e-bike試乗レビュー

ベネリのステップインe-bikeは通勤・通学、街乗りしやすい。17万円台の価格も魅力

昨年末に発表されたベネリのステップインタイプのフレームを採用したe-bike「MANTUS(マンタス)27 CITY」。2023年3月の発売予定ですが、量産前のサンプル車を試乗できましたのでインプレッションをお伝えします。オプションなどの細部は変更になる可能性がありますが、基本設計やアシストの制御などは量産車と同様とのことなので、新生活に向けたe-bike選びの参考にしてもらえそうです。

2023年3月発売予定のベネリ「MANTUS 27 CITY」。予価は177,210円。写真はオプションのフロントバスケットを装着した状態です。車体重量は23.8kg

ベネリは「mini Fold 16」シリーズなどミニベロタイプのe-bikeで知られていますが、2017年に発売したMTBタイプの「TAGETE(タジェーテ)27.5」など、比較的早くからe-bikeに取り組んできたブランド。買いやすい価格ながら、e-bikeらしい乗り味を実現したモデルをラインナップしてきました。

「MANTUS 27 CITY」のベースとなったのは、クロスバイクタイプの「MANTUS 27 TRK」。このモデルは通勤・通学にフォーカスしたe-bikeで、ホイールもロードバイクなどに採用される700Cではなく、一般車と同じ27インチとし、ドライブユニットもAKM製のリアハブタイプとするなどして価格を抑えていました。ブレーキレバーも4本指で握るタイプで、スポーツタイプの自転車に慣れていない人でも馴染みやすいつくりとなっていたのが印象に残っています。

「MANTUS 27 CITY」はさらにフレームを低床のステップインタイプとし、小柄な人や女性でも乗りやすい設計としたモデル。近年値上がり傾向が続いているe-bikeの中にあって、かなり買いやすい価格に抑えられています。カゴを付けたスタイルになっていると、スポーツバイクというより生活自転車に近いようなルックスですが、e-bikeとしての性能をもっているのかも気になるところです。

通勤や通学、街乗りに最適化された設計と装備

ステップインタイプでバッテリーを内蔵式としたフレーム形状が特徴ですが、ベースとなった「MANTUS 27 TRK」のトップチューブを単純になくしたものではなく、またぐ部分の高さを抑えた低床の独自設計になっています。

「MANTUS 27 CITY」の特徴となっているフレーム形状。バッテリー内蔵式でスマートですが、小柄な人でもまたぎやすい設計
自転車に乗る際に足が通る部分を低く、少し長くすることによってさらにまたぎやすくなっています。これは日本側の意向で変更された部分だとか

ドライブユニットはベース車と同じくAKM製のハブモータータイプ。近年のe-bike、特に価格を抑えたモデルはハブモータータイプが採用されることが多くなっていますね。バッテリーはフレーム内蔵式で容量は約280Wh(36V/7.8Ah)。アシスト走行可能な距離は、最大80kmとなっています。

リアホイールのハブに組み込まれたAKM製のドライブユニット。輸入元のプロトによると、アシストの制御はベースとなった「MANTUS 27 TRK」とは異なるとか
バッテリーはメインフレーム部分に内蔵。e-bikeに見えないデザインに貢献
バッテリーを取り出すには鍵が必要。バッテリー単体での重量は2.6kgで、残量ゼロからの充電時間は約4~6時間
アシストのコントローラーは左手側に装備。液晶ディスプレイではなく、LEDの点灯でバッテリー残量やアシストモードを表示するしくみ

フェンダーやキャリア、ライト、スタンドなど通勤・通学や街乗りで役立つ装備を標準で備えているのも、このモデルの特徴。スタンドも両足式のものが標準装備されています。変速ギアは外装式の7速。

ホイールは前後27インチで、フロントにはサスペンションフォークが採用されています。フェンダーも標準装備
最近のe-bikeで採用が増えているバッテリーから給電されるタイプのライトも搭載
リアにもフェンダーとキャリアを装備。キャリアの一端はフェンダーにマウントされていて、スマートな見た目
変速ギアは外装の7速。フロントには変速機構はなく、チェーンカバーが装備されているので裾を巻き込む心配がない
ディレイラーはシマノ製の「ターニー」。信頼性の高いコンポーネントが採用されている
ブレーキは前後ともにVブレーキが採用されている。これも「MANTUS 27 TRK」と同じもの
ハンドルはやや手前にカーブした形状。幅は595mmで普通自転車の枠に収まっているので歩道の走行も可能
グリップは手のひらを受け止める形状のエルゴノミックタイプ。ブレーキレバーは4本指で操作する形状
変速操作をするシフターはラピッドファイヤータイプ。この点はスポーツ自転車っぽい

ママチャリっぽいけどしっかり走れる。アシストフィーリングも進化

装備を見ると、通勤・通学や街乗りに向けて作られていることが感じられる「MANTUS 27 CITY」ですが、実際の乗り味はどうなのか? 街乗りを中心に乗り回してみました。以前に「MANTUS 27 TRK」に試乗した際は、クロスバイクタイプの車体であることもあって、e-bike的な乗り味でしたが、ママチャリっぽいルックスと乗車姿勢になっている「MANTUS 27 CITY」はどうなっているのかも気になるところです。

ステップインのフレーム形状もあって、乗りやすさは電動アシスト自転車に近い感じ。乗車姿勢も上体が起きているので、スピードを出すのには向きませんが、スポーツ自転車に乗った経験がない人でも不安なく乗れるでしょう。

フレームの形状や乗車姿勢が楽なこともあって、とても気軽に乗れるのは大きなメリット

では、アシストのフィーリングはどうだったかと言うと、価格から想像していた以上にe-bike的でした。電動アシスト的なペダルを踏むとドンと押し出されるようなフィーリングではなく、ペダルを踏み込む力にアシストが上乗せされる自然な感覚。また、以前に「MANTUS 27 TRK」に試乗した際には、発進時にペダルの踏み込みにややアシストが遅れて効いてくるようなフィーリングがあったのですが、それは解消されています。自分がペダルを踏むことでアシストを緻密にコントロールできる感覚は、e-bikeならではの魅力だと思いますが、その感覚は「MANTUS 27 CITY」にもきちんとありました。

もう1つ、ポイントとなっているのはペダルとサドルの位置関係。ママチャリタイプの電動アシスト自転車は、着座位置よりも前にペダルを踏み降ろすような作りになっていることが多いですが、「MANTUS 27 CITY」はサドルの真下にペダルの軸(BB)があるので、ペダルを真下に踏み込むように漕ぐことができます。

この位置関係だと、太腿の前側の筋肉ではなく、お尻を中心とした後ろ側の筋肉を使うことができます。ロードバイクやクロスバイクは、より出力の大きな太腿の後ろやお尻の筋肉を使うことで楽に長距離を走れるのですが、「MANTUS 27 CITY」もそういう設計になっているのでペダルをスイスイ回すことができます。そういう意味で、「MANTUS 27 CITY」は見た目に反して立派なe-bikeでした。

サドルの真下に近い位置にペダル軸があるので、スポーツ自転車のような回すペダリングが可能
街中でもe-bike的な気持ち良い走りを味わえる。ペダルの位置が一役買ってくれている

とはいえ、乗車姿勢はアップライトなので、クロスバイクタイプのe-bikeのように長距離走ることには向いていませんが、片道10~15km程度の距離なら気負うことなく走れてしまう性能は持っています。これからe-bikeデビューを考えているけれど、価格がネックになっている人にはありがたい選択肢になってくれるでしょう。

増谷茂樹

乗り物ライター 1975年生まれ。自転車・オートバイ・クルマなどタイヤが付いている乗り物なら何でも好きだが、自転車はどちらかというと土の上を走るのが好み。e-bikeという言葉が一般的になる前から電動アシスト自転車を取材してきたほか、電気自動車や電動オートバイについても追いかけている。