「節電目標15%」達成の鍵は“節電ビギナー”が握る――ダイキン調査

~風量を弱にする、こまめなON/OFFは、エアコン節電法として正解?

 ダイキン工業は、20~70代の男女624人を対象に「今夏の節電と空気」をテーマにしたアンケートを実施。これまであまり節電をしてこなかった“節電ビギナー”層が約2割いるという結果となり、ダイキンでは、このビギナー層が節電することで、政府の掲げる節電目標「15%」達成の鍵になるとしている。

 調査は4月28日~5月1日にかけて、東北・関東エリアとその他エリアに住む20代~70代の男女624人を対象に、インターネット上で実施された。

 同社では、現代人の「空気」に対する意識調査を2002年から毎年実施している。16回目となる今年は、3月11日に発生した東日本大震災、それに伴う東北・東京電力管内の電力供給不足、さらには中部電力の浜岡原子力発電所の運転停止の決定などの社会的背景を受け、人々の節電や空調に対する意識がどう変化したかを浮き彫りにすることを目的としたという。


「節電を意識」は全体の9割以上、震災後に節電を意識し始めた“節電ビギナー”も2割

 まず、現在節電を意識しているかという問いでは、「意識している」と答えた人が全体の99%に上った。このうち、震災前から意識していたが、震災後により意識するようになったという人は全体の48.7%、震災の前も後も常に意識している人は26.6%、震災後に意識するようになった人は23.7%にのぼった。特に、震災前から節電を意識していて、震災後にさらに意識するようになったという人の割合は、東北、関東エリアが、その他エリアを17%上回っている。この調査では、震災をきっかけに節電を意識し始めたという層を、「節電ビギナー」としている。

「現在、節電を意識しているか」という質問の結果

 節電ビギナー層が節電する理由としては、節電の理由に「電力不足で困っている地域があるため」と「計画停電を避けるため」「家計の節約」が上位だった。ダイキンでは節電ビギナーは家庭の電気代の削減よりも、社会全体の電力供給を意識していることが伺えるという。一方、震災以前から節電を意識していた“節電ベテラン”層では、節電の理由に「家計の節約」を挙げた人が75.5%と多数を占め、ビギナー層とベテラン層では節電の理由が大きく異なることがわかった。

 同社によると、節電ビギナーは自分でどのような節電対策ができ、どの対策が正しいのかなど、節電についてまだまだ分からないことが多いという。そこで、ビギナーに分かりやすい情報を提供し、高い目標を持ってもらうことが、政府の掲げる15%という削減目標を達成するカギなのではないかと指摘している。

節電の理由節電して良かったこと

東北・関東エリアの節電意識の高さがはっきり現れる結果に

 政府が呼びかけている家庭での消費電力の削減目標について知っているかという問いでは、15%の目標数値まで知っている人が関東・東北エリアでは43.3%だったのに対し、その他エリアでは18.6%と差が出る結果になった。また、削減目標を意識していると答えた人は、関東・東北エリアで82%だったのに対し、その他のエリアでは51.6%と、開きが出た。

 いずれの問いも、震災後の計画停電を経験した東北・関東エリアの人が、夏場のピーク時の計画停電実施を避けるために、節電に高い意識をもっていることが現れた結果となった。

政府の呼びかけている、家庭の消費電力の削減目標を知っているか削減目標をどの程度意識しているか

節電に効果がありそうな家電の1位はエアコン――「今年は扇風機を使う」66.5%

 「節電に効果がありそうな家電」という問いでは、エアコンが89.7%で、他の家電を大きく引き離して首位になった。次点の冷蔵庫は52.2%、照明器具は38.5%で、実際に家庭内での電力消費の大きい3大家電が出揃った形だ。

 また、代表的な節電対策の項目の中から、貢献度の高いと思われる順に1~3位までの順位をつけてもらったところ、最も多かったのは、「エアコンの設定温度を控えめにする・利用しない」という答えで、全体の78.8%にのぼった。

節電への貢献度が高いと思う節電対策

 「この夏、自宅でどのような暑さ対策を行なうか」という問いでは、1位は「扇風機や冷風機を使う」という回答で、66.8%。一方、「エアコンを使って室温を下げる」は26.4%、「エアコンや除湿機を使って除湿する」は12.2%と低く、暑くてもエアコンの利用は控える傾向にあることがわかった。エアコンの代わりとしては、扇風機などの需要が急増することが予想されるという。

 ほかの暑さ対策では、「衣服での調節」や「すだれをつける」、「カーテンを閉める」など、電力を使わない方法が上位を占めた。

 年代別で見てみると、20~30 代ほど「エアコンを使って室温を下げる」という回答が比較的多く、年齢が高くなるほど、60~70 代では「すだれをつける」「打ち水をする」、50~70 代では「植物を置く」など、昔ながらの知恵や自然を取り入れた暑さ対策を望む傾向にあり、世代間の差が出る結果となっている。

自宅での暑さ対策

エアコンの設定温度は、「28℃」がダントツ。ただし、暑さをガマンしすぎるのは禁物

 例年と今年のエアコンの温度設定に関する問いでは、例年の設定温度は「25℃~28℃」の間でバラバラだったが、今年は「28℃」が33.3%で、ダントツの首位となった。

例年と今年のエアコン設定温度の違い

 また、夏場、暑さ対策なしで我慢できる気温については、例年だと27.6℃であるのに対し、今年は29.3℃と約2℃高くなる結果となった。

 しかしダイキンでは、「ちょっと暑くても我慢しよう」という意識は、節電に効果的である反面、体調に影響を及ぼす懸念もあるとしており、さらに気温30℃だと、湿度次第で熱中症を引き起こす危険性もあるという。その上で、健康とのバランスを考えた節電が大事だと述べている。

暑さを我慢できる限界の気温

エアコン節電法の意外な落とし穴

 効果的だと思うエアコンの節電対策については、1位が「温度の設定を1℃高めにする」という答えで84.3%、2位以下は、「フィルターを掃除する」、「風量を弱にする」、「室温の上下に合わせ、エアコンをON/OFF する」という回答が続いた。

効果的だと思うエアコンの節電対策

 ただし、ここで挙がった対策が全て正しいとは限らないという。例えば「風量を弱にする」という方法では、室内温度と設定温度の差が大きい場合、エアコンは弱運転を行うと設定温度になるまでに長い時間がかかってしまい、結果的に多くの電気を使うことになるという。暑い部屋を涼しくしたい時は、風量を「自動」にすると良いとのこと。風量が自動だと、部屋が冷えるまで強風で、その後はエアコンの機能を最大に引き出す風量に調節してくれるため、最も効率よく部屋を冷やすのだという。

 また、「部屋が冷えたらエアコンを止める、暑くなったらエアコンをまたつける」だと、エアコン起動時にかかる電力が大きくなってしまうという。部屋にいる時は、あまり頻繁に自分でON/OFFせず、エアコンに温度設定を委ねる方が良い場合もあるという。

 節電を進めていく上では、正しい対策を理解することが大切だという。エアコンは、急激に部屋を冷やすときに多くの電気を使う。一方、設定温度まで冷やした後、部屋の涼しさを維持するのには、少ない電気で済むという。同社では、このようなエアコンの機能と特徴をふまえた上で対策すれば、家庭での節電の効率化につながるとしている。






(小林 樹)

2011年5月20日 00:00