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ナショナル「F-YHD100」
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編集部で「梅雨の時期なので除湿機をレビューしよう」と決まったが、正直あまり気が進まなかった。
というのも、除湿機なんて使うのは、湿度の高い梅雨の時期だけだと思っていたからだ。もう少し暑くなれば、エアコンのドライ機能を使えば湿気も取れて冷房もできる。それに、本体サイズも大きいし値段も高め。ひと月くらい我慢してれば梅雨なんて過ぎるから、そんなものいらない……と、使いもしないくせに勝手に評価していたのだった。
しかしよくよく調べてみると、簡易送風で手近な冷房器具として使えたり、洗濯物の部屋干しをサポートする機能を備えたりなど、梅雨以外の時期でも使えるような製品が多い。上で書いたようなことはもはや時代遅れの認識なのかもしれない。そこで除湿機の真価を試すべく、実際に購入してみた。
今回試す製品はナショナルの「F-YHD100」。価格はオープンプライスで、Amazon.co.jpで42,980円で購入した。
購入のポイントは、除湿方式として「1年じゅう使える」を謳った「ハイブリッド方式」を採用していることだ。ちょっと難しい話になるが、除湿機には2つの方式がある。1つは、エアコンや冷蔵庫の様に冷媒を使って空気中の水分を結露させて除湿する「コンプレッサー式」と、空気中の水分を「ゼオライト」という吸着剤で捕らえて空気中の水分を取り出す「ゼオライト(デシカント)式」がある。……これだけだと何のこっちゃと思われるだろうが、簡単にいえば、コンプレッサー式は夏場に強いが、気温が低い冬にはパワーダウンしてしまう。一方で、デシカント式は冬場でも能力が衰えないが、消費電力が大きく気温が上がりやすいという特徴がある。
この両者の機構を両方備え、季節に応じて運転比率を変えてくれるというのが「ハイブリッド方式」なのだ。パンフレットに書かれたデータによると、一日あたりの除湿量は、コンプレッサー式は梅雨の時期が8.4L、冬が1.2Lなのに対し、ハイブリッド方式なら梅雨で10L、冬なら5.7Lと、結構量が違う。ハイブリッド式なら季節を問わず、強力な除湿が期待できそうだ。
しかし、夏場はともかく、空気が乾燥している冬場に除湿機など使うのか? という疑問もあるが、パンフレットでは主な用途として、「除湿」のほか「部屋干し」を挙げており、部屋干しに特化したさまざまな送風機能を備えているようだ。私はかなり高い割合で部屋干しをするため、これなら梅雨が終わっても使えるのではないか、と踏んで選択した。
● 「除湿」「衣類乾燥」「冷風」の3つの機能
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本体上部の操作パネル。運転モードは「除湿」「衣類乾燥」「冷風」の3種類。風向やスイングなどの設定も可能だ
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まずは本体サイズから見ていこう。340×210×540mm(幅×奥行き×高さ)と、高級価格帯の空気清浄機並みの大きさだ。重量も12kgと重い。本体底部にはキャスター、上部には取っ手がついており、持ち運びやすい仕様になっている。
除湿能力は9L(50Hz、室温27℃、相対湿度60%を維持する室内で24時間運転した場合)で、除湿可能な床面積は、木造が19平方m、鉄筋で23平方m(50Hz)。他社の高級タイプの製品と比べても、遜色のないスペックを持っている。
空気の吸い込み口は本体背面にある。フィルターも用意されており、ダニのフンや花粉といったアレル物質を抑制する効果のある「スーパーアレルバスター」、浮遊菌・カビ菌の繁殖を抑える「バイオ除菌」などが添着されている。これらはナショナルの空気清浄機にも搭載されている機能だ。
本製品は特に設置作業もなく、パッケージから出してすぐに使える。操作パネルは本体上部にあり、「除湿」「衣類乾燥」「冷風」という3つの運転モードと、風向や送風範囲などを設定するボタンが用意されている。
本体前面には低湿/適湿/高湿を示すランプのほか、コンプレッサー/デシカント方式の運転比率を表すインジケーターも用意されている。緑のランプがコンプレッサー式で、オレンジがデシカント式で運転していることを表している。
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本体裏面にはキャスターがあり、重量の割には動かしやすい
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取っ手も用意されている
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空気の吸い込み口は本体背面。写真はフィルターを外した状態
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こちらがフィルター。アレル物質や菌の繁殖を抑える成分が添着している
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本体正面のインジケーターは、コンプレッサー(緑)とデシカント方式(オレンジ)の運転比率を示している
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● 自動的に湿度を約55%にコントロールし、除湿しすぎない「おまかせ除湿」が便利
まずは「除湿」機能から使ってみよう。運転は弱/中/強の3種類のほか、湿度を約55%に自動的にキープする「おまかせ」というのがある。せっかくなので、このおまかせモードを使ってみよう。ちなみに、運転前の我が家の温度・湿度計付き時計は、湿度を58%と表示していた。
おまかせ運転をスタートすると、「シャー」という送風音とともに運転がスタートした。冷媒を使用しているせいか、同時に「ブーン」という、まるで冷蔵庫のような低い運転音もする。運転音は、説明書では42dB(50Hz)となっており、個人的にはそこまでうるさいという感覚はなかったが、就寝時に使うとなると気になって眠りにくいかもしれない。
運転後、湿度は順調に下がり、1時間も経たないうちに53%まで落ちた。目安の55%を下回ってしまったが、計測器具の設置場所など誤差を考えれば、許容範囲内だろう。この後も運転を続けたが、ずっと53%を維持し続けていた。湿度が下がりすぎる心配はなさそうだ。
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除湿機能を「おまかせ」モードで運転する前のリビングの室温と湿度を示す時計。最初は23.5℃と58%だったが……
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1時間後。湿度は5%下がって53%となった。加湿器では温度の上昇が気になるところだが、「おまかせ」では2℃上がった25.5℃。体感では暑いとは感じられなかった
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ところで、パンフレットに「お部屋を冷やす機能はありません。むしろ運転中は熱を発しますので、温度が上がります」とあるように、除湿器は使用すると気温が上昇する。特にデシカント式は、吸着剤が吸着した水をヒーターで蒸発させて除湿する方式のため、使用前よりも3℃~8℃ほど高くなるらしい。コンプレッサー式はそれほどでもないが、やはり1℃~5℃ほど高くなるものがあるという。
本製品では、使用前が23.5℃だったのに対し、使用後1時間は25.5℃だった。確かに2℃上昇しているが、上がり幅はそれほどでもなかった。暑いと感じることはなく、むしろ湿度が下がったことで体感温度が下がったようにも思える。運転中は緑色のランプが多く点灯しており、デシカント式ではなくコンプレッサー式で稼働していたことが影響しているのかもしれない。
「おまかせ」以外にも弱/中/強の運転モードがある。説明書では、弱は「静かに除湿したいとき」、強は「すばやく除湿したいとき」と解説されているが、湿度の下がりすぎがイヤなので、結局毎回「おまかせ」を使用している。温度の上昇も少ないため、正直言ってこれで事が足りてしまう。リビングで使うなら、「おまかせ」にしておけば間違いないだろう。
なお、除湿モードは風向や送風範囲の設定が可能で、これを使って湿気の溜まりやすい風呂場や玄関の除湿にも使用できる。風向・送風範囲に関しては次項でまとめて説明する。
● 多彩な送風機能でスピード乾燥
次に衣類乾燥機能を見てみよう。運転モードは、最大風量を送る「ターボ(連続)」、ターボと同じだが自動で停止する「速乾(自動停止)」、消費電力を抑えた運転で自動静止する「省エネ(自動停止)」の3つのモードがある。「自動停止」とは、室内の温度・湿度から衣類の乾き具合を予測し、自動で運転をストップするというもの。洗濯物の量が約4.0kgの時は、「速乾」で約4~6時間、「省エネ」で約6~8時間となるという。
モード設定後、風向を洗濯物へと向けるのだが、ここで活躍するのが風向を自動で動かす「スイング」機能と、送風する範囲を変える「送風範囲」ボタン。スイングには「下方向/上方向/広角」、送風範囲には「スポット/ワイド/ウェーブ」の3種類のモードが用意されている。例えば、洗濯物を上方に広く干した場合は、スイングを「上方向」、送風範囲を「ワイド」に、上下二段干しにした洗濯物をまんべんなく乾かしたい場合は、スイングを「広角」、送風範囲を「ウェーブ」にするとよい。スイングについては下の動画を、送風範囲については画像をご確認いただきたい。
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吹き出し口内部に、送風範囲を切り替える羽根が備わっている
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送風範囲はスポット/ワイド/ウェーブの3種類
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さて、ここで実際に洗濯物を干し、衣類乾燥モードで乾かしてみる。部屋の上部に衣類をセットしたため、スイングは「上方向」、衣類はシャツが7枚ほどなので「省エネ(自動停止)」で運転した。「省エネ」モードの運転音は、除湿の「おまかせ」と同じ42dB(50Hz)となっている。なお、洗濯物は普通に選択して脱水した状態だ。
3時間後、干した洗濯物を見ると、部分的にはまだ乾いていないところもあるが、全体的にはかなり乾いている。ここで用事があったので、運転させたまま家を離れたが、帰ってきたときにはストップしており、洗濯物もしっかり乾いていた。もちろん、部屋干し特有のいやなニオイもない。ただ風を当てるだけでなく、スイングすることでより乾く効果が高まっているのだろう。
次に、洗いたてのジーパンを乾かしてみよう。さすがに「省エネ」の風量では乾きにくそうなので、「ターボ」で挑戦。「省エネ」よりも運転音が気になるが、説明書では52dB(50Hz)と、除湿の強運転と同じ数値になっている。
3時間後、ジーパンに手を触れると、ほとんどの部分が乾いている。わずかに裾やポケット部分に水分が感じられたので、運転をストップしそのまま干しておいたところ、翌日にはすべての箇所が乾いていた。スイングは「上方向」で、送風範囲は少量の洗濯物を早く乾かしたい時に使用する「スポット」を選択した。
しかし、部屋干しでここまで完璧に乾くとは……正直に言って驚いた。もちろん、除湿効果の高いハイブリッド式の機構から生成された乾いた風を直接当てるという効果もあるだろうが、効果的に乾かせるよう、洗濯物に直接風を当てて、かつ細かくコントロールできる点が大きく影響しているだろう。
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以前コラムで取り上げた「ポールカケッタ」に洗濯物をつり下げて乾燥しているようす
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ジーパンも、3時間ほどでほとんど乾いてしまった
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ところで、「ターボ」を使用したところ、もともとは55%だった湿度が、1時間半で一気に45%まで落ちてしまった。そのため、いったん止めて、湿度が50%台になったところで再起動させたが、「ターボ」「速乾」のモードの場合は、湿度の下がりすぎには注意したい。ちなみに温度は、25.1℃から27℃と、除湿時と同様に2℃上がっただけで済んだ。また「省エネ」モードは、湿度は55%のままでキープしてくれた。
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「ターボ」使用前の湿度は55%
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1時間半後、湿度は45%まで落ちた。「ターボ」「速乾」モードでは、部屋の乾燥のしすぎにご注意
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さて、最後に残った「冷風」モードは、前方の「冷風ルーバー」より冷風を出すことで、涼を取ることができるというもの。だが、運転音や持ち運びやすさを考えると、明らかに扇風機の方が使いやすい。あくまでオプションの機能として考えておいたほうがよさそうだ。なお、このモードでも室温は上昇する。
最後に、除湿後の排水が溜まるタンクについて触れよう。タンク容量は約2.9Lで、満水に達すると自動で運転を停止する。特に強運転を行なう場合は一日もたたないうちにタンクが一杯になるため、こまめに水を捨てるようにしたい。
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「冷風」モードは前面の「冷風ルーバー」より冷たい風が出る
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タンク容量は2.9L
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使用後にタンクを見て「これだけの水が取れたのか」と感慨するのも除湿器の楽しみのひとつ
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● 部屋干し派の必需品
除湿機の必要性に疑問を感じていた私だが、「F-YHD100」を使ってみた結果、この考えを改めた。特に衣類乾燥機能は、その多彩な送風パターンもあって、かなりの効果がある。最初は衣類乾燥機能はただのオマケだろうと思っており、ここまでしっかり乾くとはとは思わなかった。コンプレッサーの能力が落ちる冬でも使えるというのもありがたい。もちろん、除湿能力も高いため、本来の除湿器としての機能もしっかりと備えている。除湿器としては高級ゾーンに当たるが、高機能の洗濯乾燥機を買うことと比べれば、こちらのほうが断然に安く済むだろう。
気になった点は、本体底部のキャスターが横向きに設定されているため、自在に動かせないところだろうか。逆を言えば安定感があるということかもしれないが、ストッパー付きの360度回転のキャスターがあっても良いと思う。部屋干しの自由度がより高まりそうだ。
あと1点、これは重箱の隅を突くようで気が引けるが、本体正面に「HYBRID」とこれ見よがしに書かれているのがどうにもカッコ悪い。今回購入したパールホワイトのカラーは、インテリアを阻害しないやさしいデザインで、非常に良い仕上がりだと思うが、「HYBRID」の文字は興を削ぐ。ここはわざわざ文字を書かずに、スッキリとしたデザインでまとめて欲しかった。
最後に小言を言ったが、全体的にはたいへん満足している。特に部屋干し派の人には間違いなくお勧めだ。
■URL
ナショナル(松下電器産業株式会社)
http://national.jp/
製品情報
http://ctlg.panasonic.jp/product/info.do?pg=04&hb=F-YHD100
除湿器 関連記事リンク集
http://kaden.watch.impress.co.jp/static/link/air.htm
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