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【ダウン症児と私6】毎日の通院と、出産2カ月目の待ちに待った退院
2016年 7月 20日 11:30
精密検査でダウン症と診断されたユキトくんは、その後、合併症検査のためにさらに1カ月ほど入院が続きました。今回は、退院までのユキトくんと新米ママのナナさんの生活についてうかがいました。
退院までの2カ月間は毎日病院へ
Q. 入院1カ月目に精密検査の結果を知らされたわけですが、その後も合併症の検査のためユキトくんの入院は続きましたね。退院までナナさんの病院通いが続いたということですか?
A. はい。毎日毎日、GCU通いが続きました。ダウン症と診断された次の日は、ユキトに会うのは辛かったです。疲れが出たというか、頭では子育てを頑張ろうと思っているのに、自分自身の気持ちが付いて来なかったんです。その日はおっぱいもあげられなかったので、おばあちゃんにミルクをあげてもらい、次の日からママを頑張り始めました。その後も頑張っておっぱいをあげていたのですが、頬や舌の筋肉が弱いらしく、全く吸い付かないため、ほどなく完全ミルクへ移行しました。
筋力が弱いユキトくんは、授乳以外にも苦労が
Q. 授乳以外に苦労されたことはありますか?
A. ユキトは筋肉の力が弱いので、おなかに力が入らずうんちが出ないときもありました。そういうときは、看護婦さんに綿棒でお尻を刺激する、綿棒浣腸をしてもらいました。これは、わたしも出来るようにやり方を習いました。お尻にクリームをつけた綿棒を2㎝ほど差し込み、10回程度円を描くようにマッサージします。
数日後、退院に向けてもう一度ファミリールームに入り、今度は泊まりでユキトの世話を体験しました。そして、生後1カ月半でGCUから小児科に移りました。小児科病棟に移ると面会時間が長くなるので、ゆっくりユキトと過ごせるのが嬉しかったです。
目や耳の機能に障害がある場合も
Q.合併症の検査結果はどのようなものでしたか?
A.目は異常なしでしたが、耳は生後1カ月の段階では両方とも聞こえていないという結果でした。ユキトは一生、何も聞こえないのかと、旦那と一緒にすごく落ち込んで泣きました。ただ、状況は成長とともに変わるので、耳は数カ月おきに再検査をすることになりました。
退院準備には保健師さんのアドバイスが役立つ
Q. 退院の生活の準備は、どうされたのですか?
A. 出産した病院で、退院してからお世話になる地域の保健師さんを紹介していただきました。保健師さんからは、おすすめの小児科、療育施設、ダウン症児を受け入れている幼稚園について教えていただきました。「はじめの1年間は病院通いが忙しく、1歳を越えると医学療法、訓練などが始まるでしょう」とのことでした。保健師さんには、その後も何かあるごとに相談に乗っていただきました。
行って良かった「日本ダウン症協会」
Q. ほかに、退院後の子育てについて相談されたことはありますか?
A. 退院が近づいたころ、ユキトと暮らす前にどうしても行っておきたかった「日本ダウン症協会」へ行きました。「日本ダウン症協会」は、ダウン症の人や家族、支援者で作る会員組織で、相談活動、セミナー開催、会報誌の発行などを行なっている団体です。電話をしてから伺ったのですが、電話では泣いてしまい上手く話ができませんでした。伺ったときは時間外にも関わらず、駅の近くまで何人も来てくださり、泣きながら歩いている私をみなさんで迎え入れてくました。その日偶然いらしたお医者さんも待っていてくださって、話を聞かせてくれました。先生からは、「これまで何百人もダウン症児を見てきたけれど、ほとんどの子どもは時間がかかっても歩けるようになる」「運動訓練や、作業療法、療育でちゃんと育つから心配しなくていい」と教えていただき、少しだけ心が軽くなり元気が出ました。
ダウン症児には危険なRSウイルス対策も
Q. いよいよ退院ですね。ユキトくんが退院された時期は、風邪やRSウイルスなど、乳児の感染病が心配な季節でしたね。ユキトくんは大丈夫でしたか?
A. 退院前に一時帰宅の許可が出て、ユキトと家で過ごすリズムも分かってきました。そして12月20日の出産から2カ月で退院しました。今後のことを考えて小児専門の総合病院へ紹介状を書いてもらいましたが、風邪やRSウイルスなどの感染症の流行時期でもあったので、この総合病院へは暖かくなる5月から行くことになりました。ダウン症児は、RSウイルスに感染すると重篤になる危険があるのです。そのためユキトは、2歳になるまで冬の間はRSウイルスの予防薬「シナジス」の注射を毎月打つことになりました。何はともあれ退院できて良かったです。やっと、家族3人での新しい生活がスタートしました。
ダウン症の基礎知識6:ダウン症児の親へのサポート
ダウン症児本人へのサポートだけでなく、最近ではダウン症児を育てる親への支援も広がっています。ダウン症は生後1カ月程度と、出産直後の手のかかる時期に、ほかの知的障害よりも早いタイミングで告知されるため、ショックで赤ちゃんと向き合えなくなる親御さんもいるそう。そういった親の心にも必要な支えを行なってくれる、カウンセリングなどを実施する医療機関が少しずつ増えています。親として子どものダウン症について受け入れるには時間がかかるものですし、お母さんたちが子どもの抱える制約を受け入れて、焦らず、ゆっくり前向きに考えていけるようなサポートが求められているようです。