家電製品ロングレビュー

生体リズムを整える優しいフォルムのLEDシーリングライト

ローム・アグレッドの「TOMORI LEDシーリングライト AC412YC」。主に10畳向けとなる

 誰が決めたか知らないが、シーリングライトのフォルムは蛍光灯の時代からLED化された今日でも正円、もしくは四角形というのが定番だ。だが、その中にあって、有機的で柔らかなフォルムのLEDシーリングライトが登場した。

 今回は、半導体メーカーのローム社が提供するLED照明のブランド「AGLED(アグレッド)」のLEDシーリングライトの中から、「TOMORI LEDシーリング “Mikan” AC412YC ~10畳用」を紹介しよう。フォルムは丸でも四角でもなく、アシンメトリー(非対称)のデザイン。時間をかけてゆっくりと丸くなった川原の玉石にも、風で形を変えた水滴にも見える、柔らかで優しいフォルムが個性的なLEDシーリングライトだ。

メーカーAGLED (アグレッド)
製品名TOMORI LEDシーリング ~10畳
品番AC412YC
調色範囲電球色(2,900K)~昼光色(6,500 K) 11段階
調光範囲100~10% 最大13段階
平均演色評価数Ra85
器具光束4,900 lm
定格寿命40,000時間
購入場所yodobashi.com
購入価格18,800円
朝起きて、昼は活動、夜は眠るという生体サイクルを補助する「サーカディアン機能」が搭載されている(HPより抜粋)

 特徴は単にフォルムが有機的なだけでなく、価格帯を低く抑えつつも「サーカディアン機能」を搭載している点だ。

 これは、太陽の一日の動きに沿うように、リモコンのボタンを1つで、あかりを24時間自動的に調色・調光する機能。とかく乱れがちな生体的な身体のリズムを、自動的に変化する明かりで規則正しく健康的に整えるという機能だ。

 なお、「TOMORI」は日本語の「点り(トモリ)」から発生したLEDシーリングライトのシリーズ名。時を過ごすのが楽しみになるような点り方をデザインしたシリーズだ。本製品の明るさを表す器具光束は4,900lmで、日本照明器具工業会の基準では10畳(~17㎡)までの広さに対応する。

独特なフォルムでも、取り付けは従来のシーリングライトと同じ

 本体は非対称で丸みを帯びた三角形。大きさは594×570×157mm (幅×奥行×高さ)で、重さも2.5kgと蛍光灯器具と変わらない。

開梱した器具。左上からシェード、左下から、アダプタ、リモコン
シェードは丸でも四角でもないアシンメトリー(非対称)の三角形に近い柔らかな丸いフォルムが印象的(HPより抜粋)

 取り付けは簡単で、一般的なシーリングライトと同じ。部屋の形に合わせてアシンメトリーのシェードの向きを気にする事はあったが、器具は軽く、シェードと光源部との接点は円形で取り扱いやすい。シーリングライトの取り外しの経験があれば、1分もかからないだろう。

【1】天井にある引掛けシーリングに、付属のアダプタをはめ込む
【2】アダプタと光源部の中央を合わせ、「カチッ」と音がするまで本体を押し上げて取り付ける
【3】アダプタのハンドルを「ロック」方向へスライドさせると、本体が固定される。安全面に配慮されている
【4】アダプターから出ているコネクターを本体のソケットに「カチッ」と音がするまで差し込む。余ったコードはコード押さえに掛けておく
【5】シェードを軽く押さえながら、左に回して取り付ける。部屋の形状に合わせてシェードの向きを吟味するのもいいだろう
【6】以上で完成

 取り付けた様子は、四角四面の天井に、有機的でぽってりと厚みのあるフォルムが加わり、柔らかで優しい雰囲気に変化した。器具だけを見たときは多少懐疑的だったが、丸や四角に囚われない器具は意外にも「アリ」だと素直に思えた。

 本製品の定格寿命は40,000時間。一度取り付けたら、長い間取り外す事は無い器具だが、樹脂製のシェードはホコリが付きにくい「クリーンα」を採用しており、機密性の高い虫の入りにくい構造なので、メンテナンスは楽だろう。

 操作は全て、付属のリモコンで行なう。リモコンは暗闇でも上下がわかりやすいフォルムで、ボタンは合計7個と少ない。ボタンはすべて親指の可動範囲にまとまっており、一度使い方を理解すれば、ボタンをみなくても使えそうだ。

点灯に関する明かりのコントロールは付属のリモコンで行なう。ボタンは7個で数は少なめだ。面倒な設定も要らないので、すぐに使いこなせるだろう
7つのボタンのそれぞれの役目

操作は簡単、眩いほど明るい

 サーカディアン機能を働かせる前に、普通に点灯してAC412YCのシーリングライトとしての本来の実力を確認しよう。操作は簡単で、リモコンの左上の「入/切」ボタンを押して点灯してから、右上の「全灯」ボタンを押した。

 「全灯」で点灯した時、本製品の最大の明るさが得られる。器具の真下2mのテーブルの明るさは523lxで、日常生活には眩いほど明るい(以降、照度は全て同じ条件)。この明るさは10畳タイプのシーリングライト中でも特に明るく、長時間の読書でもしない限り、普段の生活の団らんには明るすぎるほどだ。光色は温かみのある自然な白色で、照らされるものの色味の印象もとても良い。

「全灯」で点灯した様子。直下は523lxで、眩いほど明るい。オールラウンドに使える、親しみと温かみが感じられる白色光だ。拡散性も良く部屋の隅々まで明るい
器具を真下から見た様子。LEDシーリングライトにありがちな、中央が暗くならず、面発光にとても近い
合計244粒(電球色122粒+昼光色122粒)のLEDが器具全体に偏りが少なく配置されている

 明るいだけでなく、拡散性も良い。アシンメトリーのシェードは全体的に輝き、光は部屋の隅々まで届く。器具内部には、合計244粒のLEDが全体的に配されているので、シェード中央部の明るさのヌケがほとんど感じられない。面発光に限りなく近い輝きが実現している。

 もちろん調色、調光も自由自在だ。調色はリモコンの「赤/青」の印のボタン、調光は、「○/●」を押して好みの光色、明るさを調節する。短押しで段階的、長押しで連続調節ができる。ボタンを押した時に本体が「ピッ!」と確認音が鳴り、それぞれの限界点になると「ピピッ!」と2回鳴って知らせてくれる。

 調色は「赤」ボタンを押せば電球色、「青」ボタンで昼光色へと変化する。調色は11段階。全灯を1色として、中間色~電球色までは6段階、中間色~昼光色までは4段階の変則的な構成になる。リビングルームに適した白色~電球色のバリエーションが多い。

 全灯から調色すると、電球色100%の明るさは238lx、昼光色100%は281lxと、段階的に減光する。全灯時、244粒のLEDが100%の明るさで点灯するが、調色するとどちらかの色のLEDが減光して光色を変えるため全体的な明るさが落ちる。だが、普段の生活は150~300lxあれば十分と言われているので、どの色に調色してもリビングルームに適した明るさは備えている。

左から電球色100%、全灯、昼光色100%の最大の明るさの様子。電球色は238lx、昼光色は281lxで、普段の生活に申し分なく明るい
左から電球色100%、全灯、昼光色100%の器具の様子。どの光色でも面発光に近い
調色、調光のバリエーション。調色は全灯を合わせて13段階。「全灯」が最大の明るさになる。調色によって明るさは変わり、明るさの段階は13~11段階と変則的だ。10%の明るさまで減光できる。明るさと光色の組み合わせは129通りだ

 調光は、各色100~10%の範囲で調節できる。全灯で13段階、電球色、昼光色100%で11段階と変則的になる。最小時の明るさは86~101lxで、テレビ視聴や日中の補助光にも適している。調色、調光でトータル129パターンの組み合わせができるが、組み合わせを意図的に記憶する機能は本製品には搭載されない。それでも、消灯前の光色、明るさは一時的に記憶されており、消灯状態から点灯した時に呼び出される。

 また、5段階(100~20%)に調光できる常夜灯も備える。

常夜灯を点した様子。常夜灯は5段階(100~20%)に調光できる
常夜灯を点灯した器具の様子。シェードの厚みがあるので、眩しさが和らいでいる
LEDの様子。電球色と昼光色は淡色、全灯、中間色はどちらも点灯する。常夜灯専用の電球色LEDが2粒別にある

自動で生体リズムを整える「サーカディアン機能」。設定の必要なし!

サーカディアン機能は自動で太陽の動きに合わせて、自動で調色・調光させるプログラム。人間が本来持っている、身体のリズムを規則正しく健康的に導くという。時間や明るさの設定は必要ない(HPより抜粋)

 AC412YCのシーリングライトとしての実力がわかったところで、本製品に搭載するサーカディアン機能について話を進めよう。

 まず、人は日の出とともに起床して、日中は活動し、日が沈んだら休息するというリズムが生体的には望ましいとされているが、人の1日の生体周期(概日リズム)は本来25時間で太陽とは1時間のズレがある。そのズレは朝に太陽光を浴びるとリセットされ24時間周期に整えられるそうだ。生体リズムと光環境は深く密接していると、学術的にも証明されている。

 そこに着目したのがAC412YCに搭載されている「サーカディアン機能」だ。自動調色・調光して、太陽の周期のような“光のメリハリ”をリビングルームで再現し、身体リズムを規則正しく健康的に整えてくれるユニークな照明モードだ。

 実施は至極簡単だ。「入/切」ボタンを3秒間長押しするだけで、サーカディアン機能がスタートする。さらに、設定はまったく必要ない。時刻ごとに変化する明かりの時間設定は、あらかじめ工場出荷時に設定されているためだ。器具を取り付けた瞬間から活用できる。

 サーカディアン点灯時の光の変化を記しておこう。朝は白色の強い光で覚醒を促し、日中は活動に適した青白い光に変わる。夕方近くになると白色に変化し賑やかな団らんに向く適度な明るさになる。くつろぐ時刻あたりには睡眠の準備に適した明るさを抑えた電球色に変化する。実際にある1日の24時間追ってみたが、設定をまったくしていないのに、太陽の動きとともに刻々と明かりが変化した。

【3:00~6:00過ぎ】
早朝4時前から電球色から白色へと徐々に光色が変化し、6時には眩いほどの明るさになった。

【6:00~9:00前】
6~9時の間は、白色の500lx以上の眩い光で部屋が満たされ、イヤでも覚醒させられるような明るさが続く。外光よりも部屋の中がパッと明るい。

早朝4時前までは50%に調光された電球色。4時前から白色の光に変わり始め、6時になると全灯に近い500lxの明るさになり覚醒を促す。この明るさが夜の睡眠に影響するという。6時から9時までは500lxを保つ

【9:00過ぎ~12:00】
9時を過ぎた頃に、日常的な活動に適した300lx前後に明るさが変化する。撮影した日は快晴で、我が家は陽の光が部屋まで入るので本来ならば照明は要らない。だが曇りの日ならば快活に過ごせる心地良い明るさだった。

【12:00過ぎ~15:00】
12時過ぎた頃、減光し始めた。昼間の外光と相性の良い昼光色になり、その状態が15時頃まで続く。

【15:00過ぎ~19:00】
15時過ぎから昼光色は団らんに適した温かみのある白色に徐々に変化する。

9時を過ぎると器具は75%の明るさに変化。一般的な活動に適した明るさになる。12時を過ぎると外光に近い昼光色になり、明るさは50%に抑えられる。昼光色は15時まで続く
15時過ぎには昼光色から白色になり、夕暮れに向けて75%の明るさに変化する

【20:00~22:00以降】
20時を過ぎたぐらいから、温かみがより加わり、22時には明るさを抑えた電球色に変わった。以降、3時までこの状態が続いた

【20:00~22:00以降】19時以降、明るさを保ったまま温かみのある白色に変化する。22時前までは団らんに適した温かみのある白色だ。そこから22時頃には就寝に向けた50%の明るさの電球色にゆっくりと変化する
22時以降、3時過ぎまで明るさは50%のままで電球色をキープする

 サーカディアン機能は、天気や季節に関係なく、どの時間で実行しようが生体のリズムにふさわしい明かりで点灯し、毎日繰り返される。

 実際に1週間以上使ってみたが、朝にイヤでも強い光を繰り返して浴びたせいだろうか、夜更かし大好きな自分だが、夜にはちゃんと眠くなるようになり、寝付きも良くなった。部屋の中で毎日メリハリのある明かりが再現されるためか、身体のリズムが崩れにくくなったのかもしれない。意図的に調節せずとも、夜には自動的にリラックスにふさわしい明かりに変化してくれるので、そろそろ寝る準備をしよう、という気持ちにもさせられる。確かに、明かりが規則的な生活のリズムを刻んでくれた。

最大の明るさでも、消費電力は54Wと省エネ

消費電力のバリエーション。200lx前後の明るさにすると、全灯時の半分の電気代で済む

 消費電力が低いのもLEDの魅力だが、本製品の消費電力の低さは期待に十分応えてくれる。

 もっとも明るい「全灯」は、500lx以上の眩い明るさがあるのに、消費電力は54Wだった。1日8時間点灯した場合、1日の電気代は9.5円、1年で3,467円になる。今回から蛍光灯の比較は止めているが、蛍光灯の時は300lx前後の明るさで97Wだったので、全灯でも1年で2,700円以上、電気代が安くなる試算となった。

 しかし、日常的な生活ならば、500lxの明るさは要らない。各色、3段階減光しても、明るさは約200~270lx前後と十分明るい。3段階減光するだけで、年間の電気代は約1,600円~2,000円も節約できてしまう。積極的に調色・調光するだけで、飛躍的な節約ができるのがわかった。

 もっとも暗くした時は、各色9Wで、年間579円。40Wの明るさのLED電球とも相性が良いので、多灯照明の1つとして応用した使い方もいいだろう。

 サーカディアン機能時は明るめに設定してあるが、それでも大いに電気代が節約できる。全灯に近い明るさは、朝6時~9時の3時間のみ。あとは50~75%の電力で運転してくれるので、健康的な明かりを演出しながら、省エネにもしっかり貢献してくれる。

自動調色・調光のサーカディアン機能は省エネにも役立てられる
【各色-3段階減光した電気代(1日8時間点灯)】
光色全灯電球色100%中間色3/6段階全灯中間色2/4段階昼光色100%
W / lx54W22W26W28W26W22W
明るさ523lx194lx226lx271lx267lx230lx
1日9.50円3.87円4.58円4.93円4.58円3.87円
1年3,467.50円1,412.55円1,671.70円1,799.45円1,671.70円

1,412.55円

全灯-各色の電気代2,054.95円1,795.80円1,668.05円1,795.80円2,054.95円
明るさを一番絞れば、別の照明器具とも相性が良い明るさになる。左は40Wのスタンドと合わせたリラックス時のあかり、右はデスクワークの全体照明として利用している様子

 なお、常夜灯は最も明るい時(3.7lx)でも2Wで、消灯時の待機電力はワットチェッカーでは測定できない0Wだった。普段は元の壁面スイッチは切らなくてよさそうだ。

柔らかなフォルムの明かりで健康もサポートするシーリングライト

 最後になるが、AC412YCの演色性は良好だった。平均演色評価数はRa85(Ra100が最高値)で、全灯、電球色、昼光色で光色が変わっても、くすんだ印象はほとんど感じられず、それぞれの光色の下で食事はおいしそうに映える。中間色ももちろん良好なので、サーカディアン運転中でも食事のシーンに適していると言えるだろう。

左から電球色100%、昼光色100%、サーカディアン機能時の中間色の様子。電球色は夕飯、くつろぎの明かりに向いている。昼光色は食事には向かない光色ではあるが、くすんだ印象にならなかった。温かみのある中間色は食事にもとても向いている

 ただ1つ、大きな欠点があった。それは、AMラジオへのノイズの影響だ。器具の雑音は感じなかったが、全灯を含む中間色で点灯すると、2m離れたAMラジオに「ブーン」というノイズが乗ってしまう。普段からAMラジオを聴く方にはまったくお勧めできないので、この点は是非とも改善が望まれる。ただし、電球色100%、昼光色100%の時、ノイズはまったく乗らなかった。

 AMラジオへのノイズ以外は、とても快適なLEDシーリングライトである事は変わりはない。無表情な四角い天井にやわらかな表情がプラスされ、親しみやすい空間演出に役立てられるフォルムがまず魅力的だ。タイマー機能などは無いが、その分面倒な設定は一切要らないので、すぐに使いこなせる親しみやすさがある。低価格帯ながら、ボタン1つで無意識的に生体リズムを整えるのを補助してくれる「サーカディアン機能」は不規則になりがちな現代人には優れた機能と言えるだろう。

 健康面に配慮した簡単操作の明かりとして、リビング・ダイニングルームはもちろん、プライベートルームへの導入も検討してみてはいかがだろうか。

藤原 大蔵