藤本健のソーラーリポート

九州で50kWの太陽光発電事業を始めてみた(後編)

「藤本健のソーラーリポート」は、再生可能エネルギーとして注目されている太陽光発電・ソーラーエネルギーの業界動向を、“ソーラーマニア”のライター・藤本健氏が追っていく連載記事です(編集部)

 九州に50kWの太陽光発電所を買ったという話の最終回。前回、日本エネルギー建設という会社と、税込み2,000万円で発電所を購入する契約書を交わした話をしたが、ただ契約すれば発電がスタートするというわけではない。そう、まだ工事がされていないため、太陽光パネルを設置し、電力会社との系統連系により接続がされてからでないと、始まらない。

 が、それよりももっと前の話として、実はどこに設置するのかということすらハッキリしていなかったのだ。なぜ、そんなことになっているのか、本当に大丈夫なのか現地に乗り込んで見てきたので、レポートしていく。

進展はなく、設置場所も定まらず……

温泉町でもある熊本県人吉市のJR人吉駅

 今回、日本エネルギー建設と交わした2,000万円の契約には、実際に発電がスタートするまでの一切合財の費用が含まれているので、基本はすべてお任せ。しかも、その2,000万円の中には、ちょっとしたオマケも含まれていたのだ。

 それが九州への見学旅行。前回も書いたとおり、日本エネルギー建設では熊本県、鹿児島県などに、太陽光発電所を作り、それを分譲する形で50kWのものを2,000万円で販売しているわけだが、その設置およびメンテナンスのために南九州支店というものが熊本県人吉市にある。契約をすれば、現地へ一泊で行くことができ、南九州支店の担当者がクルマで案内してくれるというのだ。

 営業担当に聞いたところ、設置前に行っても、設置後に発電がスタートしてからでもOKとのこと。個人的には、設置前も見ておきたいし、設置したら、ぜひそれも見学してみたい。どちらか1回ということだったので、まずは先に見学して、無事に発電がスタートしたら、自費でのんびりもう一度見に行こうと決めたのだ。

 そんな話をしたのが契約後の4月だったのだが、工事が混んでいるということで、なかなか進展がない。早ければ、夏ごろには発電もスタートできるのでは……と期待していたのだが、詳細がさっぱり決まらないのだ。普通なら、どの土地のどの区画が自分のものなのか、契約時でハッキリ決まりそうなのだが、実は場所について白紙だったのだ。

 そもそも熊本県になるのか、鹿児島県になるのかも分からない。マンションの購入だったら、そんなことはありえない話なのだが、担当者いわく「何もない山林を抑えているだけなので、木を伐採したり、土地を整地したりする必要があり、どこに、どれだけのパネルが設置できるかがハッキリしないから、詳細が決まらない」というのだ。そんなものは、国に、設置の申請をする際に大方決まっているだろうから、細かな位置まではともかく、場所くらいは決まりそうなものなのだが、どうにも対応が遅いのだ。

日本政策金融公庫から届いた書類

 もし、現金を振り込んでいたら、「やっぱり詐欺だったのでは……」なんて思って毎日イライラが止まりそうにないが、実は意外と落ち着いていられるというか、高みの見物状態なのだ。というのも、実際に支払う2,000万円はローンであり、その金額も一旦日本政策金融公庫から直接筆者が借りて、発電所の引き渡し時に支払う形。現時点では、借りるための審査は通っているものの、実際には借りていないから、仮にこのまま頓挫してしまったとしても、こちらは痛くも痒くもないわけだ。

仮決定の鹿児島に見学旅行へ

 とはいえ、筆者自身、この太陽光発電を非常に楽しみにしているので、何度も電話やメールで問い合わせていたところ、4月下旬になって営業担当から「ようやく場所がほぼ決まってきました。おそらく藤本さんのも、ご友人のAさんのも、鹿児島県伊佐市のソーラーパークになると思います」という連絡がやってきた。

 地番をもらったので、Googleマップで調べてみたところ、この周りに、人家はあるんだろうか……という田舎。まあ、どんな拓けていない場所だって、太陽さえしっかり当たってくれれば問題ないのだから、早くパネルが設置されて発電が開始されるのが待ち遠しいところ。ただ、ゴールデンウィーク明けに連絡をしても、「まだ工事のメドが立っていないんです。いろいろな遅れから、やはり最初にお伝えした通り年内ギリギリというころになりそうです」とのこと。

 そこで一緒に購入契約をした友人Aと連絡を取りながら、「とりあえず工事スタート前に、その物件だけでも一緒に見に行こう」ということになり、日程の調整を始めたのだ。お互い忙しく、なかなか日程が決まらないまま6月に入り「太陽光発電の見学に行くのに、雨の日じゃあつまらないから、梅雨明けに行こう」ということで、鹿児島の梅雨明け予報以降の早い時期ということで、7月17日〜18日に行くことに決定。

 友人Aは別件で先に九州入りしているとのことだったので、別途日本エネルギー建設の営業担当から飛行機チケットをもらい、当日早朝に羽田から鹿児島空港へ。空港には、南九州支店の部長さんがクルマでお迎えに来てくれ、まずは熊本県人吉市の南九州支店に移動。宿泊するホテルも、そのすぐそばにあり、そこへチェックインして、友人Aと落ち合い、いざ見学へと出発。

鹿児島空港に到着
案内をしてくれた南九州支店 部長の荒毛浩秋さん
日本エネルギー建設 南九州支店

 設置する予定の鹿児島県伊佐市に行くのかな……と思っていたら、そうではなく、すでに設置して稼働している施設があるので、そこを数カ所案内してくれるとのこと。伊佐市の現場に行っても、まだただの山林なので、面白いものではないし、そもそも、そことは違う場所になりそう……、とのことで、「???」といろいろ疑問が湧いてくる。

 そういえば、出発直前に友人Aからからメールで、「先日届いた契約書の控えに“熊本県天草市”と記載されていて、おかしいと思って営業担当に問い合わせら、『伊佐市も暫定となるため、他の区画を御用意する形をとらせていただきます。本来、区画が決まっていれば御客様にとってもベストですが、九州電力の返事待ちという事もあり暫定地となり申しわけございません。』って返事がきた」とあり、よく分からないな……と思っていたところだったのだ。

すでに設置されている稼働物件を見て回る

 クルマでの移動中、その辺の疑問も部長さんにぶつけつつ、まずは何カ所かの稼働物件を見て回った。主に3カ所を見せてもらったが、どこもパネルがいっぱい並んでいる場所が区画ごとに柵で仕切られた構造。その1区画つの大きさが40m×10m程度で、JAソーラーの245W出力のパネルかJapanSolarの250W出力のパネルが200枚ズラリと並んでいる。ちなみに筆者が契約したものはJapanSolarの260W出力が215枚というものなので、これよりもちょっと大きいものになるはずだ。

パネルが並び、区画ごとに柵で仕切られている
JAソーラーの245W出力のパネル
JapanSolarの250W出力のパネル
パネルが200枚並んでいる

 傾斜角度を見ると、ずいぶん低いように思えたので、質問したところ、「この地域は太陽の上り方から見て22度に設置するのが最適です。ただ22度で設置してしまうと、影ができる影響でパネルとパネルの間隔を広げる必要があるため、面積での効率を考えてすべて10度にしています」とのこと。この地域をクルマで走っていると、日本エネルギー建設のものに限らず、メガソーラーを含む数多くの太陽光発電所を見かけたが、どこもほぼ同じ角度で設置しているようだった。

すぐそばには他社が工事中の太陽光発電所がいろいろあった

 また設置された200枚のパネルの先にはオムロン製または安川電機製のパワコン9.9kW×5台が設置されており、これで交流に変換。それが電気メーターを経て九州電力の系統へと連系されているのだ。

パネルの先にはパワコン9.9kW×5台が設置されている
交流に変換
電気メーターを経て九州電力の系統へと連系される
柵に設置されるポスト

 面白いのは、その柵にそれぞれポストが設置されていること。実はこれが重要なアイテムだからだ。そう、毎月一度、九州電力がここに検針にくるのだが、検針結果を東京や横浜など他の場所に送付してくれるというサービスがないため、このポストに入れていくのだ。日本エネルギー建設のメンテナンス業務の一つとして、ポストの中身を回収して郵送してくれるそうだ。

 最初に見に行った「ビッグソーラーパーク人吉」が、日本エネルギー建設としての第1号とのこと。系統連系をしたのはまだ昨年9月で1年経過していなかったのだが、今年6月までの実績表も見せてもらった。

 この物件は筆者が購入した1kWhあたりの売電単価が36円+税ではなく、その1年前の申請なので40円+税とのことで羨ましいところだが、10カ月の実績で発電量が48,176kWh、売電金額にして税込203万8,209円。一年を通せば240万円程度にはなる見込みだから、シミュレーション以上の発電結果になっている模様。確かにこの調子で売電できるなら、2,000万円の投資額は8年ちょっとで回収できる計算となる。

「ビッグソーラーパーク人吉」の実績表

発電量はエコめがねでリアルタイム確認

 ちなみに、月々の売電結果が分かるのは、検針の後になるが、それを待たずとも、リアルタイムにある程度の発電量が確認できるようになっている。それを実現しているのがNTTスマイルエナジーのエコめがねだ。前述のとおりパワコンは5台あるが、それぞれに対してエコめがねのセンサーが取り付けられており、毎時間ごとの発電量が計測できるようになっている。

エコめがねで、ある程度の発電量をリアルタイムで確認
パワコンにエコめがねのセンサーが取り付けられている

 これは家庭用のエコめがねと同様、CT(電流センサー)で計測するタイプだから、必ずしも正確な数値になるわけではないが、だいたいの状況が分かるので、売電金額がどのくらいになるのか、早めにチェックできるだけでなく、何か故障があったような場合でも、すぐに察知できるのがポイントだ。なお、このセンサーの状況をクラウドにあげるため、エコめがねの機器が入った箱の中に3G回線の通信機もおさめられており、これでリアルタイムに情報発信できるようになっているのだ。

 その結果はユーザーが自分の発電所の状況を確認できると同時に、日本エネルギー建設側でも常時モニターしており、何か異常があった場合には、すぐ駆けつけるようにしているそうだ。部長さんに聞いたところ、これまでのところパネル側でのトラブルが起きたケースはほとんどないけれど、設置地域に落雷があって停電になったケースは何度かあったそうだ。実はこれが大きな問題で、停電になると自動的にブレーカーが落ちたしまうため、手動でブレーカーを上げないことには復帰できないとのこと。

 「ブレーカーが落ちたのは夜中でしたが、翌朝の太陽が昇る前にすべての地域を回ってブレーカーの復帰を図ったため、どこも発電には支障なく、済ませることができました」という。以前、営業担当からは「何かあったらすぐに支店から駆けつけられる場所に発電所を作っているのが当社の大きな特徴なんです」と説明を受けていたが、なるほど、これは大きいポイントだと実感した次第だ。

工事が進まない原因は、容量オーバーにあった

 こうして見る限り、工事が完了し、発電がスタートしてさえくれれば、あとは安心のようではあるが、最大の問題は工事が進んでいないどころか、自分の発電所の場所すらハッキリしていないことだ。これについて部長さんに聞いてみたところ、非常に申し訳なさそうに、そして丁寧に状況を教えてくれた。

 その話を一言でいうと、容量オーバー。熊本県、鹿児島県、宮崎県など、南九州エリアでは、ここ1年で数多くの太陽光発電所が設置され、さらに多くの発電所が作られることが計画されている。筆者が契約したものも、もちろんその1つというわけだが、それを繋ぎこむための、九州電力の送電線や変電所の容量が足りなくなってしまい、九州電力が接続を拒否しているというのだ。そういえば、以前北海道における風力発電所においても、同じような問題が新聞などで取り上げられていたが、それが太陽光発電でも現実のものとなってしまっていたのだ。

 発電所見学から、支店に戻り、そこで九州電力のホームページをアクセスしてみると、「再生可能エネルギー発電事業者の皆さまへの重要なお知らせ」というものがすぐに見つかった。

 さらにその中にある[九州電力管内における発電機連系制約マップ(110kV以下の系統への連系)](8月現在)を見てみると、南九州地域はまさに制約だらけ。いま問題になっている再稼働を目前に控えた川内原発付近だけは、送電線の容量も大きく、つなぎこみが可能になっているが、それ以外の地域はダメなのだ。その後8月に更新された現在のマップでは、制限のかかったエリアがさらに広がっており、これではまったくメドが立たない状況のようなのだ。

制限エリアの拡大(8月現在)

 また九州電力側の説明を読むと「送電線及び変圧器の増強工事費用は、再エネ事業者さまのご負担になります」とさらりと書かれている。つまり何億円も出して、送電線の設置をすれば、つないでやるというわけなのだ。部長さんに聞くと、こうした話が出てきたのは今年の4月になってからのことで、3月まではトラブルはなかったのだとか。1kWhあたり36円kWhでの申請が3月に一気に集中したために、状況が変わったらしい、というのだ。

 2012年9月に日本政府は、今後の再生可能エネルギー導入目標を示した、「革新的エネルギー・環境戦略」を決め、再生可能エネルギーによる発電日電力量は、2010年度の1,060億kWhから、2020年度には1,800億kWh、2030年度では3,000億kWhと3倍以上に増加させる計画を打ち出している。そのために、太陽光発電の促進策を打ち出したりしていたのだが、送電線が足りないから接続できないなどと言っているのでは、普及が進むはずもない。

 この問題はすでに九州電力管内に限らず、全国的に広がってきており「太陽光発電所を作ったが、電力会社がつないでくれない」という問題が多発しているのだ。エネルギーの分散化を図るためには、送電網の強化が必要なことは、素人にも分かりそうな気がするのだが、結局、日本政府としても再生可能エネルギーへ本気で取り組むつもりがない……ということなのだろうか。

 このまま頓挫してしまっては、あまりにも悲しい話だが、日本エネルギー建設としては、筆者のようにすでに契約をしてしまった顧客のために、親会社であるエナリスの協力を得ながら、他の地域での開拓を急いでいるという。今回改めて提示されたのは同じ熊本県ではあるけれど、まだ接続制限のない天草地域。

 九州電力と協議した結果、接続OKの返事が出ているとのことで、これから工事を急ぐとのことだったが、さてどうなるのか……。熊本県内とはいえ、人吉市からはクルマで4時間程度かかるとのことだったから、落雷があってすぐに駆けつけるというわけにはいかない。とはいえ、協力会社にお願いする形で対応するとのことだったので、その辺は期待したいところだ。

 そんなわけで、9月現在、まだ発電がスタートしているどころか、発電所がどこに設置できるのかすら、よく分かっていないが、その後営業担当と連絡を取ったところ、「お約束通り年内をメドに発電開始できるよう、進めています」との返事をもらっているので、そこに期待したいところ。実際に決まったら、改めて続編としてレポートしてみようと思っている。

(藤本 健)