしかった。お店でいただくような、とろみがあるほどの濃さではないものの、とてもさわやかな味わいのエスプレッソで、大きな満足感が得られた。
特に技術的なテクニックも要らず、水と豆の量をきちんと計りマシンにさえセットしてしまえば、わずか2、3分で出来上がってしまう。後述するが、後片付けも意外なほど簡単で、特に手間を感じる事もなくおいしいエスプレッソを楽しむ事ができたのである。購入前は、「落ち着いた気分の時にエスプレッソを」と考えていた。しかし、あまりにも簡単なので、これなら朝の忙しい時でさえも、エスプレッソを気軽に楽しむ事ができそうだ。
ちなみに本製品には「濃さ調節つまみ」というものもある。これは「STRONG」「LIGHT」の間で、抽出時のお湯の噴出量を無段階に切り替えられるもののようだ。そこで同じ豆を使って、STRONG、LIGHTの2種類のエスプレッソを抽出したところ、確かににお湯の噴出量が変わっているものの、できあがったエスプレッソの濃さ、味に大きな差は感じられなかった。
その後、豆の量を4杯分と多めにしてのエスプレッソを抽出してみたところ、STRONGの位置では圧力が足りないのか、途中で抽出が止まってしまうことがあった。すかさずつまみをLIGHTの位置にすると、抽出が再び始まり、4杯分のエスプレッソが最後まで抽出できた。できあがりの濃さ調整というよりは、抽出時にかかる圧力調整という認識の方が良いかもしれない。豆を多めに入れ、あまり抽出がスムーズにできない場合は、「LIGHT」に設定してみると良いだろう。
濃さ調節つまみ。写真上段が濃いめ(STRONG)、中段が軽め(LIGHT)。下段の「蒸気排出」は、カプチーノのフォームドミルクを作る際に使用する | 写真上は、ツマミを「STRONG」で抽出したもの、下は「LIGHT」。濃さはそれほど変わらないように見えるが、味も見た目どおり大差はなかった |
●圧力が弱いため、高級機種とは味の差も。「クレマ」も少なめ
ところでビアネッソは、沸騰するお湯の勢いを利用して抽出する「蒸気加圧式」という方式でエスプレッソを作っている。密閉されたタンク内で水を沸騰させ、その圧力を利用してお湯を押し出すというもの。業務用や高額なエスプレッソマシンでは、9~15気圧をかけてコーヒーを抽出する「強制加圧式」を採用するが、ビアネッソの蒸気加圧式は4気圧と低い。そのため、強制加圧式の味に慣れている人にとっては、物足りなさを感じるかもしれない。
とはいっても、この蒸気加圧式にもメリットはある。比較的単純な構造で製造できるため、価格は抑えなものが多い。また、作動音も比較的静かなのも特徴だ。
また、同じ蒸気加圧式のエスプレッソマシンには、ポットの形状をした直火式のものがある。こちらの蒸気圧は1.5~3気圧。それに比べると、ビアネッソはそれよりも高い圧力がある。また、直火式にはないフォームドミルクの生成機能(後述)も使えるのは利点だ。
エスプレッソ抽出中、細かな泡(クレマ)は発生しているが、すぐに消えてしまう。クレマの命は短い…… |
しかし、ビアネッソは圧力が比較的弱いため、抽出中は細かなクレマが確認できるものの、濃厚ではないためすぐに消えてしまう。もちろん味自体は十分おいしいのだが、“クレマが無ければエスプレッソではない”という人には向かないだろう。
●ミルク本来の甘さを味わうカプチーノも作れる
フォームドミルクを作る蒸気ノズルを、回転させているようす(合成)。ノズルの先にはアタッチメントがついており、その上部には小さな孔が見えるが、これは泡を作るための空気を取り込むためのもの |
フォームドミルクの作り方を簡単に説明すると、本体に付いている「蒸気ノズル」をミルクの中に入れ、ノズルから噴出する蒸気でミルクをムース状に生成するという仕組みだ。ミルクの容器は同梱されていないため自前で用意する必要があるが、温めすぎて味を損ねないよう、専用のミルクジャグがお勧めだ。
1.エスプレッソを作る時と同じように豆を用意し、セットする。水タンクには、蒸気用として20ccほどプラスし120ccの水を入れる。2杯分しか作らないなら、十分な蒸気を確保するために多少、多めに入れても大丈夫。
2.ガラスポットをセットし、電源を入れる。エスプレッソが抽出され、ガラスポットの2杯分ラインのところに来る頃に、「濃さ調整つまみ」をカプチーノの位置にすばやく回して抽出を止める。
蒸気が十分にタンク内に充満すると、「STEAM」の緑色のランプが点灯し、牛乳の泡立て準備が完了する |
4.牛乳をあわ立てる前に、蒸気調整つまみを瞬間的に数回開け空吹きし、ノズル内の水滴を排出する。この時、火傷しないように十分に気をつけたい。
5.いよいよ牛乳を泡立てる。蒸気ノズルの先についているアタッチメント孔を牛乳で塞がない程度に容器を差込み、徐々に蒸気調整つまみを開放し泡立ててゆく。詳しくは下の動画を確認いただきたい。
フォームドミルクを作っている最中の動画。できあがったら蒸気調節つまみを閉め、電源を切る。容器の底をテーブルなどに軽く打ちつけて、大きな泡をつぶす。時間は全部で40秒ほど | 牛乳ではなく水を塚手、蒸気ノズルから蒸気が発生するようすを見てみた。底の丸みに蒸気が当たり、カップ内に対流が起こっている。水であっても細かな気泡ができ、水が濁るのが確認できる |
6.暖めたカップにエスプレッソを注ぎいれ、出来上がったフォームドミルクを注いでゆく。カプチーノなら、エスプレッソ1、温まったミルク1、泡1という割合が理想。泡がトロリと出来上がり、口当たりが良く自然な牛乳の甘みのあるカプチーノがいただけた。
できあがり。上手に牛乳が泡立つと、口当たりが良く自然な牛乳の甘みを楽しむ事ができる |
気になった点は、エスプレッソができあがった後に、牛乳の泡立て完了緑色のランプが点灯するまで45秒前後は待たされる点だ。そのため、エスプレッソが抽出されてからフォームドミルクができあがるまで、2分弱はかかってしまう。これが実際以上に長く感じられる。とはいっても、先に牛乳を泡立てた後にエスプレッソを抽出すると、お湯が高温すぎてエスプレッソの味に悪影響が出てしまう。順番としては、はじめにエスプレッソを作り、その後フォームドミルクを作るのが望ましい。冷めるのを防ぐためにも、カップはしっかり温めておくと良いだろう。
また、フォームドミルクを作っている間、ちょっとした加減で牛乳が周りに飛び散りやすく作った直後はノズルの先から牛乳がポタポタと垂れ落ち、テーブルを汚してしまう。濡れ布巾やペーパータオルは必ず用意しておきたい。
●ドリップコーヒーはごく一般的な製法
エスプレッソ、カプチーノときて、普通にドリップコーヒーが作れるというのもこの製品の魅力だ。ドリップコーヒーは、エスプレッソの反対側、本体の左半分を使って作る。
利用手順はよくある一般的なドリップコーヒーとは変わらない。タンクに水、フィルターにコーヒーの粉を入れ、スイッチを入れればコーヒーサーバーにドリップされる、というごくありきたりのものだ。
フィルターホルダーを開き、バスケット部分にペーパーフィルターをセットする。 撮影時は400cc強のコーヒーを作ったので、豆は計量スプーンで4杯分 | ドリップコーヒー抽出中、ビアネッソは9個の孔からお湯がシャワーのように注がれる。そのためお湯が豆全体に行き渡りやすい |
フィルターホルダーには“ストップ&サーブ機能”がついている。コーヒー抽出中にガラスポットをはずしても、ホルダーの孔を自動的に塞いでくれる仕組みだ。コーヒーがぴたりと止まり、コーヒーは一滴たりとも垂れ落ちる事が無かった | おいしいドリップコーヒーができあがった |
作ったコーヒーをカップに注ぐと、カップには透明な泡が立ち、とてもおいしそうだ。飲んでみると、熱すぎず、ぬるすぎず、ちょうど良い温度であった。味は毎日飲んでいるコーヒーと同じなため“普通においしい”といったところ。言ってしまえば普通のドリップコーヒーメーカーであるが、とはいえ、一度にマグカップで2、3杯のコーヒーを楽しむ筆者にとっては、おいしいコーヒーがたっぷり作れるのもやはり魅力的。1台に収めることで省スペースに貢献したり、そのときの気分で“どっちにしようか”と選ぶことができる。エスプレッソメーカーと一緒になっている点に価値があるのだ。
コーヒーを淹れた後は、マシンは自動的に保温状態になるが、つい本体の電源を切り忘れる事があった。消し忘れないように注意が必要だ。
●消費電力は700W前後と高め。エスプレッソ/ドリップの同時使用は避けたい
ビアネッソは熱を発する機械なので、当然ではあるが消費電力は高めだ。エスプレッソ抽出中は650W前後、ドリップコーヒーの抽出中は740Wが消費される。ドリップでは保温もできるが、コーヒー抽出中と同じワット数の電力を消費し、さらに保温のし過ぎは味を落とす原因となる。使用後は電源を切り、無駄な電力が消費されることを避けよう。
ちなみに、エスプレッソとドリップは同時に稼働させることも可能だが、合計で1,300W以上の電力を消費する。他の機器との兼ね合いも考えると、併用はあまりお薦めできない。
エスプレッソ抽出時の消費電力は653W | ドリップコーヒーの場合は738Wだった(写真上)。コーヒーが出来上がると一旦電源は切れるが(下)、少し時間が経つと保温のため自動で電源が入る | コーヒーメーカーとエスプレッソマシンを同時に稼動させると1,313Wとかなり高い数値が出た |
●後片付けは意外と簡単も、蒸気ノズルはこまめに掃除を
後片付けについては、特にエスプレッソ部が心配だった。使い慣れているドリップコーヒーならペーパーフィルターを捨てるだけだが、エスプレッソは極細挽きの豆をペーパーフィルター無しで使うのである。どれだけ面倒なのだろう……と心配していたが、それが意外と簡単だった。
エスプレッソのホルダーについている「押さえ」で金属フィルターを押さえながら、固い台やゴミ箱内に打ち付けると、圧力で固まったコーヒーかすがポロリと落ちる。かすは殆ど乾いており、ペーパータオルに水分が広がっていない。手で2つに割れるぐらいしっかり固まっており、パラパラの状態だ。フィルターに残った粉も簡単に指先で落とす事ができるので、水洗いの際、シンクも殆ど汚れない。
電源を切ったあと、少々放置してタンクの温度が下がった頃、蒸気ノズルを少し開け、タンク内に圧力がないか一度確認をする。蒸気が噴出するならば、水をいれた別のコップなどを用意して、その中に徐々に蒸気を噴出させ、残った蒸気を完全に排出してしまおう。
また、蒸気ノズルは、牛乳が付着して固まり、ノズルが詰まったりする原因となるため、早めに除去しよう。
フィルターに残った粉も簡単に指先で落とす事ができるので、水洗いの際、シンクもほとんど汚れない | エスプレッソホルダーをはずした湯の噴出し口。圧力で粉が舞い上がり汚れているかと思いきや、水滴しか付いておらずキレイだった。十分に冷めてから、ペーパータオルなのでふき取っておけばOKだ | エスプレッソ抽出後は、コーヒーが垂れ落ちて受け皿が汚れやすい。受け皿は取り外しが簡単なので使用後は水洗いしておきたい |
蒸気ノズルのアタッチメントは簡単に引き抜ける。ヤケドに注意して、アタッチメントを取り外し、ノズルの外側を湿った布などで拭き取ってしまおう | ドリップコーヒーのフィルターホルダーは、軽く引き上げ傾けると簡単に本体から外れ、丸ごと洗える | 一度コーヒーを淹れただけで、シャワー部分にはコーヒーや細かな豆が飛び散っている。蒸気による水滴もたっぷり付着しているので、フィルターホルダーを洗う際に拭き取っておこう |
●家庭で簡単にエスプレッソを楽しむ“ビギナー向け”としてお勧め
前述の通り蒸気圧が低めなので、“究極のエスプレッソマシン”とは言えないが、たった1台でドリップコーヒーはもちろん、十分においしいエスプレッソが楽しめるという点では十分に価値がある。フォームドミルクも簡単に作れるので、店で売っているような、ほんのりと甘くフワフワとしたおいしいカプチーノが、家庭で楽しめるのだ。我が家ではカプチーノ以外にも、ドリップコーヒーのクリーム代わりとして使っている。
エスプレッソマシンは高価なものが多いが、ビアネッソの価格はとても手ごろ。掃除も思ったほど難しくなく、使い方も簡単だ。家庭で気軽にエスプレッソを楽しむ“ビギナー向け”機種としてお勧めしたい。
2009年5月7日 00:00