藤原千秋の使ってわかった! 便利家事アイテム
浸水した家屋だけでなく、トイレ床や雑巾臭などを除去するのに使えまくる「オスバンS」
2019年11月19日 06:00
水害が続いている。
予期せぬ語彙が増えた。
「洪水(こうずい)」「浸水(しんすい)」「氾濫(はんらん)」などまではこれまでも見知っていたけれど、「溢水(いっすい)」「越水(えっすい)」「冠水(かんすい)」、また、「内水氾濫(ないすいはんらん)」という言葉を、大きな被害の報道を経て筆者は知った。
そうして分かったのは、住まいのある土地の標高が高かろうが、近所に川や暗渠がなかろうが、戸建だろうが集合住宅だろうが、低層階だろうが高層階だろうが、豪雨に伴う被害に遭遇しない保証などないのだということだった。
地震と同じように、水の害もまた、誰にとっても他人事ではない。
その心づもりをもち、床下、床上浸水の害に遭った住まいの後始末について調べる依頼を受け、「浸水した家屋の感染症対策(出典:厚生労働省)」などの資料にあたった。
通常の「お掃除」ですら相当な手間なのに、川の水や泥砂に曝された住まいの清掃や消毒にかけなければいけない労力はいかほどか、考えるだけで気が重くなる。
ただここで示されている消毒用の薬液の中で、「次亜塩素酸ナトリウム」「消毒用アルコール」のほか「10%塩化ベンザルコニウム(逆性石けん)」とある、この「塩化ベンザルコニウム」に対し多くの人はあまりなじみがないのではないか、いきなりこれを使えと言われても少し面食らうのではないかと思った。どうだろうか。
「塩化ベンザルコニウム」、読者諸賢はご存知だったろうか。
筆者自身はこの「塩化ベンザルコニウム」という殺菌消毒剤を、便利で安い日常づかいの道具と位置付けて生活している。600mlほど入ったボトルで800円程度で買え、使うときには200~500倍とかなりうすく薄める。雑な計算になるが、この200倍に希釈した液体200mlをスプレーボトルに入れて消毒などに使う場合、1本あたりのコストは2円に満たない。
それでいて、浴室壁の臭みやトイレ床、ゴミ箱、床、玄関、ベランダ等々場所を選ばず細菌系の悪臭や苔汚れなどを除去するのに「使えまくる」。失敗した洗濯物の雑巾臭を消すのにもいい。けだし便利なのだ。
なかでも市販品でよく見る、昔からある「塩化ベンザルコニウム」を主成分とする商品が「オスバンS」というものである。
この市販の「10%塩化ベンザルコニウム」(10w/v%水溶液=100ml中に10gの塩化ベンザルコニウムが溶けているもの)は、医療用途が主な薬剤だ。
通常の家庭生活での殺菌消毒用途に(清拭、噴霧用として)も使えるが、その際には、先ほども書いたように200~500倍にかならず「希釈」して使う。ざっくり200倍にするなら水1Lに「オスバンS」5mlを薄める感覚だ。
ただ浸水家屋処理の場合には、「0.1%に希釈する」と指導されているので、「100倍」、つまり水1Lに「オスバンS」10mlを薄める計算になる。濃いめな印象である。
ただ「オスバンS」は、原液で使用することはまずありえないので注意してほしい。「原液で使えば、メチャクチャ強力なんじゃね?!」などと無手勝流に使うと、皮膚に触れたとき炎症を起こすなど危険なので、決してやらないようにしよう。
もしものとき、いきなり手渡されて使う際にも、それはそれでなんとかなるかも知れないが、もともと見知っていればそれだけ負荷が緩和されるのではないだろうか。
「そういうものがあるのだ」ということだけでも、覚えておいていただければ幸甚である。