東北電力、震災被害の現状を決算資料で公開

~太平洋岸の発電所は停止状態が続く

 東北電力は29日、平成23年度第1四半期の決算を発表した。これに合わせて説明資料が公開され、これまで断片的だった、東日本大震災による被害の状況が整理した形で公開されている。なお、今回は決算説明会は開催されず、資料のみが公開された。

 ここでは、この資料を基に、東北電力管内の被災状況と現況を紹介する。

「販売電力量の状況」。3月11日を期に、一気に減少している

 まず、販売電力量を見ると、この四半期は、昨年比でマイナス16.2%と大きく減少している。販売電力量の推移をグラフで見ると、東日本大震災があった3月から大きく落ち込んでおり、東北電力管内の被害がいかに大きかったかがわかる。

発電方式別の発電量を見ると、原子力がゼロになった分を、他の設備で少しでも埋めようとしていることがわかる

 また、発電設備別にみると、原子力がゼロになった代わりに、火力と水力が増加している。それでも、他社への送電が1/5以下になっていることや、ピーク時に使用する揚水発電所用の電力が増加しているなど、苦しい状況下にあることがわかる。

赤い丸が、停止中の発電所。太平洋岸の被害の大きさがわかる

 発電所の状況を地図にしたデータが公開されており、太平洋岸にある自社の発電所は、まだ稼働していないことがわかる。かろうじて、最南端にある常磐共同火力の勿来発電所と、最北端の八戸火力発電所は稼働しているが、その中間にある地域の被害が大きいことがわかる。

 また、このデータを見ると、稼働している発電所の敷地内にガスタービンなどの発電施設を設置する計画が進んでいることがわかる。ほとんどが来年の夏に向けて稼働する予定だ。

この夏は、火力発電所の再稼働と、他電力からの融通、そして節電が頼り。しかし、計画停電は回避できる状況になった

 この夏の需給改善策として、火力発電所の運転再開や、東京電力からの140万kWの電力融通、管内への節電呼びかけなどが行なわれている。引き続き苦しい状況ではあるものの、基本的に計画停電を行なわないですむ状況となった。

震災8日後に9割以上復旧したが、4月7日からの余震で再び増加した。右上の表を見ると、広い範囲で停電したことがわかる

 震災の被害は、管内の一般家庭でも大きかった。3月11日の震災当日は最大465万戸が停電していた。4月7日の余震という障害はあったが、6月18日に供給支障は解消されたとしている。しかし、これは東北電力が復旧に着手可能な地域に限ってのことであり、津波等で公共的なインフラや家屋等が流失してしまった地域や、立入制限区域については含まれていない。改めて東北地方全体の震災被害の大きさが感じられる資料であり、今後も復旧の歩みが記録されることを期待したい。

鉄塔の復旧例。発電所だけではなく、送電設備の復旧も大切な仕事だった





(伊達 浩二)

2011年8月1日 00:00