藤原千秋の使ってわかった! 便利家事アイテム
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人工的でない"いい匂い"のファブリーズ、P&G「ファブリーズナチュリス」
2019年8月6日 06:00
あれは私が幾つの頃であったか。幼稚園の、多分、年中さんくらいだったろうか。
ある日、クラスメイトがうやうやしく一枚のティッシュペーパーを取り出し特別に交換こしてくれるという。
その頃、町にひとつだけあったデパートの6階にあるサンリオショップで売っているような、絵つき色つきのティッシュペーパーが私たち子どもの間で、すさまじい人気だった。私もひとつだけ買ってもらって大事に鼻もかまずに持っていた。
交換こ? いいよ、といって友達の色のついたそのティッシュを受け取ったとき、一瞬「なんだ絵つきじゃないじゃん」と私は思ったのだ。しかし、いつもと違うことにすぐに気づいた。薄紫色のそのティッシュからは、「いいにおい」がするのだった。
鼻を近づけてくんくん嗅いでみると果物のようなお花のような、なんともいえない香りがする。
「いいでしょ、こういうのまだ持ってないでしょ?」
「……。」
あのとき感じた、えもいわれぬ羨ましさと憧れ……。思うに、私の人生に嗜好的な「香りモノ」が登場したのは、まさにあの瞬間だったのだ。
さてその後も、小学生時代の色ペン、消しゴム、水のり、こすると匂いが出るメモ帳やシールなどといった、数多の香りつき文房具たちとの出会いがあった。またポプリが流行り、香りのつぶつぶの入ったシャンプーやリンスも愛用した。香りモノとともに時代を走ってきたといえよう。
そんな中学時代のエイトフォー。高校時代のプチサンボン。大学時代のプレジャーズ……。いつも「香り」たちは私の身の回りに、時代ごと、あたかも土星の環のようにまとわり付き続けたのだ。
さらに大人になってからはアロマテラピーのエッセンシャルオイル、フランス直輸入のフレグランスキャンドル、輸入住宅展示場御用達のルームフレグランス、すてき家事に欠かせないリネンウォーター、ファブリックミスト、異国の文化漂う柔軟剤などなどにより、さまざまな「香り」を渡り歩くことになる。
しかしそんな私のライフスタイルに、どうにもあまり切り込んでこないジャンルの「香り」があった。それは、除菌消臭剤スプレーのもの……。
正直に言うと、あの独特に人工的な香りがどうも苦手で、避けていた。しかし人工的な香りなどそれこそ駄菓子のメロンやイチゴなどに始まり文房具も化粧品もすべて人工香料以外の何ものでもないわけだから、べつに除菌消臭剤に限った話ではない……。のだけれど、とにかくなるべく使わないよう換気やら洗濯やらに勤しんできたのである。
そんな今春の終わりかけ、定点観測で巡っている近所のホームセンターで地味目に展開されていた緑色の透明ボトルが、耳慣れた「ファブリーズ」のラインナップなのに気付いたとき私はいささか驚いた。だいぶ既存のイメージと異なっている佇まいだったからだ。
ふーんと立ち止まりサンプルを嗅いでみて唸った。いい匂いじゃないか……。いわゆるオーガニックを標榜するおしゃれ化粧品などのそれと、嗅ぎ紛いそうなくらい「自然」に感じる香り。
なんだか時代の潮目が変わったんだな、と思い、そのまま買って帰ってきた。
メーカー名 | プロクター・アンド・ギャンブル・ジャパン |
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製品名 | 「ファブリーズナチュリス」レモングラス&ジンジャー」 |
実売価格 | 604円 |
我が家には育ち盛りの三人の娘がいて、おのおの身体も大きく動きも激しいため、まず洗濯物の物量がすさまじい。また新陳代謝が活発なぶん靴も玄関で臭い、存在を強く打ち出す。臭いなんかにはちょっと引っ込んでてもらいたのだけど。
しかしそれらを洗ったり乾燥させたりが追いつかない、じめついたその折、この「ファブリーズナチュリス レモングラス&ジンジャー」をいならぶ通学靴に吹きかけて一晩おくとアラ不思議。「モワ~」とした悪臭が消えているし人工的な残り香もない。
ただ、どこで嗅いだものなのだろう。ごく微かなラストノートに、なんともいえない懐かしさを感じてならない。
「一体、なんだっけ……?」。
そんな生活の間隙を面白がりながら、この「香りモノ」をいまの私にまとわりつかせている。